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2024/01/15最終更新⽇時
2024/01/15借地借家法第38条とは?定期建物賃貸借契約の基本をわかりやすく解説
- 底地・借地


借地借家法とは、どのような法律でしょうか。この記事を読むことで、借地借家法第38条について知ることができ、気を付けるべきポイントについても理解することができます。
借地借家法第38条とは?
借地借家法の第38条は、定期建物賃貸借についてです。以下が原文です。
(定期建物賃貸借) 第38条
期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。
2 前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。
3 第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。
4 建物の賃貸人は、前項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、建物の賃借人の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。)により提供することができる。この場合において、当該建物の賃貸人は、当該書面を交付したものとみなす。
5 建物の賃貸人が第三項の規定による説明をしなかったときは、契約の更新がないこととする旨の定めは、無効とする。
6 第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間(以下この項において「通知期間」という。)に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。
7 第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借(床面積(建物の一部分を賃貸借の目的とする場合にあっては、当該一部分の床面積)が二百平方メートル未満の建物に係るものに限る。)において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。
8 前二項の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。
9 第三十二条の規定は、第一項の規定による建物の賃貸借において、借賃の改定に係る特約がある場合には、適用しない。
以上のように、定期建物賃貸借に関する規則が、この第38条で定められています。
定期建物賃貸借について
第38条で定められている定期建物賃貸借とは、借家の中でも更新無しの借家契約を意味します。
つまり定期建物賃貸借契約とは、期間の定めがある賃貸契約です。更新が認められないので、期間の満了を持って契約が終了します。契約を結ぶ際には、口頭での契約は認められておらず、必ず「公正証書」などの書面を用いて契約締結を行う必要があります。
契約の際に賃貸人が行うこととしては、更新がない点と期間満了後には契約が終了する点を、書面で説明する作業です。定期建物賃貸契約は、将来的に大規模な修繕の予定があるものの、一時的に賃貸に出したい場合、またウィークリーマンションなどのように、利用期間が決まっている賃貸物件に用いられることが多い契約形態です。
このように定期建物賃貸借は、期間が来れば確実に一旦借家契約は終了しますが、再契約も可能です。一方で再契約の場合であっても、新しい契約を締結するという形になるため、ここは覚えておきましょう。
そして定期建物賃貸借は、期間の定めに特徴があります。普通の借家契約においては、1年未満の期間は認められていません。1年未満の期間を定めた場合は、期間定めのない賃貸借になるようになっています。
一方で定期建物賃貸借は、前述したように当然期間を定めるものの、1年未満の期間を定めた場合でも、その期間の定めは有効になります。そのため、海外出張に行っている6ヶ月間だけ人に部屋を貸すというようなことも可能です。
借地借家法第38条での注意点(第二項・第三項)
第38条のうち
『期間の定めがある建物の賃貸借をする場合においては、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、第三十条の規定にかかわらず、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。この場合には、第二十九条第一項の規定を適用しない。 』と記載がありますが、
ここで「公正証書」という文言が出ているように、書面での契約が必須な点に注意です。
『公正証書による「等」書面』と記載があるように、公正証書でなくても「書面」であれば認められます。
第二項に記載されている「定期建物賃貸借の締結」で気を付けるべきポイントを以下に記載します。
第二項では『前項の規定による建物の賃貸借の契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その契約は、書面によってされたものとみなして、同項の規定を適用する。』という記載があります。
契約締結の際には「書面」で締結する必要があり、公正証書でなくても可能です。とにかく定期建物賃貸借は従来の借家契約と異なるため、更新が発生しない旨の説明を、契約締結前に行っておく必要があります。
契約締結前においての賃借人の説明に関しては、第三項にしっかり記載があります。
『第一項の規定による建物の賃貸借をしようとするときは、建物の賃貸人は、あらかじめ、建物の賃借人に対し、同項の規定による建物の賃貸借は契約の更新がなく、期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。 』と、あらかじめ賃借人に説明することが定められています。必ず締結前に賃借人に説明することを忘れないようにしましょう。
借地借家法第38条での注意点(第六項・第七項)
続いて、第六項・第七項において注意すべきポイントをまとめたいと思います。
第六項では、契約の終了通知に関する規則が定められています。
定期建物賃貸借は、期限を迎えると契約終了になります。しかし期限到来日に、立ち退きを即要求して良いわけではありません。賃貸借が終了する旨の通知は事前に出すという規定が定められています。
具体的に『第一項の規定による建物の賃貸借において、期間が一年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の一年前から六月前までの間に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物の賃借人に対抗することができない。ただし、建物の賃貸人が通知期間の経過後建物の賃借人に対しその旨の通知をした場合においては、その通知の日から六月を経過した後は、この限りでない。』という記載が第六項にあります。
ポイントとしては、賃貸借の期間が1年以上の場合に通知が必要という点です。1年未満の契約も可能ですが、このような短期間契約の場合には賃借人も期日を忘れることはないだろうという前提の元で、通知は1年以上の契約期間の場合に必須とされています。
そのため1年未満の契約の際には、十分に期限を意識しておく必要があります。
次に第七項目では、賃借人からの途中解約についての記載があります。
定期建物賃貸借は、期限が来れば確実に終了する契約です。逆に考えると期間までは貸し続ける必要があり、同時に賃借人は借り続ける必要があります。借家人が立ち退きを希望する場合、出ていくことも可能ですが、退去後も家賃を払い続ける必要があります。
借家人がサラリーマンだった場合、もし急に転勤で異動が決まった際などには、転勤先の家賃と二重払いになるケースも予想されます。そこで第七項では、そのような状態になった方を救済できるような規定が定められています。
具体的には、『第一項の規定による居住の用に供する建物の賃貸借において、転勤、療養、親族の介護その他のやむを得ない事情により、建物の賃借人が建物を自己の生活の本拠として使用することが困難となったときは、建物の賃借人は、建物の賃貸借の解約の申入れをすることができる。この場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から一月を経過することによって終了する。 』と記載があります。
ここで注意すべき点は、上記申し入れが「賃借人」側からしかできない点です。「賃貸人」側からは解約はできず、あくまで賃貸人は、期間まで貸し続ける必要があります。
賃借人が解約可能な物件は「居住用」の建物に限ります。また細かく面積が定められており、床面積が200㎡未満の建物となっているので注意してください。そして、賃借人がこの解約申入れた場合、解約申し入れを行った日から1か月が経過すれば解約が完了します。普通の建物賃貸借の場合、賃借人の解約申し入れ日から3か月で終了するので、定期建物賃貸借の場合は終了までの期間が短い点に注意です。
この規定は、借主がやむを得ない事情で、生活本拠地として賃借している建物を使用することが出来なくなった場合に、解約の申入れ日から1カ月を経過という条件付きで定期借家契約を解約することができる特例です。中途解約ができる旨の特約がなくとも実行できる強行法規となっています。一方で、この中途解約はいつでも可能なわけではなく、借主に一般的に見てやむを得ない事情(転勤、療養、親族の介護など)が発生した場合に限るとされています。
5.まとめ
今回は、借地借家法第38条に記載されている「定期建物賃借法」について解説しました。難しい用語でまとめられていますが、後から規則に気付いた場合手遅れになる、期限の定めなどがありましたので、その点には十分に気を付けるようにしましょう。
この記事が、借地借家法第38条について理解を深めたい方にとって参考になりましたら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。