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投稿⽇時

2025/05/21

最終更新⽇時

2025/05/21

借地権と減価償却の関係は?仕組みと会計処理を分かりやすく解説

  • 底地・借地

事業の利益を守るために重要なのが、適切な経費計上による節税です。企業・または個人事業として借地権を保有する人のなかには、借地権を経費計上する方法について知りたい人も多いでしょう。

そこで本記事では、減価償却をはじめとした借地権にまつわる会計処理について解説します。

減価償却とは?

並べられた砂時計と右下がりで少なくなる積み上げられたコイン

不動産に関する経費計上手段として挙げられるものの一つが「減価償却」です。借地権を償却できるかどうか知るために、まずは減価償却について理解しておきましょう。

減価償却とは資産の取得費用を分散計上する仕組み

減価償却とは、「固定資産の価値が時間とともに減少する」という考え方に基づいた会計処理の仕組みです。固定資産とは、企業や個人事業主が1年以上の長期間にわたって使用または保有する資産のことで、流通や販売を目的としておらず、事業活動に継続的に使用されるものを指します。

減価償却では、固定資産の取得費用を一度に計上するのではなく、その耐用年数(法で定められた使用可能とされる期間)にわたって分割し、毎年の経費として計上していきます。

主な償却方法には、定額法と定率法の2種類があります。定額法は、毎年同じ金額を償却する方法です。一方、定率法は、償却していない分に一定割合の償却率を掛けて金額を計算する方法で、初年度の償却額が最も多く、以後は年々減少していきます。

例えば定額法の場合、500万円の自動車を購入し、その耐用年数が5年であれば、毎年100万円ずつ費用として計上することになります。

このような減価償却の仕組みにより、企業は事業に関する多額の支出によって単年度の利益に大きな影響を及ぼすことなく、財務状況を正しく把握することが可能になります。

減価償却の対象となる「減価償却資産」とは?

まず前提として、固定資産のすべてが減価償却の対象となるわけではありません。

前述したように、減価償却は「固定資産の価値が時間とともに減少する」という考え方に基づいた会計処理です。そのため、固定資産のなかでも事業の用に供され、かつ「時間の経過とともに価値が減少していく」もの、すなわち「減価償却資産」が減価償却の対象となります。

減価償却の対象となる減価償却資産の例としては、以下のようなものがあり、不動産関連の事業では、所有物件の設備や賃貸アパートの建物などが該当します。

分類
建物・構築物 アパート・店舗の建物、外構工事(門・塀など)、看板、駐車場の舗装
機械・設備 製造機械、エアコン、太陽光発電設備、受変電設備
車両・運搬具 事業用の車両(自家用と区別して使用するもの)、フォークリフト
工具・器具・備品 パソコン、レジ、事務机、医療機器、美容機器、厨房設備(冷蔵庫など)

一方で、土地や骨董品などは、時間が経過しても価値が減少しないと考えられるため、減価償却の対象とはなりません。また、個人的に使用する家具や家電製品など、事業に直接関係のない資産も減価償却の対象外となります。

土地同様に借地権は償却資産ではない

「減価償却資産」の定義からも分かる通り、土地は時間の経過によって価値が減少しないため、減価償却資産には該当しません。

従って、土地を借りる権利である借地権も、原則として減価償却の対象外となります。なかでも普通借地権は、更新により半永久的に継続できる性質を持つため、使用可能期間を定めることができず、減価償却を行うことができません。

関連記事 : 事業用借地権とは?契約の流れと注意点を解説

借地権に関して減価償却費として計上可能なもの

「経費」と書かれた木のブロックと電卓、チェックリスト、赤鉛筆

旧借地権・普通借地権・定期借地権など、借地権にはいくつかの種類がありますが、いずれの借地権も原則として借地権自体は減価償却できません。

しかし、借地権に関連する出費のなかには、減価償却できるものも存在します。そこで次に、借地権に関して減価償却費として計上可能なものについて見ていきましょう。

借地権の更新料

借地権自体は減価償却資産ではありませんが、借地契約の更新時に支払う更新料の一部については、経費として計上できます。これは、更新料が「その土地を一定期間借りるために必要となる経費」と見なされるためです。

ただし、経費として計上できるのは更新料の一部に限られる点に注意が必要です。

更新料のうち、減価償却として経費計上が可能な金額は、以下の計算式で求めることができます。

減価償却額 = 更新直前の借地権取得価額 × 更新料 ÷ 更新時の借地権時価

計算式の意味については後述しますが、注意すべき点として、更新直前の借地権取得価額(帳簿価格)が0円の場合には、計算結果も0円となるため、経費計上することができません。

借地上の建物

土地の権利である借地権は減価償却の対象とならない一方で、建物は時間の経過とともに劣化し資産価値が減少するため、減価償却が可能です。

例えば、借りた土地に店舗や事務所を建てた場合、その建物の取得費用は耐用年数にわたって経費計上することができます。

2016年4月1日以前に取得した建物付属設備や構築物については、「定率法」と「定額法」のいずれかを選択して減価償却することができました。しかし、2016年4月1日以降に取得した建物付属設備や構築物については、定額法のみが認められており、定率法は選択できません。

定額法で使用される耐用年数は、以下を一例として国税庁が定めています。

  • 木造住宅・店舗用:22年
  • 鉄骨造住宅:19~34年
  • 鉄筋コンクリート造店舗用:39年
  • 鉄筋コンクリート造住宅:47年

(参考: 『国税庁 主な減価償却資産の耐用年数表』

関連記事 : 借地権付き建物を購入するとどのような税金を支払う必要があるのか?初心者向けに解説!

借地権の地代は経費として計上できる

同じ「土地を借りて使用するための出費」であっても、借地権自体は経費計上できない一方で、毎月支払う地代は経費として計上することができます。

借地権は「権利」であるため価値が減少せず、減価償却できない(=経費にならない)のに対し、毎月支払う地代は事業のために直接必要な支出であることから、家賃と同様に対象期間の経費として処理されます。

会計処理上、地代は「減価償却費」ではなく、「地代家賃」科目として計上されます。

借地権の償却に関する会計処理

机に並べられた青色申告決算書と計算器とペンと会計に関するファイル

借地権の更新料に関する償却の会計処理は独特なため、理解しにくい面もあります。

そこで最後に、借地権の償却に関する会計処理について、考え方と具体的な仕訳を併せて解説します。

借地権の更新料の減価償却に関する考え方

ここで改めて、借地権の更新料に関する減価償却について詳しく見てみましょう。

減価償却額の計算式と計算例は以下の通りです。

<計算式>

減価償却額 = 更新直前の借地権取得価額 × (更新料 ÷ 更新時の借地権時価)

<計算例>

  • 更新直前の借地権取得価額:1,000万円
  • 更新料:100万円
  • 更新時の借地権時価:2,000万円

減価償却額 = 1,000万円 × (100万円 ÷ 2,000万円) = 50万円

この場合、50万円が経費として認められ、残りの50万円は借地権取得価額に加算される形となります。

支払い時に経費として計上できるのは更新料の一部ですが、残りの金額は将来借地権を譲渡する際に取得費として控除できるため、所得税の軽減につながります。

借地権は減価資産ではありませんが、更新料は契約の継続のために支払う費用であり、土地の使用権に関する経費的な性質も併せ持ちます。この二面性を税制上で適切に反映させるため、更新料の一部を経費として計上し、残りを資産価値として借地権の取得価額に加算する仕組みとなっています。

借地権の償却に関する仕訳の具体例

借地権の更新料に対する減価償却額の算出方法が分かったところで、取得時から更新料支払い時にかけての具体的な仕訳について見てみましょう。

借地権の取得時

借地権は非減価償却資産のため、取得時には資産として計上します。例えば、800万円の更地に対して借地権割合が70%の場合、560万円の権利金を支払うことになります。

この取引における仕訳は以下の通りです。

(借方)借地権 5,600,000 /(貸方)普通預金 5,600,000

ここで重要なのは、借地権の取得に関連する諸費用も、借地権の取得価額に含める必要があるという点です。例えば、仲介手数料や土地の改良費などは、「借地権」という資産の一部として資産計上します。

ただし、借地権を取得するための借入金の利子や、登記費用、登録免許税、不動産取得税、印紙代などは取得費用に含めることができません。

また、権利金を支払わずに、更地価額の年6%程度を支払う契約もあり、これは「相当の地代」と呼ばれます。この場合は、借方に「支払地代」として経費計上する処理を行います。

関連記事 : 借地権の費用は高い?借地料や権利金などの詳細を解説

借地権更新料の減価償却時

前述したように、借地権の更新料には、減価償却費として経費になる部分と、借地権取得費として資産計上される部分があります。そのため、仕訳は以下の例のように、更新料の支払いと減価償却の二段階で行います。

(借方)借地権 300,000 /(貸方)普通預金 300,000
(借方)借地権償却費 240,000 /(貸方)借地権 240,000

このように、一旦支払った更新料を借地権として資産に計上し、その一部を減価償却費として費用処理する形となります。

この仕訳によって、更新料のうち24万円が経費として計上され、残りの6万円が借地権の帳簿価額に加算されます。

勘定科目については、「借地権」または「借地権更新」、「借地権償却費」または「借地権更新償却」などが使用されます。

会計上例外として借地権を減価償却するケース

本来、借地権は減価償却できませんが、例外として定期借地権については、会計上、権利金を契約期間にわたって減価償却するケースもあります。これは、定期借地権の設定に伴う権利金などを、賃貸借契約の期間中に土地を利用するためのコスト、すなわちリース料のような位置付けとする考え方に基づいています。

ただし、税務上では借地権は非減価償却資産として扱われるため、会計処理と税務処理とで取り扱いが異なることになります。

このように扱いが難しいケースであるため、正確な処理を行うためには、専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

オフィスビルの模型と白い電卓

減価償却の対象となるのは「時間経過で価値が減少する固定資産」であり、土地や借地権は対象にはなりません。しかし、更新料の一部や借地上の建物については、事業に必要な費用として経費計上が可能です。

更新料や地代、建物の減価償却費など、借地権に関連する費用を適切に計上することで、節税効果が期待できます。手続きや会計処理が分かりにくい借地権ですが、要点をおさえておくことで、事業において適切に活用することができるでしょう。