ご安心ください。
これらはすべて間違いです!
もちろん、日本の年金制度が完璧であり、このようなことが100%起きないという保証はできません。ですが、皆さんが今考えているような状況ではなく、むしろ改正を繰り返しながら、よりよい形に改善され続けているのも事実です。少なくとも、世間のイメージになるような年金制度崩壊といったような厳しい状況ではありません。
今から、マスコミや金融業界が作り上げたストーリーによって作られた誤解を解き、正しい老後に備える為の知識を解説致します。私たち一人ひとりが、怪しい金融商品に手を出さず、何をすべきかがわかるはずです。
多くの日本人が年金制度に不安を持っています。
年金に対して、何かしらネガティブなイメージは持っているのではないでしょうか。
ただし、その不安は根拠があるものですか?メディアの煽りに乗せられて、何の根拠もなく不信感を頂いてはいないでしょうか。
まず、年金財政が赤字であるという不安から、客観的事実に基づいてのみご説明いたします。
一般的に日本には巨額の財政赤字があると言われています。確かにこれは事実なのですが、赤字なのはあくまで一般会計であるということです。
財務省が発表している日本の財政状況資料によれば、2021年度の歳出の総額は106.6兆円となっています。一方で、歳入つまり収入を合計すると57.4兆円です。このことから2021年度は49.2兆円の赤字であったことがわかります。
歳出の中には借金の返済や利息の支払いが23,7兆円あり、正味の赤字額は25.5兆円ということになります。この赤字を埋めるために発行されている国債の残高は、2021年度末で991兆円になりました。つまり、日本の財政赤字は1000兆円近くあるということです。
年金財政が赤字だというのは、この財政赤字から派生して広まった噂だと思いますが、実態は全く異なります。
というのも年金はこの一般会計とは全く別の勘定の年金特別会計で、戦前からあったいくつかの保険事業を統合して作られたものです。
この年金特別会計には、年金積立金と呼ばれるお金が2021年度末で196.6兆円もあります。
つまり年金財政は赤字なのではなく196.6兆円もの貯金があるということになります。従って年金財政は赤字というのはまったくの間違いであり、むしろ今後も安定した運用が望める健全な状況であることが分かります。
先ほどの196.6兆円の貯金を日本はただ金庫に貯金をしているだけではありません。私たちの大切な年金積立金は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)によって運用されております。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)による運用はどのような状況になっているか、積立金に関する数字の情報は、公式ホームページを見ると、誰でも簡単に閲覧することが可能です。それによると、2001年度からこの約20年間の間の累積収益額は105.4兆円であり、収益率は年率にすると3.69%となっています。
つまり年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は過去20年間で100兆円近くの利益を出しているということです。運用を開始してからの累積収益額の推移をみると、年によってはプラスやマイナスの時はありますが、全体的に安定して増収傾向にあります。
さらに、直近の2020年度は37.7兆円のプラスとなっており、1期の収益としては史上最高の収益となりました。このように全体としてはプラスであるにもかかわらず、日本人の多くは年金の運用は損ばっかりしていて赤字続きだという誤ったイメージを持っています。
これは、メディアによる過剰な煽り、また金融業界のポジショントークによるものが考えられます。国民の不安によって得をする企業が存在する為、このように誤った情報が発信されることになってしまうのです。
皆さんは次のような言葉を聞いたことはないでしょうか。
「日本は多くの現役世代で60歳以上を支える仕組みだった。しかし、少子高齢化が進む中で、現在は3人で1人を支えなくてはいけなくなってしまい、将来的には1人で1人を支えることになってしまう。結果、今の年金制度では、この負担に耐えられない為崩壊する。」
このような話は、あらゆる場所で語られています。
この説明は、わかりやすい為、一見説得力があるように思えます。不安を煽るために最も効果的であるかもしれませんが、実際の数字を見ながら解説していきたいと思います。
日本人口の中で65歳以上(高齢者)1人に対して65歳未満は何人いるかを見てみると、1970年には高齢者1人に対して若者は13.1人、それが1990年になると高齢者1人に対して若者は7.3人、そして2020年には若者が2.6人となりました。20年後の2040年には高齢者1人に対する若者は1.8人になるとシュミレーションできる為、確かに先ほどの話に辻褄が合うように思います。
しかし、この数字は、もっと深く読み取る必要があります。そもそも、年金のような社会保険制度は現役で働いている人が保険料を負担します。年齢に関係なく働いていれば保険料は負担しますし、逆に働いていなければ年齢が若くても保険料を支払うことはありません。つまり、年齢だけで区切って判断するべき問題ではなく、一人の働いている人が、何人の働いていない人を支えているかという観点で比べなくてはいけないということです。
このような視点で見てみると、1970年には一人が支えている人数が1.05人であったのが、1990年になると0.96人となり、2020年では0.89人となりました。先程の数字とまったく別の結果が出てくることになり、悪くなっているどころか、むしろ改善され続けていることがわかります。
2021年から、70歳までの就労機会の提供が、企業に対して努力義務として求められるようになりました。皆さんの周りや、ご家族を見渡してみてください。60歳以上になっても元気に働き、社会保険料を支払っている方はいませんでしょうか?
また、女性の社会進出が加速し、共働きの家庭は増加したと思いませんか?社会保険料を支払う労働力は様々な形で増えており、むしろ健全な形に変わっていっております。そのような状況の中、少子化=年金制度崩壊と考えるのは、無理があると思いませんか?
金融業界の営業戦略は、年金に対する間違った誤解を生んでしまった原因の一つです。年金不安を煽ることによって自社の金融商品が売りやすくなるからです。
ここまで読んでいただいた皆様はすでにご存じの通り、年金が破綻することはありません。社会保障制度は、これまで通り安定して継続的に続いていくと考えられます。
でも、実際にはもらえる年金額は減っているよね?本当に年金は大丈夫なの?と思った方はいませんか。この議論については、すでに解決しております。平成16年の年金制度改正によって、マクロ経済スライドという調整システムが採用されました。将来の現役世代の負担が大きくならないように、保険料と年金給付のバランスが保たれ、物価や賃金の上昇によって、年金支給額が時間をかけて変動する仕組みになっております。
その為、支給される年金支給額が調整されていますが、決して年金の財源がないとか、運用状況が悪いといったことではないことをご理解ください。
年金不安に煽られて変な金融商品を買ってしまうことはやめてください。特に年金と名前の付いた金融商品には注意が必要です。
例えば個人年金保険とか年金式に分配金が受け取れる投資信託も注意が必要です。頼りにならない国の年金を補ってくれる存在というイメージ戦略で販売しているわけです。
個人年金保険の加入者数は2000万人以上いると言われており、公的年金の実情を理解していない人が多いことの証明でもあります。
個人年金保険は、保険料を積み立てていて、将来そこから受け取るという仕組みになっているものです。一定期間受け取れる確定年金と、生涯受け取れる終身年金があり、受け取れる金額にも、決まった金額が受け取れる定額年金と、運用によって金額が変わる変額年金があります。
払い込んだ保険料の合計額に対して将来受け取る金額の合計がどれくらい上回るかを返戻率と言います。保険料が100万円で、将来受け取れる金額が100万円であれば返礼率100%です。
商品によってこの返戻率は異なりますが、10年間で受け取った場合で返戻率が105%程度のものが多いです。5%も増えて返ってくるのであれば問題ないかと思われますが、5%というと年利にすると0.5%にしかなりません。利回りとしては低すぎる金融商品になります。また、仮に途中解約していますと、元本を大きく割ってしまいます。こちらも商品によって変わりますが、返礼率は70-80%程度になってしまうことが多いです。ハイリスク、低リターンな商品と言えるでしょう。
また、所得控除になるという利点も言われますが、所得税で4万円、住民税で2.8万円、合計しても6.8万円が上限となります。個人型確定拠出年金idecoの場合は、掛け金の全額が控除されますから、職業によっても所得控除される上限基準は異なるのですが、最低でも2倍以上の控除金額が得られる計算になります。個人年金保険をするぐらいであれば、確実にidecoの方がメリットが多いです。
公的年金は毎月ではなく偶数月の15日にしか入ってきません。金額にすれば同じことなのですが、今まで毎月支払われていた給料が2か月に1回しか支払われていないというのが、不安に思う方もいるでしょう。
そこで1ヶ月ごとに毎月分配される投資信託が人気を集めました。もちろん、毎月受け取れるということが人気の理由なのですが、投資信託はあくまで投資ですので、運用した結果収益がいくら出るのかは決まっていません。
当然値下がりしてしまうこともあります。じゃあなぜ毎月分配を受けることができるのかということなのですが、元本を崩して支払いをしているということが大きな問題点となります。
元本が取り崩して支払いを受けているだけなので、返礼率で考えると、100%未満になってしまうことは当然あるのです。そのあたりの説明を十分に受けずに購入している人がいて、しばしば訴訟問題になっているケースも存在します。
年金に関して、少なからず見えない不安は解消され、手を出してはいけない金融商品の理解はできたかと思いますが、一方で、老後資金が実際に十分であるのか、という問題にも目を向けなくてはいけません。
金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループは、2019年6月3日「高齢社会における資産形成・管理PDF」報告書を発表しました。老後資金2000万円不足問題の発端となった報告書です。
公的年金だけでは、一般家庭は老後2000万円ものお金が足りないという発表により、日比谷公園ではデモ行進にまで発展し、大炎上してしまいました。ただし、この報告書には大きな落とし穴があったのです。
まず、高齢者夫婦世帯の平均値で算出していた数字ということです。平均値という取り方をしていた場合、支出が年間500万の家庭と3000万の家庭の平均になると、1750万円が平均になってしまいます。極端な支出のサンプルが一部であっても、全体に大きな影響を与えてしまうという数字になっていました。
また、高齢者夫婦世帯とは、夫65歳以上、妻60歳以上の無職の家庭を対象としています。年金の受給年齢は65歳以上ですから、妻が65歳になるまでの5年間は当然不足分が発生しやすい期間です。その期間の不足金額を元に、今後20-30年と想定して最終的には2000万円が不足しているという計算になっていました。
なぜ、金融庁はこのような偏ったデータを提出したのでしょうか。報告書を最後まで見ればわかるのですが、金融庁の本来の目的は、実は投資の必要性を告知したかったのです。セールストークとして、そのような報告書を提出したのですが、投資に回す余裕のある層には理解されず、投資ができない層に対して、将来資金の不安を煽る形となり、炎上する流れになってしまったのです。
国が年金制度の破綻を認めたのではないか?
2000万円も不足していると言われてもどうすれば?
金融庁はどのように責任を取るのか?
という意見が出てくる事態となり、さらにメディアもその波に乗って大きく取り上げられた為、本来の趣旨が伝わらないまま、切り取った情報が拡散されました。
ただし、この問題は国民全体の関心を集め、年金に対して勉強する機会になり、早いうちに、正しい金融リテラシーを知る良いきっかけになったのかもしれません。
公的年金の赤字という誤りの誤解は解け、また財政的にも問題ないことがわかりました。制度自体が崩壊することは当面ないですが、将来の運用シミュレーションはどのようになっているのでしょうか。
現在のところ、まったく問題がない公的年金ですが、日本経済は停滞の時期が続いています。当然悲観的な結果になることを想定しておいた方が無難です。もし、そのような結果になってしまった場合に、どのようなことが起きてしまうのかを説明致します。
将来の公的年金の財政見通しのことを、財政検証と言います。将来の厚生年金給付について、最も楽観的なケース1~最も悲観的なケース6までを用意してシミュレーションしています。
その結果では、現役世代の手取り収入の何%の年金が給付されているかという所得代替率を見ると、現在は61.5%であり、最も楽観的な数字でも51.9%、最も悲観的な数字では36~38%に下がってしまうという結果になっています。
現在の厚生年金のモデル年金給付額が22万円なので、経済が成長することなく、高齢者の労働率も上がらないという悲観的なケースでは、今から31年後には、夫婦2人の年金額は、月額12.9万円ということになります。
最悪のケースが起きてしまった場合には、そのぐらいの年金給付額が変動してしまうということを理解しておいた方がいいかと思います。
知らないと損する?
2022年4月から、新しい年金制度がスタートしたことをご存じでしょうか。主な変更点をまとめましたので、皆さんに関係のある項目は、是非目を通しておいてください。
繰下げ受給の上限年齢引上げ
これまでは、60~70歳の間で希望する受給時期を選択でき、受給時期を繰り下げた分だけ将来の受給金額が増えるというシステムになっていましたが、2022年4月からは、上限年齢が70歳から75歳に引き上げられました。
対象になる方は、令和4年3月31日時点で、70歳に達していない方(昭和27年4月2日以降生まれの方)または受給権を取得した日から5年経過していない方となります。
繰上げ受給の減額率の見直し
繰上げ受給をした場合の減額率は、1月あたり以前まで0.5%でしたが、新たな年金制度では、0.4%に変更されました。
対象になる方は、令和4年3月31日時点で、60歳に達していない方(昭和37年4月2日以降生まれの方)となります。
在職老齢年金制度の見直し
現在も在職中の老齢厚生年金受給者の方は、年金の基本月額と総報酬月額相当額の合計額が一定の基準を超えてしまった場合には、年金の全部または一部が支給停止されますので注意してください。
また、令和4年4月から60歳以上65歳未満の方の在職老齢年金について、年金の支給が停止される基準が見直され、65歳以上の在職老齢年金と同じ基準(28万円から47万円)に緩和されました。
給年 金の支給停止規定の見直し
加給年金の加算対象となる配偶者の方が、被保険者期間が20年(中高齢者等の特例に該当する方を含む)以上ある老齢、退職を支給事由とする年金の受給権を有する場合、その支給の有無に関わらず加給年金が支給停止されてしまいます。
令和4年3月に加給年金の支給がある方については、経過措置が設けられています。
在職定時改定の導入
在職中の65歳以上70歳未満の老齢厚生年金受給者の方は、年金額が毎年1回定時に改定が行われます。基準日である毎年9月1日に厚生年金保険の被保険者である場合は、翌月10月分の年金から改定されますので注意が必要です。
以上のことを踏まえた上で、結局、老後はいくら必要なのか?ということが皆さん気になるかと思います。ですが、平均値や中央値を取って、その架空の人達のライフスタイルに近づくことに興味があるのでしょうか。まったく同じ収入支出の人は存在しませんし、それぞれの家族構成によっても、必要なお金はまったく異なります。
老後は世界を旅しながら旅行したい。という人もいれば、田舎に移住して、のんびり自給自足のような生活をしたい。という人もいるでしょう。孫の為にお金を残してあげたいという人もいます。
データは一部分を切り取って説明すれば、いくらでも発信側の都合の良いものになってしまいます。人の人生の平均を取ることはできません。大切なことは、あなたの人生はあなたが決めるということです。
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