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2025/08/31地代の値上げ交渉】拒否できる?借地人・地主別の対処法と供託制度を解説
- 底地・借地
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
借地権の毎月の支払いについて値上げ交渉された際にどう行動すればいいかご存知でしょうか。
この記事では、借地料の値上げを交渉された際の対処法や、交渉の仕方についてまとめました。
地主側の注意すべきポイントなどもまとめているため、地主も借地人も参考になるような内容になっています。
ぜひ最後までご覧ください。
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Contents
借地権の種類や更新について
まずは借地権の更新について説明します。
借地権には、更新できるパターンとできないパターンがあり、それぞれで契約期間が異なります。
借地権は、1992年以前よりあった旧借地権と、新法が制定したのちに生まれた普通借地権、定期借地権の3パターンに分けられます。
旧借地権
旧借地権の場合は、建物の構造により契約期間が異なります。
契約存続期間は、木造の建物の場合であれば20年、鉄筋コンクリートや鉄骨の建物であれば30年だと定められています。
契約期間を定めていなかった場合や、契約期間が上記よりも短い場合には、木造の建物は30年、鉄筋コンクリートや鉄骨の建物であれば60年で無条件に定められます。
契約の更新は、地主に拒否されても正当事由がない限りは可能です。
正当事由とは、契約を拒否するのに真っ当な理由のことで、その土地の上で違法行為をしていたことが明らかになった場合などを指します。
そのため、借地人は、正当事由がない限りは契約期間の延長や契約更新など、借地人判断で実質的に行うことが可能で、本人の希望次第では半永久的に土地を借りられます。
普通借地権
普通借地権は、1992年に成立した新法借地借家法に基づいた借地権で、定期借地権よりも旧借地権に近い借地権です。
新法の借地権は、建物の構造により契約期間が変わることはありません。
建物の構造に関わらず、契約の存続期間は30年間で定められ、契約時に契約期間を定めていない場合にも30年間で設定されます。
旧借地権と同様に正当事由がない限りは契約更新を拒まれることはありませんが、異なる点としては買取請求権が付与されている部分にあります。
契約期間が終了した際に、建物の買取請求権を行使することで、その時の時価で建物を買い取ることが可能になります。
また、契約更新後の存続期間に関しても旧借地権と変わる点があります。
1回目の更新後は20年間、2回目の契約更新以降は10年間で基本的に定められます。
関連記事 : 定期借地権と普通借地権は何が違う?それぞれの契約内容やメリット・デメリットを徹底解説!
定期借地権
定期借地権は、新借地借家法に基づいた借地権で、契約更新を前提としない借地権です。
普通借地権や旧借地権の場合、一般的に契約更新することを前提として土地を貸していました。
しかし、定期借地権の場合、契約更新しない前提であり、契約更新ができない代わりに契約の存続期間が50年と長めに設定されています。
また、契約期間が満了すると、借地人はその土地を更地にして地主に返還する必要があり、より長期的にその土地に住み続けたいと考えるのであれば定期借地権はオススメできません。
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借地料の値上げ要求への具体的な対応方法
契約更新時に借地料の値上げを要求され、交渉に至るようになることは少なくありません。
しかし、何も知識がないまま値上げを要求されると、何に対してどう手を付ければいいかわからなくなり、地主の思うがままに動かされてしまうでしょう。
そうならないためにも、本項で正しい知識を身に付け、適切な交渉ができるようになりましょう。
値上げ要求時に取るべき初期対応
土地価格を把握する
地主と交渉する前に、まずは土地の価格が適正であるかどうかを確認しましょう。
これにより、値上げを要求されてきた金額が妥当であるかどうかを判断できます。
もし妥当であれば、ある程度受け入れる必要がありますし、逆に妥当でない場合は拒否することも検討できます。
土地価格を把握するためには、周辺の類似物件の地代を調べたり、土地に関する税制についてインターネットで調べたりすることが有効です。
不動産会社に依頼して相場感を把握することも有効です。
当初の契約書の内容を確認する
当初交わした契約書の内容を再確認し、地代に関する記載がないかを確認しましょう。
もし地代の値上げに関する記載があれば、その契約内容に従って話を進める必要があります。
何も記載がなくても、借地借家法に基づいた条件下で地代の値上げ交渉を行うことは可能になっています。
特約という形で記載されていることも多く、十分に契約書の内容を確認しておきましょう。
交渉時の戦略と実践テクニック
値上げの根拠を地主に確認する
まずは、値上げの根拠を理解していないと交渉の余地がありません。
営業の際にも、まずは相手のことを知ることが重要というように、値上げ交渉においても同様です。
「なぜ地主はこのような要求をしてきたのか」と疑問を持ち、一方的に拒否するのは避けましょう。
可能であれば、値上げ要求してきた根拠やデータなどがあればそれを見せてもらいながら説明を受けることが良いでしょう。
別の選択肢を提示する
単に値上げ交渉を拒否するのではなく、双方の妥協案を見つけられるように工夫しましょう。
地主側も借地人側も気持ちよく関係を続けられるよう、別の選択肢を提示してみましょう。
例えば、値上げの幅を縮小してもらったり、値上げに応じる代わりに契約更新料を免除してもらうようお願いするなどの具体策が考えられます。
長期的に地主と関係を保ち続けたいという意思表示をすることで、地主も納得してくれる可能性が高まるのではないでしょうか。
交渉が進まない場合の対策と対応
供託を利用する
交渉がうまくまとまらず、値上げされた地代が適用される場合もあります。
しかし、その場合には法務局の「供託」という制度を利用しましょう。
供託とは、法務局が指定する供託所で地代を預けることで、地代を支払ったと見なす制度です。
つまり、値上げ前の地代を地主に支払って、その支払いを拒否されたとしても、供託制度を利用すれば、拒否されることに関係なく値上げ前の地代を支払えるのです。
この手続きには、実印や印鑑証明書、住民票など必要書類があり手間がかかってしまうのが難点です。
そもそも値上げに応じる必要がない時
そもそも、契約書の内容からしても値上げ交渉に応じる必要がない場合には、値上げした金額の地代を要求されたとしても値上げ前の地代を納めていれば法律上問題ありません。
仮に、地主との話し合いが決裂し、値上げされた地代が適用された場合でも、その物件に住み続ける限りは根気強く前の地代を支払い続けましょう。
この際に一番してはいけないことは、家賃滞納です。
交渉がまとまらなかったからといって地代を一切支払わなければ、それは滞納とみなされ、契約解除に繋がってしまう可能性があります。
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地主との値上げ交渉をスムーズに進めるためのコツ
地代の値上げが認められるケース
- 土地の価格が著しく上昇した場合
- 地主の経済状況が大きく変化してしまった場合
- 周辺の似た土地や建物などの地代と比較して、従来の地代が安すぎた場合
- 土地への租税公課が増額した場合
など
値上げを実施する方法
交渉
まずは借地人に交渉を持ちかけることが一般的です。
値上げを認めさせるためには、一方的な値上げは不可で、当事者間で合意のもとに値上げしなければなりません。
そのため、まずは地代の増額を求める文書などを作成し、交渉を開始することから始めましょう。
裁判
当然、借地人はより安くの地代で済ませたいはずです。
そのため、なかなか交渉に応じてくれないことが多いでしょう。
そのため、交渉を拒まれて決裂してしまった場合には、法的な手続き(裁判)を通じて値上げを要求しなければなりません。
話し合いを続けるために調停という段階を挟む場合もありますが、最終的に訴訟にまで持ちかかるケースも少なくありません。
訴訟の際には、値上げが法的に認められるように主張や立証する必要があり、多くの手続きや手間がかかってしまいます。
そのため、まずは話し合いで解決できるように努力することを強くオススメします。
交渉時のポイント
根拠を明確に説明する
交渉時には、まずはその根拠を示すことが最も重要になります。
借地借家法という法律に基づいた交渉であること、周辺の地代よりも明らかに安い地代であること、地主の経済状況が著しく悪化してしまったこと等、包み隠さずに明確に話しましょう。
具体的なデータや数値などを示しながら根拠を説明すると尚いいでしょう。
必要に応じて裁判まで持ちかける旨を説明する
値上げの交渉に対して確固な法律上の理由があるならば、訴訟という形で地主の交渉が認められるケースも多いでしょう。
そのため、法的な手段をとることもあるということをさりげなく伝えることで、大きな効果が得られる可能性があります。
しかしながら、一方的に「裁判するから早く交渉に応じろ」というようなスタンスでは、借地人との関係が悪化する一方です。
状況に応じて使い分けたり、話し方に気を付けたりしましょう。
段階的に値上げ交渉することを念頭においておく
段階的に値上げする旨を伝えると、交渉が成立しやすくなるでしょう。
借地人の立場としては、従来の地代から突然大幅に値上げを要求されると、受け入れがたくなります。
そのため、半年や年ごとに、段階的に値上げする旨を提案することが有効です。
地主にとっては、当然値上げ交渉が長引いてしまう従来の地代のままよりは得策だと言えますし、お互いの妥協案になり交渉を進めやすくなるでしょう。
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まとめと今後の対応のアドバイス
- 借地権には三種類あり、それぞれ建物の構造などにより契約期間の差がある
- 借地権の値上げ交渉は、妥当な理由だと認められた場合にのみ有効
- 借地権の値上げを要求された際には、感情的にならずにまずはその根拠をヒアリングする
- 借地権の値上げを交渉したい場合には、根拠を明確にし、妥協案を導くことが大切
この記事では、借地権の値上げに関する内容をまとめましたが、いかがでしたでしょうか。
値上げの交渉は、借地人からしても地主からしてもいい気持にはなりにくい話し合いでしょう。
そのため、最も大事なことは、相手のことを理解して双方が納得したうえで妥協案を見つけることではないでしょうか。
契約期間の定めは基本的に長期に及ぶため、双方の関係性が悪化しないような交渉を心がけましょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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