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2025/06/12最終更新⽇時
2025/06/12借地権付き建物の建て替え承諾料の目安|承諾料が不要なケースとは?
- 底地・借地

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借地権(賃借権)付き建物の建て替えを検討する際、注意したいのが「建て替え承諾料」の存在です。「承諾料とは何か」「どれくらいの金額が相場なのか」「支払わなくてもよいケースはあるか」など、気になる方もいるのではないでしょうか。
この記事では、借地権付き建物における建て替え承諾料の目安や承諾料が不要となるケースについて解説します。建て替えを検討している方や地主との交渉に不安を感じている方は、ぜひ参考にしてみてください。
借地権付き建物の建て替え承諾料の目安

借地権付き建物を建て替える際は地主の承諾が必要となるケースが多く、その際に「建て替え承諾料」が発生する場合があります。承諾料は土地の更地価格(借地権割合を除いた価格)の3%〜5%が相場で、借りている土地の更地価格が3,000万円の場合、90万円〜150万円程度が目安です。
ただし、この金額は法律で定められたものではなく、地域や地主の考え方によって変動します。交渉の余地があることも多いため、専門家に相談して適切な金額を見極めることも大切です。
関連記事:借地権とは?普通借地権と定期借地権の違いから相続・売却のポイントまで
借地権付き建物の建て替え承諾料が不要なケースとは

借地権付き建物の建て替えには、原則として地主の承諾と承諾料が求められますが、例外的に不要となるケースもあります。事前に該当するか確認することで、無駄な出費やトラブルを避けられるでしょう。ここでは、建て替え承諾料がかからないケースについて解説します。
契約書に記載がない場合
借地契約更新前の物件において、土地賃貸借契約書に「増改築禁止特約」が明記されていない場合、原則として借地人は地主の承諾を得ずに建て替えが可能です。
ただし、法律上の義務がなくても、事前に地主に通知しないまま工事を始めるのは避けたほうがよいでしょう。信頼関係を維持するためにも、建て替えの予定があることを丁寧に説明し、円滑な関係を保つことが大切です。
地主から承諾料は不要と言われた場合
建て替え承諾料は法律で定められた金額があるわけではなく、あくまでも地主と借主の合意によって決まる任意の費用です。そのため、地主が「承諾料はいらない」と明言した場合、支払う必要はありません。
実際には、長年良好な関係を築いている場合や地主と借地人が親族である場合には、承諾料を求めないケースもあります。
【注意】借地権付き建物の建て替えが認められない物件がある

地主から承諾を得られても、自由に建て替えられるとは限りません。建物や土地の条件によっては、建て替えそのものが認められないケースもあります。ここでは、法律によって建物の建て替えが認められていない物件について解説します。
既存不適格建築物
「既存不適格建築物」とは、建築当時には合法だったものの、その後の法改正によって現行の建築基準法に適合しなくなった建物を指します。既存不適格建築物を建て替える際は現在の基準に基づいた設計が求められ、従来よりも建物面積が小さくなったり階数制限がかかったりすることがあります。
例えば、建ぺい率や容積率の変更により、同じ規模の建物が再建築できないケースも少なくありません。建て替えを検討する際は、建築士や不動産の専門家に相談し、現行法に適合するか事前に確認することが重要です。
接道義務違反の物件
「接道義務」とは、建物を建てる敷地が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならないという建築基準法上の要件です。この条件を満たしていない土地には、原則として新たな建築物を建てられません。
例えば、細い路地の奥にある旗竿地(はたざおち)や昔ながらの通路にしか接していない土地は、接道義務に違反している場合があります。接道義務違反の物件を建て替える場合、隣地を買い取って幅を増やすか、敷地を後退させるセットバックという手段を用いる必要があります。
借地権付き建物の建て替えができない場合の対応方法

借地権付き建物の建て替えで、地主から承諾が得られなかったり法律上認められなかったりしたときは、リフォームや売却を検討するのもひとつの手です。ここでは、建物の建て替えができない場合に備えて、リフォームや売却について解説します。
リフォームする
リフォームとは、既存の建物に手を加えて、性能や美観、住み心地を向上させる改修工事を指します。例えば、外壁塗装や壁紙の張り替え、水回りの交換などが典型的です。
リフォームであれば、建物の構造自体を大きく変更しない限り、建築基準法上の建築確認申請が不要なことが多く、地主の承諾も原則として必要ありません。建て替えができなくても、一定の快適性や機能性を維持・向上させて住み続けることが可能です。
ただし、工事が構造部分に及ぶような大規模なリノベーションは申請が必要なケースもあるため、事前に専門家と相談することをおすすめします。
売却する
建て替えができない借地権付き建物は、将来的な活用の選択肢が限られるため、売却を視野に入れてもよいでしょう。所有権付きの建物と比べると流通性は低く、買い手を見つけるのが難しいものの、立地条件や建物の状態によっては十分な売却益が得られるケースもあります。
借地権付き建物の売却方法はいくつかあり、「地主に対して売却を持ちかける」「第三者に借地権を譲渡する」「地主と等価交換(借地権と底地権を統合)をしてから第三者に売却する」といった方法が挙げられます。
関連記事:借地権は売却できる?5つの方法と流れ、売買相場について解説
関連記事:借地権売却の方法と注意点を徹底解説!地主への交渉術も紹介
知っておきたい|借地権に関する費用

借地権付き建物を所有していると、建て替え承諾料以外にも、さまざまな費用が発生します。事前に把握することで、思わぬ出費を防ぎ、スムーズに手続きを進められるでしょう。ここでは、借地権に関する費用の内容と目安について解説します。
借地条件変更承諾料
借地条件変更承諾料とは、借地契約で定められた建物の構造や用途を変更する場合に発生する費用です。
例えば、当初の契約で「木造建物」とされていたにもかかわらず、建て替えによって鉄筋コンクリート造(RC造)のような堅固な構造物になった場合、契約条件(借地契約期間)が変わるため、地主の承諾が求められます。このときに支払うのが借地条件変更承諾料で、一般的な目安は土地の更地価格の10%です。
大規模リフォーム承諾料
リフォームと増改築の線引きは曖昧なことが多く、特に構造部分に手を加えるような大規模リフォームは地主の承諾と承諾料が必要な場合があります。
具体的には、屋根や柱、基礎部分など建物の骨組みに関わる工事や、床面積が大きく増えるような改修は「増改築」と判断されることがあります。
大規模リフォーム承諾料の目安は、建て替え承諾料と同様に、更地価格の3%〜5%程度です。ただし、工事の内容によって判断が分かれるため、計画段階で専門家に相談し、地主と円滑に話し合いを進めることが大切です。
更新料
借地契約には契約期間が定められており、多くの場合、期間満了後も借地権は更新されます。更新のタイミングで発生する更新料は法律上の義務ではなく、契約内容や地域慣習に基づいて設定されますが、実際には多くの地主が請求する費用です。
更新料の目安は借地権価格の5%〜10%で、事業用や商業用の借地だとさらに上がることもあります。なお、更新料の支払いが契約書に明記されていない場合でも、過去に支払ったことがあると請求される可能性がある点に注意しましょう。
名義書換料(第三者への譲渡承諾料)
借地権付き建物を第三者に売却(譲渡)する際は地主の承諾を得る必要があり、その際に支払うのが名義書換料(譲渡承諾料)です。借地権の新しい所有者が登場することで、地主の契約相手が変わるため、その承諾や手間賃の意味も含めて支払われます。
名義書換料に関して法律上の規定はありませんが、借地権価格の10%が一般的な目安です。地主との関係や契約内容によっては金額が大きく変動します。
関連記事:借地における譲渡承諾権とは?譲渡承諾料の種類をご紹介!
関連記事:借地権の譲渡について|底地人の許可は必要?
借地権に関するお悩みは不動産相談窓口の「おうちの相談室」へ
借地権に関するトラブルやお悩みを抱えている方は、不動産相談窓口「おうちの相談室」へご相談ください。「建て替え承諾料はいくらかかるのか」「地主との交渉が不安」「売却や名義変更をしたいけれど、進め方が分からない」といったご相談に、経験豊富な不動産のプロフェッショナルが丁寧に対応します。
必要に応じて弁護士や税理士と連携し、相続や贈与、譲渡所得の税務など、専門的な課題に対しても総合的にサポートが可能です。不動産の利活用や整理に不安がある方に対して、法務・税務の両面から適切な解決策をご提案します。お気軽にお問い合わせください。
まとめ

借地権付き建物は、建て替え承諾料や借地条件変更承諾料など、多くの費用がかかります。また、借地条件や建築基準法の制限により、建て替え自体が難しいケースも存在します。その場合、リフォームや売却といった代替案も含めて柔軟に対応することが大切です。
ただし、借地権や底地、共有持分といった不動産は権利関係が複雑で、個人の判断には限界があります。トラブルを未然に防ぎ、適切な判断を下すためにも、専門家のアドバイスを受けるとよいでしょう。
「おうちの相談室」では、借地権問題をはじめとする不動産全般のお悩みに、不動産のプロが寄り添いながら対応します。法律・税務の観点から幅広いサポートが可能です。少しでも不安や疑問を感じた際は、お気軽にご相談ください。