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2025/11/28借地権の更新忘れ、どうなる?法定更新の仕組みと地主への対処法
- 底地・借地

「借地契約の更新を忘れていた」と気づいたとき、多くの人が立ち退きや高額な更新料を心配します。しかし、借地契約を更新し忘れていたとしても、すぐに立ち退きを求められるわけではありません。法律上、借地人の権利を守る仕組みが設けられているためです。
本記事では、更新を失念した場合にどうなるのか、法的に守られるケースと注意すべき例外、そして地主との交渉や今後の再発防止策までを順に解説します。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
Contents
借地権の更新を忘れても「直ちに明け渡し」にはならない

借地契約を更新し忘れていたとしても、すぐに土地を返さなければならないわけではありません。借地借家法には、借地人を保護するための「法定更新」という制度があり、一定の条件を満たせば契約は自動的に継続します。まずは、自分の借地権がこの法定更新の対象になるのかどうかを確認しましょう。
法定更新の考え方と成立条件
普通借地権では、契約期間が満了しても、
- 借地上に建物が存在している
- 借地人が引き続きその土地を使用している
- 地主が期間満了の1年前から6か月前までに更新拒絶の「異議」を出していない
この3つの条件を満たす場合、特別な手続きがなくても契約は自動的に更新されたとみなされます。
これが「法定更新」です。
法定更新が成立すれば、契約内容は「従前と同一の条件」で継続します。つまり、新しい契約書を交わしていなくても、これまで通りの地代や条件で借地を使用し続けることができます。
定期借地は例外になる
一方、定期借地権は例外です。契約書に「期間満了で終了」と明記されており、法定更新は適用されません。
契約期間が満了すると、建物を解体して更地で返還する義務が生じます。事業用定期借地や建物譲渡特約付借地など、契約の種類によって扱いが異なるため、内容を必ず確認しておきましょう。
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正当事由がなければ更新拒絶は困難

借地借家法では、地主が更新を拒絶したり、契約を終了させたりするためには、正当な理由が必要とされています。この「正当事由」がない限り、契約は法的に継続し、借地人が引き続き土地を使用できる可能性が高いのです。
判断要素の4本柱(必要性の比較・従前の経過・利用状況・財産上の給付)
裁判で「更新拒絶に正当事由があるか」が争われる場合、裁判所は次の4つの要素を総合的に考慮して判断します。
1.地主と借地人の土地使用の必要性
どちらがより切実に土地を必要としているかを比較します。地主が自宅や事業用地として使用したい場合でも、借地人が居住用として使い続ける必要性が高ければ、更新拒絶は認められにくくなります。
2.借地に関する従前の経過
地代の支払い状況や更新料の支払い、過去の交渉経緯などが考慮されます。地代滞納や無断増改築などの不誠実な行為がある場合は、地主側に有利に働くことがあります。
3.土地の利用状況
借地上の建物の状態や使用の実態も判断材料です。建物が放置されていたり、長期間空き家になっていたりすると、更新拒絶が認められる可能性が高まります。
4.財産上の給付(立退料の提供)
地主が立退料を提示した場合、それが他の要素を補う材料として考慮されます。ただし、立退料を支払えば必ず更新拒絶が認められるわけではありません。
このように、正当事由の判断は総合的かつ慎重に行われるため、「更新忘れ」という一点だけで契約終了を主張するのは極めて難しいのが実情です。
裁判例は更新忘れ単独では足りず、総合判断
実際の裁判例でも、「更新手続を忘れていた」という理由だけで借地契約の終了を認めたケースはほとんどありません。建物が存在し、地代を支払い続けている限り、法定更新が成立していると判断される傾向があります。
例えば、地主が「契約満了後に更新手続きをしていない」として立ち退きを求めた事案でも、裁判所は借地人が居住を継続し、地代を支払っていた点を重視し、契約の法定更新を認めました。
このように、更新を忘れてから数年が経過していても、地主側に強い正当事由がない限り、借地人が退去を強制されることはほとんどありません。焦って明け渡しに応じる前に、まずは契約の実態と法的根拠を確認することが大切です。
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借地権の種類で異なる「更新忘れ時の扱い」
借地契約を更新し忘れた場合の扱いは、契約の種類によって大きく異なります。特に、1992年(平成4年)の借地借家法施行前後でルールが変わっており、「旧借地権」「普通借地権」「定期借地権」のどれに当たるかを確認することが重要です。
| 借地権の種類 | 設定時期 | 更新忘れ時の扱い | 建物買取請求権 |
| 旧借地権 | 1992年7月31日以前 | 建物がある限り法定更新により継続 | あり |
| 普通借地権 | 1992年8月1日以降 | 建物が存在し使用が続いていれば法定更新で継続 | あり |
| 定期借地権 | 1992年8月1日以降 | 期間満了で終了。法定更新は適用されない | なし |
旧借地権と普通借地権では、更新忘れがあっても法定更新によって契約が自動的に継続します。
一方、定期借地権だけは更新制度がなく、期間満了で契約が終了します。
まずは、自分の契約がどの区分に該当するのかを確認することが、今後の対応を判断する第一歩です。
関連記事:借地権の更新年数は何年?契約ごとの期間の違いや更新・解約を解説
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更新料の支払い有無と相場の見方

借地契約の更新を忘れていた場合、地主から「更新料を支払ってほしい」と請求されることがあります。ただし、法定更新では契約条件が変わらないため、更新料の支払いが当然に発生するわけではありません。支払いの要否は、契約書の条項や過去の慣行によって判断されます。
法定更新と更新料条項の関係(支払い義務の有無)
借地契約の更新方法には「合意更新」と「法定更新」があります。
合意更新とは、地主と借地人が協議し、新たな契約条件で更新する方法です。この場合、契約内容に基づき、更新料の支払いを求められることがあります。
一方、法定更新は、前章で触れたとおり条件を変えずに契約が自動継続される方式です。このため、原則として新たな更新料を支払う義務はありません。
ただし、契約書に「法定更新時も更新料を支払う」と明記されている場合や、過去の慣習として支払いが繰り返されていた場合には、支払い義務が認められる可能性もあります。
更新料の相場と交渉のポイント
更新料の金額には法的な基準がなく、地域や契約内容によって大きく異なります。一般的な目安は、借地権価格の5〜10%程度です。借地権価格は次の計算式で求められます。
借地権価格 = 土地時価 × 借地権割合
例えば、土地の時価が6,000万円で、借地権割合が70%の場合、借地権価格は4,200万円です。
このときの更新料は、相場換算で約210万〜420万円が目安となります。
ただし、これはあくまで参考水準です。地主が相場を大きく上回る金額を提示した場合は、不動産鑑定士による査定書など客観的資料を基に、金額交渉を行うことが望ましいでしょう。
また、支払いが難しい場合は、分割払いや延納の相談も可能です。誠実な対応を心がけることで、不要な対立を避けつつ、円満な解決につながります。
関連記事:借地の立ち退き料の相場とは?地主が知っておくべき正当事由と交渉の進め方を徹底解説
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更新を忘れたときの対処ステップ

借地契約の更新を忘れていたことに気づいた場合でも、慌てる必要はありません。法定更新が成立している可能性が高く、正しい順序で対応すれば、立ち退きや契約解除といった重大な事態を避けられます。
ここでは、発覚後に取るべき実務的な流れを整理します。
まず確認する4つのこと
最初に行うべきは、自分の借地権の法的状態を把握することです。
以下の4点を順に確認します。
1.契約種別
普通借地権か定期借地権か。契約書に「更新なし」「期間終了で終了」と記載があれば定期借地権の可能性があります。
2.契約条項
更新料や異議申立てに関する特約の有無を確認します。
3.地代支払実績
契約満了後も地代を支払い続けていれば、法定更新が成立している蓋然性が高くなります。
4.登記状況
建物登記が残っているかを確認します。建物が存在すれば、借地権の存続を主張しやすくなります。
これらを整理してから、地主への連絡・交渉に移るのが安全です。
地主への連絡文例と交渉の要点
更新忘れに気づいたら、できるだけ早く地主へ連絡を取りましょう。口頭ではなく、まず電話で趣旨を伝えた上で、正式には書面で通知するのが望ましい対応です。
文面には以下の要素を盛り込みます。
- 更新手続きを失念していたことへの謝意
- 遅れた理由の簡潔な説明(相続・転居・事務手続きなど)
- 今後の対応方針(更新契約の締結や更新料支払いの意思など)
- 今後も良好な関係を維持したい旨の記載
交渉の際は、誠実な姿勢と具体的な提案が重要です。感情的な表現や責任転嫁は避け、あくまで「協議で円満に解決したい」という姿勢を見せましょう。
受領拒否時の供託など実務対応
まれに、地主が地代の受け取りを拒否するケースがあります。この場合、支払いを止めてしまうと「地代滞納」と見なされ、契約解除を主張されるリスクが生じます。
そのようなときは、法務局に地代を供託することで、支払い義務を果たしていることを証明できます。供託とは、支払先が受け取らない場合に国に預ける制度で、地代の支払い拒否や所在不明時に有効な手段です。
供託した旨は、必ず書面で地主に通知し、記録を残しておきましょう。その上で、できるだけ早く専門家(弁護士・司法書士など)に相談し、今後の対応方針を確認することが推奨されます。
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借地権の更新忘れを防ぐには

借地権の更新忘れは、一度でも発生すると、契約上のトラブルだけでなく、地主との信頼関係にも影響します。将来同じ事態を繰り返さないためには、更新時期や契約内容を「見える化」し、計画的に管理する仕組みを整えることが大切です。
契約管理台帳・カレンダーでの多段階リマインド
まず行うべきは、契約管理台帳の作成です。エクセルやクラウド型の表計算ツールを使い、以下の項目を一覧化しておくと便利です。
- 契約開始日と満了日
- 借地の所在地と地代額
- 地主の氏名・連絡先
- 更新料や特約の内容
- 次回更新予定日と通知期限
加えて、スマートフォンやPCのカレンダー機能を活用したリマインド設定も効果的です。更新日の6か月前、3か月前、1か月前のように複数回通知を設定しておくことで、失念リスクをほぼ防げます。
通知の際には「更新に関する書類確認」「地代支払状況チェック」など、具体的な作業メモも登録しておくとよいでしょう。
専門家のサポートを活用する
遠方に住んでいる場合や、相続によって借地権を承継したケースでは、管理を自分で完結させるのが難しいこともあります。そのようなときは、借地・底地の管理を専門とする不動産会社や士業に委託する方法も有効です。
専門会社に委託すれば、更新時期の管理や地主との調整、更新料交渉などを一括して任せられます。
特に相続で借地を引き継いだ人や、複数の借地を所有している場合には、こうした外部サポートを活用することで手続き漏れを防ぎやすくなります。
また、定期的に契約書を点検し、法改正や地代相場の変化を踏まえて内容を見直すことも重要です。
年に一度の確認を習慣化することで、更新忘れだけでなく、条件不一致や相続時の混乱も防げます。
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専門家への相談と費用目安

借地権の更新を忘れていた場合でも、法定更新で守られることは多いものの、地主との交渉や更新料請求が複雑化することがあります。感情的な対立に発展する前に、法的・実務的な専門知識を持つ専門家に早めに相談するのが安全です。
弁護士へ相談すべきタイミング
次のような状況が生じた場合は、弁護士への相談を検討してください。
- 地主から「契約終了」「明け渡し請求」を受けた
- 相場を大きく上回る更新料を要求された
- 地代の受領を拒否され、供託対応が必要になった
- 契約書の内容が不明確で、普通借地か定期借地か判断できない
- 話し合いが進まず、関係が悪化している
弁護士は、契約書や支払い履歴をもとに法定更新の成立可否を判断し、更新料の妥当性や地主側の主張の正当性を検証します。
また、必要に応じて内容証明郵便の作成や交渉代理も行い、裁判に発展する前の段階での円満解決を目指します。
相談・着手・報酬の目安と見積比較のポイント
弁護士費用は事務所や案件の難易度によって幅がありますが、一般的な目安は以下の通りです。
| 項目 | 内容 | 費用の目安 |
| 初回相談 | 借地契約や更新料に関する一般相談 | 無料〜30分あたり5,500円程度 |
| 着手金 | 交渉・訴訟の正式依頼時に発生 | 20万円前後から |
| 報酬金 | 問題解決時に支払う成功報酬 | 経済的利益の8〜16%程度 |
依頼前には、複数の弁護士事務所から見積もりを取得し、費用と対応範囲を比較検討することが大切です。「不動産・借地案件の経験があるか」「交渉・訴訟のどちらに強いか」を確認し、信頼できる専門家を選びましょう。
なお、初回相談無料の法律事務所も多いため、早期に専門家へ相談しておくことで、後のトラブル防止にもつながります。
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まとめ

借地権の更新を忘れても、建物が存在し使用が続いていれば、法定更新によって契約は自動的に継続します。ただし、定期借地権の場合は例外で、契約書の内容確認が欠かせません。
更新料の相場や交渉方法を把握し、トラブルが懸念される場合は早めに専門家へ相談することが安全です。
借地契約の確認や更新交渉に不安がある方は、リアルエステートの「おうちの相談室」へご相談ください。弁護士などの専門家とも提携しているため、複雑な交渉もサポート可能です。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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