借地権とは?普通借地権と定期借地権の違いから相続・売却のポイントまで
借地権は土地を所有せずに建物を所有できる権利であり、普通借地権と定期借地権の2種類があります。それぞれ契約更新の可否や建物の扱いに違いがあり、相続や売却時にも特有のルールが適用されます。
本記事では、借地権の基本や種類ごとの特徴、相続や売却の際のポイント、契約更新や立ち退き交渉の注意点について詳しく解説します。
Contents
借地権とは?土地の所有権との違い

借地権は、他人の土地を借りて建物を所有する権利です。土地の所有権とは異なり、契約の制約を受けるため、適切な理解が求められます。ここでは、借地権の基本と土地の所有権との違いについて解説します。
借地権の基本的な定義と法的位置づけ
借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有するための権利であり、借地借家法に基づいて定められています。土地所有者(地主)から土地を借り、建物を建てる代わりに地代を支払う義務があります。
借地権には「地上権」と「賃借権」の2種類があります。地上権は物権であり、地主の承諾なしに譲渡や担保設定が可能です。一方、賃借権は債権にあたり、契約に基づいて発生し、借地上の建物を譲渡する際には地主の承諾が必要になる場合があります(詳しくは後述します)。
土地の所有権と借地権の決定的な違い
土地の所有権は、土地そのものを自由に利用・処分できる権利です。これに対し、借地権は建物の所有を目的として土地を借りる権利であり、所有権とは異なり契約に基づく制約を受けます。
所有権は期限がなく、自由に売買や担保設定が可能ですが、借地権には契約期間が定められています。「普通借地権」は契約の更新が可能ですが、「定期借地権」は期間満了後に土地を返還する必要があります。また、借地権を譲渡する場合、地主の承諾が求められることがあります。
このように、借地権と所有権では法的な性質や利用の自由度に大きな違いがあります。
登記簿謄本で確認できる借地権の内容
借地権の状況を把握するには、登記簿謄本の確認が有効ですが、すべての借地権が登記されているわけではありません。登記が必要な地上権は登記簿謄本で確認できますが、賃借権は原則として登記されず、借地契約書などで詳細を確認する必要があります。
借地権の登記の有無は、第三者への対抗力に影響します。地上権の場合は登記が対抗要件となりますが、賃借権では登記がない場合でも、借地上の建物が借地権者名義で登記されていれば、第三者に対抗できる場合があります。
また、地上権は地主の承諾なしに登記可能ですが、賃借権の登記は地主の協力が必要であり、実務上ほとんど行われません。そのため、賃借権の権利関係を明確にするには、契約書や建物の登記状況を確認することが重要です。
登記簿謄本を確認する際は、借地権の種類(地上権か賃借権か)、契約期間、権利関係などの情報を整理しておくと、将来的な取引や相続の際に役立ちます。
相続した土地の借地権状態を確認する方法
相続した土地の借地権状態を確認するには、まず法務局で登記簿謄本を取得しましょう。借地上の建物の相続登記は2024年4月より義務化されており、相続を知った日から3年以内に手続きが必要です。
借地権は多くの場合登記されていませんが、借地権の登記がある場合は相続登記が必要となることがあります。相続した借地権の確認では、現在の契約内容や地代支払い状況、過去の契約更新履歴なども調査しましょう。
借地権の相続では、法定相続人への引継ぎには地主の許可は不要ですが、契約内容によっては地主の承諾が必要となる場合があります。良好な関係維持のため、必ず連絡することが大切です。契約更新時には更新料が発生することがあるため、あらかじめ相場(借地権価格の5%程度)を把握しておくことも重要です。ただし、更新料が不要な契約もあるため、契約条件を確認しましょう。
相続手続きで地主との交渉が難航する場合は、専門家への相談をおすすめします。借地権は重要な財産ですので、他の遺産同様に適切に評価し、確実に相続手続きを行いましょう。
借地権の種類と特徴を比較

借地権にはさまざまな種類があり、それぞれ契約条件や権利の強さに違いがあります。契約更新の有無や地主の承諾の必要性など、特徴を理解することが重要です。ここでは、普通借地権と定期借地権の違いや、地上権と賃借権の法的性質の違いについて解説します。
普通借地権と定期借地権の根本的な違い
普通借地権と定期借地権は、契約更新の可否と契約満了時の建物の扱いにおいて根本的に異なります。
普通借地権
借地人に有利で、契約期間満了後も正当な理由がない限り更新されます。地主が更新を拒否するには正当な理由が必要であり、立退料の支払いが正当事由の補完要素となることがあります。また、契約が終了する場合でも、借地人は地主に建物を買い取るよう請求でき、地主はこれを拒否できません(建物買取請求権)。
定期借地権
定期借地権は契約期間が明確に定められており、期間満了時に契約は原則として確定的に終了します。更新はなく、建物買取請求権も原則として認められていません。借地人は建物を解体し、更地にして土地を返還する義務があります。ただし、事業用定期借地権など一部の契約形態では、契約の延長が可能な場合があります。
地代についても違いがある
普通借地権は比較的安価(土地価格の1%未満)であるのに対し、定期借地権は割高(土地価格の2~3%程度)です。また、定期借地権は書面による契約が必須で、特に事業用では公正証書での契約が義務付けられており、より公正性の高い権利となっています。
関連記事 : 定期借地権と普通借地権は何が違う?それぞれの契約内容やメリット・デメリットを徹底解説!
地上権と賃借権タイプの借地権の特徴
借地権は「地上権」と「賃借権」という2つの権利タイプに分類されます。賃借権は、契約に基づいて地代を支払い、土地を使用する権利で、日本の借地権の大半を占めています。一方、地上権は民法で定められた、建物所有のために他人の土地を使用する物権的権利です。
両者の最大の違いは権利の強さです。賃借権は土地を間接的に支配する権利であり、建物の建て替えや売却時には地主の承諾が必要です。また、賃借権の登記には原則として地主の協力が必要です。これに対し、地上権は土地を直接支配できる強い権利で、地主の承諾なしに第三者への譲渡や賃貸が可能です。さらに、地上権は登記によって第三者に対抗でき、抵当権の設定も可能という特徴があります。
一般的な借地権は賃借権として設定されることが多く、長期間の契約が可能な場合が多いです。賃借権には、毎月の地代支払いが発生するほか、地主の承諾が必要となる場面が多いというデメリットもあります。借地権取引で地主とのトラブルが発生した場合は、専門家への相談をおすすめします。
旧法と新法の借地権における権利の違い
平成4年に借地借家法が施行され、借地権の法的枠組みが大きく変わりました。旧借地法は借地人の権利を強く保護する仕組みとなっていました。一方、平成4年8月に施行された新法(借地借家法)では、土地の有効活用を促進するために定期借地権が新設されました。
この定期借地権は、更新が認められず、契約期間満了後は原則として更地にして地主に返還する必要があります。ただし、一部の定期借地権では契約延長が認められる場合もあります。これにより、地主は長期間の土地貸し出し後も確実に返還を受けられるようになりました。
また、普通借地権についても変更があり、旧法では堅固建物は60年、非堅固建物は30年と契約期間が異なっていましたが、新法では区別がなくなり、当初契約期間は30年以上と定められています(30年未満の契約は無効)。更新期間も最初の更新は20年、以降は10年と定められました。
ただし、借地借家法施行前に契約された物件には、引き続き旧借地法が適用されます。新法施行後に締結された契約には新法が適用されます。旧借地法が適用される契約でも、更新時の条件変更などにより新法の適用が可能になる場合があります。
関連記事 : 借地権の旧法・新法って結局何?底地人の権利が弱かった理由とは
マンションにおける借地権の特殊性
マンションにおける借地権は、一般的な戸建てとは異なる特殊性を持ちます。マンションの場合、1つの土地(底地)に複数の区分所有者が借地権を共有している状態となります。各区分所有者は、自分のマンション区画に応じた「敷地利用権」という形で借地権の一部を所有しています。
借地権付きマンションでは、敷地利用権の価額は「敷地全体の価額×敷地権の割合」で計算されます。例えば、敷地全体の価額が17億5,000万円で、敷地権の割合が105万分の6,300の場合、敷地利用権の価額は約1,050万円となります。
また、マンションの借地権評価においては「区分所有補正率」が適用されることもあります。これは区分所有建物の特性を考慮した評価方法です。
借地権付きマンションを購入・売却する際は、一般の分譲マンションと異なり、将来の契約終了時のリスクや地代の負担にも注意が必要です。特に、定期借地権付きマンションでは、契約期間満了後に建物を取り壊すことが前提となっているため、資産価値の減少スピードが速いという特徴があります。
借地権の経済的価値とメリット・デメリット

借地権は土地の所有権とは異なり、経済的価値の算定方法や取引の仕組みが独特です。価値評価には借地権の種類や地域ごとの借地権割合が影響し、地代や更新料の算定にもルールがあります。
ここでは、借地権の価値の考え方や、所有することのメリット・デメリットについて解説します。
借地権付き不動産の価値評価方法
借地権付き不動産の評価方法は、主に借地権の種類によって異なります。普通借地権(旧借地法や借地借家法に基づくもの)の場合、まず、対象となる土地の更地価格(自用地価額)を算出します。この自用地価額に、地域ごとに設定された借地権割合を乗じて価値を評価します。
一方、定期借地権等の場合は、原則として課税時期における借地権者の経済的利益とその存続期間に基づいて評価され、現在価値を考慮した割引計算が適用されることがあります。ただし、設定時と課税時期で経済的利益に大きな変動がない場合、簡便的な計算方法が適用されることがあります。
また、一時使用目的の借地権については、借地借家法の適用を受けず、土地の一時的な利用という性質から、通常の借地権評価とは異なる方法が採用されます。一般的に、雑種地の賃借権評価に準じた方法が適用されます。
借地権付き不動産の価値を適切に評価するためには、借地権の種類、契約条件、立地条件などの複合的な要素を考慮することが重要です。
地代相場と更新料の計算方法
借地権の地代相場は地域によって異なります。都心部の主要エリアでは坪単価3,000円~5,000円程度となることがあり、地方都市では1,000円~3,000円程度が一般的です。具体的な金額は契約内容によって異なるため、事前の確認が必要です。
更新料は、借地権価格の5%程度が目安とされています。ただし、契約条件や地域によって異なるため、実際の取引では貸主との合意が重要になります。更新料の目安として、路線価を基準に以下のような計算式が用いられることがあります。
更新料の目安 = 路線価 × 土地面積 × 借地権割合 × 5%程度
例えば、路線価20万円、土地面積200㎡、借地権割合60%の場合、更新料は約120万円と計算できます。この計算式はあくまで目安であり、実際の契約では地域の慣習や個別の条件も考慮されます。
路線価と借地権割合は、国税庁のホームページにある路線価図で確認できます。道路に記載された数字が路線価を示し、記号(A~G)は借地権割合を表します。ただし、地域によっては借地権割合が設定されていない場合もあるため、詳細は専門家に相談するとよいでしょう。
借地権を所有するメリット
借地権を所有することには、主に5つのメリットがあります。
- 初期費用を抑えられる
土地を購入するよりも取得費用を抑えられるため、資金を他の用途に活用できます。土地の所有権を取得する場合に比べて、事業資金や建築費用に充てやすくなります。 - 固定資産税の負担が軽減される
借地権者は建物に対する固定資産税を負担し、土地分の固定資産税は地主が支払います。そのため、土地を所有するよりも税負担が少なくなります。 - 事業計画に合わせた柔軟な契約が可能
特に事業用定期借地権では、契約期間を10〜50年の範囲で設定できるため、事業計画に応じた土地の活用がしやすくなります。 - 地主にとって安定した収入源になる
事業用の借地では、地代を高めに設定できるため、地主にとって長期的に安定した収入が見込めます。特にロードサイドなどの好立地では、より高い地代設定が可能です。 - 相続税評価額を抑えやすい
借地権は土地所有権よりも相続税評価額が低くなりやすい資産です。そのため、相続時の税負担を軽減しやすい特徴があります。
借地権の活用方法としては、店舗や事務所などの事業用途で活用することで収益性を高めることが可能です。ただし、用途制限があるため、立地の需要を考慮しましょう。
借地権所有者が直面する制限とデメリット
借地権所有者は、さまざまな制限とデメリットに直面します。その中でも影響が大きいのが建物の増改築に関する制約です。借地契約の内容によっては、建物の増改築に地主の承諾が求められ、承諾料が発生することもあります。特に、建物の存続期間が延びることで借地権の契約継続に影響を与えると判断される場合、地主の許可が必要になるケースもあります。
また、金融面での制約もあります。借地権は土地所有権と比べて担保価値が低く評価されることが多く、特に賃借権の場合は融資を受けにくい傾向があります。さらに、定期借地権では契約終了時に建物を取り壊す必要があるため、住宅ローンの審査が厳しくなることがあります。
これらのデメリットを理解した上で借地権を選択すれば、初期費用を抑えるメリットを最大限に生かせるでしょう。
相続した借地権の管理と売却の実務知識

借地権を相続した場合、契約の引継ぎや相続税の評価、売却の可否など、適切な対応が求められます。相続人が知らないうちに契約更新が必要になることもあり、事前の確認が重要です。ここでは、借地権の相続手続きや評価方法、売却のポイントについて解説します。
借地権の相続手続きと相続税評価の特徴
借地権は相続により当然に承継されますが、契約内容によっては地主への通知が求められることがあります。この手続きは法律上の義務ではありませんが、契約関係を明確にするため、相続人が地主に通知することが一般的です。
相続税評価においては、借地権は固有の評価方法が適用されます。具体的には、「自用地としての価額」に「借地権割合」を乗じて算出されます。この借地権割合は国税庁が定めるもので、路線価図や評価倍率表に表示されています。都心部では60%~80%に設定されていることが一般的です。
定期借地権の場合は、借地権者に帰属する経済的利益とその存続期間をベースに評価されます。一時使用目的の借地権については、通常の借地権とは異なる評価方法が用いられます。
相続税の申告時には、借地権の正確な評価のために、契約書や登記事項証明書などの資料を準備しておくことが重要です。場合によっては、専門家のアドバイスを受けることも検討すべきでしょう。
借地権の売却方法と売却時の価格相場
借地権の売却には、地主との良好な関係が鍵となります。賃借権タイプの借地権では、第三者への譲渡に地主の承諾が必要で、一般的に借地権価格の10%程度の譲渡承諾料が発生するとされていますが、具体的な金額は契約条件や交渉によって異なります。地主が承諾しない場合は、裁判所に申し立てて許可を得ることも可能です。
一方、地上権タイプは地主の承諾なしに自由に売却できるため、流動性が高いというメリットがあります。
借地権と底地権をセットで売却することで、市場価格に近い金額での取引が期待できます。これはコーヒーカップとソーサーの関係に例えられ、まとめて売却することで買い手にとって魅力的な資産となるためです。他にも、借地人が底地を買い取ったり、逆に地主が借地権を買い取ったりするケースもあります。
借地権の売却時期を選ぶ際には、更新のタイミングを考慮することが重要です。また、定期借地権の中古建物は住宅ローンの審査が厳しくなる傾向があるため、事前に金融機関で担保評価額を確認することをおすすめします。
専門業者による借地権買取サービスの活用法
借地権の売却を検討する際、専門業者の買取サービスを活用することで、多くのメリットが得られます。借地権の売却を扱う業者には、直接買取を行うケースと、仲介を通じて売却をサポートするケースがあります。業者によっては、買取と仲介の両方を提供している場合もあります。
不動産会社が直接買い取る場合、売却までのスピードが速く、仲介手数料が不要という利点があります。また、契約不適合責任が免除されるケースが多いため、売却後のリスクが軽減されます。ただし、買取価格は市場価格より低めになる傾向があります。
一方で、仲介を利用する場合、査定額が高くなる傾向があり、売買契約のサポートも受けられます。しかし、売却までに時間がかかることが多く、仲介手数料が発生します。
借地権専門業者を選ぶ際は、借地権に関する専門知識が豊富であること、弁護士によるサポート体制が整っていること、売却にかかる費用の詳細が明確であることがポイントです。借地権の専門業者の中には、地主との交渉や相続不動産の管理などに強みを持ち、取引が難しい物件の買取を積極的に行う企業もあります。
借地権トラブルの事例と対処法

借地権に関するトラブルは、地代の値上げ要求や建物の建て替え、契約更新の拒絶など、多岐にわたります。これらの問題は、適切な対応を取ることで解決できる場合もありますが、地主との交渉が難航することも少なくありません。ここでは、借地権トラブルの具体的な事例とその対処法について解説します。
地代値上げ要求への対応方法
地代値上げ要求を受けた際は、まず冷静に対応することが大切です。借地人は地主の値上げ要求に応じる義務はなく、正当な理由があれば拒否したり、裁判所に調停を申し立てたりすることができます。一方、地主にも増額請求権があるため、双方の合意を目指すことが重要です。
まず、地代相場を調査しましょう。近隣の類似地の地代相場や土地の固定資産税評価額を確認し、値上げの妥当性を判断する材料とします。契約書に増額に関する特約があるかどうかも確認し、地主側の値上げ根拠と合わせて精査することが重要です。
交渉では、調査した地代相場をもとに話し合いを進めます。一度に大幅な値上げが難しい場合は、段階的な引き上げや、一定の基準に基づいた見直しを提案するのも交渉の手法の一つです。感情的にならず、建設的な対話を心がけましょう。
交渉が難航する場合は、不動産鑑定士や弁護士などの専門家に相談したり、調停などの第三者機関を利用することも検討してください。合意に至ったら、内容を明確にした合意書を作成し、双方で署名・捺印することをおすすめします。
関連記事 : 借地料の値上げ交渉をされたときに注意すべきポイントとは?失敗したくない人に向けて解説!
建物の増改築・建替え時の承諾を得るには
借地上の建物を長く使っていると、老朽化による建て替えや増改築の必要性が出てきます。一般的に木造住宅は50年程度で建て替えが検討されますが、借地契約の内容によっては、建て替えに地主の承諾が求められることがあります。
なぜ承諾が求められるのかというと、建物を建て替えることで存続期間が延び、結果的に借地権の存続期間も延長される可能性があるためです。借地借家法では、建物の存続が契約更新の要件の一つとされています。
建て替え承諾を得る際、一般的に承諾料の支払いが求められ、相場は更地価格の3~5%程度とされています。増改築の場合は2~3%程度です。また、木造住宅から鉄筋コンクリート造などの堅固建物に変更する場合は、借地契約の条件変更も必要となり、その際の承諾料は更地価格の10%程度とされています。
地主が正当な理由なく承諾を拒否する場合は、借地非訟手続を利用して裁判所から許可を得る方法もあります。ただし、ローン承諾(抵当権設定)については、裁判所の代諾許可は得られないため注意が必要です。
契約更新拒絶と正当事由をめぐる法的判断
借地権の契約更新拒絶に際して、正当事由が認められるかどうかは借地権者にとって非常に重要な問題です。裁判例では、地主側からの更新拒絶の正当事由は、借地権者の土地使用の必要性の程度、地主の土地利用計画、立退料の提供など、総合的に判断されます。
立退料の金額は借地権価格と比較して低くなる場合が多いとされていますが、交渉や裁判の判断により異なります。特に、古くからの借地権では、当初に借地権価格に相当する権利金を支払っていないケースも見られます。東京地裁平成31年1月15日判決では、「借地権価格に相当する権利金の授受がないので、借地権価格を立退料の基礎にはできない」と明言されています。
万が一、更新拒絶が認められた場合でも、借地権者には建物買取請求権が認められており、更新拒絶が確定した場合に行使することができます。この権利の価値は状況により異なりますが、立退料額の算定にも影響を与える要素となります。
まとめ

借地権は土地の所有権とは異なり、契約による制約があるものの、適切に活用すれば大きなメリットを享受できます。普通借地権と定期借地権の違いや、地上権・賃借権の法的性質を理解し、契約内容を正しく把握することが重要です。
また、借地権の相続や売却には特有の手続きや評価基準があり、適切な対応が求められます。売却時には地主の承諾が必要となる場合があり、交渉のポイントを押さえることでスムーズに進めることができます。
借地権トラブルを防ぐためには、契約更新や地代の改定、建物の増改築の際に事前に十分な確認を行い、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることが大切です。契約内容を正しく理解し、計画的に借地権を運用することで、リスクを抑えながら最大限に活用しましょう。