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投稿⽇時

2025/05/21

最終更新⽇時

2025/05/21

借地権の更新までの年数は?契約ごとの期間の違いと更新・解約について

  • 底地・借地

建物を所有する目的で土地を貸し借りする借地権は、地主と借地人(借地権者)の間で結ばれる借地契約に基づいています。

この権利関係において、将来の土地利用に大きな影響を与える重要な要素の一つが「存続期間」です。

借地権の種類や契約時期によって更新までの年数や条件は大きく異なり、更新時や契約終了時のルールが変わるため、自分の借地権がどのタイプに該当するかの把握が欠かせません。

本記事では、借地権の種類ごとの存続期間の違いや更新・解約に関する具体的な条件について解説します。

借地権の契約年数が変わる4つの要素

水色の背景に描かれた吹き出しと「POINT」の文字を指さす手

借地権の契約年数は、契約内容によって複雑に分かれており、まとめて理解しようとすると混乱しかねません。まずは、借地契約の契約年数がどのような要素によって変わってくるのかを、簡単に確認しておきましょう。

1.旧法借地権(旧借地法)か新法借地権(借地借家法)か

借地契約の規定の基となる法律は、借地契約を設定した時期によって異なります。

1992(平成4年)7月31日より前に結ばれた契約には旧借地法が、それ以降に結ばれた契約には現行の借地借家法が適用されます。契約期間の最低年数や更新時の期間だけでなく、借地権者の権利の強さにも違いがあるため、非常に重要な要素といえるでしょう。

関連記事 : 借地権の旧法・新法って結局何?底地人の権利が弱かった理由とは

2.普通借地権か定期借地権か

現行の借地借家法に基づく借地権には、大きく分けて「普通借地権」と「定期借地権」の2種類があります。

定期借地権のなかでも種類があり、普通借地権も含めてそれぞれ契約期間が異なりますが普通借地権と定期借地権では契約更新の有無に最も大きな違いを持ちます。

関連記事 : 定期借地権と普通借地権は何が違う?それぞれの契約内容やメリット・デメリットを徹底解説!

3.以前に更新を行っているか

借地権契約のなかには、同じ種類であっても条件や更新のタイミングによって契約年数が変わるものがあります。

特に普通借地権では、初回契約、1回目の更新、2回目以降の更新でそれぞれ契約年数が異なるため、契約年数を把握するには契約の種類だけでなく、これまでの更新状況も確認する必要があるでしょう。

4.期間の定めがあるかないか

旧法借地権や現行の普通借地権では、契約年数は「期間の定めがある場合」と「期間の定めがない場合」とで異なる取り扱いがなされています。また、「期間を定めた借地契約であっても、年数が規定に満たず無効になった」場合には、別の年数が定められることもあります。

そのため、同じ種類の借地契約でも契約年数が同じとは限りません。

旧法借地権(旧借地法)の契約年数

先に、1992(平成4年)7月31日より前に結ばれた借地契約に適用される「旧借地法」に基づく「旧法借地権」の契約年数について見てみましょう。

旧借地権の契約年数は建物の構造によって異なり、契約で建物の種類を定めなかった場合には非堅固建物であるとみなします。

建物の種類 契約で期間の定めがある場合
堅固建物(石造、土造、煉瓦造、コンクリート造、ブロック造など) 30年以上(30年未満の定めは無効で60年となる)
非堅固建物(木造など) 20年以上(20年未満の定めは無効で30年となる)

またそれぞれ、契約で期間の定めがない場合の契約年数は堅固建物が60年、非堅固建物は30年です。借地契約では合意がなくとも借地上の建物を借地権者が使用している場合には契約が更新されたとして扱われる「法定更新」の規定があるため、その場合などが「期間の定めがない場合」にあたります。

新法借地権(借地借家法)の契約年数

屋外に置かれた家の形の積み木と、上部に描かれた年数の目盛りが付いた横向き矢印

今度は、1992(平成4年)8月1日以降に締結された現行の借地借家法に基づく新法借地権の契約年数について見てみましょう。

新法借地権では、借地契約の種類がいくつかに分かれるため、普通借地権と定期借地権についてそれぞれ分けて解説します。

普通借地権の契約年数

普通借地権の契約年数は更新回数によって変わります。旧借地権と異なり、建物の構造による契約年数の違いはありません。

契約段階 契約年数
初回契約 30年以上
1回目の更新 20年以上
2回目以降の更新 10年以上

また、期間の定めがない場合は30年となり、法定期間より短い契約年数を定めた場合には無効として、それぞれの法定期間が適用されます。

普通借地権・旧借地権ともに、「○年以上」と定められているように、当事者間で合意があれば法定期間よりも長い契約期間を設定することも可能です。そのため、契約年数はあくまで目安であり、それ以上の契約年数が設定されている可能性もある点には留意しておきましょう。

定期借地権の契約年数

定期借地権は、「一般定期借地権」「事業用定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」の3種類に分かれており、それぞれの契約年数は以下の通りです。

種類 説明 契約年数
一般定期借地権 用途制限なし住宅・事業どちらでも利用可能 50年以上
事業用定期借地権 事業用途のみ(居住用不可)コンビニ、店舗、工場など 10年以上50年未満
建物譲渡特約付借地権 契約満了時に地主が建物を買い取る特約付き 30年以上

また、定期借地権は「定期」とあるように、更新がない点が契約の大きな特徴です。ただし、旧借地権や普通借地権と同様に、当事者同士の合意があれば法定年数を超える契約を結ぶことも可能です。

ただし、いずれの定期借地権でも契約期間を明確に定める必要があるため、「期間に定めのない契約」が存在しない点は、普通借地権と大きく異なる特徴といえるでしょう。

契約年数経過後の借地権の更新方法

机に置かれた「更新」と書かれた積み木、電卓、スマートフォン、ペン、ノート

自分が保有する、あるいは保有を考えている借地権契約の契約年数を踏まえて、契約終了後に更新したいと考えている方もいるでしょう。借地権の更新は借地権者の権利を保護する重要な手続きであり、法律によってさまざまな更新方法が認められています。

ここでは、借地権契約の更新方法について解説します。

普通借地権の更新

普通借地権の更新には、「合意更新」「法定更新」「更新請求による更新」の3つの方法があります。

「合意更新」は、地主と借地権者が双方合意して進める最も一般的な方法であり、更新料や更新後の地代について協議の上で決定します。

「法定更新」は、更新手続きを忘れていたり合意に至らなかったりした場合でも、借地上に建物があり、借地権者が土地の使用を継続している場合には「更新の意思がある」とみなされ、自動的に契約が更新される仕組みです。この場合、法定更新された契約は従前の契約と同一の条件で継続されます。

「更新請求による更新」は、借地権者から地主に対して更新を請求する方法であり、借地上に建物が存在し、地主に正当な事由がなければ、地主は更新を拒否できません。契約は従前と同じ条件で更新されます。

いずれの更新方法においても、借地借家法によって借地権者の権利が保護されている点が特徴です。

定期借地権の更新

定期借地権は、その名の通り契約期間満了後に確定的に終了し、原則として更新はできません。

ただし、「存続期間満了において、当事者の合意の上で一定期間の延長をすることができる」などの条項をあらかじめ契約に盛り込むことは可能です。この場合は更新ではなく「延長」として扱われ、法定期間の範囲内であれば期間の変更が認められています。

また、契約期間満了後に、全く新しい借地契約として再契約するという選択肢もあります。しかし、地主が契約終了後に土地を売却したり、自己使用を前提として定期借地権を設定しているケースもあるため、交渉がスムーズにまとまるとは限りません。

関連記事 : 定期借地権は更新できない?再契約の方法と注意点を解説

契約年数経過後の借地権の終了方法

「契約満了」と書かれた方眼ノートとマーカー

借地契約の維持には地代や更新料の支払い、管理費用などのコストがかかります。そのため借地契約を保有、あるいは相続予定の方のなかには利用予定がないなどの理由から借地契約を更新せずに終了させたい方もいるでしょう。

次に、借地契約の終了と解約について解説します。

普通借地権の解約

普通借地権の解約には、以下のようにいくつかのパターンがあります。

解約の種類 条件 予告期間
合意解約 地主と借地権者双方の合意
中途解約(特約あり) 契約書に中途解約特約がある場合 特約で定められた期間(未定の場合は1年以上)
建物滅失後の解約(新法のみ) 契約更新後に建物が滅失した場合 3か月以上(初回契約時は不可、更新後の場合のみ解約申入れ可能)
期間の定めのない借地契約の解約 借地権者からの申入れ 1年以上(予告期間は当事者の合意で短縮可能)

基本的に、特約がない場合は、地主だけでなく借地権者からも契約期間中に一方的に借地契約を解約することはできません。その際は、承諾料の支払いなどを通じて、合意解約の交渉を行う必要があります。

また、たとえ特約があったとしても、借地権者保護の観点から、地主側からの中途解約はできないとされています。地主が借地契約を終了させるには、「正当事由」と「更新拒絶の通知」により、「契約更新をしない」という形をとる必要があります。

定期借地権の解約

定期借地権は、契約期間満了時に確定的に終了することが特徴であり、原則として中途解約はできません。

ただし、自然災害による建物滅失や、事業用定期借地権における経営不振などの場合には、契約時に特約を設けておけば、中途解約が認められることもあります。この場合、解約時期・違約金・建物の取り扱いなど、解約条件をあらかじめ明確に定めておく必要があります。

また、地主と借地権者の双方が合意すれば、「合意解約」として契約期間中でも解約が可能です。さらに、契約時に中途解約の特約を設けておくことで、借地権者からの解約が認められますが、地主側からの中途解約特約は、借地権者保護の観点から無効とされています。

借地権物件の投資・売買における残存年数の重要性

借地権物件の投資や売買において、残存年数は物件価値を大きく左右する重要な要素です。

一般的に、借地権の残存年数が長いほど物件価値は高くなり、短くなるほど価値は低下する傾向にあります。特に定期借地権物件では、契約期間満了後に土地を返還する必要があるため、残存期間が短くなるにつれて投資回収が難しくなり、融資条件が厳しくなる傾向があります。その結果、売却もしにくくなるケースが多く見られます。

従って、借地権物件の売却を検討している場合には、残存期間と物件価値の変動、市場動向を見極めながら、最適な売却時期を計画的に判断する必要があるでしょう。

借地権の契約年数に関するQ&A

並べられた家の模型と「F」「A」「Q」のブロック

借地権に関する契約期間や更新条件は複雑なため、ケースによって疑問に思う点が出てくるのではないでしょうか。

そこで最後に、借地権の契約年数に関する疑問についていくつか解説します。

Q1:借地権の年数が10年未満の契約は可能?

借地権の契約期間を法定の最低期間より短く設定することはできません。普通借地権の場合、10年未満どころか30年未満の契約期間を設定しても無効となり、自動的に30年間の契約期間として扱われます。事業用定期借地権でも、最低10年以上の契約期間が必要です。

Q2:借地権更新時の更新料や地代の値上げ要求は正当?

地代や更新料の値上げは、現在の設定金額が不相当になった場合に認められます。借地期間は数十年と長期にわたるため、経済状況の変化により不相当になることは十分に考えられ、必ずしも不当とは限りません。

ただし、正当かどうかの判断は難しいため、交渉が難航しそうな場合は専門家に相談することをおすすめします。

Q3:相続した借地権の契約年数はどうなる?

相続した借地権は、元の契約内容がそのまま引き継がれます。契約期間や地代などの条件は変更されず、被相続人が結んでいた契約をそのまま承継することになります。

相続人は地主に相続の事実を通知する必要がありますが、原則として契約内容を変更する必要はありません。

Q4:借地契約書がない場合はどうしたらいい?

借地契約書がなくても、「借地上に建物がある」「地代を支払っている」という2つの事実があれば、借地契約は有効に成立していると法律上認められています。

まずは地主に契約内容を確認し、双方とも契約書を持っていない場合は、将来のトラブル防止のために現在の契約内容(地代や契約期間など)を書面にまとめて双方で保管しておくとよいでしょう。

Q5:契約書がなくても借地権の売却は可能?

契約書がなくても、地代を支払っている事実を証明できる書類(振込記録や領収書など)と、借地上の建物の名義の登記があれば、借地権は売却可能です。

ただし、借地権の種類が地上権の場合は地主の承諾なしでも売却できますが、賃借権の場合は地主の承諾が必要となります。また、いずれの場合も契約書がないことで買主側が不安に感じる可能性があるため、売却前に地主との間で現在の契約内容を確認し、可能であれば書面化しておきましょう。

まとめ

登記済権利証と印鑑、朱肉、ペン

借地権の契約年数は種類や条件によって複雑に変わるため、まず自分の契約がどのような状況にあるのか正確に把握することが重要です。更新や解約の方法も借地権の種類によって異なり、適切な手続きを踏まなければトラブルの原因となることもあります。

借地権に関するお悩みは専門的な知識が必要なケースが多いため、「おうちの相談室」では経験豊富な専門家が皆様の個別の状況に合わせたアドバイスを提供しています。借地権の更新時期が近づいている方や売却をお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。