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2023/10/27最終更新⽇時
2025/06/12借地権の解約はできる?中途解約が可能な条件・手続き・費用をわかりやすく解説
- 底地・借地

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借地契約の途中で解約したいと考える方は少なくありません。契約期間中は原則として解約できないとされていますが、条件によっては中途解約が認められる場合もあります。
本記事では、借地契約を中途で終了させるための要件や手続き、必要な費用を整理しながら、借地権の売却や買取といった代替手段も紹介します。解約を検討する際に押さえておくべき実務的なポイントをわかりやすく解説します。
借地契約の途中解約はできる?|基本ルールと例外を知る

借地契約は原則として契約期間中の一方的な解約が認められていません。 しかし、契約の内容や状況によっては例外的に中途解約が可能となる場合もあります。
まずは、どのようなケースで解約が認められるのか、基本的な考え方を確認しておくことが大切です。
当事者間の合意による中途解約の条件
借地契約は、借主と地主の合意があれば契約期間中でも解約することが可能です。これを「合意解除」と呼び、双方の納得が前提となるため、法的にも有効な手段とされています。
ただし、契約締結の初期段階で合意解除の取り決めがされている場合には注意が必要です。借主が十分な法的保護を受ける前の合意は、無効と判断される可能性があります。一方、契約更新時や使用継続中の合意であれば、事情や目的に合理性が認められることで、成立しやすくなります。
合意による解約を進める際は、口頭だけでなく「解約合意書」を作成し、解約日や土地返還の条件、費用負担などを明記しておくことが重要です。後のトラブルを防ぐうえでも、書面による記録が不可欠です。
解約権留保特約による解約の有効性
借地契約の中には、あらかじめ「特定の事由が発生した場合は契約を解約できる」と定めた特約が含まれていることがあります。これを「解約権留保特約」といい、契約上の条項に従って中途解約が認められる可能性があります。
この特約が有効とされるためには、記載された条件が客観的かつ合理的であることが求められます。地主の一方的な判断により自由に解約できるような内容であれば、借地借家法により無効とされる可能性が高くなります。
たとえば、鉄道高架下など立地に制約のある土地で設定された特約については、判例上、有効と判断された例もあります。解約権留保特約に基づいて手続きを進める際には、契約書の記載内容を確認したうえで、地主に対して書面で通知する必要があります。
建物滅失や使用不能による解約
借地上の建物が火災や老朽化などによって滅失した場合、契約を継続する実益がなくなることがあります。こうした場合には、地主と協議のうえ合意が得られれば、中途解約が可能です。
まずは、借主が地主に対して解約の意思を明確に伝え、土地返還の時期や条件を相談します。必要に応じて「解約合意書」を作成し、双方の合意内容を明確にすることが望まれます。
建物を取り壊した場合は、建物滅失登記を行う義務があります。これは法務局に届け出る手続きで、原則として解体から1か月以内に行う必要があります。怠った場合には、罰金や固定資産税の課税リスクが発生するため注意が必要です。
借地権の種類によって解約条件が異なる
借地権には「普通借地権」「定期借地権」「事業用定期借地権」などの種類があり、それぞれに解約の可否や条件が異なります。
最も一般的な普通借地権では、契約期間中の中途解約は原則として認められていません。ただし、契約期間が満了した後は借主からの解約が可能となります。
定期借地権の場合は、契約書にあらかじめ解約不可である旨が明記されていることが多く、期間中の解約は非常に難しいとされています。事業用定期借地権では、10年以上50年未満の期間で契約されることが多く、こちらも特約がなければ原則として途中解約は認められません。
関連記事:借地権とは?普通借地権と定期借地権の違いから相続・売却のポイントまで
借地契約を途中で手放すための方法

借地契約を中途で解約することが難しい場合でも、契約自体を放棄するのではなく、借地権そのものを第三者や地主に「譲渡」や「売却」するという選択肢があります。これにより、借主は契約を途中で終わらせる形に近い状態で借地から離れることが可能になります。
ここでは、地主への売却と第三者への譲渡という2つの代表的な手放し方について、それぞれの流れと注意点を解説します。
地主への売却とその流れ
もっとも一般的でスムーズな方法が、借地権を地主に買い取ってもらうという手段です。 地主にとっても、借地権を回収することで土地を自由に使えるようになるため、条件次第では交渉が成立しやすい傾向があります。
まずは借地権の査定を行い、地主に対して売却の意思を伝えます。その際には、建物の解体費用や解約承諾料の負担についても合わせて話し合う必要があります。解体を前提とした売却であれば、建物を更地にして返還する義務が生じることが一般的です。
交渉がまとまれば、売買契約書を作成し、名義変更や登記の手続きへと進みます。合意内容を明文化しておくことで、将来的なトラブルを防ぐことにもつながります。
関連記事:借地権の買取をスムーズに!相場・手続き・地主の承諾対策を解説
第三者への譲渡とその注意点
借地権は第三者に譲渡することが可能ですが、原則として地主の承諾が必要になります。承諾を得る際に「譲渡承諾料」と呼ばれる金銭を求められることがあり、これは法的義務ではなく、慣習に基づく支払いです。一般的には借地権価格の一定割合(例:10%前後)が目安とされますが、地域性や契約内容、地主との関係によって金額は変動します。
譲渡を検討する際は、まず不動産会社や借地権の専門業者に相談し、買主候補の選定や価格査定を行います。その後、地主の承諾を得たうえで売買契約を締結します。地主の承諾を得ずに手続きを進めると、契約違反とされて無効になるおそれがあるため注意が必要です。
また、契約書に「譲渡制限条項」が設けられていることもあるため、譲渡を計画する段階で契約内容を十分に確認し、専門家のアドバイスを受けながら対応することが望まれます。
借地契約解約に関する費用・税金・手続きの全体像

借地契約を解約または譲渡・売却する際には、契約そのものの処理だけでなく、費用や税金、登記といった各種手続きが発生します。 特に中途解約の場合は、地主との交渉や建物の処分なども含めて多岐にわたる準備が必要です。
ここでは、借地契約解約時にかかる代表的な費用や税金、そして関連する登記手続きについて解説します。
解約承諾料・建物解体などの相場と費用感
借地契約を契約期間中に中途解約する場合、地主の承諾が必要となるケースがあります。その際に発生するのが「解約承諾料」であり、これは法律上定められた費用ではなく、借主の事情による契約終了に対して地主が受ける不利益を補う目的で支払われる金銭です。
金額に明確な相場はありませんが、実務上は「地代の1年分相当」や「借地権価格の一部に相当する額」が目安とされることがあります。解約の理由や交渉状況によって金額は大きく変動するため、早い段階で見積もりを取り、地主との協議を進めることが重要です。
さらに、契約上「更地で返還すること」が条件となっている場合には、建物の解体費用も発生します。建物の構造ごとのおおよその相場は以下の通りです。
- 木造:1坪あたり約3万〜4万円
- 鉄骨造:1坪あたり約4万〜6万円
- RC造(鉄筋コンクリート):1坪あたり約5万〜8万円
敷地内にカーポートやブロック塀などの外構がある場合は、それらの撤去費用も追加されることがあります。
登記抹消手続きの方法と流れ
借地契約を終了した後は、借地権設定登記の抹消手続きが必要になります。この手続きを行わないと、法務局の登記簿上は契約が継続している扱いになり、土地の売却などに支障が出るおそれがあります。
登記抹消には以下の書類が必要です。
- 登記申請書
- 借主・地主双方の印鑑証明書
- 登記原因証明情報(合意解約書など)
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 委任状(代理人を使う場合)
申請は、法務局の窓口、郵送、またはオンライン申請に対応しています。登録免許税として、不動産1件あたり1,000円がかかります。手続きに不安がある場合は、司法書士に依頼するのが一般的です。
税金(譲渡所得税・補償金等)の考え方
借地権を解約または譲渡・売却した際には、譲渡所得税が発生する可能性があります。 この税金は、以下の計算式で算出されます。
譲渡所得 = 売却代金(収入)-(取得費+譲渡費用)
譲渡費用として認められるものには、仲介手数料、登記費用、解体費用、違約金などがあります。一方で、固定資産税や修繕費などは対象外となります。
また、保有期間が5年を超えている場合は「長期譲渡所得」として扱われ、税率が軽減されます。自宅として使用していた場合には、3,000万円の特別控除が適用されることもあります。
税務上の扱いは複雑なため、具体的な金額が発生する場合は税理士に相談するのが確実です。
関連記事:不動産売却時の確定申告は必要?不要な場合や控除を徹底解説
まとめ

借地契約の途中解約は、法律上の制約が多く、地主との合意や契約内容によって大きく左右されます。建物の滅失や契約書の特約内容、借地権の種類など、個別の事情に応じた判断が求められます。
また、中途解約が難しい場合でも、借地権の売却や譲渡といった方法によって契約から離れることが可能です。ただし、これらの手続きには解約承諾料、解体費用、登記の抹消、税金など、金銭的・実務的な負担も伴います。
専門家のサポートを受けることで、煩雑な手続きを円滑に進めることができ、トラブルの予防にもつながります。
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