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2026/02/26借地権トラブルはなぜ起こる?タイミング別の14ケースと解決策を紹介
- 底地・借地
地主が所有する土地を借地人が借り、自宅などに利用する権利を「借地権」といいます。この借地契約の期間中には、さまざまなトラブルが発生することがあります。
その大きな要因の一つが、契約期間が建物と比べても非常に長期にわたる点です。数十年に及ぶ契約の間には、建物の老朽化による建て替えや地価の上昇、当事者の経済状況の変化、相続による交代など、トラブルにつながりやすい出来事が起こります。さらに、地主・借地人それぞれの土地利用に対する方針が変わることもあるでしょう。
本記事では、そのような借地契約中に起こりやすい14ケースのトラブルについてタイミング別にまとめ、それぞれのポイントと解決策を解説します。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
借地契約中のトラブル

借地契約の期間中は、普段のやりとりが順調に進んでいても、思わぬところでトラブルが起こることがあります。建物の使用や地代の支払い、土地の管理など、長い契約関係のなかでは小さなすれ違いが問題に発展することもあります。
ここでは、「値上げ」「滞納」「承諾」「地主の変更」「建物の滅失」の5つのテーマについて見ていきましょう。
ケース1:地代の値上げを要求された
地主から突然「地代の値上げ」に関する連絡が届き、応じなければならないのかと借地人が困惑するようなケースです。やみくもに拒否すると地主の反発を招き、トラブルに発展する可能性があります。しかし、法的な規定を知っていれば、正当な根拠をもって対応できます。
まず、地主側から一方的に値上げを通知された地代をそのまま支払う必要はありません。ただし、値上げが正当と認められる条件が借地借家法で以下のように定められています。
- 固定資産税などの税金の増加
- 地価の上昇により地代が相対的に安くなりすぎた
- 近隣の似た条件の土地の地代相場より安すぎる
地主の主張に正当性が認められた場合は、不足分の地代に利息を加えて後日支払う必要がありますが、逆に正当性がない場合には拒絶できます。
関連記事:【地代の値上げ交渉】拒否できる?借地人・地主別の対処法と供託制度を解説
ケース2:地代が支払えない・滞納してしまった
収入の低下や臨時出費で地代が支払えず、そのうちと思っているうちに滞納状態になってしまい、土地を明け渡さなければならないのか不安になってしまうようなケースです。
地代の滞納により、借地契約が強制解約され土地を明け渡さなければならなくなるケースは起こり得ます。
ただし、強制解約に至るには「地主と借地人の信頼関係が破壊された」と判断される必要があります。規定が抽象的なため断言はできませんが、おおむね3か月以上を目安としておきましょう。
また、信頼関係が破壊されたとみなされないように、滞納状態になってしまったら早めに連絡・相談をする、分割で支払える分だけでも払うなどの対処を講じるべきです。くれぐれも気まずさのあまり地主の督促を無視したりするようなことは避けましょう。
ケース3:建て替え・増改築・譲渡の承諾をしてもらえない
所有する自分名義の建物の建て替えや増改築、借地権付き建物として第三者に譲渡(売却)を行いたいのに、地主が承諾してくれず困ってしまうケースです。
借地権の大半を占める「賃借権」では、譲渡には地主の承諾が必要です。特に譲渡は契約の当事者が代わる重大な問題のため、無断で行ってしまうと契約解除の理由にもなってしまいます。
建て替えや増改築の場合、承諾料を支払うことで合意に至ることが一般的です。ただし、地主の承諾がなければ絶対に建物を変更できないというわけではありません。地主の承諾が得られないときは、「借地非訟」という制度を利用して裁判所に代わりの許可を求める方法もあります。
ケース4:契約途中で地主が変わった
借りている土地が契約途中で地主の手によって第三者に売却され、地主が変わってしまい契約がどうなるのか、再契約が必要なのか不安に思うケースです。
土地の所有権が移転しても、借地契約は自動的に新しい地主へ引き継がれます。そのため、契約期間中はこれまで通り借地上の建物に住み続けられます。
ただし、借地上の建物の登記を「自分名義で」行っていないと、新しい地主に契約の効力を主張できない(対抗力がない)恐れがあるため、売却の有無にかかわらず登記をしておきましょう。
また、もし地主が底地を売却する意向を事前に知らされている場合は、自分が買い取る選択肢もあります。借地権を保有した状態で底地を取得すると土地の所有権を手に入れられるため、安定して住み続けられ、売却する場合でも価値が高くなるメリットがあります。
ケース5:借地上の建物がなくなってしまった
火災や地震などの災害で借地上の建物がなくなってしまい、再び建て直したいというケースです。
まず大前提として、建物がなくなっても借地権自体は消滅しないため、すぐに土地を明け渡す必要はありません。 ただし、再築にあたっては地主との調整が必要です。地主の承諾を得て再築すれば、借地借家法(第7条)により、原則として「承諾があった日」または「再築された日」から20年間、契約期間が延長されます。
(参考: 『e-Gov法令検索 借地借家法第七条』)
※契約の残り期間が長い場合や「定期借地権」などの場合は扱いが異なるため注意が必要です。
もし地主が承諾してくれない場合でも、裁判所に申し立てて地主の承諾に代わる許可を得る「借地非訟」という手続きを利用すれば、再築が可能になるケースがあります。諦めて無断で建て替える前に、まずは専門家へ相談しましょう。
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借地契約更新時のトラブル

借地契約の更新は、長期にわたる土地利用関係を維持する上で避けて通れない重要な手続きです。ところが借地の更新料が少なくない金額なこともあり、更新はトラブルのきっかけにもなりやすいといえます。
ここでは、「更新料の額」「更新料の支払い義務」「更新手続き」「契約の変更」の4つのテーマについて解説します。
ケース6:法外な更新料を請求された
契約更新のタイミングで、地主から突然「更新料として〇〇万円を支払ってほしい」と高額な更新料を請求され借地人が驚くケースです。
更新料の支払いは慣習として広く行われているものの、法律による支払い義務は定められていません。従って、金額も明確に決まっているわけではありませんが、一般的には借地権価格の5%程度、更地価格の3%程度が目安とされています。
金額が妥当かどうか近隣での事例や裁判例を調べるか、難しい場合は専門家に相談すると確実です。その上で地主に金額の根拠を求め、合意が得られなければ供託や民事調停を利用して冷静に話し合いの場を整える方法もあります。
ただし、更新料の支払い義務がないのは契約書に特段取り決めが明記されていない場合であり、特約として支払いについて定められていれば支払う必要があります。契約書を見直して、更新料や名義変更料に関する特約が記載されているかを確認しましょう。
関連記事:借地権の更新料が高すぎる!相場・計算方法・減額交渉の手順を解説
ケース7:更新料を支払いたくない
借地契約の更新時に地主から更新料を求められたものの、金額の大きさに「本当に払う必要があるのか」「そもそもなぜ支払わないといけないのか」と疑問に思うケースです。
更新料の支払いは法律で義務づけられてはいないものの、一般的にやりとりが行われています。借地権は一回の契約期間が数十年に及ぶこともあるため、土地価格が上昇しても地代を簡単に値上げできない事情があります。その補填や日々の管理料という意味合いを含むと考えられているのです。
こうした背景から、円滑に地主との関係を保つためにも、特約として契約書に記載がなくても、これまで更新料を支払ってきた場合には支払ったほうがよいでしょう。もちろん、支払いが難しい場合は完全に拒否するのではなく、支払い方法や金額について地主との交渉を行って問題ありません。
ケース8:更新の手続きを忘れてしまった
借地契約の更新時期をうっかり過ぎてしまい、契約が切れたことを口実に地主から明け渡しを求められ、応じなければならないのか慌ててしまうケースです。
まず、一般的な借地契約において、「更新手続きを忘れたら借地契約が終了する」ということはありません。なぜなら、借地人を保護するために、借地借家法では「法定更新」という規定があるためです。
法定更新では、「借地上に建物が存在する場合」には、契約期間が過ぎても自動的に従前と同じ条件で更新されたものとみなされます。
(参考: 『e-Gov法令検索 借地借家法第五条』)
ただし、建物がない場合には自動的に契約は終了してしまう点には注意が必要です。
ケース9:旧法から新法へ借地契約の切り替えを求められた
地主から契約の更新前に「次の契約からは新法に切り替える」と言われ、分からないまま応じてしまい後悔してしまうケースです。
借地権には「旧法(借地法)」と「新法(借地借家法)」があり、どちらが適用されるかは「初回契約を結んだ時期」で決まります。平成4年(1992年)7月31日以前に契約した借地は旧法が適用され、それ以降も更新で自動的に新法へ切り替わることはありません。
元々、現在の借地借家法になった経緯として、借地人の権利が強くなりすぎて地主が土地を取り戻せなくなった権利のバランスを調整した側面もあります。借地人の権利内容が変わる可能性があるため、旧法から新法への切り替えには慎重に対応する必要があります。
関連記事:借地権の旧法・新法の違いを徹底解説
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借地契約の終了に関するトラブル

借地契約の終了は、長い契約関係の締めくくりであると同時に、慎重な対応が求められる場面でもあります。契約の終わりは期間満了や双方の事情による合意解約などさまざまですが、契約終了後もわだかまりが残ってしまうのは避けたい事態です。
ここでは、「更新の拒絶」「立ち退き」の2つのテーマについて見ていきましょう。
ケース10:一方的に更新しない旨を告げられた
契約満了が近づいたタイミングで、地主から「自分で利用したいので、次は更新せず更地にして返してほしい」と一方的に告げられてしまい途方に暮れてしまうケースです。
結論からいうと、借地上に建物が存在し、借地人が引き続き土地の利用を希望している場合には借地権は原則として更新されます。従って、単に「売却したいから」といった地主の一方的な要望で借地契約を終了することはできません。
地主が更新を拒否できるのは、「正当な事由」が認められる場合に限られると借地借家法で定められています。また、仮に正当な事由が認められて契約が更新されない場合でも、借地人には地主に建物を時価で買い取ってもらうことができる「建物買取請求権」が認められています。
関連記事:借地権の旧法・新法の違いを徹底解説
ケース11:老朽化を理由に立ち退きを要求された
建物の老朽化を理由に立ち退きを求められ、「本当に出ていかなければいけないのか」と不安になるケースです。
築40年を超えるような古い建物では、耐震性や安全性への不安や、老朽化を機により収益性の高い土地利用に変更したい思惑から地主が更地返還を求めてくることがあります。
しかし前述の通り、建物の老朽化で立ち退きが認められるかどうかは借地借家法で定められた「正当事由」にあたるかどうかによります。さらに借地人自身が建物を必要としている理由も考慮して判断されるため、高齢で転居が難しい、子どもの通学先が近い、長年店舗を併設しているなど生活基盤としての必要性を主張する必要があります。
また、仮に地主側の主張の正当性が強い場合でも、立ち退きになれば立退料の支払いがあることが一般的です。提示された立退料が借地権価格から見て明らかに低いと感じる場合には、判例や相場を参考に増額を求めることも検討しましょう。
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借地権の相続に関するトラブル

契約期間が長い借地権では、地主・借地人のいずれか、あるいは双方の相続も起こり得ます。相続は土地の権利を引き継ぐ重要なタイミングであると同時に、当事者が増えることや相続人と地主との信頼関係が構築されていないことからトラブルがこじれる危険性もあります。
ここでは、「名義変更料の請求」「相続人内の対立」「相続税」の3つのテーマについて見ていきましょう。
ケース12:相続の承諾料・名義変更料を要求された
借地権を相続した際に、地主から「名義変更料」の支払いを請求され、言われるままに支払ってしまったケースです。
譲渡(売却)とは異なり、相続は借地人の権利がそのまま相続人に「承継」されるだけで「移転」ではないため、地主の承諾は不要です。そのため、借地契約書の名義変更手続き自体が必須ではなく、当然ながら名義変更料を支払う義務もありません。
ただし、借地上の建物の登記を怠ると土地が第三者に売却されたときに権利を主張できないため、相続後は地主にその事実を知らせるとともに、借地上の建物を相続人名義に変更しておきましょう。
ケース13:他の相続人と話がまとまらない
親族間で借地権の誰が引き継ぐか、売却するか住み続けるかで意見がまとまらず、地主との連絡や地代の支払いが滞ってしまい、地主とだけでなく家族間トラブルにまで発展してしまうケースです。
借地権を共有名義にすることは可能ですが、将来借地権付き建物として売却する際に相続人全員の同意が必要であり、1人でも反対すれば手続きが全く進みません。自分の共有持ち分だけを売却することも可能ですが、買い手が少なく価格も大幅に低くなりがちです。
こうしたトラブルを避けるには、相続人同士で事前に話し合い、共有状態にならないような遺産分割の内容や相続前の売却について検討すべきでしょう。
ケース14:相続税が高額で支払えない
借地権の相続税額が予想以上に高く出てしまい、「支払えない」と相続人が資金調達に追われてしまうケースです。
借地権の相続税評価は、国税庁が土地の面する道路ごとに価格を定めた「路線価」に、借地権割合を掛けて算出されます。ここから大まかに評価額の目安を把握できますが、計算が複雑であることから予想より高額になる可能性も大きいでしょう。
特に相続財産や相続人の財産に流動性の高い現金資産が少ないような場合には、期限までの支払いが難しくなるケースもしばしば起こります。もし相続税の支払いに不安があるようなら、前もって契約の終了や借地権付き建物の売却について相続人同士での話し合いや地主への相談も検討しましょう。
また、相続が発生したら早めに税理士や借地権に詳しい不動産会社に相談するのがおすすめです。
関連記事:借地権の相続税はいくら?種類別に相続税評価額の計算方法を解説!
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借地権トラブルを防ぐために事例から整理したいこと

借地権トラブルに関する基本知識に基づいた解決策を知っておくことも重要ですが、そもそもトラブルが起こらなければそれが一番でしょう。地主という契約相手がいる以上、完全に防ぐのは難しくても「あらかじめ防げるトラブル」もあるはずです。
そこで、本記事での14のトラブルケースを基に、トラブルを未然に防ぐポイントについて2つの観点から整理してみましょう。
トラブルが集中する借地権の共通条件を把握
14のトラブル事例を分析すると、多くのケースに共通する以下のような前提条件が見えてきます。
- 旧法借地権である
- 相続により共有状態になっている
- 建物が未登記、または登記が不十分
- 契約書・特約の内容を把握していない
それぞれのトラブルは単体の「出来事」として捉えがちですが、実際は上記のような状態のまま放置されていた「結果」として起こるといえるでしょう。
特に、借地権が新法借地権か旧法借地権かでは、法律の規定も借地人の権利の強さも大きく変わってきます。契約書や建物の状態を確認し、現在契約中の借地権がどれにあてはまるのか、どういった条件になっているのかの確認が最も重要です。
現状把握ができていれば、事前にトラブルの発生を避けられる可能性も上がります。
要求を受けたときに確認したい3点
また、内容にかかわらず、地主から何らかの要求を受けた際は以下の3点をまず確認しましょう。
- それは「法律上の義務」か「任意の交渉事項」か
- 金額や条件に具体的な根拠(法律条文・判例・契約条文)が示されているか
- 今すぐ結論を出す必要が本当にあるのか、期限や緊急性は妥当か
これらのチェックの後に冷静に対応することが重要ですが、契約書や法律の内容の理解、そして地主との交渉は慣れていない借地人にとって負担が大きいでしょう。そのため、書面・金額・期限など要求に関する情報が示された時点で、早めに弁護士や借地権に詳しい不動産会社などの専門家に相談し、状況を整理してもらうのが確実です。
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まとめ

借地権トラブルはタイミングや状況によって多岐にわたります。記事内の14のケースから見ても、法律や契約内容、地主との交渉は専門知識が不可欠であり、早期の状況整理が解決の鍵となります。
借地権のトラブルは放置しても改善しません。自身の借地権を守るためにも、借地権に詳しい弁護士や不動産専門家への相談を検討しましょう。専門家の客観的な視点が、無用な支払いや権利喪失を防ぎ、最適な道筋を導きます。
リアルエステートが提供する「おうちの相談室」では、借地権の扱いに長けた専門家が売却やトラブルに関するお悩みをサポートいたします。ヒアリング・状況整理から交渉・調整まできめ細やかに対応いたしますので、借地権に関する心配事がございましたらお早めにご相談ください。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける