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2025/11/25借地権の登記は「建物登記」が重要!必要性や手続き、費用を網羅
- 底地・借地

土地を借りて家を建てている方や、これから借地上に建物を建てる予定の方にとって、借地権の登記は義務ではないものの、権利を守るうえで重要な役割を果たします。
また、特定の法的手続きでは登記が前提となるケースもあるため、借地権者はその仕組みを理解しておくことが大切です。
本記事では、借地権登記の必要性や種類、登記のタイミング、具体的な手続き方法について詳しく解説します。
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- 借地権の対抗力確保には登記が重要だが、地主の承諾が必要な賃借権では建物の登記で代用できる
- 借地権者は建物の表示登記や所有権登記を自己名義で行うことで、借地権を第三者に対抗できる
- 建物の登記には申請義務があり、怠ると罰則や再建築不可などのデメリットが生じるため注意が必要だ
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
借地権の登記はできる?

借地権にもいくつか種類があり、権利が持つ意味合いも異なります。まずは借地権の概要を理解した上で、登記ができるかどうかについて見てみましょう。
借地権とは
「所有権」が土地を完全に自分のものとして所有し自由に利用・処分できる権利であるのに対し、「借地権」とは建物を所有する目的で他人の土地を借りられる権利です。
借地権は、さらに「地上権」と「賃借権」の2つに分かれます。
「地上権」は他人の土地を利用し、建物の建設や道路・トンネルなどの工作物の建造、植樹を行う権利です。物を直接支配できる「物権」の一つであり、土地に対して強い支配権を持ちます。
地上権を登記しておくと、底地権(地主が持つ、「借地権が設定されている土地」の権利)の譲渡や相続などにより地主が変わっても、自由にその土地を使い続けられます。また、登記がある場合には、地主の承諾がなくても地上権を第三者に売買・賃貸できます。
一方、「賃借権」は地主に賃料を払うことで、土地や工作物を利用できる権利です。賃借権は特定の人に対して一定の行為を請求できる「債権」に分類され、物権としての支配権はありませんが、契約に基づき土地を使用することができます。そのため、地上権と比較して権利は弱く、売却や転貸には地主の承諾が必要になります。
ほとんどの借地権は賃借権ですが、用途や契約形態によっては地上権が設定される場合もあります。
借地権の登記は可能だが義務はない
権利の性質と強さが異なる地上権と賃借権では、登記の取り扱いも違います。
所有権と同じ「物権」である地上権は、登記によって第三者に対抗でき、地上権者のみで登記が可能です。地主の協力を必要としないため、確実な権利保全ができます。
一方、賃借権は「債権」に分類されるため、登記による対抗力は本来ありません。しかし、借地上に住む借地権者を保護する目的で、民法605条に基づき例外的に登記が認められています。
ただし、賃借権の登記には地主の承諾が必要であり、地主に協力義務はありません。そのため、登記を希望する場合は、事前に地主と協議することが重要です。
(参考: 『e-GOV法令検索 民法第605条』)
不動産ビギナーさん地主さんにメリットがないのに、賃借権の登記に協力してもらうのは難しいですね。
山口智暉賃借権の登記は地主に協力義務がないため、現実的には困難です。費用を地主が負担する提案も選択肢です。
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借地権に関する登記の種類とタイミング

借地権に関連する登記は土地に関するものと建物に関するものに分かれ、登記のタイミングも異なります。次に、借地権に関係する登記の種類とそれぞれどのようなタイミングで登記を行うのかについて解説します。
借地権の設定登記(契約時)
地上権・賃借権ともに、借地契約を締結した際に行う登記であり、登記簿の権利部(乙区)に記載されます。いずれも登記は必須ではありませんが、第三者に対して権利を主張できる対抗力を持たせるために行うことが望ましいでしょう。
また、更新のない定期借地権の場合には、定期借地権であることを証明するために、地主が設定登記を行うケースもあります。
借地権の移転登記(譲渡時)
既存の借地権を売買や相続で取得した際、借地権に登記がなされていれば、移転登記が必要となります。
相続によって借地権を取得した場合には「相続登記」と呼ばれますが、これも移転登記の一種です。2024年4月から相続登記が義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があるため注意が必要です。
借地権の抹消登記(契約解消時)
賃借権は、以下のような理由で消滅することがあります。
- 存続期間の満了
- 混同(地主と借地権者が同一となる状態)
- 消滅時効(地代の長期滞納などによる時効の完成)
- 合意解除
- 放棄
これらの理由により借地権が消滅した場合、登記がなされていれば抹消登記を行う必要があります。
不動産ビギナーさん建物を取り壊したときも、1か月以内に登記が必要なのは知っておきたいです。
山口智暉滅失登記を怠ると固定資産税が課税され続けることがあります。罰則もあり、解体したら速やかに手続きしましょう。
借地上の建物の表示登記(新築時)
借地上に建物を建てた際に行う登記であり、完成から1か月以内に申請する義務があります。登記簿は、以下の3つの部分で構成されています。
- 表題部:不動産の表示(所在・種類・構造・面積・所有者情報)を記載
- 甲区:不動産の所有権に関する事項を記載
- 乙区:不動産の権利関係を記載
表題部を開設する表示登記(表題登記)は、不動産の情報を記録する基礎となるものであり、甲区・乙区の登記を行うためには原則として表示登記が必要です。
借地上の建物の所有権保存登記(新築時)
借地上に建物を建てた際に、表示登記と合わせて行うのが所有権保存登記です。
前述の通り、表示登記を行わなければ、登記簿の甲区にあたる所有権の登記はできません。そのため、所有権保存登記は表示登記の後に行う必要があります。ただし、表示登記とは異なり、保存登記に登記の義務はありません。
借地上の建物の所有権移転登記(譲渡時)
売買などにより、借地上の建物を含めて借地権を取得した場合、所有権を売主から買主へ変更するための登記が必要です。
所有権移転登記を行わないと、借地権者が地主による土地の売却時に借地権を主張できなくなるリスクがあります。また、固定資産税が前所有者に課税され続けることでトラブルが発生する可能性もあるため、速やかに登記を行うことが望ましいでしょう。
借地上の建物の滅失登記(解体時)
借地上の建物は建築時だけでなく、解体などで取り壊した際にも登記が必要です。この登記が「滅失登記」であり、建築時と同様に、1か月以内に申請する義務があり、罰則も定められています。
滅失登記を怠ると、罰則(過料)が科されるだけでなく、「再建築ができない」「固定資産税が課税され続ける」などのデメリットが生じるため、早急に登記を行う必要があります。
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借地権の登記の必要性

借地権には、建物の表示・滅失登記のように登記義務があるものもありますが、前述の通り借地権の登記自体は必須ではありません。しかし、権利を保護するためには登記が推奨されます。次に、その理由について解説します。
借地権の登記は第三者への「対抗要件」となる
借地権の登記の必要性を理解するために、「借地権の登記をしていないとどうなるのか」を考えてみましょう。
借地権、特に賃借権は、借地権者が土地の使用を請求できる権利(債権)であり、契約相手である現在の地主に対してのみ主張できます。もし土地が売却されたり、抵当権の実行により第三者に渡ったりした場合、新しい地主から土地の明け渡しを求められる可能性があります。この場合、登記がなければ新しい地主に対して賃借権を主張できず、最悪の場合、土地を明け渡さなければならない危険性があります。
このように、「第三者に権利を主張できる」という効力を「対抗力」といい、借地権者が第三者に対抗力を得るための「対抗要件」となるのが登記です。
借地権者にとって、登記は将来的な権利保全のために重要な手続きです。
賃借権の登記には原則地主の承諾が必要になる
しかし、賃借権の登記には大きなハードルがあります。
まず、賃借権は例外的に登記が認められていますが、その条件として賃貸借契約の際に登記を行う旨の特約が必要です。つまり、地主の合意が必要であり、売却や転貸と同様に借地権者の判断だけで行うことはできません。
また、借地権者にとっては登記をすることで土地の明け渡しを拒否できるメリットがありますが、地主側にはほとんどメリットがありません。定期借地権であれば、更新のない契約であることの証明や、建物の無断譲渡に対抗できるといった利点があります。しかし、借地権の多くは普通借地権であり、登記を認めることは地主の権利を弱める要因となるため、地主が承諾するケースは少ないのが実情です。
このような事情から、賃借権の登記はあまり現実的ではないといえるでしょう。
建物の登記で借地の権利も証明できる
借地権の登記が現実的でないとすると、借地上の建物に住んでいる借地権者は、借地を明け渡さなければならないリスクを抱えたまま、不安定な状態に置かれることになります。
そこで、借地権者の権利を保護するために、借地借家法では「登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を所有するときは、これをもって第三者に対抗することができる」と定めています。
ポイントとなるのは、借地上の建物の所有者は借地権者であるため、建物の登記には地主の承諾が不要であることです。
ただし、建物の登記が借地権者の名義でなければ対抗力を持たないため、譲渡や相続で取得した場合には速やかに登記を行うことが重要です。
(参考: 『e-GOV法令検索 借地借家法第十条』)
不動産ビギナーさん借地権そのものの登記ができなくても、建物の登記で権利を守れるのですね!
山口智暉借地借家法第十条の対抗要件です。建物の登記さえあれば新しい地主から立ち退きを求められても拒否できます。
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借地権の登記の手続き方法と必要書類

最後に、借地権の登記の種類別に用意すべき書類と手続きの流れについて解説します。
借地権の登記に必要な書類
借地権に関する登記には、一般的に以下の書類が必要になります。
| 登記の種類 | 賃貸人/譲渡人の必要書類 | 賃借人/譲受人の必要書類 |
| 借地権設定登記(地上権・賃借権) | 地上権の場合:地上権設定契約書 賃借権の場合:賃貸借契約書(契約内容による) 登記原因証明情報 固定資産評価証明書 実印印鑑証明書(地上権の場合、求められることがある) |
本人確認書類 認印(賃借権の場合、契約内容に応じて) |
| 表題登記/所有権保存登記(建物) | – | 住民票・住民票の写し 検査済証 建築確認通知書 工事完了引渡証明書 建物図面・各階平面図 住宅用家屋証明書(該当する場合) |
| 所有権移転登記(建物) | 不動産売買契約書・贈与契約書 登記識別情報または権利証 固定資産税評価証明書 印鑑証明書 住宅用家屋証明書(該当する場合) |
実印 住民票の写し 印鑑証明書 |
| 相続登記(建物) | – | 被相続人の戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍(出生から死亡までわかるもの) 被相続人の住民票の除票 相続人の戸籍謄本(相続人全員分) 相続関係説明図(法定相続情報一覧図の写し) 相続人の住民票 相続人の印鑑証明書(相続人全員分) 建物の固定資産評価証明書 遺産分割協議書もしくは遺言書(単独相続の場合は不要なケースもある) 建物の登記済権利証または登記識別情報 委任状(司法書士に依頼する場合) |
| 滅失登記(建物) | – | 登記申請書 建物滅失証明書 解体業者の登記事項証明書 解体業者の資格証明書 申請者の印鑑 証明書住宅地図(自治体によって求められる場合がある) |
これらの必要書類とは別に、いずれの登記でも登記申請書が必要です。また、司法書士に依頼する場合には、委任状(または代理権限証書)を準備する必要があります。
借地権の登記に必要な手続き
借地権の登記は、以下のような流れで行われます。
- 借地権の内容(契約日、賃料、借地権者など)を記載した申請書の作成
- 契約書や本人確認資料など、地主や借地人の必要書類の準備
- 借地権の評価額に基づいた登録免許税を法務局に納付(窓口またはオンライン)
- 管轄の法務局に申請(窓口・郵送・オンラインのいずれか)
- 所有権移転登記の場合は、通常、登記権利者(買主)と登記義務者(売主)が共同で申請
- 法務局での審査
- 審査完了後、登記識別情報と登記完了証を受け取る
ただし、手続きが複雑なため、登記申請は司法書士に依頼するのが一般的です。
借地権(賃借権)の登記で登記簿に記載される事項は?
賃借権の設定登記の場合には、以下のような事項が記載されます。
- 日付(登記の日付)
- 目的(建物所有など)
- 権利者(借主)の住所・氏名
- 賃料(契約で定められた額)
- 賃料の支払時期(契約で定められた支払方法)
- 存続期間(賃貸借契約の期間)
- 特約(登記に記載されるものに限る)
また、借地上の建物を登記する場合には、以下のような内容が記載されます。
<表題部>
- 建物の所在(地番)
- 建物の種類(居宅、店舗など)
- 建物の構造(木造、鉄筋コンクリート造など)
- 建物の床面積
- 所有者の住所・氏名
<権利部(甲区)>
- 所有権に関する事項(保存・移転など)
- 所有権保存登記の日付
- 権利者の住所と氏名
<権利部(乙区)>
- 所有権以外の権利(抵当権、地上権、賃借権など)
借地権の登記にかかる費用はどのくらい?
賃借権の設定登記を行う場合、登録免許税と司法書士の報酬がかかります。必ずしも司法書士に依頼する必要はありませんが、手続きや必要書類が複雑なため、依頼することが一般的です。
登録免許税は、登記の際にかかる税金で、土地の固定資産税評価額に基づいて計算されます。
- 地上権の設定登記の場合、税率は固定資産税評価額の1%
- 賃借権の設定登記の場合、税率は0.1%
司法書士に依頼する場合の報酬は、事務所によって異なりますが、一般的な相場は3万円から10万円程度です。
また、借地上の建物の滅失登記は、表題部の登記に該当するため、土地家屋調査士に依頼することが一般的です。この場合も数万円程度の費用がかかります。
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借地権登記のまとめ

借地権、特に賃借権の登記は、地主の承諾が必要なため現実的には難しいケースが多いものの、借地上の建物を登記することで借地権を第三者に対抗できます。
土地の所有権を巡るトラブルが発生すると、弁護士などの専門家を交えた非常に複雑な問題に発展する可能性があります。そのため、借地権者の権利を守るために、適切なタイミングで登記を行うことが重要です。
登記は自分で手続きすることも可能ですが、申請内容に不備があると修正に時間や手間がかかることがあります。スムーズに手続きを完了させるため、司法書士や土地家屋調査士などの専門家や不動産業者に相談するのが望ましいでしょう。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
