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2025/07/14借地権の買戻しに適したタイミングは?借地人に断られた際の対処法も解説
- 底地・借地
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける

借地人に土地(底地)を貸している方の中には、自分で活用したいという理由で買戻しを検討している方もいるのではないでしょうか。借地権の買戻しでポイントとなるのは、適正な売買価格の設定です。また、借地人から買戻しに関する合意を得るには、適切なタイミングで交渉することも大切です。
この記事では、借地権の買戻しで地主が得られるメリットや交渉に最適なタイミング、買戻しにかかる費用の相場、借地人から買戻しを断られたときの対処法について解説します。借地権の買戻しをお考えの方は、ぜひ参考にしてください。
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Contents
借地権の買戻しで地主が得られるメリット

借地権の買戻しとは、地主が借地人から借地権を購入して土地(底地)の所有権を取り戻す行為を指します。借地人に貸している土地を自分で自由に活用したいとき、借地権の買戻しは選択肢のひとつです。ここでは、地主が借地人から借地権を買い戻す4つのメリットについて解説します。
借地契約の条件を見直せる
現在の借地人から借地権を買い戻すと、新たな借地人に土地を貸せます。その際、借地契約の条件を見直せる点が、借地人から借地権を買い戻すメリットのひとつです。
現状の借地契約の形態が普通借地権の場合、借地人が望む限り契約が更新されるため、土地が永遠に返ってこない恐れがあります。借地権を買い戻して、定められた契約期間が満了すると自動的に借地関係が終了する定期借地権を設定した上で貸し出せば、将来的に土地は必ず返してもらえます。
現在の地代が周辺の借地権と比べて安いときは、改めて相場に近い地代の設定が可能です。これにより、収入が増える点も借地権を買い戻すメリットです。
土地を自由に活用できる
地主が借地権を買い戻すと、土地を自由に活用できる点もメリットとして挙げられます。借地権とは、家を建てる目的で第三者から土地を借りる権利です。そのため、所有する土地に借地権を設定して借地人に貸し出すと、地主はその土地に家を建てられません。
地主が借地人から借地権を買い戻せば、土地の所有権を取り戻せて、通常の土地同様の活用が可能です。「自分が住むための家を建てたい」「子ども夫婦が家を建てるための土地を確保したい」「アパートを建てて賃貸経営を始めたい」と考えているときは、借地権の買戻しを視野に入れるとよいでしょう。
土地の資産価値・流動性を高められる
借地人から借地権を買い戻すと、土地の資産価値が高まる点もメリットのひとつです。基本的に、借地権が設定された土地の資産価値は通常の土地と比べて低くなります。地主であってもその土地を自由に活用できないためです。
そのため、土地の売却価格が安くなることは覚悟しなければなりません。自分で活用できない土地を購入したいと考える方は少なく、売却しにくい点も注意が必要です。
借地権を買い戻すことで自分の意思で土地を利用でき、資産価値も向上します。買い手が見つかりやすくなるなど、売却にも有利に働くメリットがあります。
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借地権の買戻しを借地人に伝える最適なタイミング

借地権を買い戻したくても、借地人の合意がなければ取引は成立しません。借地人が必ずしも了承してくれるとは限らないため、タイミングを見極めた上で交渉することが大切です。ここでは、借地権の買戻しが成立しやすい4つのタイミングを解説します。
借地人が借地権の売却を検討している
借地人も借地権の売却を検討しているときは、買い戻せる可能性が高いでしょう。通常の不動産とは異なり、借地権には「地主に地代を支払う必要がある」「地主の承諾がなければ家を建て替えられない」といったデメリットがあり、一般個人の買い手を見つけるのは困難です。
借地人が借地権を売却したいと考えているタイミングで買戻しの話を持ちかければ、前向きに応じてもらえるでしょう。
借地人が家の建て替えを検討している
借地人が借地上の家を建て替えたいと考えているときも、借地権の買戻しの提案に適したタイミングです。借地人が借地上の家を建て替えるには、更地価格の3%~5%ほどの承諾料を地主に支払わなければなりません。市場価格が2,000万円の土地なら、60万円~100万円ほどかかります。
家の建て替え費用も数千万円に上り、借地人の経済的な負担は相当大きいでしょう。それに加えて、今後も地主の承諾なしで建て替えやリフォームができないといった制限があります。
借地人が家の建て替えを検討しているタイミングで買戻しの話を持ちかけると、借地人も売却金額を元手に新築用の土地を購入できるため、合意してもらいやすいでしょう。
借地契約の更新が近い
借地契約の更新時期が近づいていて、借地人が契約更新を考えていないときも買戻しに応じてもらいやすいタイミングのひとつです。
借地人が借地権の契約更新を望むときは、更地価格の3%程度、あるいは借地権価格の3%~5%程度の契約更新料を地主に支払わなければなりません。借地契約を更新せずに借地権を地主に返還する場合でも、原則として借地上の家を解体し更地にする必要があるため、100万円~300万円ほどの解体費用がかかります。
地主からの買戻し要求に応じれば、借地人はこれらの費用を負担しなくて済みます。借地人が借地契約の更新を考えていないと知ったら、借地権の買戻しを提案するとよいでしょう。
関連記事:借地契約を解除できる条件とは?底地人と借地人の信頼関係が鍵
借地人に相続が発生した
現在の借地人が亡くなって相続が発生したときも、借地権を買い戻す機会のひとつです。借地上の建物を相続しても、すでに別の場所に住まいを構えていると使い道がないため、処分したいと考える方は少なくありません。そのため、新たな借地人が相続した借地上の建物を不要と考えているのなら、買戻しが成立しやすいといえます。
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借地権の買戻しにかかる費用相場

借地人から借地権を買い戻すときは、以下の2つの方法で算出した価格を基準として借地人との交渉を進めます。借地権の買戻しは借地人の合意があって初めて成立するため、借地人に納得してもらえる適正な価格を提示できるようにしましょう。
借地権割合に基づいた買戻し価格
借地権価格の目安を知る指標のひとつに、借地権割合を用いた計算方法があります。借地権割合とは、土地の評価額のうち借地権が占める割合を示した数値です。地域ごとに30%~90%(10%刻み)の間で定められており、都心部や繁華街のような利用価値が高い地域ほど借地権割合も高い傾向があります。
土地の評価額が2,000万円、借地権割合が70%の土地の借地権価格の目安は1,400万円です。こうして求めた価格と周辺の取引事例とを踏まえた上で、借地人と借地権の買戻しに関する交渉を進めます。
なお、借地権割合は国税庁のサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で調べることが可能です。
関連記事:借地権割合の基礎知識|調べ方・計算方法・注意点を解説!
取引事例に基づいた買戻し価格
借地権価格の目安を知るもうひとつの指標は、周辺の取引事例を参考にする方法です。周辺で取引された借地権のうち、所有している土地と同じような条件の事例があれば、取引価格を参考にできます。
ただし、借地権の取引事例はあまり多くなく、自分で調べるのは難しいでしょう。そのため、借地権の適正価格の目安を知りたいなら、借地権の取り扱い実績が豊富な不動産会社に査定を依頼するのが賢明です。
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借地人から借地権の買戻しを断られたときの対処法

借地権を買い戻して土地を自由に活用したいと考えても、借地人から拒否される可能性は否定できません。借地人から借地権の買戻しを断られたときは、以下の対処法を検討するとよいでしょう。
底地を借地人に買い取ってもらう
借地人に借地権の買戻しを提案して拒否されたときは、底地の購入を求めるのも選択肢のひとつです。借地人が底地を買い取ると、以下のメリットを享受できます。借地人が土地を自由に活用したいと考えていたら、前向きに検討してくれるかもしれません。
- 地代を支払わずに済む
- 地主の承諾なしで建て替えやリフォームが自由にできる
- 売却しやすくなる
ただし、底地の売買価格を巡ってもめる恐れがある点に注意が必要です。借地人に底地を売却するときの価格相場は更地価格の30%~40%ほどとされています。一般の方に売却する場合の相場は更地価格の20%~30%で、地主にとってはより高く売却できるメリットがあります。
しかし、割高の価格を借地人に提示すると、購入を断られる恐れがあるでしょう。底地を借地人に買い取ってもらう場合、売買価格を慎重に設定することが求められます。自分では判断できないときは、借地権に精通した不動産会社に価格を算出してもらいましょう。
借地人に底地と借地権の等価交換を提案する
借地人に借地権の買戻しを断られたら、底地と借地権の等価交換を提案するとよいでしょう。等価交換とは、底地の一部と借地権の一部を交換し、それぞれが自由に利用できる土地を取得する方法です。
底地と借地権の一部を等価交換すると、地主も借地人も自分が所有権を持つ土地が手に入り、活用の幅が広がります。借地人にもメリットが大きいため、前向きに話を聞いてくれる可能性が高いでしょう。
ただし、ひとつの土地を地主と借地人で分けるため、それぞれが所有する土地の面積が狭くなる点はデメリットです。また、等価交換をした結果、借地上の家が2つの土地をまたがることになったら、どちらが解体費用を負担するか話し合う必要があります。
底地を専門の不動産会社に売却する
借地人が借地権の買戻しに応じてくれないときは、底地を専門の不動産会社に売却し、売却金額を元手に新たな土地を購入するのもひとつの手です。
底地の買取相場は更地価格の10%~15%ほどと安いものの、買い手を探す販売活動が必要ない分、短期間で現金化できるメリットがあります。底地をできる限り早く売却して自分が住む家を建てたい、購入したいと考えているなら、検討する余地があるでしょう。
ただし、一口に不動産会社といっても得意とする物件種別は異なります。マンションの買取を得意とする不動産会社に底地の売却を依頼しても、買取を断られるか、相場より安い価格を提示されるかもしれません。
底地の売却を依頼する不動産会社を探すときは、「底地の買取実績は豊富か」「底地に関する知識に精通しているか」といった点を確認することが大切です。
関連記事:底地の処分はどうすればいいか?売り方や注意点などを徹底解説!
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地主が借地権を買い戻す際に契約書に記載すべき事項
借地人が借地権の買戻しに応じたときは、売買契約書を交わすことが大切です。売買契約書に記載する主な事項は以下の通りです。
- 借地権と借地上の建物を売買する旨
- 建物の表示(住所・家屋番号・種類・構造・床面積)
- 借地権の譲渡代金額
- 手付金の額
- 代金の支払方法
- 所有権移転登記に関する内容
- 登記手続きにかかる費用の負担者
- 表明保証(契約内容が真実・正確であることを表明して相手方に保証)
- 契約解除の条件
契約書の内容に不備があると、トラブルにつながりかねません。そのため、行政書士といった専門家に契約書の作成を依頼することをおすすめします。
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まとめ

「借地契約の条件を見直したい」「土地を自分で活用したい」といったときは、借地人に借地権の買戻しを提案するのが選択肢のひとつです。スムーズな買戻しを実現したいなら、借地人が借地権の売却や家の建て替えを検討しているタイミングで話を持ちかけるとよいでしょう。
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