借地権割合の基礎知識|調べ方・計算方法・注意点を解説!
借地権とは、地主から土地を借りて建物を所有する権利です。借地権割合は土地全体の価値に対する借地権の評価を示す指標として、相続や贈与、売買の際に活用されます。
しかし、「借地権割合はどう調べればよいか」「借地権割合を活用した相続税評価額の算出方法が分からない」といった悩みを抱える方もいるのではないでしょうか。
この記事では、借地権割合の基礎知識から調べ方、相続税評価額の計算方法まで詳しく解説します。借地権に関する知識を深め、スムーズな取引や適正な資産評価にお役立てください。
Contents
借地権割合とは?どのような場面で必要?

土地を貸し出す際は、所有権とは異なる「借地権」という権利が発生し、その割合が土地の評価額に大きな影響を与えます。特に都市部では借地権付きの不動産が多く存在し、適正な評価が求められる場面が少なくありません。ここでは、借地権とは何か、借地権割合の意味と必要な場面について解説します。
借地権とは
借地権(地上権・賃借権)とは、土地の所有者(地主)から土地を借りて、その上に建物を建てる権利です。日本では土地と建物の所有者が異なるケースが多く、特に都市部では借地権付きの不動産が広く見られます。
借地権には、建物の所有を目的とした「普通借地権」や「定期借地権」といった種類があり、それぞれ契約期間や更新の可否が異なります。
借地権は土地を所有しなくても建物を利用できるメリットがある一方、地主の意向に左右されるリスクや契約条件による制約があるため、売買や相続の際は慎重な対応が必要です。
借地権割合とは
借地権割合とは借地権の価値を示す指標で、土地全体の価格に対して借地権が占める割合を表します。例えば、借地権割合が70%の土地の場合、土地の価値が1億円であれば借地権の価値は7,000万円です。
借地権割合は国税庁が地域ごとに定めており、毎年公表される「路線価図」で確認できます。土地の利用価値や市場動向、地域の特性に基づいて決められ、エリアによって異なります。一般的に、都市部や商業地域は借地権割合が高く、郊外や住宅地は低い傾向があります。
借地権割合が必要な場面
借地権割合を使用する主な場面は、相続税や贈与税の計算です。土地を相続する際、借地権付きの土地は借地権の評価額をもとに相続税を算出します。
被相続人が借地権付きの土地を所有していた場合、土地の時価を直接評価するのではなく、借地権割合を考慮して課税額が決まります。
借地権を子や孫に贈与する際も、借地権割合に基づいて贈与税を求めます。贈与税は不動産の価値によって税額が大きく変わるため、適切な評価が欠かせません。
借地権割合の調べ方

借地権付きの不動産を売買・相続・贈与する際に重要な借地権割合ですが、専門家でないと調べられないと考える方もいるでしょう。借地権割合は自身で調べることが可能で、複雑な手順でもありません。ここでは、国税庁のWebサイトを活用した借地権割合の調べ方について解説します。
STEP1.国税庁のWebサイトにアクセスする
借地権割合を調べるために、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページにアクセスします。
1.国税庁の公式Webサイト(https://www.nta.go.jp/)を開く
2.トップページから「税の情報・手続・用紙」→「路線価図・評価倍率表」を選択
3.調べたい都道府県を選択→「路線価図」をクリック
4.市町村名や町域を選ぶ
5.指定したエリアの「路線価図」が表示される
路線価図とは、主要な道路ごとに設定された1平方メートル当たりの土地の評価額(路線価)が記載された地図です。路線価をもとに土地の相続税や贈与税の評価額が決まります。
単位は「1,000円/平方メートル」で、「200D」と記載がある場合、その道路に面する土地の1平方メートル当たりの評価額は20万円です。
(参考: 『財産評価基準書/国税庁』
STEP2.借地権割合を確認する
路線価図を開くと、評価額の横にアルファベット(A~G)が記載されていることがあります。これが借地権割合を示しており、以下のように対応しています。
記号 | 借地権割合 |
A | 90% |
B | 80% |
C | 70% |
D | 60% |
E | 50% |
F | 40% |
G | 30% |
路線価図に記載されたアルファベットを確認し、上記の表と照らし合わせれば、借地権割合を把握できます。路線価が「200C」の場合、土地の評価額は1平方メートル当たり20万円で、借地権割合は70%です。アルファベットの記載がないときは借地権割合を20%として計算します。
借地権割合を活用した相続税評価額の計算方法

不動産を相続する際、適正な評価は相続税の計算において重要です。借地権の相続税評価額は土地の評価方法によって計算の仕方が異なり、「路線価方式」と「倍率方式」の2つの評価方法があります。
シンプルなのは路線価方式ですが、路線価が設定されていない地域は倍率方式を活用するのが一般的です。ここでは、それぞれの計算方法について解説します。
路線価方式
路線価方式は国税庁が毎年公表する「路線価図」に基づいて土地の評価額を算出する方法で、主に都市部や市街地の土地に適用されます。路線価の確認と計算の手順は以下の通りです。
- 路線価を確認する
- 国税庁のWebサイトで該当する土地の路線価を調べる
- 路線価は1平方メートル当たりの価格(1,000円単位)で表示される
- 土地の評価額を求める
- 土地の評価額=路線価×土地の面積(平方メートル)
- 借地権割合を適用する
- 借地権評価額=土地の評価額×借地権割合
【具体的な計算例】
- 路線価:20万円/平方メートル
- 土地面積:100平方メートル
- 借地権割合:60%
- 土地の評価額=20万円×100平方メートル=2,000万円
- 借地権評価額=2,000万円×60%=1,200万円
このように借地権評価額を求め、相続税の計算に活用します。
倍率方式
倍率方式は、主に郊外や地方の土地など、路線価が定められていない地域で適用する評価方法です。固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて評価額を求めます。
- 固定資産税評価額を確認する
- 固定資産税の納税通知書に記載されている「土地の評価額」を確認する
- 国税庁が定める倍率を掛ける
- 国税庁が公表する「倍率表」で、該当する地域の倍率を確認する
- 土地の評価額=固定資産税評価額×倍率
- 借地権割合を適用する
- 借地権評価額=土地の評価額×借地権割合
【具体的な計算例】
- 固定資産税評価額:5,000万円
- 倍率:1.2倍
- 借地権割合:50%
- 土地の評価額=5,000万円×1.2=6,000万円
- 借地権評価額=6,000万円×50%=3,000万円
関連記事 : 固定資産税評価額と路線価の違いを解説!計算方法や調べ方は
借地権割合に関する注意点

借地権割合は借地権評価額を計算する上で重要な指標ですが、借地権の売買や相続にはさまざまな注意点があります。借地権割合をめぐってトラブルに発展しないよう気をつけましょう。ここでは、借地権割合に関する注意点を3つ紹介します。
借地権を譲渡・売却する際は地主から承諾を得る
借地権の譲渡や売却には地主の承諾が必要です。借地権が第三者に渡ることで、地主と新たな借地人との間に新しい契約関係が生まれるためです。
通常、地主の承諾を得るためには承諾料を支払う必要があります。承諾料は借地権価格の10%程度が相場です。ただし、実際には地主の判断によるため、ケースバイケースで変動します。
借地上の建物を増築・建て替えする場合も同様に、地主の承諾が必要です。この場合の承諾料の相場は、更地価格の3%~5%程度です。地主への連絡を怠ると、契約違反と見なされる恐れがあるため注意しましょう。
関連記事 : 借地権売却の成功ポイント!地主の許可や承諾料の対策
借地権割合をめぐってトラブルに発展するケースがある
借地権割合は相続税の計算や売買時の参考指標として用いられますが、実際の不動産取引では借地権割合をめぐるトラブルが発生することがあります。
例えば、相続時に兄弟間で借地権付きの不動産を分割する際に、借地権割合の評価をめぐって意見が対立するケースがあります。相続税評価額を基準にすると、実際の市場価値とは異なるため、適正価格の認識が一致しないことが原因です。
借地権付き建物を売却する際、買主が地主からの承諾を得られず、取引が成立しないケースもあります。
借地権割合は売買時の参考になりにくい
借地権評価額は相続税や贈与税の計算を目的としており、実際の売買価格とは大きく異なる場合があります。そのため、借地権割合をもとに売却価格を設定すると、適正な価格にならないケースが少なくありません。
借地権付き建物の売却には地主の承諾が必要で、地主が提示する条件次第で売買価格が変動する可能性があります。建物の用途や老朽化の度合いによっても借地権の市場価値は変わるため、借地権割合を基準に売却価格を決めることはリスクが伴います。
借地権付き不動産を売却する際は、相場調査を実施して実際の市場価値に基づいた価格を設定することが重要です。不動産会社や専門家のアドバイスを受けながら、適正な価格を見極めましょう。
不動産に関するご相談は「おうちの相談室」へ
不動産の法律や権利関係は複雑で、専門的な知識が求められます。借地権の譲渡や売却、相続時の手続き、地主との交渉など、どのように進めればよいか判断に迷ったときは、リアルエステートが提供するサービス「おうちの相談室」をぜひご活用ください。
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まとめ

借地権割合は、借地権の評価額を算出する指標です。主に相続税や贈与税の算出、売買価格の目安として活用されます。ただし、借地権の評価や売買は専門的な知識が必要な場合もあるため、専門家に相談するのがおすすめです。
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