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最終更新⽇時

2025/09/13

借地権で「土地の無償返還に関する届出」が必要な人は?注意点や他の方法も解説

  • 底地・借地

机に置かれた届出書とカレンダー、赤ペン

不要になった借地権をどうにかしたい、と考えたときの選択肢の一つが「地主への返還」です。しかし注意したいのが、借地の返還に際して課税される可能性がある点です。

「土地の無償返還に関する届出」を行っていれば、借地返還による課税を回避できます。しかし利用には条件があり、どの契約にも使えるわけではありません。

本記事では、土地の無償返還に関する届出を利用する条件やメリット、利用できない場合の方法について解説します。

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記事執筆・監修
エキスパート職 山口智暉
  • -資格-

    宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士

  • -経歴-

    株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
    東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
    株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
    リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける

借地権契約における土地の無償返還に関する届出の目的

TAXの文字と下向き矢印が書かれた積み木と小銭、家のミニチュア

「地主に設定してもらった借地権を返還するだけで、他人に譲渡したわけでもないのに、なぜ課税されるのか?」と疑問に思う方も多いでしょう。

まずは、借地権の返還で課税される可能性がある理由と、「土地の無償返還に関する届出」の必要性について解説します。

権利金の認定課税を避けるための制度

借地権の契約において「土地の無償返還に関する届出」を行う目的は、主に「権利金の認定課税」を回避することにあります。

借地権とは、建物所有を目的として土地を長期間借りる権利を指します。借地権を得ることで、借地人は土地の所有権を取得することなく長期間土地を使用できるという「経済的利益」を享受しているともいえます。

このため借地契約の締結時には、借地権設定の対価として、毎月支払う地代とは別に、借地人が地主に「権利金」を支払うのが通例です。

しかし、親族間や同族会社間の契約によく見られるように、権利金を設定しない借地契約も存在します。

ところが、権利金が支払われていない場合には、「借地人が借地権を無償で得た=契約期間中に受ける経済的利益の贈与を受けた」とみなされ、税金が課されることがあります。これが「権利金の認定課税(借地権の認定課税)」と呼ばれる制度です。

この課税を回避するためには、事前に「契約終了後には借地人がその土地を無償で返還する」という条件を税務署に届け出ておく必要があります。それが「土地の無償返還に関する届出」です。

「相当の地代」を支払えば届出と同様に認定課税を回避できる

権利金の認定課税を避ける方法は、「土地の無償返還に関する届出」だけではありません。

もう一つの方法として、「相当の地代」を支払うことで、認定課税を回避することも可能です。

「相当の地代」とは、権利金を支払っていない場合に、土地全体に対して支払うべきとされる地代を指します。具体的には、地主が所有する底地部分に対する地代に加え、借地権に相当する部分の地代も合わせて支払う形になります。

認定課税が発生するのは、「借地権設定による経済的利益を無償で受け取った」と判断されるためです。つまり、権利金として一括で支払わなくても、借地権分の対価を継続的に地代として支払えば、贈与とはみなされず、課税を回避できます。

ただし、課税を避けるには、土地の価値に見合った地代を支払っていることが前提です。そのため、国税庁では「相当の地代」の目安を「更地価額のおおむね年6%」と定めています。

(参考: 『国税庁 No.5732 相当の地代及び相当の地代の改訂』

関連記事:借地権の月々の地代には目安がある!?計算方法と金額設定について解説

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借地権の無償返還に関する届出を行うメリット

借地の無償返還は、借地人・地主の双方にメリットがあります。

借地人にとっては、契約時に権利金の支払いを避けられる点が大きな利点です。更地価格の60%程度が目安とされる権利金の負担がなければ、初期費用を大きく減らすことができ、事業や家の建築などに資金を回しやすくなります。

地主にとっての主なメリットは、相続税や所得税の負担を軽減できることです。

「土地の無償返還に関する届出」が提出されている土地は、相続が発生した際に「貸宅地」として扱われます。相続税の計算上、貸宅地は地主の使用に制限があるため、更地の80%の評価額となります。課税基準となる評価額が下がることで、相続税の負担が軽くなります。

さらに、「小規模宅地等の特例」が適用できる場合には、「貸付事業用宅地等」として200平方メートルまで評価額を半額にできるため、相続税の節税効果はより大きくなります。

また、届出が提出されていれば、土地全体に対する対価である「相当の地代」ではなく、底地部分に対する「通常の地代」だけでも、権利金の認定課税はされません。地代収入が抑えられることで、所得税の軽減にもつながります。

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借地権の無償返還に関する届出を使用する際の注意点

注意を示すプレートの上に置かれた虫眼鏡と周りを囲む人々のミニチュア

「借地権の無償返還に関する届出」の使用にあたっては、前提となる利用条件や地代の設定に関して、いくつか注意点があります。

予定外の課税や手続きの不備を避けるためにも、重要な3つのポイントを確認しておきましょう。

個人間の借地契約では使用できない

最も大きな注意点として、「土地の無償返還に関する届出」は、地主か借地人のどちらかが法人でなければ利用できません。国税庁でも「法人が借地権の設定等により、(中略)これを届け出る手続です。」としており、法人に関する借地契約を前提とした制度となっています。

(参考: 『国税庁 No.5732 C1-63 土地の無償返還に関する届出』

従って、個人間の借地契約で認定課税を避けたい場合は、「相当の地代」を支払うか、無償で土地を貸す「使用貸借契約」にするかのいずれかとなるでしょう。

地代を低額に設定しすぎない

「土地の無償返還に関する届出」を行う際は、地代の設定にも注意が必要です。あまりに地代が低すぎると、「借地契約」ではなく「使用貸借」とみなされてしまうためです。

使用貸借とみなされた場合、権利金の認定課税は発生しませんが、相続税の計算時に「貸宅地」として評価されなくなり、結果として相続税が高くなる可能性があります。

認定課税を回避しつつ、相続税も抑えるためには、地代を「通常の地代」とされる固定資産税等の2~3倍程度に設定しておくのがよいでしょう。

関連記事:借地料の相場は?地代の適正価格と見直し方を解説

土地の無償返還に関する項目を賃貸借契約書に明記する

国税庁では制度について、「その借地権の設定等に係る『契約書において』将来借地人等がその土地を無償で返還することが定められている場合に」としています。

従って、土地の無償返還に関する届出を利用する際は、賃貸借契約書に「土地を無償で返還する旨」の条項を必ず明記する必要があります。記載がないと、無償返還の約束が正式に認められず、認定課税の対象となる恐れがあります。契約締結時には、記載漏れがないよう十分に注意しましょう。

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借地権の無償返還に関する届出の手続き方法とポイント

ここでは、具体的な届出手続きの概要についてまとめています。

提出書類 ・届出書
・契約書の写し
・土地の価額の計算の明細その他参考となる事項を記載した書類
(※書面提出の場合は各2部)
提出方法 e-Taxソフトまたは持参(土地所有者の納税地の所轄税務署)
提出期限 土地を無償で返還することが定められた後遅滞なく

注意点として、届出書の冒頭部分の「借地権の設定等」と「使用貸借契約」の部分は必ず「借地権の設定等」を選択しましょう。前述の通り、「使用貸借契約」にしてしまうと相続税評価額が上がってしまうためです。

提出期限は「遅滞なく」というあいまいな表現ですが、実務上は「契約締結年度の法人税確定申告期限」でも問題なく、期限を過ぎてしまったからといって利用できないものではありません。しかし、できる限り確定申告期限までに済ませておくとよいでしょう。

(参考: 『国税庁 No.5732 C1-63 土地の無償返還に関する届出』

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借地権の無償返還に関する税金

木の机に置かれた「TAX」と書かれた積み木、ペン、電卓

個人間の借地契約、あるいは要件がそろっておらず「土地の無償返還に関する届出」が利用できない借地契約も多く存在します。その場合には、課税関係はどうなるのでしょうか。

最後に、借地権の無償返還時と相続時、それぞれでかかる税金について解説します。

借地権の無償返還時にかかる税金

前述の通り、「土地の無償返還に関する届出」を行わずに借地を返還した場合には、基本的に借地人に対して贈与税または所得税(法人税)が課税されます。「対価となる権利金を支払わずに借地を手に入れる=地主から借地権の贈与を受けた」と考えられるためです。

ただし、「相当の地代」を支払う以外にも、以下のケースなどでは課税されないとされています。

  • 不動産ではなく、資材置き場や駐車場、仮設建物などの敷地として利用していた場合
  • 借地上の建物の著しい老朽化などの理由ににより借地権が消滅・または存続が困難な場合

しかし、借地権を返還する際には原状回復を求められるため、更地にするための建物の解体費用の負担がかかる点は理解しておきましょう。

また、地主が法人で借地人が個人の場合には、借地人に「みなし譲渡」による一時所得として(法人の役員である個人の場合には給与所得)、所得税が課せられます。

一方、地主が個人で借地人が法人の場合には、借地人に法人税が課税されます。

借地権の相続時にかかる税金

借地権は金銭的価値がある「資産」であるため、相続時には相続税の課税対象です。

借地権は、「自用地評価額(土地を自分で使った場合の価値)」と国税庁が定めている「借地権割合(土地全体の権利に対して借地権が占める割合)」をベースに相続税評価額が算出されます。

(参考: 『国税庁 路線価図・評価倍率表』

借地人の場合は、「自用地評価額×借地権割合」、地主の場合は「自用地評価額-借地権の評価額」で算出した金額が基本の相続税評価額となります。ただし、貸宅地や貸家建付地、小規模宅地等の特例といった制度の条件を満たせば相続税評価額がさらに大きく軽減されます。

一方、無償で土地を借りている使用貸借は契約者が死亡すると効力を失う契約のため、相続の対象とならず相続税も発生しません。また、権利金の支払いがなく、地代が著しく低額だったり相当の地代以上に支払っていたりする場合にも相続税評価額は0となり相続税額には影響しません。

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無償返還の届出ができない場合には借地権の売却も選択肢

無償返還の届出ができない個人間の借地契約において、不要になった借地権の地代や更新料の負担を避ける方法としては、「売却」も選択肢の一つです。

売却先として最も身近なのが、地主本人です。地主側に土地を自分で使用したい意向と資金的な余力がないと交渉は難しくなりますが、一度相談してみてから判断してもよいでしょう。

また、建物にまだ価値がある場合には、借地権を更新せずに地主に「建物買取請求権」を行使する方法もあります。一般的には、地主側から更新を拒絶した場合に利用される制度ですが、借地人側からの契約終了でも利用が可能です。

地主との交渉が難しい場合の売却手段としては、第三者への売却があります。不動産会社を通じて個人の買主を探す方法のほか、借地権の取り扱いを専門とする買取業者に売却すれば、短期間での処分も可能です。

借地権が不要だからと無償返還を行う前に、一度売却の可能性を検討してから判断するとよいでしょう。

関連記事:借地権は売却できる?5つの方法と流れ、売買相場について解説

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まとめ

色画用紙でできた住宅街のなかにある建物のない土地

「土地の無償返還に関する届出」は、借地権の無償返還による認定課税を避けるための手続きですが、契約当事者のいずれかが法人である必要があります。個人間の契約には使用できない上に、利用できる場合でも条件がある点を理解しておきましょう。

借地権は一つの土地に複数人が関わる権利のため、税金関係も複雑です。税務リスクを避けるためには専門家に相談し、適切に対応することが大切です。借地権全般についてお悩みの方は、リアルエステート「おうちの相談室」にご相談ください。

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