投稿⽇時
2025/05/21最終更新⽇時
2025/05/21借地権付き建物の住宅ローン審査が厳しいのはなぜ?|審査通過のポイント
- 底地・借地

Contents
借地権付き建物の購入では、住宅ローンの審査が通常より厳しい傾向があります。その理由として、担保価値が低いことや地主との借地契約解消のリスクがあることが挙げられます。
借地権付きのマイホームを購入する方は、住宅ローンの利用先や審査を通過するためのポイントを押さえておくことが大切です。
この記事では、借地権付き建物の住宅ローン審査が厳しい理由と審査を通過するためのポイントを紹介します。なお、借地権には「賃借権」「地上権」の2種類があり、この記事では「借地権=賃借権」としている点にご留意ください。
借地権とは

家を建てるには土地が必要ですが、土地を購入せずに、借りて使う方法もあります。それが「借地権(しゃくちけん)」です。
借地権とは他人の土地を一定の条件で借りて、その上に建物を建てて利用する権利で、多くの住宅や商業施設が借地権を活用しています。土地を買うより初期費用が抑えられる一方、契約内容や更新条件には注意が必要です。ここでは、借地権の種類と違いについて解説します。
「普通借地権」と「定期借地権」
借地権には、大きく分けて「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があります。普通借地権は、建物を建てることを目的として土地を借り、契約期間満了後も更新が可能なタイプです。原則30年以上の契約で、借主の意思で更新されることが多く、半永久的に借り続けられます。
一方、定期借地権は更新できないのが特徴です。契約期間(一般に50年以上)終了後は、原則として土地を地主に返還する必要があります。地主にとっては、将来的に土地を確実に取り戻せる点がメリットです。そのため、商業施設やマンション開発にも利用されています。
「旧借地権」と「新借地権」
「旧借地権」とは、1992年(平成4年)に借地借家法が施行される前に締結された借地契約に適用される旧法に基づいた借地権です。旧法では借地人(借主)の権利が強く、契約期間満了後でも簡単に更新可能で、地主が土地を返してもらうのが難しいケースが多く見られました。そのため、地主にとっては不利な状況が生じやすい制度でした。
一方、「新借地権」は、1992年以降に締結された借地契約に適用される現行の借地借家法に基づいた借地権です。新法では地主と借主の権利義務がより明確に定められ、特に定期借地権制度の導入により、契約期間満了後のトラブルを回避しやすくなっています。
他にも、借地権の存続期間や地代の増減額請求の手続きの流れが変更されました。
「賃借権」と「地上権」
借地権の形態は「賃借権」と「地上権」の2つです。どちらも土地を借りて利用する権利ですが、法律上の扱いには大きな違いがあります。賃借権は、地主の所有権の下で土地を利用する権利です。第三者に対しては登記がなければ権利を主張できず、地主の承諾がないと土地を他人に貸したり譲渡したりできません。
一方、地上権は物権と呼ばれるもので、所有者の許可がなくても第三者に譲渡や賃貸が可能です。登記をすれば第三者にも権利を主張できます。地主の承諾を得ずに建物を売ったり貸したりできるなど、自由度が高いため、より強い権利といえるでしょう。
ただし、実際は賃借権での契約が一般的です。地上権においては地主の権利が制限されるため、地主が敬遠することが多いためです。
関連記事 : 定期借地権と普通借地権は何が違う?それぞれの契約内容やメリット・デメリットを徹底解説!
関連記事 : 所有権と借地権はどうちがう?借地権割合の計算を含めて解説いたします!
関連記事 : 借地権付き建物とは?メリットやデメリット、売却方法を解説!
借地権付き建物の住宅ローンを組むのが難しい理由

一戸建てを建てる際、土地を購入せずに借地に建物を建てる「借地権付き住宅」という選択肢があります。土地を買わない分、初期費用を抑えられるのがメリットですが、住宅ローンの審査が通りにくい点はデメリットです。ここでは、借地権付き建物で住宅ローンを組むのが難しい理由を3つ紹介します。
担保価値が低い
住宅ローンを組む際、金融機関は返済が滞った際に担保となる不動産を売って回収できるかを重視します。しかし、借地権付き住宅では、土地の所有権を持っているのは借主ではなく地主です。
土地の所有権がある住宅に比べて借地権付き建物は評価額が低く、万が一の際に回収できる金額が限定される点が金融機関の懸念点といえるでしょう。こうしたリスクが借地権付き住宅の住宅ローン審査が厳しくなる背景です。
地主との借地契約解消のリスクがある
借地権は永続的な権利ではなく、契約に基づいて成り立っています。借地人が契約内容を守らず、無断で建て替えたり第三者に転貸したりすれば、地主が契約解除を申し立てる恐れがあります。
契約が解除されると、建物の所有権は残っていても土地は使い続けられません。こうした不安定な契約関係は金融機関にとっても大きなリスクで、借地権付き住宅は敬遠される傾向があります。
借地権の登記には地主の承諾が必要
住宅ローンでは、金融機関が担保として建物や借地権に抵当権を設定する場合があります。住宅ローンの返済が滞った際に金融機関が借地権を差し押さえ、競売にかけて債権を回収するためです。
しかし、抵当権の設定には法務局での登記手続きが必要で、登記するには地主から承諾を得る必要があります。つまり、地主の承諾がないと住宅ローンを組めない可能性が高いでしょう。
借地権付き建物の住宅ローンをどこで組むか

借地権付き建物の住宅ローン審査は厳しい傾向があるため、通常の所有権付き物件と異なり、選択肢は限られています。しかし、住宅ローンが組めないわけではなく、適切な金融機関やローン商品を選べば、マイホームの夢を実現できるでしょう。ここでは、借地権付き建物でも利用可能な住宅ローンについて解説します。
フラット35
フラット35は住宅金融支援機構が提供する長期固定金利型の住宅ローンで、民間金融機関と連携して提供されます。住宅ローンの利用要件は以下の3つです。
【要件1:担保設定】
- 基本的には、敷地に住宅金融支援機構が第1順位の抵当権を設定する
- 地主からの承諾が得られない場合でも利用できるケースがある
- 地主が配偶者や直系親族である場合、抵当権設定が必須
- 敷地が地上権の場合、地上権に抵当権を設定する必要がある
【要件2:借入期間の制限】
- 普通借地権の場合、通常の住宅ローンと同様の借入期間で対応可能
- 定期借地権や建物譲渡特約付借地権の場合、借地権の残存期間とローン期間を比較し、短い年数を上限とする
【要件3:借地権取得費】
- 権利金、保証金、敷金、前払賃料などの借地権取得費がローン借入の対象
- 返還請求権については質権を設定する
- 名義書換料や承諾料はローン借入の対象外
金融機関
一般の金融機関でも、借地権付き建物に対応した住宅ローンを扱っている場合があります。ただし、対応は金融機関によってさまざまで、事前の確認が必要です。
都市銀行や地方銀行の中には借地権付き物件への融資に積極的なところもありますが、借地権の種類(普通借地、定期借地など)や残存期間、担保の設定状況が審査に大きく影響します。
また、借地契約の内容によっては融資不可となるケースもあるため、金融機関のローン担当者としっかり相談することが大切です。
ノンバンク
ノンバンクとは、銀行ではないものの、融資業務を行う金融会社です。ノンバンクは審査基準が比較的柔軟で、銀行の住宅ローン審査に落ちた方でも融資を受けられる可能性があります。
ただし、銀行のローンに比べると金利が高めに設定されるため、返済計画を十分に立てた上で利用を検討しましょう。また、信頼できる会社か確認することも、トラブルを避けるためには重要です。
借地権付き建物の住宅ローンが審査に通りやすくなる方法

借地権付き建物の購入において住宅ローン審査は厳しいものの、事前に準備をすれば、審査の通過は可能です。ここでは、借地権付き建物を購入する際、住宅ローン審査を通りやすくなるために押さえておきたいポイントを4つ紹介します。
頭金を多めに支払う
借地権付き建物は、土地の所有権がない分、金融機関は貸し倒れリスクを慎重に見極めます。そのため、借入額を少しでも減らすことが審査通過のポイントです。頭金を多めに用意することで借入比率が低くなり、金融機関のリスクが軽減します。
例えば、物件価格の20%〜30%を頭金として支払うと、金融機関の印象は大きく変わるでしょう。頭金を多く用意することは、資金計画がしっかりしている証拠ともなり、返済能力が高いと評価されやすくなります。
地主に協力を求める
借地権付き物件を購入する際、抵当権の設定のために地主の同意が求められるケースがあります。そのため、購入を検討する段階で地主との関係構築を意識し、信頼関係を築くことが大切です。
円滑なコミュニケーションを心がけ、必要書類の取得にも協力してもらえるよう働きかけましょう。地主の理解と協力を得られることが金融機関に伝われば、審査通過の後押しになります。
金融機関の担当者から不動産会社を紹介してもらう
一般的には、不動産会社を通して住宅ローンを申し込む流れが多いものの、借地権付き物件は逆のアプローチが有効です。まずは金融機関に相談し、信頼できる不動産会社を紹介してもらいましょう。
金融機関と過去に多数の取引実績がある不動産会社であれば、必要書類の準備や地主との調整もスムーズに進む可能性が高くなります。また、金融機関との信頼関係がすでに構築されているため、案件の進行も円滑です。
借地権売却の計画もまとめておく
住宅ローン審査においては、出口戦略も重要な評価ポイントです。借地権付き物件は、将来的に売却する難易度が高いため、あらかじめ売却計画を立てておくことが有利に働きます。
「契約期間が長い段階で売却を検討している」「地主との関係が良好で譲渡承諾も得やすい」など、将来の見通しを具体的に示せると、金融機関も安心して融資に踏み切れるでしょう。
また、出口戦略まで見据えている借主はリスク管理ができていると評価され、結果として審査の通過率も高まります。
借地権付き建物を購入する前に|メリット・デメリットを比較検討しよう

マイホームは人生で最も大きな買い物のひとつです。借地権付き建物は、一般的な所有権付きの不動産と比べて初期費用を抑えられますが、事前に把握しておきたいデメリットも存在します。ここで紹介する借地権付き建物のメリット・デメリットを把握した上で、慎重に検討しましょう。
メリット
借地権付き建物の大きな魅力は、コストを削減できることです。土地を所有せずに借りる形になるため、物件の購入価格を大幅に抑えられます。特に地価の高い都心部では、同じエリア・広さの所有権付き物件と比べて、数百万円〜数千万円単位で安く購入できるケースも珍しくありません。
また、土地の固定資産税や都市計画税がかからない点も経済的な利点です。これらの税金は通常、所有者に課されるため、借地権者は納める必要がありません。長期にわたる借地契約であれば、安定して土地を利用し続けられるため、生活基盤としての安心感も得られるでしょう。
デメリット
借地権付き建物のデメリットは、毎月地代の支払いが必要なことです。また、建て替えや増改築には地主の承諾が必要になるケースが多く、承諾料がかかることもあります。借地契約には契約期間が設けられており、更新時には更新料が求められることもあるでしょう。
他にも、売却時に買い手が見つかりにくい点も懸念材料です。借地権付きという性質上、一般的な不動産と比較して市場価値が低く評価される傾向があります。
関連記事 : 借地権付きマンションとは!?注目すべきメリットもデメリットも徹底解説!
借地権付き建物を購入する前に|起こりうるトラブルを把握しよう

借地権付き建物を購入する際は、一般的な不動産とは異なる独自のルールや契約条件が存在する点に注意が必要です。地主との関係性や契約内容に起因するトラブルは思わぬところで発生しますが、事前に知っておけば回避できる可能性があります。ここでは、借地権付き建物に関するよくあるトラブル事例を3つ紹介します。
事例1:名義変更料を求められる
借地権付き建物を相続した際、地主から名義変更料(名義書換料・譲渡承諾料)を求められるケースがあります。借地権の相続は、原則として地主の承諾は必要ありません。相続は法律上の権利移転にあたるため、売買や贈与とは異なり、地主の許可なく地位を引き継げます。
それにもかかわらず、承諾を前提とした名義変更料を請求されたり「払わないと認めない」と強硬な態度を取られたりすると、トラブルに発展することがあります。相続人が借地契約の内容を十分に理解していない場合、不当な支払いに応じる恐れもあるため注意しましょう。
このような事態を避けるには、相続後に冷静に契約書を確認し、専門家に相談することが有効です。地主との関係を良好に保ちつつ、必要以上の負担を回避するための交渉を進めることが大切です。
事例2:誰が相続するかでもめる
借地権は土地を借りている状態のため、毎月あるいは年単位で地代の支払いが生じます。相続における遺産分割協議の際に地代を誰が負担するか、相続人の間で意見が分かれるケースが少なくありません。
不動産を相続したいという意思がある一方で、地代の支払いを避けたいという考えから、誰も名乗りを上げずに話し合いが平行線をたどることもあります。借地権の相続税が高いことから「売却したい」と意見が分かれることもあるでしょう。
将来の相続でもめないためには、あらかじめ相続人間で話し合いをしたり、遺言書を作成したりすることが大切です。
事例3:譲渡を承諾してもらえない
借地権の譲渡は基本的に地主の承諾を要するため、第三者へ売却しようとしても、地主が拒否するケースがあります。特に、地主が譲渡相手に対して不信感を持っていたり今後土地を返してほしいと考えていたりする場合、譲渡を認めてもらえない可能性が高いでしょう。
地主から承諾が得られずとも、法的手続きによって裁判所から認められれば譲渡は可能なものの、労力や手間がかかるのは難点です。
また、地主が高額な承諾料を請求してくる場合もあります。こうしたリスクを回避するには、事前に地主との関係性を良好に保ち、契約時に譲渡に関する条件や手続きを明確に取り決めることが大切です。
関連記事 : 【借地権の譲渡・転貸】地主が譲渡を拒否した場合、裁判所に許可を申し立てられる!?
不動産に関するお悩みは「おうちの相談室」へ
借地権や不動産に関する悩みがある方は、リアルエステートの不動産相談窓口「おうちの相談室」にぜひご相談ください。「何から手を付ければよいか分からない」「地主や借地人との話がまとまらない」「相続や名義の問題が複雑で困っている」といったケースでも、不動産のプロフェッショナルが丁寧に状況を整理し、解決方法をご提案します。
特に、所有者不明物件や借地・底地、共有持分など、権利関係が複雑な不動産に強みがあり、専門的な知識と豊富な実績でサポートします。ささいな疑問でも、お気軽にご相談ください。
まとめ

借地権付き建物は、担保価値が低いことや地主との借地契約解消のリスクがあるといった理由から、住宅ローン審査が厳しい傾向があります。フラット35や一部の金融機関、ノンバンクであれば、一定の条件を満たすことで住宅ローンを利用できるでしょう。
住宅ローンの審査を通るには、頭金を多めに支払ったり地主に協力を求めたりするのがポイントです。
借地権に関する疑問や不安がある方は、リアルエステートの不動産相談窓口「おうちの相談室」にご相談ください。お客さま一人ひとりの悩みに寄り添いながら、信頼できる不動産パートナーとして全力で解決をサポートします。