投稿⽇時
2023/11/08最終更新⽇時
2025/06/12譲渡承諾料とは?徴収の仕組みと交渉の実際を丁寧解説
- 底地・借地

Contents

「譲渡承諾料」とはどのような時に発生する料金なのでしょうか。
地主に許可を得る際に支払う料金ですが、譲渡承諾料が不要なケースもあります。
この記事を読むことで、譲渡承諾について学ぶことができます。
借地について
借地とは、「人から借りている土地」です。
借地権という権利が適用される土地であり、借地権を保有する人を借地人といいます。
借地借家法という法律では、「建物の所有」を目的とする地上権または土地の賃借権と定義されています。
また、借りている土地は「底地」と呼称され、地主が保有します。
戸建てを購入しようとした際に、土地付き建物であればすべて自身の所有権が及ぶことになりますが、土地付きでない場合には土地を借りる必要があります。
そして、この土地を保有している人を地主といいます。
地主は、底地権という権利を保持することによって、土地の所有権を持っています。
以上のように借地権に関しては、借りている人と貸している人が登場するので、契約もそれぞれに生じます。
借地権の購入にあたっては、前述したように「家を建てること」が目的である必要があります。
借地権は、地上権と賃借権の2つに区分されます。
地上権は自由に転貸や売買が可能な権利で、賃借権の場合は地主(所有者)の承諾が必要となります。
地上権は、非常に地主に不利な権利であるため、実際には賃貸権が借地権として適用されることがほとんどです。
そして、借地権は旧借地借家法による借地権と、1992年8月1日施行の新借地借家法による借地権の大きく2種類に分類されます。
旧借地権
契約更新により半永久的に借りることが可能。
存続期間については、建物が木造等であれば30年(最低20年)、更新後の期間は20年と定められています。
建物が鉄筋コンクリートや鉄骨造の場合、存続期間が60年(最低30年)で、更新後の期間は30年とされています。
新借地権
普通借地権や定期借地権など5種類に分けられています。
① 普通借地権
契約更新で半永久的に借りることが可能。
構造に関係なく存続期間は当初30年、合意のうえの更新は1回目が20年、以降は10年。
② 一般定期借地権
戸建てやアパートなどを住宅用として土地を賃借し、契約期間は50年以上。
更新は無いため、契約終了後には更地で返還します。
③ 事業用定期借地権
店舗などの事業用借地であり、契約期間は10年以上50年未満(2008年1月の法改正以前は20年未満)。
契約終了後は更地で返還必須。
④ 建物譲渡特約付借地権
土地所有者が建物を相当対価で買い取ることになっています。
契約期間は30年以上。
⑤ 一時使用目的の借地権
工事の仮設事務所など、一時的な借地の場合を指します。
以上のように、借地権には種類がある点に留意しておきましょう。
借地の譲渡承諾について
譲渡承諾が必要な際には、譲渡承諾料を支払う必要があります。
借地は、あくまで地主から借りている土地ですので、借地権を別の人に譲渡する場合には、土地の所有権を保有する地主の許可が必要です。
地主側の承諾が得られない場合、裁判所で手続きを踏んで許可をもらう方法がありますが、裁判まで展開させないためにも、許可取得を目的として地主に支払う料金が、借地権の「譲渡承諾料」になります。
別名で「名義変更料」とも呼ばれることもあります。
もちろん、すべての土地に当てはまるわけではないものの、借地権の譲渡を承諾する代わりに、土地の権利を持つ地主から譲渡承諾料を求められることになります。
一方で、地主が不許可を申し出る場合には、相場よりも高い承諾料を支払うことで承諾してもらうケースもあります。
借地権の譲渡承諾料の相場に、法的な定めや根拠は一切ないのですが、一般的には借地権価格の10%程度が相場とされています。
借地権価格(借地権の売買価格)を基にして、譲渡承諾料の相場が計算されます。
例えば、借地権価格が1,200万円の場合、譲渡承諾料の相場は1,200万円の10%である120万円となります。
ただし、あくまで相場の目安であることを忘れてはなりません。
譲渡承諾料は土地、または地域の条件によって変わりますし、さらに地主との関係性などに応じても異なってきます。
最終的な譲渡承諾料は、実際に地主との契約内容や交渉により決まります。
十分な情報収集と交渉力がポイントとなる点を留意しておきましょう。
また注意点として、未払いの地代を事前に精算しておくようにしましょう。
もし地代の支払を延滞などしていた場合、借地権譲渡の承諾交渉を始める前に、きちんと精算しておきましょう。
未払いの地代がある状態で借地権の譲渡交渉を始めても、交渉になりません。
加えて、借地権の相場、承諾料、手取り額を事前に調査しておくこともオススメします。
借地上の建物を売却したいと不動産会社に相談すると、現地調査や査定なども対応可能です。
この際に、実家の家を建てたときの設計図や契約書、そして重要事項説明書などがあれば、用意しておくようにしてください。
立地や建物の構造、間取り、築年数などをもとに査定額算出が可能です。
いつ必要?借地権の譲渡承諾料について
譲渡承諾料が必要になるのは、「借地権」という権利が別の方に移転する場合です。
地主の許可が必須になるケースとして、具体的に以下のようなものが挙げられます。
借地権の譲渡承諾料が必要なケースは、主に以下の3つに分けられます。
① 譲渡(売却)の場合
借地人が、第三者にその権利を譲渡(売却)する場合。
金銭の授受の有無に関わらず、借地権移転には地主の許可が必要です。
結果として地主への譲渡承諾料が発生します。
② 贈与の場合
親族や友人など親しい関係の人に借地権を無償で贈る場合は、名義の書き換えが必要となるので、地主の許可も必然的に必須になります。
裁判所の判例で、「借地権の推定相続人への生前贈与の場合、譲渡承諾料の支払をする」という事例が実際にありました。
この場合は注意が必要となります。
上記のとおり、生前相続の際には譲渡承諾料が発生する可能性がありますが、通常の相続として借地権を受け継ぐ際には、地主の許可や譲渡承諾料は不要です。
相続の場合は、契約内容をはじめ賃借人の立場もそのまま引き継がれます。
③ 遺贈の場合
遺言によって借地権を譲る場合にも、地主の許可が必要です。
相続は譲渡承諾料が不要ですが、生前に特定の相続人に財産を移転する行為である遺贈の際には、譲渡承諾料が発生する可能性があるので注意しましょう。
遺贈において譲渡承諾料が必要になる理由は、遺贈が「借地権」の権利移転を伴うためです。
これによって、借地権が第三者に移ることになります。
借地権の移転は、土地の利用者が変わることを意味し、地主にとって新しい利用者が契約条件を守るかどうかは重要な問題です。
そのため、地主は新しい利用者に対して同意をする際に、一定の対価として譲渡承諾料を要求することが一般的とされています。
また、遺贈による権利移転は相続とは異なり、生前の契約変更となるため、相続のときには不要な譲渡承諾料が遺贈の際に発生する可能性があります。
これは、相続が法律によって自動的に発生する権利移転であるのに対し、遺贈は当事者間の合意に基づく権利移転なので、地主からの許可が必要不可欠となるからです。
贈与・遺贈は、相続とは違います。
贈与は、生前に自分の財産を相手に譲ることを意味します。
相手方もその財産をもらい受けるという意思表示をすることによって成立するものです。
遺贈は、遺言によって被相続人の財産を無償で譲ることを意味します。
相続と違う点としては、法定相続人および法定相続人以外を指定できる点が挙げられます。
遺贈も贈与も相続ではなく譲渡に該当するため、地主に対して譲渡承諾料が発生します。
一方で、譲渡承諾料が不要な例としては、借地権が地上権の場合が挙げられます。
地上権は、建物売却の際に借地権の譲渡が発生しません。
そのため、地主の許可や譲渡承諾料は不要となっています。
さらに抵当権設定の承諾の際も、承諾料は不要です。
借地権であっても建物まで入れると相当な金額になるため、現金で購入される方は少ないのが実情です。
買主側で金融機関の融資を受けることがほとんどですが、その際に借地権上の建物に「抵当権」を設定します。
各金融機関から発行される抵当権設定のための承諾書に、地主の実印押印(印鑑証明書添付)が必須になるので、この承諾自体は地主から取得する必要があります。
以上、譲渡承諾料はさまざまなケースで発生することに留意するようにしましょう。
前述したとおり、地主が承諾してくれないとなると、一般的な相場よりも高い承諾料に設定して交渉するのも一つの手なので、承諾料の相場を認識しておくことは非常に重要です。
まとめ
今回の記事では、譲渡承諾料について解説しました。
借地には、承諾料としてのちのち必要になってくる費用が複数あることがわかったと思います。
この記事で見てきたように、借地権の譲渡や建物の売却などを行う場合には、まずは地主の許可が必要不可欠です。
地主に無断で取引や工事を行った場合は、契約違反となりますので、借地権の契約解除や賠償請求等、相応のペナルティが課されます。
地主が合理的な理由なく譲渡を拒否した場合には、借地人は裁判所に「借地非訟」という申立てを行い、地主の代わりに許可を得ることが可能です。
裁判所が借地非訟により「地主に正当事由なし」と判断した場合、地主の承諾無しでも第三者への売却が可能になります。
しかしここでも、裁判所が定めた承諾料を地主に支払う必要がありますので、注意してください。
このように、地主との交渉がうまくいかない場合には、前述したように裁判所での手続きを行うことも一つの方法ですが、まずは弁護士など専門家と提携している不動産会社に相談することを強くオススメします。
裁判などで地主との関係性を悪化させる前に、専門家に依頼することで穏便に解決できないか、試みると良いでしょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。