最終更新⽇時
2025/11/02借地権の相続評価をわかりやすく解説|計算方法・特例・注意点まとめ
- 底地・借地

借地権を相続した場合、その評価額が相続税にどのように影響するのか、多くの方が疑問を抱くのではないでしょうか。借地権は不動産の一種でありながら、その権利内容や地代の支払い状況によって評価方法が大きく変わるため、正しく理解していないと大きな損失につながりかねません。
本記事では、借地権の基本から評価方法、相続時の特例や注意点までを体系的に解説していきます。
\底地・借地権売却をプロに相談!/
- 借地権は相続税の課税対象であり、自用地評価額に借地権割合をかけて評価額を算出する。
- 親族間の使用貸借では、借地権評価額はゼロとなる可能性がある。
- 節税特例の適用可否や、法人契約における無償返還の届出の有無を確認することが重要である。
-
-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
-
-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
Contents
借地権は相続税の対象になるのか?

借地権とは、建物を所有する目的で他人の土地を借りて利用する権利のことを指します。一般的に「土地を借りて家を建てるときの権利」と考えるとイメージしやすいでしょう。借地借家法に基づいて規定され、普通借地権や定期借地権など複数の種類があります。
相続税や贈与税においては、借地権も不動産と同様に「財産的価値があるもの」として課税対象となります。たとえば、借地権付き建物を相続した場合、その建物の評価額だけでなく、借地権自体の評価額も計算して相続財産に含める必要があります。
借地権が課税対象となる理由は以下の通りです。
- 借地権を持っていることで土地を自由に使える経済的利益があるため
- 売却や譲渡も可能であり、市場で価値を持つため
- 地主との契約内容によっては将来にわたり安定した利用権が保障されるため
このように、借地権は単なる「土地を借りている立場」ではなく、財産価値のある資産とみなされます。そのため、相続の際には必ず評価を行い、適切に相続税申告に反映させる必要があります。
\底地・借地権売却をプロに相談!/
借地権の相続税評価額を計算する基本式

借地権を相続する際、最も重要になるのが「借地権割合」という指標です。これは、借地権が自用地(更地)全体の価値のうち、どの程度の割合を占めるかを示したものです。相続税評価では、必ずこの割合を使って借地権の価額を計算します。
借地権割合の調べ方
借地権割合は、国税庁が毎年公表している「路線価図」や「評価倍率表」で確認できます。
■路線価図を利用する場合
- 道路に付された数字が「1㎡あたりの価格(千円単位)」
- その横に記載されたアルファベット(A~Gなど)が借地権割合を示す
- 例えば「500C」とあれば、その道路に面した土地の1㎡あたりの価格は50万円、借地権割合は70%(C=70%)
■路線価が設定されていない地域の場合
- 「評価倍率表」を使用
- 固定資産税評価額に倍率を掛けて自用地の価額を算定し、その後借地権割合を適用
国税庁の路線価図はオンラインで公開されており、誰でも無料で確認できます。都市部の商業地では80~90%と高めの割合が多く、地方の住宅地では60%前後が一般的です。
(参考: 『財産評価基準 路線図・評価倍率表』)
不動産ビギナーさん路線価図を見て借地権割合がわかるのは、相続税評価の基本ですね。
山口智暉路線価図のアルファベットを確認すれば借地権の財産価値の目安がわかるので、必ず調べましょう。
借地権評価額の計算式
借地権評価額は次の算式で求めます。
借地権評価額 = 自用地評価額 × 借地権割合
具体例を2パターンで示します。
■例1:路線価地域
自用地価額が1億2,000万円、借地権割合が60%の場合、借地権の評価額は7,200万円となります。
■例2:倍率地域
固定資産税評価額が2,400万円、評価倍率が1.1、借地権割合が50%の場合、自用地価額は2,640万円。借地権の評価額は1,320万円となります。
契約内容に応じて追加調整が必要な場合もありますが、基本的な枠組みはこの式に従います。
なお大切なのは、借地権割合そのものが「地域差」を大きく反映するという点です。つまり、同じ大きさ・同じ形状の土地でも、都心と地方で評価額が大きく変わる可能性があります。
\底地・借地権売却をプロに相談!/
ケース別の借地権評価:具体的計算例

借地権の評価方法は、契約内容や地代の状況、地域の慣行によって変わります。ここでは、典型的な5つのケースを具体例とともに整理します。
普通借地権の評価
もっとも一般的な借地権の評価は、基本計算式をそのまま適用します。
■例:
自用地価額が5,000万円、借地権割合が60%の場合、借地権評価額は3,000万円となります。
特別な調整要素がない限り、この算定方法で評価されます。
使用貸借(無償または固定資産税程度の地代)の評価
親族間で土地を貸し借りしている場合に多いのが「使用貸借」です。この場合、借地権には財産的価値が認められず、評価額はゼロとなります。
■例:
時価8,000万円の土地を無償で貸して建物を建てている場合、借地権評価額は0円。土地は地主の自用地として評価されます。
ただし、法人間の取引や古くからの契約(昭和48年10月以前など)の場合は、通常の借地権として評価されることもあるため注意が必要です。
相当の地代ありの場合の評価調整
地代が「相当の地代」(土地全体の価値に対して適正とされる水準)の場合、借地権には評価がつかず、ゼロ評価とされます。
※詳細な算式や通常の地代との違いは、後述の「地代・権利金の有無による評価への影響」で解説します。
取引慣行のない地域での特例評価
一部の地方では、借地権の売買が一般的でないため、通常の借地権割合を適用できないことがあります。その場合は、自用地価額から20%を控除した金額で評価します。
■例:
自用地価額が4,000万円の土地で、地域に借地権の取引慣行がない場合、借地権の評価額は3,200万円(4,000万円 × 80%)となります。
一時使用目的の借地権の評価
工事現場の資材置き場や仮設建物など、一時的に土地を使用する目的で設定された借地権は、通常の借地権とは異なり、雑種地の賃借権に準じて評価されます。
■例:
残存期間3年の一時使用目的の借地権がある場合、短期利用に限定されるため、評価額はごく低く算定されます。具体的には法定地上権割合を用い、残存期間に応じて段階的に評価が下がります。
このように、借地権の評価は「契約の種類」「地代の状況」「地域の慣行」によって大きく異なります。同じ土地でも、置かれた条件次第で評価額がゼロになることもあれば、数千万円規模になることもあるため、事前に確認しておくことが重要です。
\底地・借地権売却をプロに相談!/
定期借地権などの複雑なケースと評価の留意点

借地権の中でも「定期借地権」は、通常の借地権とは評価の考え方が大きく異なります。特に相続税の計算においては、契約内容や存続期間に基づいて、借地人に帰属する経済的利益を精査する必要があります。
定期借地権等の評価原則
定期借地権では、契約期間が終了すれば建物を取り壊して更地に戻すことが前提となっています。そのため、相続税評価では「課税時点における残存期間」と「借地人にとっての経済的利益」に基づいて価額を算定します。
- 残存期間が長いほど借地権の価値は高く評価される
- 残存期間が短くなるほど価値は低下し、最終的にはゼロに近づく
- 評価には専門的な知識が必要であり、税理士など専門家の判断が推奨される
■例:
残存期間が20年ある定期借地権では、相続発生時に借地人が享受する経済的利益が大きいため高額で評価される。一方、残存期間が3年しかない場合、借地権の評価額は大幅に低下する。
経済的利益に変化がない場合の簡便評価
例外的に、定期借地権の設定時と課税時点で経済的利益に変化がない場合には、簡便的な評価方法が認められています。国税庁の定める「定期借地権等の評価明細書」を用い、契約内容を基に計算する形です。
この場合は複雑な割引計算を行う必要がなく、契約時点の条件をそのまま反映できるため、相続人にとっても計算が分かりやすくなります。
評価時の注意点
定期借地権の評価では、普通借地権とは異なるリスクや留意点があります。特に以下の点を見落とさないようにすることが大切です。
- 残存期間が短いと評価額は急激に下がるため、申告時期との兼ね合いに注意が必要
- 評価額を過小にすると税務調査で否認されるリスクがある
- 事業用定期借地権など特殊な契約では、終了条件や利用制限を必ず評価に反映させる
\底地・借地権売却をプロに相談!/
地代・権利金の有無による評価への影響

借地権の評価は、地代や権利金の取り扱いによって大きく変動します。特に「通常の地代」と「相当の地代」の違いは、評価額に直結するため理解しておくことが不可欠です。
「通常の地代」と「相当の地代」の違い
通常の地代とは、借地権割合に応じた「底地部分の価値」に対して支払う使用料をいいます。すでに権利金(借地契約を結ぶ際に支払う一時金)が支払われている場合、地主は土地の一部の権利を得ていると考えられるため、地代は相対的に低く設定されます。
計算式としては、次のように表されます。
通常の地代 = 土地の価額 × (1 − 借地権割合) × 6%
一方で、相当の地代とは、権利金を支払っていない場合に土地全体の価値に見合った額として設定される地代です。地主は土地全体の権利を保持したまま貸しているため、借地人はその利用対価として高額の地代を負担します。
相当の地代の算式は以下の通りです。
相当の地代 = 土地の価額 × 6%
この違いにより、同じ土地であっても借地権の評価額が大きく変わります。通常の地代の場合は借地権に財産的価値が認められる一方、相当の地代を支払っている場合は借地権評価額がゼロとされるのです。
不動産ビギナーさん地代の額で借地権の評価がゼロになることもあるなんて驚きです。
山口智暉相当の地代を払っていると、借地権の経済的価値がないと見なされゼロ評価となるため、契約内容を確認しましょう。
権利金・地代の有無による評価パターン
借地権評価の場面では、以下のようにケースが分かれます。
1.使用貸借(無償または固定資産税程度の地代)
借地権評価額はゼロ。土地は地主の自用地として評価される。
2.固定資産税より高く、通常の地代以下の場合
借地権評価額は「自用地評価額 × 借地権割合」で算定。
3.通常の地代より高く、相当の地代より低い場合
借地権評価額を調整して算出。専門的な判断が必要。
4.相当の地代以上を支払っている場合(権利金なし)
借地権評価額はゼロ
\底地・借地権売却をプロに相談!/
相続時の評価で注意したい特例・手続き

借地権の相続では、評価方法の原則だけでなく、特例制度や実務的な手続きも考慮しなければなりません。ここを誤ると、本来なら避けられる税負担や地主とのトラブルにつながる可能性があります。
無償返還の届出書の提出と評価への影響
法人と個人の間で土地の貸し借りをしている場合に重要なのが「無償返還の届出書」です。
この届出書が提出されていれば、借地権は財産的価値を持たないものとされ、相続税評価額はゼロになります。
- 提出済み → 借地権評価額はゼロ、貸宅地は自用地価額から20%を控除して評価
- 未提出 → 借地権が財産として認定され、通常の評価額が課税対象になる
つまり、届出の有無で数千万円単位の課税額が変わる可能性があるため、法人と個人間の契約では特に注意が必要です。
小規模宅地等の特例の適用可能性
借地権付き宅地であっても、一定の要件を満たせば「小規模宅地等の特例」による評価減が適用できます。
- 居住用の場合:330㎡まで80%評価減
- 事業用の場合:400㎡まで80%評価減
■例:
借地権評価額が3,000万円の土地でも、要件を満たせば600万円まで圧縮可能。相続税の節税効果は非常に大きくなります。
ただし、同居親族が継承する場合や、生計を一にする親族が居住を続ける場合など、適用条件は細かく定められているため、事前確認が欠かせません。
不動産ビギナーさん借地権付きの家でも、小規模宅地等の特例が使えるのは嬉しいです。
山口智暉相続税の節税に極めて有効な特例です。ただし、同居要件など適用条件を税理士と事前に確認しましょう。
相続時の手続き上の注意
借地権を相続した場合、相続登記や地主への通知など、実務的な手続きも忘れてはいけません。
- 相続登記は義務化されており、相続を知った日から3年以内に登記を完了する必要がある
- 地主の承諾は不要だが、トラブル防止のため通知や名義変更をしておくことが望ましい
- 借地権を売却したり、建物を増改築する場合には地主の承諾が必要となり、承諾料が発生するケースもある
\底地・借地権売却をプロに相談!/
借地権相続でよくある誤解と失敗を防ぐポイント

借地権の相続は制度が複雑で、誤解や思い込みからトラブルに発展することが少なくありません。実際によく見られる失敗事例を確認しておきましょう。
使用貸借を借地権と誤認するケース
親族間で無償、またはごくわずかな地代で土地を貸し借りしている場合、それは「使用貸借」に該当します。使用貸借には財産的価値が認められないため、借地権評価額はゼロとなります。
しかし、これを誤って「通常の借地権」と考えてしまい、不要な課税を申告してしまうケースが見られます。逆に、法人との契約や古い時期からの使用貸借は課税対象になることもあるため、契約内容を正しく確認することが重要です。
無償返還の届出書を提出していないケース
法人と個人の間で土地を貸している場合、本来は「無償返還の届出書」を提出していれば借地権の評価はゼロになります。
ところが、この届出を失念したまま相続が発生し、借地権が財産として認定されてしまう事例が後を絶ちません。結果的に数百万円単位の余計な相続税を支払うことになり、取り返しがつかないこともあります。
地主との関係悪化によるトラブル
借地権は相続によって当然に承継されますが、地主に無断で相続登記を済ませたり、連絡を怠ったりすると関係が悪化することがあります。
- 承諾料の請求を受ける
- 契約更新や増改築で不利な条件を提示される
- 将来の売却や建替えがスムーズに進まなくなる
といったトラブルにつながりかねません。法律的には地主の承諾は不要ですが、実務上は良好な関係維持が欠かせないのです。
このように、借地権の相続では「誤った評価」「提出漏れ」「地主との関係悪化」という3つの落とし穴が代表的です。いずれも回避可能なものばかりなので、制度を正しく理解し、相続が発生したら速やかに専門家へ相談するのが安心です。
\底地・借地権売却をプロに相談!/
まとめ

借地権は相続財産の中でも特に評価が難しい資産です。借地権割合によるシンプルな算定ができる場合もあれば、使用貸借や相当の地代のようにゼロ評価となるケース、さらには定期借地権や法人契約のように特例が絡むケースもあります。
また、評価方法だけでなく、
- 無償返還の届出書の提出有無
- 小規模宅地等の特例の適用可否
- 相続登記や地主への通知といった手続き
といった要素が相続税額やトラブルの有無を大きく左右します。
そのため、借地権の相続が発生した際は、自己判断せずに税理士や不動産に強い専門家へ早めに相談することが大切です。制度を正しく活用すれば、不要な税負担を避けつつ、地主との関係も円滑に保ちながら承継を進められます。
当社リアルエステートでは、「おうちの相談室」を通じて、借地権の評価や相続に関するご相談を承っています。借地権の取り扱いは一件ごとに事情が異なりますので、不安や疑問をお持ちの方はお気軽にご相談ください。
-
-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
-
-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける


