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2023/11/08最終更新⽇時
2023/11/08旧法借地権とは?基礎知識から更新・相続まで詳しく解説
- 底地・借地

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借地権には、1992(平成4)年以前の借地法に基づく旧法借地権と、1992(平成4)年に施行された借地借家法に基づく新法借地権があります。
新法の借地権になったのには社会的背景があり、旧法と新法では借地権の強さや規定が大きく異なります。地主は適切な土地活用のために、借地権者は不利な条件での契約を防ぎ自分の権利を守るためにも旧法・新法の違いについて把握が必要です。
本記事では、旧法の借地権から現行の借地権への経緯や双方の違い、それぞれの契約更新のプロセスや新法への切り替えの可否まで詳しく解説します。
旧法借地権とは?

例えば、「家を建てよう」「駐車場を作ろう」と考えたとき、多くの人はまず土地の購入を考えるでしょう。
しかし、土地を購入せずとも、所有者から土地を借りて利用する方法もあります。
対価を支払わずに借りる「使用貸借」 という方法もありますが、地代を支払うことで地主の所有する土地を利用できる権利が「借地権」です。
借地権には、地主の承諾なしで売却や転貸ができる「地上権」と、承諾が必要な「賃借権」があります。
現代では多くの借地権が賃借権であるため、本記事では主に賃借権について解説します。
ここでは、旧法借地権(以下「旧法」)と新法借地権(以下「新法」)の違いについて説明します。
旧法借地権の問題と借地借家法に至る経緯
旧借地法が制定される前、土地の賃貸借契約は民法に基づいて行われていました。しかし、民法の規定では借地権者の権利が極めて弱く、地主が土地を売却した場合、借地権者は建物を手放さざるを得ない状況でした。
この問題に対応するため、明治時代に「建物保護ニ関スル法律」が制定され、その後、大正時代に「旧借地法」「旧借家法」が成立しました。 これにより、借地権の第三者への対抗力や自動更新の原則が規定され、借地権者の権利が強化されました。
しかし、今度は借地権者の権利が強くなりすぎ、地主が土地を取り戻せなくなるという問題が発生しました。 この問題に対応するため、1992年に、これらの法律に代わる形で、現在の「借地借家法」が施行されました。
旧法借地権と新法借地権の違い
旧法と新法の主な違いは3つです。
1.存続期間
旧法では、最初の更新までの期間が鉄筋コンクリート造(RC造)などの堅固な建物は30年以上、木造などの非堅固建物は20年以上と構造によって異なりました。しかし、新法では一律30年以上と定められています。
2.地主が更新を拒否できる条件
旧法では、地主が更新を拒否する際の「正当な事由」の要件が曖昧でしたが、新法では立ち退き料の支払いを条件に、地主が更新を拒否しやすくなりました。
3.新法で「定期借地権」が導入
定期借地権は更新がない借地権であり、契約期間満了時に確実に土地が返還されるため、地主にとって有利な制度です。
新法の導入により、借地権者と地主の権利関係のバランスが調整されました。 ただし、旧法で契約された借地権は、更新しても引き続き旧法が適用されます。
旧法借地権のメリット・デメリット
旧法・新法にかかわらず、借地権では地代の支払いや更新料の負担がある一方で、土地に対する固定資産税や都市計画税の負担がなく、割安で家を建てられるといったメリットがあります。
さらに、旧法では正当事由がなければ更新拒絶が認められないため、借地権者は更新を続ける限り継続的に土地を利用できます。 一方で、地主側にとっては「正当事由」の判断が難しく、高額な立ち退き料を請求されるケースもあるなど、トラブルにつながることもあります。
また、借地権者に有利な旧法ですが、契約期間の定めがない場合、建物の朽廃によって借地契約が終了するという規定があります。建物が居住に適さないほど老朽化すると、借地契約が終了するリスクがある点はデメリットといえます。
関連記事 : 借地権の旧法・新法って結局何?底地人の権利が弱かった理由とは
新法借地権の種類と特徴
旧法について理解するために、新法の概要についても知っておきましょう。
前述の通り、新法には更新のある普通借地権と、更新のない定期借地権があります。さらに、定期借地権は用途に応じて3つの種類に分類されます。
種類 | 存続期間 | 更新 | 契約方法 | 特徴 |
普通借地権 | 30年以上 | あり(初回:20年以上、2回目以降:10年以上) | 規定なし | 地主側に正当事由がない限り自動更新される |
一般定期借地権 | 50年以上 | なし | 書面(公正証書など) | 期間満了後は更地返還が原則 |
事業用定期借地権 | 10年以上50年未満 | なし | 公正証書 | ・事業用建物(お店や事務所、ホテルなど)に限定・建物買取請求不可 |
建物譲渡特約付借地権 | 30年以上 | なし | 規定なし | 契約満了時に地主が建物を買い取る特約付き |
普通借地権では、地主が更新を拒絶する場合には正当事由が必要となる。新法では正当事由の基準が明確化され、立ち退き料を支払うことで更新を拒否できることが明文化されるなど、地主の権利を保護するための条件も整備された。
旧法借地権と新法借地権で更新はどう変わる?

借地の契約更新についてですが、旧法と新法で異なるところがあるので、それぞれ解説します。
旧法借地権の契約更新プロセス
旧法では、借地権の存続期間が満了したタイミングで借地契約の更新が可能です。当事者間の合意、または借地人からの更新請求によって契約が継続されます。
地主が更新を拒否しても、正当事由がない限り借地人は引き続き土地を使用できます。そのため、借地契約は実質的に半永久的に更新される仕組みになっています。
また、地主は契約を継続する代わりに、借地人に対して更新料を求めるケースが多く見られます。
重要なポイントとして、旧法で契約している借地は、更新後も引き続き旧法が適用されます。新法が施行されたことで、更新によって自動的に旧法から新法に切り替わると勘違いされがちですが、そうではありません。
新法が施行されているからといって、旧法で契約している土地が別の地主へ借地権が譲渡された場合でも、新法が適用されることはありません。
そのため、新法施行後30年以上が経過した現在でも、旧法と新法が混在している状況が続いています。
旧法借地権の更新料は支払わないといけない?
旧法の更新料については、法律上の義務はありません。 過去の判例でも、「更新に際し、賃借人の更新料支払義務が生ずる旨の商慣習又は事実たる慣習は存在しない」と判示されています。
(参考: 『裁判所 裁判例結果詳細 昭和51(オ)657』)
ただし、契約書に更新料の支払いに関する特約がある場合には支払いが必要です。 法的な義務はないものの、借地権において建物の建て替えや増改築、売却を行う際には地主の承諾が必要になるため、良好な関係を維持するうえでも更新料(借地権価格の5~10%程度が目安)を支払ったほうがスムーズに進む場合があります。
新法借地権の契約更新と条件
新法の借地権のうち、定期借地権や建物譲渡特約付借地権には更新の概念がなく、期間満了とともに借地契約が終了します。
一方、普通借地権では更新が可能ですが、地主が借地人に対して更新を拒絶する場合もあります。例えば、「将来の生活のために、土地上の建物を賃貸として貸し出したい」といった理由が挙げられます。
ただし、借地人が借地上に住居を構えている場合、借地人の生活を奪うことになるため、十分な正当事由がなければ更新の拒絶は認められません。
旧法借地権から新法借地権への切り替え方法と注意

地主・借地権者ともに、自分の権利への影響を考えたときに、旧法から新法への切り替えが可能か気になることもあるでしょう。
結論として、旧法から新法への切り替えは原則としてできません。ただし、双方の合意があれば可能です。
旧法借地権から新法借地権への切り替え手順
旧法から新法へ切り替える場合、まず旧法の契約を双方の合意のもとで解約し、その後、新法に基づく新たな借地契約を締結することになります。 この際、旧法の借地権は借地権者にとって価値のある権利であるため、地主がその権利を買い取る形で金銭を支払うことが一般的です。
また、新法で締結する借地契約が定期借地権である場合には、借地権者が契約時に支払うことになる保証金と、地主が旧法借地権を買い取るために支払う金額を相殺するケースもあります。
旧法借地権から新法借地権に切り替えるメリット・デメリット
旧法から新法への切り替えは、地主にとっては土地の返還可能性が高まるというメリットがあります。 一方で、借地権者にとっては権利が弱まるため、基本的にメリットはなく、自ら切り替えを望むことは考えにくいでしょう。
そのため、地主側から新法への切り替えを提案しても、借地権者の合意を得ることは難しく、強引に進めようとするとトラブルにつながる可能性があります。
借地権者は安易に地主の切り替え要求に応じるべきではありません。切り替えを検討する場合は、相応の経済的補償を求めることが重要です。
旧法借地権から新法借地権への切り替え時のリスクと対策
地主から「旧法から新法に切り替えたい」と提案があり、契約内容の違いを深く理解しないまま契約を結んでしまったというケースも考えられます。
もし、このような契約が争われた場合、借地人に著しく不利な契約内容は無効とみなされる可能性があります。 また、契約全体が無効と判断されなくても、一部の条件が無効とされるケースも考えられます。
そのため、旧法から新法への切り替えを希望する地主は、借地人に対して契約内容を丁寧に説明し、理解を得ることが重要です。
借地人も、土地利用の将来を慎重に判断し、十分な協議を行うことが重要です。
旧法借地権は相続するべき?売却も可能?

旧法は借地権者に有利な権利ですが、居住者がいない状態で老朽化が進んだ場合、建物が朽廃すると借地権が消滅する可能性があるため注意が必要です。
最後に、借地上の建物が老朽化していた場合、朽廃する前に借地権者としてどのような選択肢があるのか解説します。
旧法借地権の相続手順と注意点
空き家は老朽化が早く進みます。旧法では、建物が朽廃すると借地権が消滅する可能性があるため、「相続予定だが親が別の場所に住んでいる」「相続したが自分の家は別にあるためそのままになっている」といった場合には早めの対応が必要です。
借地権を相続した場合、地主に通知するだけでよく、承諾は不要です。 ただし、老朽化した建物の増改築や修繕には地主の承諾が必要になるため、借地権を維持したい場合は承諾料(更地価格の5%程度が目安)を支払って建物の維持をしておく必要があるでしょう。
また、借地権を第三者に主張できるよう、建物の登記名義を変更しておきましょう。
借地権を相続すると、地代や更新料に加え、建物の固定資産税・都市計画税の支払いが必要です。 借地権を維持する必要がない場合は、地主に返還するという選択肢もあります。
旧法借地権を売却するなら
借地権は売却が可能で、第三者だけでなく、地主に売却する方法もあります。 借地権が不要な場合には、売却を検討してみてもよいでしょう。
ただし、第三者に借地権を売却するには基本的に地主の承諾が必要で、一般的に更地価格の10%程度の承諾料を支払う必要があります。 一方、地主に売却する場合は承諾は不要ですが、建物を解体して更地にする場合、解体費用は売主負担となるケースが多いため、事前に確認が必要です。
借地権は流通量が少なく、価格の算定が難しいため、地主にとっては売却のメリットが少なく、交渉が難航するケースもあります。
まずは、借地権売却の取引実績がある不動産会社に査定を依頼するのがよいでしょう。
関連記事 : 借地権は売却できる?5つの方法と流れ、売買相場について解説
旧法借地権のまとめ

旧法と新法の借地権では存続期間や更新、借地権者の立場などに違いがあり、地主・借地権者ともに権利を守るためにも理解が必要です。
借地権の切り替えや売却などの手続きをスムーズに行うには、知識と適切な交渉が欠かせません。特に複雑な権利関係を持つ旧法の取引では、実績ある不動産会社のサポートが重要です。
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