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2024/01/15最終更新⽇時
2024/01/15地上権と賃借権の違いを分かりやすく解説!契約前に知っておきたいこと
- 底地・借地

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「地上権」と「賃借権」はどちらも借地権に含まれる権利で、性質や内容が異なります。そのため、「どちらを選べばよいか」「契約内容にどのような違いがあるか」と迷う方もいるのではないでしょうか。
この記事では、地上権と賃借権の違いを分かりやすく解説しつつ、借地権のメリット・デメリットを紹介します。不動産の購入や活用を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
地上権と賃借権は「借地権」の一種

借地権とは他人の土地を借りて使用する権利で、「地上権」と「賃借権」の2種類があります。どちらも土地を利用する権利ですが、それぞれの法的性質や権利の強さには違いがあるため、注意が必要です。ここでは、地上権と賃借権の特徴について解説します。
地上権とは
他人の土地を使用する権利のうち、特に強い権利を持つのが地上権です。地上権者(権利を持つ人)は、土地の所有者の許可がなくても自由に土地を使用でき、建物を建てたり工作物を設置したりできます。土地の所有者との関係に縛られず、安定した土地利用が可能な点が大きな特徴です。
関連記事 : 法定地上権/ほうていちじょうけんとは
賃借権とは
賃借権は、土地の所有者(貸主)と借主の間で結ばれる土地の使用権です。賃貸借契約の一環として成立し、借主は契約期間中にその土地を使用できます。ただし、地上権とは異なり、賃借権は所有者の許可なく譲渡や転貸はできません。契約で定められた範囲内でのみ土地を利用できます。
関連記事 : 賃借権/ちんしゃくけんとは
【比較表】地上権と賃借権の違い

地上権と賃借権はどちらも土地を借りて利用する権利ですが、権利の強さや利用条件に違いがあるため、土地を借りる際は目的に応じて適切な選択が必要です。ここでは、以下の比較表を踏まえつつ、両者の違いを分かりやすく解説します。
項目 | 地上権 | 賃借権 |
権利の性質 | 物権(所有者の意思に関係なく行使可能) | 債権(契約関係に基づく権利) |
存続期間 | 最低30年(合意により調整可能) | 契約によって異なる |
地代の支払い | 不要(契約による) | 必要(通常、定期的に支払い) |
譲渡・転貸の自由度 | 自由に譲渡・転貸が可能 | 所有者の許可が必要 |
担保設定の可否 | 可能 | 原則不可 |
登記の必要性 | 必須 | 任意(建物の登記は必要) |
権利の性質(物権と債権)
地上権は物権であり、土地を直接支配する強力な権利です。地上権者は土地所有者の許可を得ることなく、土地を自由に利用できます。また、地上権は第三者に対しても主張できます。
一方、賃借権は債権で、土地所有者との契約に基づく権利です。契約関係に依存するため、契約内容によって利用条件が異なります。契約で定められた範囲内で土地を利用でき、地上権と比べると自由度が低い権利です。
存続期間
地上権の存続期間は最短30年で、地主との合意によって30年より長く設定できます。賃借権の存続期間は、契約の種類(普通借地権、定期借地権)や旧法か新法かによって異なります。
1992年8月1日に施行された借地借家法(新法)が適用される場合、建物の所有を目的とした賃借権の存続期間は最短30年です。契約時にそれより長い期間を定めることも可能で、契約更新も認められています。地主(土地所有者)は正当な理由がない限り、契約更新を拒否できません。
1992年以前に設定された借地権には、旧借地法(旧法)が適用されます。旧法では建物の構造によって存続期間が異なり、木造(非堅固建物)は最短20年、鉄筋コンクリート造(堅固建物)は最短30年です。
地代の支払い
地上権は、必ずしも地代を支払う必要はありません。契約によっては地代を求められることもありますが、地上権者が一括で権利金を支払い、その後は地代の支払いを免除されるケースが一般的です。
一方、賃借権は土地所有者(貸主)との契約に基づく利用権のため、賃借人は定期的(毎月、毎年など)に地代を支払う義務があります。
譲渡・転貸の自由度
地上権は、地主の許可がなくても自由に譲渡や転貸が可能です。地上権者が第三者に地上権を売却したり、別の事業者に貸し出したりする場合、地主の承諾を得る必要はありません。
一方、賃借権は、第三者に譲渡・転貸する際は原則として地主の承諾が必要です。これは、賃借権が地主と借主の信頼関係に基づく契約であるためです。例えば、借主が第三者に土地を貸し出すことも地主の承諾なしではできません。
担保設定の可否
地上権は担保設定が可能で、資産としての価値を持ちます。したがって、地上権を担保にして金融機関から融資を受けることが可能です。一方、賃借権は債権に基づく権利で、原則として担保設定は認められていません。ただし、建物に抵当権を設定することは可能です。
登記の必要性
地上権は物権であり、その効力を第三者に対して主張するには登記が必須です。登記しないと地上権は第三者に対して主張できず、法的効力が弱くなるため、重要な手続きといえます。
一方、賃借権は債権に基づく権利で、登記は原則必要ありません。賃貸借契約が成立すれば、借主は賃貸人に対して権利を主張できます。
地上権が認められる主な条件とケース

地上権は、譲渡に関して地主の承諾が不要な点や地主に地代を支払う必要がない点が地主には不利とされ、あまり認められることがありません。しかし、地上権を認めないと地主にとって支障を来すケースがあります。ここでは、その具体例を2つ紹介します。
地上権が公共の役務に関連するケース(区分地上権)
区分地上権とは、土地の地下や空間の一部といった範囲において、工作物を所有するために設定された地上権です。土地の立体的な利用を規律することを目的に新設されました。地下鉄や高速道路のトンネル、送電線など、公共のスペースとして地上権を認める必要が地主に生じます。
地上権が設定された土地では、敷地内の地上・地下・上空を含む全ての空間に対して権利が発生します。一方、区分地上権は地下の一部(◯m〜◯m)といった特定の範囲に適用される点が特徴です。また、区分地上権は借地権が設定されている土地にも同時に設定が可能です。
区分地上権は、地上権における手続きが簡単という特徴もあります。賃貸借契約の場合、所有者が変更となるたびに賃貸借契約を改めて交わす必要がありますが、区分地上権はその必要がありません。一度登記すれば、売買や相続で所有者が変わっても地上権が継続されます。
地上権を認めないと建物自体の価値が下がるケース(法定地上権)
法定地上権は、抵当権の実行による競売などで土地と建物の所有者が分かれたケースにおいて発生する地上権です。
例えば、土地と建物を担保にした状態で金融機関からお金を借りて住宅を購入したものの、返済できなくなったケースが挙げられます。金融機関が担保の土地と建物を競売にかけた際に、土地が売れず建物のみが売れた場合、建物を自由に使用できなければ競り落とした意味がありません。
地主との間に地上権を設定する契約が締結されなかった場合においても、法定地上権を設定することで建物の所有者に地上権があると見なされ、自由な使用が可能になります。さらに、地代の支払いを2年以上滞納せず、かつ建物が使用できる状態を保っていた場合、法定地上権は半永久的に続きます。
その他のケース
地上権が認められるケースは他にもあります。
住宅建設 | 土地所有者が土地を持っているが、建設資金がない場合、他の人がその土地に住宅を建てる地上権が設定されることがある |
商業施設 | 商業ビルや工場を建設する際に、土地所有者とは別の事業者が地上権を取得するケースがある |
農地利用 | 農地を所有しているものの、自ら農業を行わない場合、農業を行いたい第三者に対して地上権を設定することがある |
公共事業 | 道路、鉄道、公園などの公共施設を建設する際、公共機関が私有地に対して地上権を設定することがある |
期間限定のイベント | 一時的なイベントや施設(例:フェスティバル、臨時の駐車場など)のために、短期間だけ地上権が設定されることもある |
地上権は、土地所有者に地上権料が発生し、地上権者は土地購入費用を大幅に削減できるというメリットがあります。ただし、地上権の期間が終了すると土地は元の所有者に戻り、その土地に建てられた建物や施設の扱いは契約内容に依拠します。
借地権(地上権・賃借権)のメリット

土地を所有せずに利用できる借地権(地上権・賃借権)は、土地を購入する場合と比較して、さまざまなメリットがあります。土地を有効活用するためにも、借地権のメリット・デメリットを把握しておきましょう。ここでは、借地権のメリットを5つ紹介します。
【地上権のみ】住居の譲渡や建て替えなど、土地を自由に使える
地上権は、土地を所有する場合とほぼ同様の権利を得られます。地主の承諾を得ずに建物を建てられ、その所有権の譲渡も可能です。
例えば、将来的に住み替えを検討している場合や、家族構成の変化に合わせて建物を建て替えたい場合など、ライフスタイルに合わせて柔軟に対応できます。
【地上権のみ】抵当権を設定できるため、住宅ローンを組みやすい
借地権物件は金融機関が担保評価をしづらいことから、住宅ローンを組むのは容易ではありません。一方、地上権は抵当権を設定でき、担保評価がしやすいため、住宅ローンが組みやすいのがメリットです。
自らが物件を購入するときだけでなく売却する際も、買主が住宅ローンを組みやすくなります。
初期費用を抑えられる
所有権付きの建物より借地権付きの建物のほうが購入価格は安い傾向があります。所有権付きの建物は、土地も含めて完全に所有できるため、土地の価値も価格に反映されます。
一方、借地権付きの建物は土地の所有権が土地所有者に残り、購入者が持つのは土地の使用権(借地権)のみです。このため、土地自体の価値が建物の価格に加算されない分、購入価格が抑えられます。
契約更新により長期間にわたって借りられる
借地権の契約期間は数十年にわたるため、長期間土地を利用できます。存続期間は契約の種類によって異なりますが、契約が終了しても更新契約を結ぶことで、さらに長期間の土地利用が可能です。また、普通借地権であれば、地主に正当な理由がない限り更新を拒否できません。
固定資産税の負担がない
土地を所有する場合、固定資産税や都市計画税の負担が発生します。一方、借地権を利用する場合は土地の所有者ではないため、税金の納付義務がありません。
固定資産税や都市計画税は土地を所有している間は支払いが続き、土地所有者にとって大きな負担となり得ます。借地権ではその費用がかからないため、経済的な負担を減らせます。
借地権(地上権・賃借権)のデメリット

借地権(地上権・賃借権)は土地を所有せずに利用できるため、初期費用を抑えられるといったメリットがあります。一方、いくつかのデメリットも存在する点に注意が必要です。
借地権付きの土地を利用する場合、特に土地の所有者と借地契約を結ぶことによる制約やリスクに気を付けましょう。ここでは、借地権の主なデメリットについて解説します。
地代・更新料がかかる
借地権を利用する場合、契約期間中、土地の所有者に対して地代(賃料)を定期的に支払い続けなければなりません。金額は契約時に決められますが、長期間にわたって支払うことから、トータルすると高額になることがあります。また、契約更新時には更新料が発生する場合もあります。
【賃借権のみ】融資を受けにくい
賃借権付きの物件を購入する場合、土地の所有権がないことから金融機関の評価が低く、融資を受けにくくなる点がデメリットです。多くの金融機関は土地の所有権を担保として要求しますが、賃借権は抵当権を設定できないため、住宅ローンや事業用ローンの審査が厳しくなります。
【賃借権のみ】土地の自由度が低い
賃借権を利用する場合、土地の所有者が権利を保持しているため、土地の自由度が制限される点がデメリットです。賃借権者は土地を利用する権利を持ちますが、土地の利用方法や改修、建物の建設に関して制約を受けます。
例えば、土地の所有者から事前の許可が必要だったり、契約に基づいた条件でのみ使用が許されていたりする場合があります。
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まとめ

土地を借りる際に重要な「地上権」と「賃借権」には大きな違いがあります。地上権は土地を自由に活用できる強い権利で、住宅ローンを組む際にも有利です。
一方、賃借権は土地の利用に地主の許可が必要なケースが多く、自由度が低いという特徴があります。そのため、契約前には契約内容や更新条件、利用制限をしっかり確認することが大切です。
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