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2025/04/30最終更新⽇時
2025/04/30底地とは?活用・売却・相続前に知っておきたい基本知識
- 底地・借地

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「底地」とは何か、聞かれてすぐに答えられる方はそう多くないでしょう。しかし不動産投資や相続において、底地を取得、あるいは取得を検討する場面が出てくるかもしれません。
本記事では底地の定義からメリット・デメリット、取得した場合の扱いやトラブルが起こりがちな要因まで包括的に解説します。
底地とは?

あまり耳慣れない「底地(そこち)」という言葉ですが、借地権を理解するうえで欠かせない概念です。まずは、底地の定義と、底地の所有者が持つ権利について確認してみましょう。
底地とは借地権が設定された土地のこと
底地とは、「建物所有を目的として第三者に貸し出されている、借地権や地上権が設定された土地(貸地)」を指します。
この底地の所有者が、いわゆる「地主」です。地主は、土地の所有者として次のような権利を有しています。
- 地代(賃料)を受け取る権利
- 契約更新時に更新料を受け取る権利(法的な義務ではありませんが、実務上は支払われることが多い)
- 借地人が土地の利用権を第三者に売買・譲渡する際の承諾権(その際、承諾料が発生するのが一般的)
つまり、底地とは「借地権者に貸し出すことで収益を得る可能性がある土地」といえるでしょう。
底地と借地の違いは「同一の土地に対する立場」
「底地」に対して、「借地」という言葉は多くの方が耳にしたことがあるのではないでしょうか。底地と借地は、同じ土地について使われる用語です。
「地主」と「借地権者」の関係のように、底地と借地は対になる概念であり、地主の立場から見た土地が「底地」、借地権者の立場から見た土地が「借地」と呼ばれます。
つまり、底地と借地は同一の土地を異なる立場から見た呼び名です。
また、借地に付随する権利は「借地権」(地上権または賃借権)と呼ばれます。一方、底地に付随する権利については「底地権」と呼ばれることもありますが、これは法律上の正式な用語ではなく、実務上の便宜的な呼称である点に注意が必要です。
所有権は単独支配、底地権・借地権は他者と共有する権利
土地に関する権利のうち、最も基本となる「所有権」は、特定の物(動産・不動産)を全面的に支配できる物権です。他人の権利が原則介在しないため、自由に利用・処分できる非常に強い権利とされています。
一方、借地権は、所有権のある土地に設定される権利であり、借地人がその土地を利用できる法的権利です。借地権には地上権(物権)と賃借権(債権)の2種類があり、権利の強さに差があります。
底地(借地権が設定された土地)の所有者は、その土地の所有権を持っていても、すでに借地権者が存在するため、利用や処分には一定の制限を受けることになります。
このように、底地と借地には複数の権利者が関わることで、土地の利用に相互の制約が生じるという特徴があります。
不動産用語として使用される「底地」とは?
一般的に「底地」という言葉は、借地権に関する用語として使われることが多いですが、実務では土地区画整理事業に関連して使われることもあります。
土地区画整理事業とは、道路や公園などの整備が不十分な地域で、住民が土地の一部を提供し合いながら、街全体を再配置して暮らしやすい環境に整備する取り組みです。
この再配置の過程では、元の土地(従前地)から新たな土地(換地)への移動が行われます。実務上、この換地の中にかつての土地の一部が含まれる場合、その元の土地の範囲や痕跡を「底地」と呼ぶことがあります。
ただし、この場合の「底地」は法律用語ではなく、借地権に関連する「底地」とは意味も用途も異なります。混同しないよう注意が必要です。
底地を手に入れたら最初に確認すべきこと
底地について調べている方のなかには、相続などで思いがけず入手した方もいるのではないでしょうか。
自分が契約に関与していない底地を引き継いだ場合、将来的なトラブルを避けるために、まず以下の3点を確認しておきましょう。
・底地上に建っている建物の状況と、現在の借地人に関する情報
・借地契約の内容や契約期間、契約の種類(地上権か賃借権か)
・地代の金額および支払い状況(滞納の有無を含む)
契約書が見つかれば理想的ですが、発見できない場合には、通帳の入金記録や帳簿、領収書などから手がかりを集めたうえで、借地人に直接確認してみるのも有効です。
なお、借地契約の詳細が不明な場合でも、底地の売却そのものは可能です。ただし、契約内容が不明なままでは買主がリスクを懸念し、売却価格が低くなる可能性もあるため、その点には注意が必要です。
底地権を取得するメリット

底地の扱いについて判断するためには、メリットとデメリットについて知っておく必要があるでしょう。次に、底地権を取得するメリットについて解説します。
安定した地代収入が得られる
現行の借地借家法に基づく普通借地権の契約期間は、初回が少なくとも30年間、2回目以降の更新でも10年以上と定められています。そのため、建物の賃貸借と比較して、底地の所有者(以下、底地権者)は長期にわたって安定した地代収入を得られる可能性があります。
また、法律で定められているわけではありませんが、実務上は地代に加えて追加の収入が発生することもあります。たとえば、契約更新時に更新料が支払われたり、借地権が譲渡される際や建物の建て替え時に承諾料が発生するケースが一般的です。
管理の手間やコストがかからない
底地上の建物は借地権者が所有しているため、建物や敷地の維持管理は原則として借地権者が行います。
そのため、地代の徴収や契約書の管理、固定資産税の納税といった手続きは発生しますが、建物の修繕や設備の更新といった日常的な管理業務に関しては底地権者が関与する必要がありません。建物を貸す場合と比べて、管理の負担やコストが抑えられる点は、底地所有の利点といえるでしょう。
地代を得ながらキャピタルゲインも狙える
都市部や再開発が進む地域では、土地価格が上昇傾向にあります。そのため、場所によっては底地の保有によって継続的な地代収入を得ながら、土地価格が高騰したタイミングで売却することにより、売却益(キャピタルゲイン)を得られる可能性もあります。
さらに、資産価値の上昇は売却に限らず、地代増額の交渉材料となったり、金融機関からの資金調達を受けやすくなるといった副次的なメリットも期待できます。ただし、地代の増額には借地人との合意や法的な手続きが必要になる場合があるため、慎重な対応が求められます。
相続税評価額が自用地と比較して低くなる
底地は他者の権利が設定されている土地であるため、評価額が自用地(自己使用の土地)よりも低くなる傾向があります。このため、相続税の算定において有利になる点が底地の特徴の一つです。
加えて、底地上に住宅や事業用の建物が存在している場合には、「小規模宅地等の特例」の適用により、相続税評価額のうち200平方メートルまでの部分について50%が減額される制度もあります。相続の時期や貸付事業の継続といった条件を満たす必要はありますが、これらを活用することで相続税の負担を大きく抑えることが可能です。
関連記事 :底地とは?購入時のローンと注意点を徹底解説
底地権を取得するデメリット

メリットの一方、底地権の保有には他人の権利が付帯しているがゆえのデメリットもあります。次に、底地権を保有するデメリットについても見てみましょう。
自由に土地を使用できない
底地には借地権が設定されているため、所有者であっても自らの判断で自由に利用することはできません。借地契約は通常、10年単位の長期間にわたるうえ、契約期間が満了しても「正当事由」がない限りは契約が更新されるのが一般的です。
特に1992年以前に旧借地法に基づいて締結された契約では、現行制度と比べて借地権者の権利が強く保護されている場合が多く、契約の終了が難航することもあります。そのため、底地の所有者は土地の名義を持ちながらも、利用に関して大きな制限を受ける可能性がある点がデメリットといえるでしょう。
更地と比べて売却しにくい
底地の保有には一定のメリットがあるものの、多くの購入希望者は自ら土地を利用する目的を持っています。そのため、利用に制限がある底地は主に投資目的に限られた需要となり、更地や自用地と比べて買主が見つかりにくい傾向にあります。
このように、活用の自由度が低い底地は資産としての流動性が乏しく、急な資金需要が生じた場合でもすぐに売却できない可能性がある点は注意が必要です。
固定資産税の支払い義務がある
土地や建物の所有者には、毎年、固定資産税(標準税率1.4%)および都市計画税(最大0.3%)を納める義務があります。
建物部分は借地権者が負担する一方で、土地部分に関しては底地の所有者が納税する必要があります。地代の設定にあたっては、これらの税負担を考慮するのが一般的ですが、古い契約などで地代が低額に固定されている場合、税額とのバランスが崩れ、地代収入による利益が減少する可能性もあります。
また、税額が見直しなどにより上昇した場合、地代の増額には借地人との合意が必要となるため、必ずしも負担を相殺できるとは限らない点にも留意が必要です。
関連記事 :底地はデメリットが多いってほんと?デメリット回避するにはどうすればいいか紹介します。
底地の扱いに迷ったときの4つの選択肢

メリット・デメリットを比較した結果、従来通り借地権者に土地を貸す以外の活用法を考えた場合にどのような選択肢があるでしょうか。
次に、底地を貸して地代収入を得る以外の活用手段について解説します。
底地権を担保として資金調達を行う
底地(借地権が設定された土地の所有権)は、所有権として不動産の一形態であるため、金融機関に対する担保として活用することが可能です。そのため、新たな投資や事業に必要な資金の調達手段として利用される場合もあります。
ただし、底地には借地権という第三者の権利が設定されているため、自由な活用が制限され、流動性も低いため、一般に担保評価は更地や建物付きの土地よりも低くなりがちです。特に、好立地で将来的な価値上昇が見込めるような場所でない限り、大きな資金を調達することは難しい傾向があります。
底地権を借地人に買い取りしてもらう
底地が売却しづらいという課題に対して有効な対応策の一つが、現在その土地を使用している借地権者に買い取ってもらう方法です。借地人が底地を取得することで、土地の所有権と借地権が一体となり、完全な所有権が成立します。
このような取引は、底地の所有者にとっては資産を売却できるメリットがあり、借地人にとっても土地の自由な活用が可能になる点で双方に利点があります。
ただし、売買価格の設定にあたっては、借地権割合や地代収入の現況、立地条件などを考慮した慎重な交渉が必要です。適正価格を算出するために、専門家の意見を取り入れることが望まれます。
底地権と借地権の交換をする
「土地を手放したくはないが、より自由に活用したい」と考える場合の一つの方法として、借地人が所有する借地権と底地の所有権を相互に交換する手段があります。敷地面積が広い土地や、複数区画に分けて調整できる場合に選択されることが多く、双方が最終的に土地の所有者となることで利用自由度が増し、双方にとって有益な解決策となります。
また、現金を用いる買い取りとは異なり、資金面での負担が比較的少ない点もこの方法の利点です。資金に余裕がない場合でも合意形成がしやすくなる可能性があります。
ただし、等価交換の評価調整や契約条件の整合など、算定は複雑になるため、実施にあたっては不動産鑑定士など専門家のサポートが必要になるでしょう。
底地権を第三者に売却する
底地は、借地権者以外にも投資家や不動産会社など第三者に対して売却することも可能です。
ただし、売却を検討する際には、まず借地人に対して売却の意向を伝え、購入の意思を確認しておくことが望ましいとされています。借地人が購入を希望する場合、取引がスムーズに進みやすく、価格面でも高値が期待できるケースがあるほか、将来的なトラブルの防止にもつながります。
また、借地人が建物を手放す意向がある場合には、底地と借地をまとめて共同で売却し、所有権として一括処分することで、より高い価格で売却できる可能性もあります。
関連記事 :底地の買取相場は安くなりやすいってほんと?売却時にかかる費用についても紹介します。
底地を売却・相続する際の価格の計算方法

底地を保有、あるいは取得予定で底地を相続・売却した際の具体的な価格を知りたい方も多いのではないでしょうか。
具体的な金額は土地の状況や契約内容により異なりますが、ここではおおよその目安を知るための計算方法について解説します。
底地価格の計算方法と具体例
底地価格のおおよその目安は、「更地価格 ×(1 − 借地権割合)」という計算式で求めることができます。この算出方法は、実務上広く用いられている簡易的な評価方法です。
計算式に必要な更地価格と借地権割合は、いずれも国税庁が公表している路線価図や評価倍率表などで確認可能です(※路線価地域の場合は路線価図、倍率地域の場合は倍率表を使用します)。
借地権割合は地域や立地条件によって大きく異なりますが、一般的な住宅地では70%前後で設定されているケースが多いため、底地の評価額は更地価格のおおよそ30%程度を目安として見積もられることが一般的です。
以下は、路線価方式による底地価格の目安例です。なお、土地の形状や接道条件などによる補正率は考慮していません。
- 路線価:300C(1平方メートルあたり30万円、借地権割合70%)
- 地積:100平方メートル
底地価格の目安:30万円 × 100平方メートル ×(1 − 0.7)=900万円
(参考: 『国税庁 財産評価基準書 路線価図・評価倍率表』)
底地相続時の相続税額の計算方法
前述の通り、底地の相続税評価額は借地権者の権利が設定されていることにより、更地よりも評価が低くなり、結果として相続税の負担が軽減される傾向にあります。
さらに、一定の条件を満たすことで「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例の適用が可能です。この特例を適用することで、200平方メートルまでの部分について相続税の課税標準額が50%減額されます。
計算方法と例は以下の通りです。
<ケース1:底地の評価額が900万円・地積100平方メートル>
相続税課税標準額:900万円 × 50% = 450万円
<ケース2:底地の評価額が3,000万円・地積400平方メートル>
相続税課税標準額:3,000万円 −(3,000万円 × 200/400平方メートル × 50%)= 2,250万円
※特例の対象面積200平方メートル分のみ評価減が適用されます。
なお、この特例を適用するには、以下のような要件をすべて満たす必要があります。
- 相続税の申告期限までに貸付事業を継続していること
- 相続開始前3年以内に開始された貸付事業でないこと(※2021年の税制改正による要件)
- 評価減の対象面積は200平方メートル以下に限られること
(参考: 『国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』)
底地の所有・売却でトラブルが起こる3つの要因

権利関係が複雑な底地は、トラブルが起こる可能性も少なくありません。
最後に、底地にまつわるトラブルを引き起こしやすい要因について解説します。
売却時の買主・借地権者への引継ぎ不足
底地を売却する場合、これまで所有していた自分と借地権者に加えて、新たな所有者である買主が権利関係に加わることになります。
底地の売買契約自体に借地権者が直接関与することはありませんが、売却後に借地権者への通知や引継ぎが不十分だと、誤って旧所有者に地代を支払ってしまったり、契約条件の認識違いが発生するなど、トラブルにつながりやすくなります。
そのため、売却が成立した際には、借地権者に対して速やかに所有者変更の連絡を行い、地代の振込先や契約の引継ぎ事項を明確に伝えることが大切です。また、買主に対しても、現行の借地契約の内容(契約期間、地代、更新料、承諾条件など)を正確に伝えておくことが重要です。
共有での相続による権利関係の複雑化
底地を相続する際、他の不動産と同様に複数の相続人で共有状態になるケースがよくあります。ただでさえ借地権が設定されているために関係が複雑な底地では、共有状態になることでさらに管理が難しくなります。
たとえば、地代の分配方法や契約内容の見直し、売却方針などをめぐって相続人同士の意見が分かれ、調整が困難になる場合があります。特に、売却をめぐる意見の対立が長期化するリスクもあります。
このような事態を防ぐためには、1人の相続人が底地を単独で取得し、他の相続人には現金を渡す「代償分割」を検討するのも有効です。相続開始後の共有を避けるためには、生前の相続対策として遺言の作成や資産の分割設計を行っておくことも有効といえるでしょう。
借地権者との契約更新・支払いにまつわる対立
底地の所有者と借地権者の間では、以下のような事情が原因となってトラブルに発展することがあります。
- 地価の上昇や固定資産税の増加を理由とした、地代や更新料の増額要請に対する借地権者の反発
- 契約終了に伴う立ち退き交渉において、借地権者が更新を拒否したり、高額な立ち退き料を要求したりするケース
このような場合には、法律に基づいた冷静な対応が求められます。地代や更新料の増額が合意に至らないときは、裁判所に対して「借地非訟事件」として調停・審判を申し立てることも可能です。
また、立ち退き料の支払いは法律上の義務ではありませんが、借地契約を終了させる際の「正当事由」を補完するために実務上必要とされることが多く、交渉の際には慎重な判断が必要です。交渉が難航する場合には、弁護士や不動産専門家の助言を受けながら進めることを検討しましょう。
まとめ

底地(借地権が設定された土地の所有権)は、地代収入が得られる上に管理の手間が少なく、相続税評価額も低いというメリットがあります。しかしその一方で、流動性や自由度の低さ、権利関係の複雑さからトラブルが発生しやすいという側面も持ち合わせています。
底地の保有に伴うさまざまな問題に直面した場合は、専門家への相談や底地の売却も有効な選択肢となります。
底地には借地権者への売却や第三者への売却、あるいは借地権との交換など、状況に応じた対応方法があります。底地についてお悩みの方は、ぜひ「おうちの相談室」にご相談ください。