最終更新⽇時
2025/10/09借地からの立ち退き拒否は可能?拒否できないケースと交渉の流れ
- 底地・借地
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける

借地に住んでいると、突然地主から「契約を更新しない」「立ち退いてほしい」と言われることがあります。長年住み慣れた家を手放すのは簡単なことではなく、引越し費用や生活基盤の不安も大きいものです。
しかし、借地人の権利は借地借家法で強く守られており、地主の一方的な都合で立ち退きを迫られても必ず応じる必要はありません。
本記事では、借地からの立ち退きを拒否できる条件と拒否できないケース、さらに立ち退き料の相場や交渉の流れについて分かりやすく解説します。正しい知識を持つことで、冷静に対応し有利に行動できるようになります。
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Contents
地主から立ち退きを求められたら最初に確認すべきこと

突然「立ち退いてほしい」という通知を受け取ったとしても、慌てて応じる必要はありません。借地借家法という法律は、借地人が安心して住み続けられるよう強い保護を与えています。そのため、地主の一方的な都合だけで立ち退きを迫られることはありません。
まずは冷静に内容を確認し、自分にとって不利にならないよう準備を整えることが大切です。
契約の種類を確認する
最初に見るべきは、借地契約が普通借地権か定期借地権かという点です。普通借地権であれば、更新拒絶には正当事由が必要であり、簡単に立ち退きを強制されることはありません。一方、定期借地権は期間満了で終了するため、更新や延長は原則できません。契約書にどう記載されているかを必ず確認しましょう。
通知書の内容を確認する
地主から送られる立ち退き要求は、通常「内容証明郵便」で届きます。ここには契約更新を拒絶する理由や期限が記載されています。受け取った通知書は破棄せず、コピーを取り、今後の交渉や裁判で証拠として使えるよう保管してください。
期限や手続きの適正性を確認する
借地契約の更新拒絶は、法律で「契約満了の1年前から6か月前まで」の間に通知することが定められています。この期間を外れている場合、その通知は無効になる可能性があります。通知のタイミングや記載内容が適切かどうかを確認することも大切です。
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立ち退きを拒否できない主なケース

借地人の権利は法律で強く守られていますが、一定の条件がそろえば立ち退きを拒否することが難しくなります。ここで重要になるのが「正当事由」という考え方です。地主にとっての必要性と借地人への影響、さらに補償の有無などを総合的に判断し、裁判所が妥当と認めた場合にのみ、更新拒絶や契約解除が認められます。代表的なパターンを見ていきましょう。
地主に正当事由がある場合
地主が自分でその土地を使う強い理由を持ち、あわせて立ち退き料など合理的な補償を示している場合には、正当事由が認められやすくなります。
例えば、地主が居住用の住宅を建てたい、事業のために敷地を利用したいといったケースが典型です。このとき、補償の金額が大きいほど地主の主張が有効と判断される傾向にあります。
建物が危険なほど老朽化している場合
借地に建つ建物が著しく老朽化し、倒壊などの危険があるときは、借地人に住み続けさせることが周囲の安全を脅かすと判断されます。この場合、更新拒絶に地主の正当性が認められる要因となります。
単に古いだけではなく、「危険」と評価されるかどうかがポイントで、耐震性の不足や大規模な修繕が困難な状態が根拠とされることが多いです。
借地人に契約違反がある場合
借地人自身が契約条件を守っていないときは、立ち退きを拒否することは難しくなります。代表的なのは以下のケースです。
- 地代を長期間滞納している
- 地主の承諾を得ずに建物を増改築した
- 契約に反する用途で土地を利用した
こうした契約違反は「債務不履行」と見なされ、地主は契約を解除することができます。借地人に落ち度がある場合、裁判でも立ち退きを免れるのはほぼ不可能と考えてよいでしょう。
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立ち退き料はいくら?相場と算定の仕組み

立ち退き要求に直面したとき、多くの借地人が気になるのは「いくら補償がもらえるのか」という点でしょう。立ち退き料には明確な法律上の計算式はなく、ケースごとに金額が変わります。しかし、過去の判例や実務ではいくつかの目安が使われています。
借地権価格を基準に算出される
立ち退き料の出発点は「借地権価格」です。これは土地の評価額に借地権割合を掛けて算出されます。例えば土地の評価額が1億円、借地権割合が60%なら、借地権価格は6,000万円です。この金額が交渉の基礎となり、立ち退き料もこの水準を踏まえて決まります。
判例では「借地権価格の30〜50%程度」を立ち退き料とした例が多く、実務上の相場感として参考にできます。
補償費用が上乗せされる
実際の立ち退き料は、借地権価格だけではなく、以下のような費用が加味されることがあります。
- 引越しや建物解体にかかる費用
- 店舗や事務所の場合は営業補償や顧客喪失による損失
- 新居や新たな借地を探すための費用
特に事業用借地の場合は、営業権や得意先喪失による補償が大きくなる傾向があり、数千万円規模の補償が認められることもあります。
地主の事情によって変動する
立ち退き料は地主側の「正当事由」の強さによっても変わります。地主の事情が弱ければ弱いほど、裁判所は高額の立ち退き料を命じやすいのです。逆に、借地人が地代を滞納している、建物が危険な状態にあるなど、借地人側に落ち度があれば金額は下がります。
交渉の現場では、地主が提示する額が低くても、判例の相場や補償費用を示すことで増額を求めることができます。専門家に依頼して不動産評価や損失額を算出してもらえば、交渉を有利に進められるでしょう。
関連記事:借地の立ち退き料の相場とは?地主が知っておくべき正当事由と交渉の進め方を徹底解説
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立ち退き交渉と裁判の流れ

立ち退き問題は、通知を受け取ってすぐに解決するものではありません。多くの場合は交渉を重ね、それでもまとまらなければ裁判に進むという流れになります。ここでは一般的な進行の順序を確認しておきましょう。
交渉段階
地主からの立ち退き通知は、通常「内容証明郵便」で届きます。ここで示された理由や期限が妥当かどうかを確認し、必要であれば異議を申し立てます。
交渉では、立ち退き料の金額や支払い条件が大きな焦点となります。借地権の価値、移転に伴う損失、引越し費用などを根拠に、妥当な補償を求めることが重要です。交渉の際は、感情的なやりとりではなく、客観的な資料や根拠をもとに主張することで、合意に近づきやすくなります。
裁判段階
もし交渉で合意できなければ、最終的には裁判に持ち込まれることになります。裁判所は、地主の主張に正当性があるか、借地人への影響がどれほど大きいか、提示された立ち退き料が適切かを総合的に判断します。
裁判に進むと解決までに時間がかかりますが、その間も借地人は土地を使用し続けられます。したがって、裁判を恐れて拙速に妥協する必要はなく、必要に応じて専門家の助言を受けながら冷静に対応することが大切です。
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立ち退きを拒否したいときの具体的な対処法

立ち退き通知を受け取ったとしても、すぐに応じる必要はありません。借地人が取るべき行動を段階的に整理しておくことで、不利な条件で合意してしまうリスクを減らせます。
借地を利用し続ける必要性を示す
「ここに住み続けなければならない理由」を明確にしておきましょう。
例えば、子どもの通学、家族の介護、地域社会とのつながり、事業基盤の維持など、立ち退きが生活や仕事に大きな支障を与える事実を具体的に整理します。これらは裁判所の判断材料となり、立ち退きを拒否する正当性を補強できます。
地主の主張を精査する
地主が提示している立ち退き理由が、本当に法律上の正当事由に当たるのかを確認します。契約書の条項、これまでの賃料の支払い状況、建物の状態などを照らし合わせ、合理性が欠ける点を指摘できれば有効です。過去の判例を調べ、類似のケースで借地人が勝訴した事例を参考にするのも有効な方法です。
専門家に相談する
立ち退き交渉や裁判は法律知識が不可欠です。弁護士や借地権に詳しい不動産会社に早めに相談すれば、適切な戦略を立てやすくなります。専門家の助言を受けることで、地主との交渉を有利に進められ、必要に応じて代理人として対応してもらうことも可能です。
関連記事:借地権トラブルを弁護士に相談したほうがよい5つの事例|弁護士費用の目安
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定期借地の場合は拒否できない?
ここまで説明してきた「立ち退きを拒否できるかどうか」のルールは、普通借地権を前提としています。ところが、定期借地権の場合は事情が異なります。
定期借地は契約時点で「期間が満了したら終了する」と取り決められており、更新や延長は原則できません。契約書に「更地にして返還する」と記載されていれば、そのとおりに返還義務が発生します。したがって、普通借地のように「正当事由がないから拒否できる」という主張は通用しません。
ただし、定期借地でも例外があります。契約によっては建物買取請求権が認められていたり、地主と借地人の合意で条件変更が行われることもあります。また、満了時の対応を見据えて、事前に売却や等価交換といった出口戦略を検討することも可能です。
定期借地においては、契約書の条文がすべての基準になります。更新を前提にできないため、満了を迎える前から準備を進めることが重要です。
関連記事:借地借家法第38条とは?定期建物賃貸借契約の基本をわかりやすく解説
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まとめ

借地人は法律で強く保護されており、地主の一方的な都合だけでは立ち退きを迫られることはありません。普通借地であれば、正当な理由がなければ拒否できる可能性が高く、立ち退き料の交渉余地も大きいです。
一方で、建物の危険な老朽化や契約違反がある場合、あるいは定期借地の場合は、拒否が難しい状況も存在します。立ち退き問題は、法律や判例を踏まえた総合判断となるため、ケースごとの対応が欠かせません。
通知を受け取ったら、まずは冷静に内容を確認し、必要に応じて専門家に相談しましょう。リアルエステートの「おうちの相談室」では、借地や底地、共有持分といった複雑な不動産問題を、不動産のプロと弁護士・税理士が連携して解決に導きます。早めに相談することで、不要なトラブルを避け、有利に交渉を進めることができます。
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