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2025/05/21最終更新⽇時
2025/05/21借地権付き建物の「建て替え」は可能?5つの注意点を紹介
- 底地・借地

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借地権は、建物を所有するために地主から土地を借りて使用する権利です。自己所有の土地と違って制限があることから、建て替えが可能か気になる方もいるのではないでしょうか。地主の承諾が得られない場合や法的条件によっては、建て替えができない可能性がある点に注意が必要です。
この記事では、借地権付き建物の建て替えが可能か解説します。なお、借地権には地上権と賃借権がありますが、この記事では「借地権=賃借権」という扱いで紹介します。
借地権付き建物は「建て替え」可能?

建物を所有する人が「老朽化した建物を建て替えたい」と考えるのは自然なことです。しかし、借地権にはさまざまなルールがあり、自由に建て替えができるとは限りません。ここでは、借地権付き建物の建て替えが可能かどうか解説します。
原則として地主の許可が必要
借地権付き建物の建て替えは、基本的に地主の許可が必要です。借地契約は土地を借りて建物を建てる権利を定めたもので、建物の構造や用途の大きな変更は地主の財産に関わる重大事項と見なされるためです。まずは契約書を確認し、増改築に関する条項があるかどうか把握しましょう。
多くの契約書には、建て替え時に地主の承諾が必要と記載されています。ただし、民法上では借地人が建て替えの意思を地主に通知し、その後2か月以内に地主が異議を申し立てなければ、黙示的に承諾されたと見なされる規定があります。
とはいえ、トラブルを避けるには事前にしっかりと話し合い、書面で同意を得るのが安心です。
定期借地権の場合
定期借地権とは、期間があらかじめ決まっており、満了後には原則として契約更新ができないタイプの借地契約です。例えば、「50年の定期借地権」で契約した場合、その期間が終わったら土地は更地にして地主に返還する必要があります。
したがって、契約満了が近づいている状況で建物を建て替えても、投資の回収が困難になり、経済的なメリットはほとんどありません。
関連記事 : 定期借地権と普通借地権は何が違う?それぞれの契約内容やメリット・デメリットを徹底解説!
借地権付き建物が建て替えられないケース

借地権付きの建物は、原則として地主の許可を得れば建て替えが可能です。しかし、地主の承諾が得られても建て替えができないケースも存在します。建物自体や土地の法的条件によって制限されることがあるためです。ここでは、借地権付き建物が建て替えられないケースを2つ紹介します。
既存不適格建築物
「既存不適格建築物」とは、建築当時は法律に適合していたものの、法改正によって現在の建築基準法に適合しなくなった建物です。例えば、敷地の容積率や建ぺい率、高さ制限が厳しくなった地域では、以前は建てられた建物が現在の基準では認められないケースがあります。
このような建物を取り壊して新築する場合、現行の法律に従って設計・建築するため、同じ規模の建物を建てられないことがほとんどです。特に狭小地や市街地では建て替えによって居住スペースが大幅に減る恐れがあるため、建て替えを断念することも少なくありません。
接道義務違反物件
建築基準法では、原則として建物を建てる際に敷地が幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接している必要があり、これを「接道義務」と呼びます。しかし、古い住宅地や私道に囲まれたエリアでは、接道義務を満たしていない「接道義務違反物件」が存在します。
このような物件は、建て替えや大規模なリフォームの際に建築確認申請が下りないことがほとんどです。場合によっては、道路の拡幅や隣地の買収といった大がかりな手続きを要するため、建て替えを諦めざるを得ないケースもあります。
借地権付き建物の建て替えで承諾が得られない場合

建て替えには原則として地主の許可が必要です。交渉が難航し、なかなか承諾を得られないケースも存在しますが、諦める必要はありません。裁判所に許可を求める「借地非訟」という法的手段を活用すれば、建て替えが実現できる場合があります。
また、建物のリフォームを検討することも有効です。ここでは、地主から承諾が得られない場合の対応方法について解説します。
裁判所に許可を求める(借地非訟)
地主との話し合いが平行線で、建て替えの承諾が得られない場合、「借地非訟」という法的手段を検討しましょう。借主が地方裁判所に申し立てることで、地主の承諾に代わる裁判所の許可を得られる制度です。
裁判所は、建て替えの必要性や周辺環境への影響、地主の不利益を総合的に判断し、妥当と認めれば許可を出します。一般的な手続きの流れは以下の通りです。
- 申立書を作成し提出
- 審問期日
- 鑑定委員会による現地調査、意見書提出
- 最終審問期日
- 判決
借地非訟を申し立てる場合、弁護士に相談すると煩雑な手続きを任せられてスムーズに進みます。
リフォームを検討する
建て替えが困難な場合、代替案としてリフォームを検討するのも有力な選択肢です。リフォームであれば、建物の基礎をそのまま活用しつつ、内装や設備を刷新できます。建て替えよりもコストや手続きの負担が軽くなるでしょう。
ただし、リフォームの規模によっては地主の許可が必要になる点には注意が必要です。例えば、増築や構造部分に手を加える大規模改修工事は建て替えに近い行為と見なされ、事前に承諾を得なければトラブルの原因になる恐れがあるでしょう。
一方、内装の変更や配管の更新といった軽微な工事であれば、地主の承諾が不要なケースもあります。
借地権付き建物の建て替えにおける5つの注意点

借地権付き建物の建て替えは、通常の所有権の建物とは異なる注意点が存在します。事前にしっかりと把握しないと、予期せぬ費用が発生したり、計画通りに建て替えが進まなかったりするかもしれません。建て替えを検討している方は、以下で紹介する5つの注意点を押さえて計画を立てましょう。
1.承諾料が必要になる場合がある
建て替えの承諾を得る場合、承諾料を支払うケースが一般的です。承諾料の金額は地域や契約条件、地主の意向によって異なりますが、更地価格の3%~5%が目安とされています。例えば、更地価格が2,000万円の場合、60万円~100万円程度が相場です。
なお、契約書に承諾料の有無や金額が記載されている場合もあるため、まずは契約内容を確認し、必要に応じて専門家に相談するとよいでしょう。
2.建物の構造が変わる場合は契約変更が必要
建て替えによって建物の構造が大きく変わる場合、借地条件の変更が必要です。木造の非堅固建物を鉄筋コンクリート造の堅固建物に変更する場合、契約期間に影響を及ぼす(20年から30年に変更)ことから、借地契約上の「建物条件の変更」と見なされます。
この場合、地主の承諾を得る必要があり、条件変更料として追加費用が発生するケースがある点に注意しましょう。条件変更料に決まりはありませんが、一般的な目安は更地価格の10%です。例えば、更地価格が3,000万円であれば、条件変更料として300万円がかかります。
3.建物の用途制限が設けられている場合がある
借地契約の中には、建てられる建物の用途や構造、階数に関して制限を設けている場合があります。例えば、「住宅専用」と明記された土地に、店舗や事務所併用の建物は建てられません。「2階建てまで」といった高さの制限が設けられていることもあります。
これらの制限を無視して建築を進めた場合、契約違反となり、最悪の場合は立ち退きや建物の撤去を求められるリスクがあるでしょう。建て替え前には契約書を精査し、必要に応じて弁護士や不動産専門家の助言を受けながら進めることが重要です。
4.地代の値上げを要求される場合がある
建て替えを地主に相談する際、地代の見直しに話が及ぶケースがあります。特に建物の構造が変わる場合や建物の用途が居住用から事業用に変わる場合は、地代の値上げを要求される可能性が高いでしょう。
ただし、借地権付き建物を建て替えただけで、直ちに地代の値上げに応じる義務が生じるわけではありません。原則として、地代の変更には以下のいずれかに該当する必要があります。
・土地の固定資産税・都市計画税が変動した
・地価や経済情勢が変動した
・周辺の似た土地の地代と比べて、現在の地代が適正ではなくなった
地主が地代の値上げを要求してきた場合、その根拠をしっかりと確認しましょう。
5.住宅ローンの審査が厳しい
借地権付き建物の建て替えで住宅ローンを利用する場合、金融機関の審査が厳しい点に注意しましょう。理由のひとつは、担保価値が低く評価される点です。借地上の建物は、土地が自己所有ではないため、担保としての価値が下がります。
また、借地契約が解除されるリスクがある点も審査が厳しい理由のひとつです。地代の滞納などによって借地契約が解除されると、建物は「他人の土地に無断で建っている」状態になります。金融機関が担保を競売にかけても買い手がつかず、回収できなくなるリスクがあるため、金融機関は慎重にならざるを得ません。
関連記事 : 住宅ローンの組み方を解説!審査通過のための準備とは?
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借地権付き建物の建て替えで住宅ローンを利用する場合のポイント

借地上の建物の建て替えは、住宅ローンの審査が厳しい傾向があります。しかし、ポイントを押さえて準備を進めれば、審査を通過する可能性は高まるでしょう。ここでは、借地権付き建物の建て替えで、住宅ローンの審査を通過しやすくするポイントを紹介します。
フラット35やノンバンクを活用する
借地権付きの物件は、一般的な銀行では住宅ローンの審査が通りにくいことがあります。しかし、一部の金融機関では借地権付きの物件でも融資可能な商品を取り扱っており、特に「フラット35」は条件を満たせば利用可能です。
フラット35は住宅金融支援機構と民間の金融機関が提携して提供する長期固定金利ローンで、借地権付きの物件でも抵当権の設定や借入期間といった一定条件を満たせば、ローンを組める場合があります。
また、ノンバンクと呼ばれる貸金業者は銀行より柔軟な審査基準を設けていることがあり、借地権物件に対しても積極的に融資するケースがあります。ただし、金利などの条件は通常の銀行と比較して高くなる傾向があるため、最終手段として検討するとよいでしょう。
頭金を増やして借入金額を少なくする
借地権付き建物で住宅ローンの審査を通過するには、金融機関のリスクを減らすことが重要です。その方法のひとつが頭金を多めに用意することです。借入金額が少なくなれば、それだけ金融機関の負担も小さくなり、審査のハードルも下がります。
借入金額が少なくなれば総支払額が減らせる他、金利の優遇措置を受けられる可能性も高まります。
金融機関の担当者と距離を縮めておく
住宅ローンの審査では、信用も重要な判断基準のひとつです。そのため、早い段階から金融機関の担当者と信頼関係を築くことが有効です。
具体的には、相談段階からこまめに連絡を取り、誠実に情報を提供します。担当者に建築予定の計画や収支プランをしっかり説明すれば、信用度が高まるでしょう。担当者から信頼できる建築会社を紹介してもらえれば、ローン審査においてもプラスに働くことがあります。
出口戦略を見据えていることをアピールする
借地権付き物件は、将来的な資産価値や売却のしやすさが懸念材料になるため、住宅ローンの審査では出口戦略をしっかり示すことが重要です。将来的に借地権を更新・譲渡・返還する場合の計画の他、万が一売却する際のシナリオを具体的に用意すると、金融機関に計画性をアピールできます。
出口戦略がしっかりしていれば、ローン返済中に問題が起こるリスクが低いと判断され、審査の通過率が高まるでしょう。
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まとめ

借地権付き建物の建て替えは可能ですが、基本的に地主の承諾が必要です。地主から承諾を得る際は承諾料を支払うのが一般的で、更地価格の3%~5%が目安です。建て替えによって建物の構造が変わる場合は、条件変更料が求められるケースもあります。
不動産は権利関係や法律が複雑なため、専門家に相談することもご検討ください。リアルエステートの不動産総合窓口「おうちの相談室」では、借地権を含む不動産に関する相談を受け付けています。不動産のプロフェッショナルが悩みや不安を解消するため、お気軽にご相談ください。