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2025/10/09借地の持ち家を処分する方法と費用は?|地主の承諾や解体の注意点
- 底地・借地
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける

借地に建てた持ち家を処分したいと思っても、地主の承諾が必要だったり、解体費用がかかったりと、思うように進められないケースは少なくありません。さらに、処分方法によっては高く売却できることもあれば、負担を減らすために更地で返還するしかない場合もあります。
この記事では、借地上の家を処分する際の5つの方法と費用の目安をわかりやすく整理します。地主との関係や契約内容を踏まえて、自分に合った選択肢を見つけるためのポイントを解説します。
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Contents
借地の持ち家をどう処分する?選べる5つの方法

借地に建てた持ち家を処分する方法は、大きく分けて5つあります。
- 地主に買い取ってもらう
- 底地と一緒に売却する
- 第三者へ売却する
- 賃貸物件として貸し出す
- 建物を解体して更地で返還する
それぞれの方法には、メリットとデメリット、かかる費用や地主の承諾の要否などが異なります。たとえば地主に直接買い取ってもらうのはスムーズで承諾料も不要ですが、第三者へ売却する場合は承諾料が発生する可能性があります。
■自分に合う持ち家の処分方法をかんたんに判定
Q1. 地主に売却の相談ができそうか?
Yes → 「地主に買い取ってもらう」 または 「底地と一緒に売却」へ
No → Q2へ
Q2. 第三者に売却しても承諾料を払う余力はあるか?
Yes → 「第三者へ売却」へ
No → Q3へ
Q3. 借地上の家を維持して収益化したいか?
Yes → 「賃貸物件として貸し出す」へ
No → 「建物を解体して更地で返還」へ
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処分前に欠かせない「契約・登記・残存期間」の確認

借地に建てた家を処分する前に、いくつかの基本条件を確認しておく必要があります。これを整理せずに進めると、後から地主との交渉や契約手続きで行き詰まるケースが多いです。
契約形態の確認
自分が結んでいる契約が「普通借地権」「定期借地権」「旧法借地」のどれなのかを特定する必要があります。
- 普通借地権:更新が可能で、地主の承諾を得やすい
- 定期借地権:期間満了で終了、原則として売却や賃貸は難しい
- 旧法借地:更新拒否がほぼできないため、地主との交渉が長期化しやすい
たとえば「定期借地なのに第三者へ売却しようとしても買い手がつかない」「旧法借地だから地主が強く出られない」といった具合に、契約形態は処分の方向性そのものを決めてしまいます。
契約残存期間
契約の残り年数は、借地権の価値を大きく左右します。残存期間が20年以上あれば評価は高くつきやすいですが、10年未満だと金融機関の担保対象にならなかったり、第三者への売却も難しくなったりと、苦戦する恐れがあります。
たとえば残り3年しかない借地権では、買主が融資を受けられないため市場価値が大幅に下がるでしょう。反対に、残り30年ある場合は、地主以外にも複数の買主候補が現れる可能性があります。
登記の有無
借地権が「地上権」として登記されている場合、譲渡や担保設定に地主の承諾は不要です。一方、「賃借権」しかなく、しかも未登記だと、地主の承諾が必須なうえ、第三者への売却がほぼ不可能になります。
特に「建物だけ登記があるケース」では、借地権自体が登記されていなくても、建物登記を根拠に借地権を主張できる場合があります。この違いを知らずに動くと「権利を証明できずに取引が進まない」という事態に陥ります。
地代の支払い状況
過去に地代を滞納していると、地主が承諾に応じてくれないことが多くあります。承諾料の交渉や売却契約をスムーズに進めるためには、未払いをすべて清算してから臨むのが鉄則です。
また、長期間の滞納歴があると「信頼できない借地人」と見られ、地主が買取を拒否する要因にもなります。地代の支払い履歴は、処分交渉の成否に直結する重要な前提条件です。
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借地の持ち家、どの処分方法を選ぶべき?判断のポイント

持ち家の処分の可否と相性は、契約の残期間、建物の状態、地主の姿勢、時間的制約の4軸が影響することがわかりました。ここでは、検討すべき順番を固めるために、以下の基準を紹介します。
地主に買い取ってもらう
地主が協力的で、将来の土地活用を見据えているときに最優先で検討します。契約の残期間が短くても進めやすく、手続きの複雑さが最小化できます。地代の滞納がある場合は清算の意思が示せるかも判断材料になります。
底地と一緒に売却する
地主が「底地も手放して構わない」という姿勢で、かつ買い手候補が完全所有を強く望むときに有力です。価格は伸びやすい一方、売買代金の配分や引渡し条件の調整が必要になるため、合意形成に時間の余裕があるケースに向きます。
第三者へ売却する
地主の協力が乏しい、または資金・意向の面で買取が難しい場合の現実的な選択肢です。契約残期間が十分にあり、権利関係や登記が整っているほど成立しやすくなります。短期で現金化したい、スケジュールが厳しい、といった事情がある場合にも適合します。
賃貸に出す
売却ニーズが低い立地や、建物の状態が賃貸に耐える場合に検討します。地代と修繕費を含めた収支がプラスに乗る見込みがあること、空室リスクを許容できることが前提です。大規模な改修が必要なときは、工期・承諾の要否・資金計画の三点で実現性を見極めます。
更地にして返還する
老朽化が進み、売却・賃貸ともに成立しにくいと判断した場合の整理策です。契約の満了時期が近い、維持コストや管理負担を早期に止めたい、といった条件が揃うほど選びやすくなります。返還の条件(整地レベル・残置物の扱い)を事前にすり合わせられるかも重要な基準です。
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借地の持ち家を処分する際の手続きと必要書類

借地上の持ち家を処分するときには、どの方法を選ぶ場合でも共通する進め方があります。まずは全体像を把握し、必要書類をそろえることでスムーズに進められます。
1. 地主への打診と承諾取得
最初のステップは、地主に処分の意向を伝えることです。売却や譲渡の際には「承諾書」や「合意書」が必要になります。承諾料の有無や金額はここで話し合うことが多く、承諾書は買主や金融機関にも提示する重要書類です。
■主な必要書類
- 借地契約書の写し
- 承諾依頼書(任意様式)
- 承諾書または合意書
- 印鑑証明書
2. 不動産会社や専門家への依頼
売却や底地との同時処分を進める場合、不動産会社に仲介を依頼するのが一般的です。仲介契約を結ぶ際は、査定書や媒介契約書を交わします。賃貸化を検討する場合も、管理委託契約書などの書類が必要になります。
■主な必要書類
- 媒介契約書
- 査定書
- 管理委託契約書
- 本人確認書類
3. 売買契約・賃貸契約の締結
処分方法に応じて「売買契約書」や「賃貸借契約書」を作成します。第三者に売却する場合は、地主の承諾を得た証明書類を契約に添付して信頼性を確保する必要があります。
■主な必要書類
- 売買契約書
- 賃貸借契約書
- 重要事項説明書
- 承諾書添付資料
4. 解体・原状回復が必要な場合
更地返還や契約条件に基づき建物の解体が必要な場合には、解体業者と契約を結び、工事の完了証明を地主に提出します。あわせて、電気・ガス・水道などライフラインの停止手続きも済ませ、その確認書類を用意しておくことが求められます。
■主な必要書類
- 解体工事契約書
- 工事見積書
- 工事完了証明書
- ライフライン停止に関する確認書類(電力会社やガス会社の廃止証明など)
5. 相続や登記に関わる場合
相続で借地上の家を取得した場合や登記が未了のまま放置されている場合は、処分の前に登記を整える必要があります。司法書士が手続きを行うのが一般的です。
■主な必要書類
- 登記事項証明書
- 相続関係書類(戸籍謄本、遺産分割協議書)
- 固定資産評価証明書
- 委任状(司法書士用)
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借地の持ち家を処分するときにかかる費用と相場

借地権付きの建物を第三者に譲渡する場合や、建物にローンを組んで抵当権を設定する場合、多くのケースで地主の承諾と「承諾料」が必要になります。
これは地主の立場から見れば、借地権を譲渡されることで相手が変わり、リスクが生じるため、それに対する対価という意味合いがあります。
- 相場:借地権価格の5〜10%
- 例:借地権価格が2,000万円 → 承諾料100〜200万円
※承諾料は契約や地域慣習によって変動します。必ず地主と事前協議が必要です。
解体費用(更地返還時)
借地契約の終了時や、売却せずに更地で返還する場合、建物の解体費用は借地人が負担します。構造や広さ、立地(狭小地・接道条件など)によって費用は変動します。
- 木造:1坪あたり約3〜4万円
- 軽量鉄骨造:1坪あたり約4〜6万円
- 鉄筋コンクリート造:1坪あたり5〜8万円
- 例:木造30坪 → 解体費用 約90〜120万円
※解体業者に見積もりを複数依頼し、アスベストの有無や残置物処分の費用も確認を。
仲介手数料(売却時)
不動産会社を通じて売却する場合には、成功報酬として「仲介手数料」が発生します。
この金額は法律で上限が定められており、基本は次の計算式で算出されます。
- 計算式:売買価格×3%+6万円(+消費税)
- 例:売買価格2,000万円 → 仲介手数料 約72万6,000円(税込)
※業者によっては値引き交渉に応じることもあるので、複数社に相談を。
登記関連費用(相続・売却時)
名義変更や相続登記を行う際には、登録免許税・司法書士報酬などが発生します。名義が正しくないままでは売却や譲渡が進められません。
- 登録免許税:固定資産評価額 × 0.4%(相続)
- 司法書士報酬:7〜10万円程度
- 例:固定資産評価額2,000万円 → 登録免許税8万円+報酬7万円前後
※相続未了の場合は、遺産分割協議の取りまとめも必要になることがあります。
税金(譲渡所得税・印紙税など)
不動産を売却して利益(譲渡益)が出た場合には、所得税(譲渡所得税)や住民税がかかります。所有期間によって税率が大きく変わるため、事前にシミュレーションしておくことが重要です。
- 所有期間5年超:長期譲渡所得として20.315%
- 所有期間5年以下:短期譲渡所得として39.63%
(いずれも所得税・住民税・復興特別所得税を含む)
また、売買契約書を作成する際には印紙税も必要です。軽減措置により、令和9年3月31日までの間は税額が引き下げられています。
- 例:売買金額2,000万円の契約書 → 印紙税1万円(軽減措置適用時)
※譲渡損が出る場合には譲渡所得税は課されません。ただし、損益通算や繰越控除など確定申告での扱いに注意が必要です。
関連記事:自宅売却時の譲渡所得税計算法|取得費や税額をわかりやすく解説
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地主の承諾を得るためのステップ

借地上の家を処分する多くのケースでは、地主の承諾が必要になります。承諾を得るには一定の手順があり、スムーズに進めることで不要なトラブルを避けられます。ここでは地主の承諾の基本から、代替手段までを整理します。
承諾が必要になるケース
地主の承諾が必要なのは、主に以下のような場合です。
- 借地権付き建物を第三者に譲渡するとき
- 建物に抵当権を設定するとき
- 大規模な増改築を行うとき
承諾が不要なケース(軽微なリフォームや通常の賃貸など)と区別しておくことが重要です。
承諾を依頼する流れ
- 事前に契約書を確認し、承諾が必要かどうか判断
- 地主に書面または口頭で承諾依頼を行う
- 地主が承諾料を提示 → 金額に納得できない場合は交渉
- 承諾が得られたら承諾書を交付してもらう
承諾書は、売却や融資時に金融機関や買主へ提出する重要書類です。
承諾料の目安と注意点
承諾料は明確に法律で定められていないため、地域の慣習や地主との交渉で決まります。一般的な目安は「借地権価格の5〜10%」です。ただし、地主の協力度や市場環境によって変動します。
無理に値切ると関係が悪化することもあるため、専門家や不動産会社を介して交渉するとスムーズです。
関連記事:譲渡承諾料とは?徴収の仕組みと交渉の実際を丁寧解説
承諾が得られない場合の「承諾に代わる許可」
もし地主が合理的な理由なく承諾を拒んだ場合、裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てることができます。
裁判所は、地主の不利益と借主の事情を比較して判断し、正当な理由がないと認めれば許可を出します。
この仕組みにより、地主が一方的に権利行使を妨害することを防ぎます。ただし時間と費用がかかるため、最後の手段として考えましょう。
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借地の持ち家を処分するときに起こりやすいトラブル

借地に建てた家を処分する際には、契約内容や土地の条件などが複雑に絡むため、トラブルが発生しやすいのが実情です。ここでは代表的なケースと、その予防策を整理します。
登記が未整備で処分ができない
建物や借地権の登記がされていないと、所有者の権利を証明できず、売却や譲渡、返還といった手続きを進めることができません。古い家屋や相続によって引き継いだ物件で発生しやすい問題です。
【予防策】
- 建物の登記簿を確認し、未登記の場合は早急に所有権登記を行う
- 借地権についても、地上権か賃借権かを確認し、登記の必要があるか精査する
- 専門家(司法書士)に依頼して、必要な登記を整備する
相続登記が未了で手続きが進まない
建物の所有者が亡くなっているのに相続登記をしていないと、売却や解体などの処分が一切できません。相続人の間で話がまとまっていない場合は、さらに手続きが長引く恐れがあります。
【予防策】
- 戸籍や遺言書、遺産分割協議書をそろえて、相続人を明確にする
- 相続人全員の合意を得て、代表者を決めて登記申請する
- 司法書士に相談して、早期に登記手続きを完了させる
関連記事:「土地は借地、家は持ち家」を相続する流れは?注意点や処分方法も解説
土地の境界が不明確で解体や売却ができない
土地の境界線があいまいなまま解体や売却を進めようとすると、隣地所有者とのトラブルにつながる恐れがあります。特に古い借地では、境界杭が失われていたり、公図と現況が一致していないこともあります。
【予防策】
- 専門の測量士に依頼して、境界確定測量を実施する
- 隣地所有者との立会いを行い、境界確認書を取り交わす
- 古い図面や過去の測量記録も参照しながら法的な裏付けを整える
アスベストや老朽化による想定外の費用増加
築年数が古い建物では、アスベストが含まれていたり、解体作業に追加の安全対策が必要となることがあります。見積もり時点で考慮されていない費用が発生し、予算を大きく超えてしまうこともあります。
【予防策】
- 事前に建物診断(インスペクション)を実施して状態を把握する
- アスベスト調査を行い、含有の有無を確認しておく
- 複数の解体業者から見積もりを取り、想定外の費用への備えをする
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借地の持ち家を処分するまでのスケジュール目安

借地に建てた家を処分するには、地主との交渉や承諾手続き、売却・解体の準備など複数のステップが必要です。全体像を把握しておくことで、無駄な時間やトラブルを防げます。以下は一般的なスケジュールの目安です。
1〜2週目:契約内容と前提条件の確認
契約書を読み直し、借地権の種類、残存期間、承諾の要否などを整理します。必要があれば専門家に相談して契約内容を正確に把握します。
3〜4週目:地主への打診と方針決定
処分の意向を地主に伝え、買取や承諾の可否を確認します。この段階で地主が協力的かどうかが、その後の進め方を左右します。
5〜8週目:査定・見積もり・承諾交渉
不動産会社や解体業者に見積もりを依頼し、費用や条件を比較検討します。並行して地主と承諾料や条件について交渉します。
9〜12週目:契約締結・解体準備
売却先との売買契約を結ぶか、解体業者と工事契約を締結します。必要書類の準備や資金繰りの確認も行います。
13週目以降:解体・引渡し・精算
建物を解体して更地返還する場合は工事を実施し、完了後に土地を返還します。売却の場合は決済・引渡しを行い、承諾料や諸費用を精算します。
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まとめ

借地に建てた家の処分には、売却・賃貸・返還と複数の選択肢があり、いずれも地主の承諾や費用負担といったハードルがあります。自己判断で動くと承諾料や解体費用など思わぬ負担を抱えるリスクもあるため、早めに専門家へ相談することが安心につながります。
リアルエステートの「おうちの相談室」では、借地や相続に詳しい専門家が親身になってサポートしています。複雑な権利関係や費用面の悩みもおひとりで抱え込まずに相談することで、安心して次のステップに進めます。
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-資格-
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