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2025/07/14使用貸借と借地権の違いとは?相続税・贈与税の取り扱いも解説!
- 底地・借地
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける

子どもが親から借りた土地に家を建てるケースは少なくありません。土地を貸し借りする方法には「使用貸借」と「借地権の設定」の2種類がありますが、違いがよくわからない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、使用貸借と借地権の違い、使用貸借と借地権で土地を貸した場合における税務上の取り扱いについて解説します。土地を使用貸借と借地権のどちらで貸したらよいのかで迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
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Contents
土地の「使用貸借」「借地権」とは?

これから子どもや親族などに土地を貸す予定があるのなら、まずは使用貸借と借地権とはどのような契約形態なのかを把握しておくことが大切です。ここでは、使用貸借と借地権それぞれの基本的な定義について解説します。
使用貸借とは無償で土地を貸す行為
使用貸借とは、物を第三者に無償で貸す、あるいは第三者から借りる契約のことです(民法第593条)。不動産の場合は、親が所有している土地を子に無償で貸し、子がその土地に家を建てるなどのケースが該当します。
また、土地を借りている方が貸主に支払っている地代が土地の固定資産税額に相当するほど安い場合も、使用貸借と見なされることがある点を押さえておきましょう。
使用貸借の特徴は、貸主と借主の信頼関係によって成り立っている点にあります。そのため、土地の使用貸借においてはきちんとした契約書は作成せず、口頭のみで契約を交わすケースが少なくありません(民法第522条第2項)。
参考:『民法第593条|e-Gov法令検索』
参考:『民法第522条第2項|e-Gov法令検索』
借地権とは有償で土地を貸す行為
借地権とは、土地の所有者が有償で第三者に土地を貸す行為を指します。借主(借地人)は地主へ地代や権利金を支払うことで、その土地に建物を建てられる権利を得られる点が特徴です。地代や権利金の相場については、次の章で解説します。
借地権の目的は、あくまでも土地に何かしらの建物を建てることにあります。そのため、「駐車場や資材置き場として活用したい」など、建物の所有を目的としていない土地の貸し借りには借地権は適用されません。
また使用貸借同様、借地権も口頭で貸し借りの約束を交わしていれば契約書がなくても契約は成立します。ただしこれは普通借地権(更新前提の契約)の場合に限られ、定期借地権(契約更新がなく期間終了時に返還されるもの)では、書面や公正証書による契約が法律で義務づけられています。
関連記事:普通借地権とは?定期借地権との違いや相続・契約更新のポイント
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使用貸借と借地権の違い

使用貸借と借地権はどちらも土地を貸し借りする際に交わす契約を指しますが、契約内容に大きな違いがあります。のちのトラブルを未然に防ぐためにも、使用貸借と借地権の違いを押さえたうえで土地を貸すようにしましょう。
地代
土地の使用貸借と借地権のもっとも大きな違いは、地代の有無です。
借地権で土地を貸す場合は、土地に課される固定資産税・都市計画税の3~5倍に相当する地代を年間で受け取ることができます。たとえば土地に課される固定資産税・都市計画税が40万円の場合、年間で受け取れる地代は120~200万円、月々に換算すると10~約16万7,000円です。
しかし使用貸借で土地を貸すと、地代を受け取ることができません。そのため、地代を固定資産税などの維持費に充てたい、収益を得たいと考えているのなら、使用貸借ではなく借地権で土地を貸したほうがよいでしょう。
関連記事:借地権の月々の地代には目安がある!?計算方法と金額設定について解説
適用される法律
使用貸借と借地権とでは、適用される法律にも違いがあります。
使用貸借に適用されるのは、民法第593条~第600条です。主な内容を挙げると、以下のとおりです。
- 貸主は原則いつでも借主から土地を返してもらえる
- 借主は貸主の承諾がない限り、借りた物を第三者に使用させることができない
- 借主は目的物の現状を維持するために必要な費用を負担する
一方で、借地権には借地借家法(もしくは旧借地法)が適用されます。借地借家法の最大の特徴は、借主の権利が強く保護されている点にあります。そのため、借地契約期間中は借主の同意がない限り、貸主は土地を返してもらえません。
なお、現行の借地借家法は平成4年8月1日に施行された法律です。それ以前に交わしている借地契約には、旧借地法が適用されます。
参考:『民法第六節 使用貸借|e-Gov法令検索』
参考:『借地借家法|e-Gov法令検索』
関連記事:借地借家法と民法の違いとは?借賃増減請求権についても解説!
契約期間
使用貸借と借地権では土地を貸す契約期間が異なる点も、押さえておきたいポイントのひとつです。
使用貸借の場合、土地の賃貸借期間に関する法律の定めはありません。そのため、当事者間で自由に決められる点が特徴です。
一方で、借地権の場合は通常の契約形態である普通借地権で30年以上、契約期間の満了をもって契約が終了する定期借地権で50年以上と借地借家法で定められています。当事者間の合意があれば、これ以上長い契約期間を設定することも可能です。ただし、規定より短い契約期間を設定することはできません。
第三者に貸した土地を将来的に自分で活用する予定があるのなら、使用貸借か定期借地権で貸すことをおすすめします。
関連記事:借地権の更新までの年数は?契約ごとの期間の違いと更新・解約について
契約解除の要件
使用貸借で土地を貸すときに契約期間を定めていなかった場合、原則として貸主はいつでも借主に契約の解除を請求できます。また、事前に契約期間を定めていたときにも、期間の満了をもって契約は終了します。借主側からでも、いつでも契約を解除することが可能です。
それに対して借地権は借地人の権利が強く保護されているため、基本的に貸主から契約の解除を求めることはできません。契約形態が普通借地権の場合は、30年の契約期間が終わっても借主が望む限り自動で契約が更新されます。更新期間は最初の更新が20年、2回目以降の更新は10年です。
また借主も、契約書に中途解約の特約が記載されていない限り契約期間の途中で解約することは認められていません。
関連記事:借地契約を解除できる条件とは?底地人と借地人の信頼関係が鍵
対抗要件の有無
土地を借りている権利を第三者に主張するための法律上の要件も、使用貸借と借地権とで違いを見いだせます。
基本的に、使用貸借契約では第三者に対して土地を借りている権利を主張できません。そのため、貸主が土地を売却して所有者が変わったときには、新しい所有者に対して契約の正当性を主張できずに立ち退かなければならなくなる可能性があります。
それに対して、借地権では借地上の建物や借地権を登記することにより土地を借りている権利を第三者に主張できます。したがって、たとえ土地を借りている途中で所有者が代わっても、借地権を主張できて引き続き土地を借りることが可能です。
関連記事:借地権の登記は必要?種類・タイミング・手続きを詳しく解説
相続の取り扱い
土地の所有者、あるいは借主が亡くなって相続が発生したときの対応方法も、使用貸借と借地権とでは異なります。
使用貸借で土地を借りている方が亡くなった場合はその時点で契約の効力がなくなるため、原則として土地を貸主に返さなければなりません。ただし、亡くなった借主の家族が引き続き借りている土地上の建物に住む必要性があるなどのケースでは、使用貸借契約が継続されることがあります。貸主が亡くなった場合は、その相続人と借主との間で引き続き使用貸借契約が継続されます。
一方で、借地権は相続財産の対象となるため、借主が亡くなったら配偶者や子どもなどの相続人が新たな借主となって契約が継続される点がポイントです。
関連記事:借地権の相続|売却する方法や費用、相続放棄についても解説
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使用貸借と借地権の相続税評価額計算方法の違い

使用貸借、あるいは借地権を設定している土地を相続したときには、相続税を納める必要があります。しかし、使用貸借と借地権では土地の相続税評価額が大きく異なる点に注意が必要です。
ここでは、使用貸借と借地権の土地の相続税評価額の計算方法をそれぞれ解説します。
使用貸借の場合
使用貸借で貸している土地は借地権とは異なり、借主の権利は弱い点が特徴です。そのため、貸主にだけ使用する権利がある「自用地」としての評価額がそのまま相続税評価額となります。
使用貸借で貸している土地の相続税評価額は、以下の計算方法で求めます。
相続税評価額=1㎡あたりの路線価×土地の面積
路線価とは道路に面した標準的な宅地1㎡あたりの価格のことで、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で確認できます。
たとえば使用貸借で貸している土地の面積が100㎡、路線価が1㎡10万円の場合の相続税評価額は以下のとおりです。
相続税評価額=10万円×100㎡=1,000万円
借地権の場合
借地権が設定されている土地を利用できるのは借地人のみであり、貸主は家を建てるなどの行為はできません。そのため、貸主が自由に利用できる自用地と比べると相続税評価額が下がる点が特徴です。
借地権が設定されている土地の相続税評価額は、以下の計算式で求めます。
相続税評価額=自用地としての評価額×(1-借地権割合)
借地権割合とは、土地全体のうち借地人が持つ権利の割合を示す数値です。国税庁により、エリア別に30~90%(10%刻み)の範囲で定められています。
たとえば、自用地としての評価額が1,000万円、借地権割合が60%と仮定すると、相続税評価額は使用貸借と比較して以下の金額にまで下がります。
相続税評価額=1,000万円×(1-60%)=400万円
つまり、使用貸借よりも借地権のほうが相続税対策につながることがわかります。
関連記事:土地相続税がいくらかかる?評価額と節税法を具体的に紹介
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使用貸借と借地権の贈与税の取り扱い

親子や親族間で土地の貸し借りを行うにあたり、贈与税がかかるのではないかと心配な方もいるのではないでしょうか。土地の契約形態が使用貸借と借地権とでは、贈与税の計算方法が異なる点にも注意しましょう。
ここでは、使用貸借と借地権における贈与税の取り扱いの違いについて解説します。
使用貸借の場合
結論からお伝えすると、親子間で土地を使用貸借するときには贈与税は発生しません。なぜなら、親が所有する土地を子どもが利用する権利の経済的価値は0円と国税庁によって評価されているためです。
家を建てることを目的とする土地の使用貸借は、夫婦や親子などの親族間で行われるケースが一般的です。この場合、土地の貸主と借主の間に利害関係は存在しないことから、通常地代や権利金の支払いはありません。また前述のように、使用貸借は借主の死亡によって終了するなど、借地権と比較するときわめて弱い権利といえます。そのため、土地を使用貸借により無償で使用する方が得られる経済的利益はないと判断され、贈与税も課されないのです。
借地権の場合
土地に借地権を設定する際には、借主から貸主に対して権利金が支払われるケースが一般的です。権利金の相場は更地価格の30~70%ほどといわれており、数千万円以上にのぼることが珍しくありません。
しかし土地を借りる際に権利金の授受がなく、地代の支払いだけがある場合は権利金に相当する金額を贈与されたと見なされ、贈与税が課される恐れがある点に注意が必要です。
そのため、借地権で土地を借りる際に贈与税の課税を避けたいのなら、たとえ親子間であっても相場に近い金額の権利金と地代を支払う借地契約を結ぶことがポイントです。
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まとめ

使用貸借と借地権には、地代の有無に加えて、適用される法律、契約期間、契約解除の要件など、さまざまな違いがあります。土地を貸す際のトラブルを未然に防ぐためには、両者の相違点を正しく理解したうえで、自身の目的に合った契約形態を選ぶことが重要です。
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