借地権の更新料はいくら?支払い時期・相場・計算方法などを解説
建物を建てるために土地を借りる借地権は、契約期間が長く、契約更新時に「更新料」の支払いが求められることも少なくありません。しかし、支払う時期や金額、そもそも支払い義務があるのかなど、疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、借地権の更新に関する基本知識から、更新料の目安を知る方法、会計上の取り扱いまで詳しく解説します。
Contents
借地権の更新料支払いまでの期間は何年?

借地の更新タイミングは借地契約の締結時期や更新回数により異なります。更新料を払うタイミングを知るために、まずは借地権の存続期間について知っておきましょう。
借地契約が借地法に基づく場合
1992年(平成4年)7月31日以前に締結された借地契約は「旧法借地権」と呼ばれ、借地法が適用されます。旧法借地権では、建物の構造によって存続期間が異なります。
木造などの非堅固建物の場合、存続期間は20年以上、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの堅固建物の場合は30年以上と定められています。契約でこれらの期間より短い期間を定めた場合、その定めは無効となり、法定の存続期間が適用されます。
存続期間が定められた年数より短い場合、またはそもそも期間を定めていない場合、初回の存続期間は木造で30年、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で60年となります。
また、契約で存続期間を定めなかった場合、木造などの非堅固建物では30年、鉄筋コンクリート造や鉄骨造などの堅固建物では60年となります。更新後の存続期間は、非堅固建物で20年、堅固建物で30年とされています。
借地契約が借地借家法に基づく場合
1992年(平成4年)8月1日以降に締結された借地契約(新法借地権)には、借地借家法が適用されます。この法律では、建物の構造に関係なく、借地権の存続期間は一律30年以上と定められています。更新時の存続期間は、初回の更新で20年以上、2回目以降は10年以上が一般的です。
一方、定期借地権の場合、契約期間の更新はなく、存続期間は種類によって10年以上から50年以上までさまざまです。
なお、旧法・新法のいずれの場合でも、地主と借地権者の合意があれば、更新後の期間を法定の期間より長く設定することも可能です。
借地権の更新には手続きが必要か

借地権の更新時に気になるのが、「更新料の支払い以外に何か手続きをしないといけないのか」ではないでしょうか。
ここでは、借地権の更新と解約について解説します。
法定更新なら特別な手続きは不要?
定期借地権を除き、借地上に建物が存在する場合や借地権者が契約更新の意思を示した場合、従前と同じ条件で契約が自動更新されることがあります。
このように、契約期間満了時に地主と借地権者の合意がなくても自動的に契約が更新される仕組みを「法定更新」と呼びます。
借地権者が更新の意思表示をしていなくても、地代や更新料の支払いは契約更新の意思表示と見なされることがあります。
したがって、更新料の支払い以外に特別な手続きを行わなくても、借地契約が終了することはありません。ただし、法定更新が適用されるためには、借地上に建物が存在していることが条件となります。
借地契約の解約には手続きが必要
法定更新により契約は基本的に更新されるため、普通借地権の場合、借地契約を終了させるには正式な手続きが必要であり、自動的に終了することはありません。
地主が借地契約を終了させたい場合、契約期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の通知を行い、さらに正当な事由(例えば、土地の有効活用や地主自身の土地使用の必要性など)が必要とされます。
契約期間中の中途解約は原則として認められておらず、以下の例外的な場合に限り可能です。
・契約書に中途解約の特約があり、借地権者が解約を申し入れる場合
・借地権者と地主の双方が合意して解約する場合
・契約更新後に建物が滅失し、借地権者が3カ月以内に解約を申し入れた場合
関連記事 : 借地契約を解除できる条件とは?底地人と借地人の信頼関係が鍵
借地権の更新料はいくら?相場と支払いのタイミング

借地権の更新時期が分かったところで、次に知っておきたいのが「いつまでにいくら支払うのか」でしょう。建物の賃貸なら「賃料の1か月分」など明確に決まっていますが、借地権の場合は少し異なります。
次に、借地権の更新料の目安を知るための計算方法について解説します。
更新料の算出基準と計算例
借地権の更新料の相場は、契約によって異なりますが借地権価格の5%程度が目安といわれています。
そして借地権価格の目安を知るために必要な数字が、「路線価」「地積(土地の面積)」「借地権割合」です。
「路線価」とは国税庁が定める土地の評価額で、道路に面した土地の1平方メートルあたりの価格を示します。「借地権割合」は土地の権利のうち借地権が占める割合を示し、地域によって異なりますが一般的に都市部では60~80%、郊外では30~60%程度です。
どちらも国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」のページから調べられます。
(参考: 『国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』)
更新料の大まかな相場は以下の式で計算可能です。
更新料の相場=路線価×地積(土地の面積)×借地権割合×5%程度
例えば、路線価が20万円、地積が100平方メートル、借地権割合が70%の場合、更新料の目安は以下のようになります。
20万円×100平方メートル×70%×5% = 70万円
ただし実際の金額は契約ごとに異なるため、あくまで参考値として捉えておきましょう。
更新料を支払うタイミングと方法
更新料を支払うタイミングは、一般的に更新前後の地代を納めるときです。
しかし地主との関係性や過去の慣習、更新料の金額によっては分割で支払い、毎月の地代と一緒に支払うケースもあります。
更新料の具体的な金額や支払い方法については契約書に明記されていることが望ましく、明確な取り決めがない場合は地主との交渉によって決まります。
借地権の更新料の支払い義務と必要なケース

借地権の更新料には法的な支払い義務は明確に定められていませんが、状況によっては支払いが求められることがあります。
以下では、更新料の支払いが必要となるケースや、更新料の持つ意味合いについて解説します。
更新料の支払い義務が発生することも
借地契約における更新料は、主に「賃料の補填」の役割を果たしています。
借地権の契約期間は数十年に及ぶことが多く、その間に地代が土地の価値上昇に追いつかなくなる可能性があります。
更新料の支払いにより、契約期間中の不足分を補填することができます。
また、一般的な借地権(賃借権)では、地主が更新を拒否したり、建物の建て替えに対して承諾しなかったりすることで、借地権者の権利が制約される可能性があります。
そのため、更新料の支払いには、地主との関係を良好に保ち、リスクを軽減する意味合いも含まれており、支払われるケースが一般的です。
特に、以下のような場合には、更新料の支払い義務が生じる可能性が高くなります。
- 契約書に更新料の支払いが明記されている場合
- 地主と借地権者の間で更新料の支払いについて合意がある場合
- 過去の更新時に更新料を支払った実績がある場合
関連記事 : 借地の更新料は地主に支払うべき?更新料の相場や起こりうるトラブルについて
借地権の更新料を支払わないとどうなる?
契約書に更新料の支払いが明記されている場合や過去に支払いの慣習がある場合、更新料は借地権者の債務と見なされます。そのため、支払わないと債務不履行に該当し、借地契約の解除事由となる可能性があります。
また、更新料の未払いは地主との関係悪化を招き、将来的な建物の増改築や売却時に必要な承諾が得られにくくなる可能性があります。
借地権の相続に更新手数料は必要?
借地権を相続した場合、相続は譲渡に該当しないため、原則として相続時の更新手数料(名義変更料)や承諾料は不要とされています。また、地代や契約期間などの契約内容はそのまま継承され、新たに契約を取り交わす必要もありません。
ただし、遺言書で相続人以外の方(親戚や第三者など)に借地権を譲渡する場合は「遺贈」となり、地主の承諾と承諾料の支払いが必要となる点に注意が必要です。
借地権の更新料の税務・会計処理

地主や借地権者のなかには、事業として借地権を活用している方もいるでしょう。ここでは、更新料に関係する会計処理や税務上の取り扱いについても簡単に解説します。
借地権の更新料と税務上の取り扱い
国税庁の規定によれば、借地権に関連して授受される更新料や名義書換料は、土地の貸付けまたは土地の上に存する権利の設定の対価として非課税とされています。
これは、土地の譲渡や貸付けが消費税の課税対象とならないという原則に基づいています。土地は消費されるものではなく、永続的に存在する資産であるためです。
更新料は経費計上できる?
借地権は建物と異なり、時間の経過による価値の減少がないため、減価償却の対象とはなりません。しかし、契約を継続するために支払う更新料については、以下の計算式で必要経費として計上できる部分があります。
必要経費として計上可能な額=(更新直前の借地権取得価額 × 更新料)÷ 更新時における借地権の時価
この計算により求められた金額が必要経費として算入され、残りの金額は借地権の帳簿価額に加算されます。具体的には、支払った更新料のうち、必要経費として認められる部分と、借地権の取得価額に加算される部分に分かれます。
例えば、100万円の更新料を支払い、そのうち30万円が必要経費として認められた場合、残りの70万円は借地権の取得価額に加算されます。この70万円は即時に経費とはなりませんが、将来、借地権を譲渡する際の取得費として控除されることになります。
会計処理の仕訳例は以下のとおりです。
(借方)借地権 100万円 / (貸方)普通預金 100万円
(借方)借地権償却費 30万円 / (貸方)借地権 30万円
受け取った更新料の所得税はどうなる?
では、更新料を受け取る側の会計処理はどうなるでしょうか。
個人の地主が借地権の更新料を受け取った場合、原則として契約の効力発生日の収入(不動産所得)として所得税の累進課税が適用されます。ただし、更新料が土地の一部譲渡とみなされる性質を持つ場合は、譲渡所得として課税される可能性があります。
また、長期の賃貸借契約において、一度に受け取る更新料が高額である場合には、税務上の取り扱いとして分割計上が認められることがあります。
法人が更新料を受け取った場合には、益金として事業年度の雑収入などの科目で計上され、法人税の課税対象となります。
借地権の更新料で考えられるトラブルと対処法

最後に、念のため借地権の更新料について起こりうるトラブルについても事前に対処法を知っておきましょう。
突然高額な更新料を請求された
借地権の更新料は、契約で定められていない限り支払い義務はありません。しかし、契約書に更新料の支払いが明記されている場合は、原則として支払う必要があります。
請求された金額が市場相場と比べて不当に高いと感じた場合は、交渉の余地があります。地主との関係維持も大切ですが、適正な更新料を確認せずに一方的に受け入れる必要はありません。
交渉が難航する場合や感情的な対立が生じる場合には、不動産鑑定士や弁護士などの専門家に相談し、適正な金額を算定してもらうことを検討しましょう。
更新料を受け取ってくれず更新できない
地主が更新料の受け取りを拒否して契約の更新が進まない場合は、「供託」という方法を取ることもできます。
供託とは、金銭などを供託所に提出して管理を委ねる制度です。支払い金額でもめている場合や、土地の明け渡し要求などの理由で受領を拒否されている場合でも、供託を行えば支払ったものとみなされます。ただし、供託をしたからといって契約が自動的に更新されるわけではないため、地主が契約更新そのものを拒否している場合は、借地借家法に基づく対応を考える必要があります。
また、今後の関係を円満に保つためには、供託を行う前に支払い方法の相談をしてみるのも一つの方法です。今まで支払っている場合は、一括での支払いが難しければ分割での支払いを提案してみるのもよいでしょう。
供託手続きは、必要事項を記載した供託書と供託金を賃貸借契約上の支払地(定めがない場合は大家の居住地)管轄の供託所に納入することで行えます。
借地権の更新料が支払えない
契約時に取り決めをしていない限り必ずしも更新料の支払いが必要ではありませんが、今まで支払っている場合には支払っておいたほうが地主との関係が円満に保てるのも事実です。一括での支払いが難しければ分割での支払いを相談してみましょう。
また、今後支払い自体が難しくなる場合には、借地権を売却する手段もあります。一般的な借地権(賃借権)を売却するには地主の承諾が必要ですが、事情を相談すれば交渉の余地も考えられます。
まとめ

借地権の更新料については、まず借地契約の種類と特約内容を確認することが重要です。
更新料の支払いに法的義務はありませんが、契約書に明記されている場合や過去の支払い実績がある場合は支払うべきであり、支払いが難しい場合には分割払いの相談や借地権売却も検討しましょう。
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