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2025/10/09借地借家法をわかりやすく解説|旧法・新法の違いと契約の基本
- 底地・借地
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける

借地借家法は、土地や建物を貸し借りするうえで大切なルールをまとめた法律です。ただし「旧法と新法の違いは?」「普通借地と定期借地はどう違う?」といった疑問を抱く方もいるのではないでしょうか。
この記事では、借地借家法をわかりやすく整理し、契約の種類や更新・終了のポイントを初心者にも理解できるように解説します。
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Contents
借地借家法とは?

借地借家法は、土地や建物を貸す人(地主・家主)と借りる人(借地人・借家人)の間で起こりやすい不公平を調整するために作られた法律です。
もともと契約は「民法」という基本ルールに従いますが、民法だけだと借主が不利になりやすいケースが多くありました。そこで、借主を守る特別な法律として「借地借家法」が制定されたのです。
借地借家法は次のような特徴を持っています。
- 民法の特別法として位置づけられ、民法より優先して適用される
- 土地を借りて建物を建てる「借地契約」や、建物を借りる「借家契約」に適用される
- 借主の居住や事業の安定を守るため、契約更新・賃料改定・譲渡転貸など細かいルールが定められている
つまり、借地借家法は「地主と借主が公平に付き合うための調整役」といえます。
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旧法と新法の違い|1992年を境に適用ルールが変わる
借地借家法は、1992年(平成4年)8月1日を境に大きく分かれます。この日より前に結ばれた契約には旧借地法・旧借家法が適用され、それ以降に結ばれた契約には現行の借地借家法(新法)が適用されます。
旧法は借主を強く保護する内容が中心でした。一方、新法は地主と借主の権利のバランスを取ることを目的に設計されており、契約期間や更新の仕組みも整理されています。また、新法では旧法には存在しなかった「定期借地権」「定期借家契約」といった新しい制度が導入されました。
このように、1992年を境に「借主に厚く寄った旧法」から「地主と借主の調和を重視する新法」へと大きく方向転換が行われたのです。
関連記事 :旧法借地権とは?基礎知識から更新・相続まで詳しく解説
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借地権の種類|普通借地権・定期借地権・旧法借地

ひと口に借地契約といっても、すべて同じ仕組みではありません。更新を前提とするもの、満了で必ず終了するもの、そして1992年以前の契約にだけ残るものなど、法律上は複数のタイプに分かれています。どの種類に当たるかで契約期間の長さや更新の可否、終了時の取り扱いが大きく変わるため、まずここで整理しておきましょう。
普通借地権|更新できる借地契約
普通借地権は、契約が満了しても更新を前提とする借地契約です。初回の存続期間は原則30年以上と長く設定され、更新後は1回目が20年以上、2回目以降は10年以上が基本となります。
この仕組みにより、借主は長期的に安心して土地を使い続けられます。地主が更新を拒むには後述する「正当事由」が必要ですが、ここでは「地主の一存では更新を止められない」という点を押さえておけば十分です。
また、普通借地権には建物買取請求権が認められています。これは、契約が終了する際に借主が地主に建物を時価で買い取ってもらえる権利で、地主は原則として拒否できません。借主の生活や資産が一方的に失われないようにするための大切な制度です。
普通借地権は、借主を強く保護する一方、地主にとっては返還を求めにくい契約形態です。そのため、双方にとって契約前の理解と計画性が求められます。
定期借地権|更新できない借地契約
定期借地権は、契約期間が満了すれば必ず終了する仕組みの借地契約です。普通借地権のような更新はなく、地主にとっては返還の時期があらかじめ決まるため、将来の土地利用計画を立てやすいというメリットがあります。
この制度にはいくつかの類型があります。
| 一般定期借地権 | ・存続期間は50年以上。居住用でも事業用でも利用可能 ・契約時には下記の3つの特約を定める 1.更新をしないこと 2.建物の再築による期間延長を認めないこと 3.建物買取請求権を認めないこと ・さらに、公正証書などの書面で契約することが法律上の要件 |
| 事業用定期借地権 | ・店舗や事務所など事業用建物に限って設定される借地権 ・期間は10年以上50年未満 ・30年以上50年未満の場合:一般定期借地権と同じく、3つの特約を定めることができる ・10年以上30年未満の場合:法律で「更新なし」「再築による延長なし」「建物買取請求権なし」が当然に適用されるため、契約で定めなくても自動的に適用される。ただし「更新しない旨」は明記が必要 ・この場合も、公正証書などの書面による契約が法律で義務付けられている |
| 建物譲渡特約付借地権 | ・存続期間は30年以上 ・契約期間が満了すると、地主が建物を相当の対価で買い取ることをあらかじめ約束する仕組み ・借主の建物買取請求権を排除するのではなく、地主に買い取り義務を課す制度という点が他の類型と大きく異なる ・法律上、書面要件はないが、紛争防止のため契約書で明確にしておくことが推奨される |
このように定期借地権と一口にいっても、類型ごとに契約要件や特約の必要性が異なります。共通して言えるのは「更新がない」ということです。借主にとっては利用期間が限定されるため、契約前に将来の見通しを立てておくことが欠かせません。
旧法借地権|戦前からの契約に残る制度
旧法借地権は、1992年以前に結ばれた契約に適用され続けている制度です。特徴は、建物の構造によって契約期間が大きく変わる点です。
- 堅固建物(鉄筋コンクリートなど):30年以上(期間の定めがなければ60年)
- 非堅固建物(木造など):20年以上(期間の定めがなければ30年)
更新の場面では地主が返還を求めるのが極めて難しく、借主の希望があれば契約は長く続くケースがほとんどです。このため、借主保護が厚い一方、地主にとっては自由に土地を活用しにくい制度ともいえます。
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借家契約の種類|普通借家・定期借家

ここまで説明してきた借地権は「土地を借りる権利」でしたが、借家契約は「建物そのものを借りる契約」です。言葉は似ていますが、対象が土地か建物かで制度は分かれています。
借家契約にも「普通」と「定期」があり、更新の有無や終了の仕組みが大きく違います。ここではその違いを整理します。
普通借家契約|更新が前提の借家
普通借家は更新を前提とした契約で、期間の定めを置くことはできますが一律に1か月や半年といった短期を設定しても無効となり、期間の定めがない契約として扱われます。期間が満了しても当事者が合意すれば契約は更新できますし、借主が引き続き居住して貸主が異議を述べなければ法定更新として契約が継続します。
ただし貸主が更新を拒むには正当事由が必要であり、詳細は次セクションの「契約更新と正当事由」で解説します。運用にあたっては更新時に期間や賃料、原状回復の範囲などを見直し、合意内容を契約書に記録しておくことがトラブル防止につながります。
定期借家契約|更新なしで終了する借家(成立要件に注意)
定期借家は更新がなく、期間が満了すると終了する契約です。数か月から数年といった短期間でも設定できるため、利用者のニーズに合わせて柔軟に使われます。
ただし有効に成立させるには要件があり、契約内容を記した書面を交わすこと、契約締結前に貸主が別紙による説明書面を交付すること、更新しない旨を明記することが求められます。また期間が一年以上の場合、貸主は満了の一年前から六か月前までの間に終了通知を出さなければなりません。
居住用で床面積が200平方メートル未満の物件では、転勤や療養、介護などやむを得ない事情があるときに借主から中途解約できる特例もあります。いずれにしても定期借家は終了が明確であり、契約を継続したい場合は再契約として改めて合意と書面化を行う必要があります。
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契約更新と「正当事由」|更新の仕組みと拒否されたときの対応
借地契約や借家契約は、期間が満了しても更新によって続けることができます。更新の仕組みは3つに整理されます。
1:合意更新
貸主と借主が話し合い、新しい期間や条件を決めて契約を続ける方法です。更新料や賃料の改定などもここで調整されます。
2:更新請求
期間満了に際して借主が更新を求める方法です。借主が請求すれば、貸主側に正当事由がない限り契約は更新されます。
3:法定更新
期間が満了しても借主が使用を続け、貸主が一定期間内に異議を述べなければ自動的に契約が更新されます。この仕組みによって借主の生活や事業が安定的に守られます。
貸主が更新を拒む場合に必ず問題となるのが正当事由です。正当事由とは、貸主が土地や建物を自分で使う必要性や、借主の生活・事業への影響などを総合的に判断するものです。裁判所は双方の事情を比較して合理的かどうかを見極めます。単に「返してほしい」という理由だけでは認められません。
もし更新を拒否された場合は、貸主から通知を受けて交渉し、それでも解決できなければ調停、最終的には訴訟で判断されます。
関連記事 :【立ち退き拒否は違法ではない】賃借人の権利と交渉で勝ち取れる立ち退き料の相場
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譲渡・転貸と「承諾に代わる許可」|地主の承諾がないときの対応
借地権や借家権を他人に譲渡したり転貸したりする場合、原則として地主や貸主の承諾が必要です。承諾を得ないまま契約を進めると、信頼関係を壊したとして解除されるリスクがあります。
承諾を得る際には、地主に承諾料を支払うのが一般的です。その目安は借地権価格のおよそ10%前後といわれていますが、実際の金額は地域の慣習や当事者の交渉によって変わります。承諾料をめぐってトラブルになることも多いため、事前に専門家へ相談するのが安全です。
もし地主や貸主が承諾に応じない場合には、裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てることができます。裁判所が許可を出すかどうかは、地主の不利益や借主の事情などを総合的に判断して決められます。これにより、地主が一方的に拒否したとしても、正当な理由がなければ譲渡や転貸が可能になる仕組みです。
譲渡や転貸は大きな権利関係の変更につながるため、承諾や手続きの正確さが欠かせません。無断で行うのはリスクが大きいことを理解しておきましょう。
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賃料(地代・家賃)の増減請求

借地借家法には、賃料を増額または減額できる仕組みが定められています。地代や家賃は一度決めたらそのままではなく、経済状況や相場の変化に応じて見直しが可能です。
増減請求ができる条件|相場や経済事情の変化
増額請求は、インフレや地価の上昇などで賃料が相場より明らかに低いときに貸主が行います。反対に、景気悪化や周辺相場の下落で賃料が高すぎるときには、借主が減額を求められます。
ポイントは「著しい変動」があるかどうかであり、些細な変化では請求は認められません。
算定方法|比準・積算・収益還元の違い
賃料の増減額を決める際には、客観的に妥当な水準を導き出す必要があります。そのため実務では3つの方式がよく使われます。
比準方式
近隣や類似物件の賃料水準と比べる方法です。例えば同じ地域で同規模の土地や建物の賃料が1坪あたりいくらかを調べ、対象物件の条件に合わせて補正して算定します。相場を反映できる反面、比較対象となる事例が少ない地域では精度が落ちる弱点もあります。
積算方式
土地や建物の評価額を基準に計算する方法です。固定資産税評価額や鑑定評価額をもとに、期待される利回りを掛けて賃料を算出します。不動産そのものの価値に裏付けられる点で説得力がありますが、経済情勢の影響を直ちに反映するわけではありません。
収益還元方式
その不動産が実際に生み出す収益力に基づいて計算する方法です。店舗や事務所など収益物件で使われることが多く、純利益を基準に資本還元して賃料を導きます。事業性を反映できる一方で、経営努力や一時的な売上変動に左右されやすいという側面があります。
実務ではこれらを単独で使うのではなく、複数を併用して総合的に判断するのが一般的です。裁判所や調停でも、鑑定人が3方式を組み合わせて妥当な金額を示すケースが多く見られます。
関連記事 :収益還元法の計算式を徹底解説!直接還元法・DCF法
実務の流れ|通知→証拠集め→交渉→調停・訴訟
賃料の増減を求めるときは、まず相手に書面で通知を行い、その根拠となるデータを提示します。次に交渉を行い、合意に至らない場合は裁判所の調停に進みます。それでも解決できないときには訴訟で裁判所が新たな賃料を判断します。
ここで重要なのは、請求した時点から新しい賃料がさかのぼって適用される可能性があることです。最終的な金額が確定するまでに時間がかかることも多く、後日差額を精算するケースも珍しくありません。
また、増減請求の権利は契約で排除することはできないとされています。特約で「賃料の変更は一切しない」と書かれていても、法律の方が優先されるため、条件が整えば増減請求は可能です。
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借地借家法でトラブルになりやすいケース
借地借家法は借主を守る仕組みを持ちながらも、実務ではしばしば紛争が起こります。特に次のような場面では地主や借主の利害が対立しやすく、トラブルに発展することが少なくありません。
- 建物が老朽化して建て替えが必要になったとき
借主が再築を希望しても地主が応じない、あるいは逆に地主が建て替えを求めても借主が拒むなど、意見が分かれることがあります。借地契約の場合は再築の可否が契約内容に直結するため、事前の取り決めが不十分だと争いの火種となります。
- 契約終了時の明け渡し交渉
借主は立ち退き料を求め、地主はなるべく負担を減らしたいと考えるため、金額や条件をめぐって衝突しがちです。特に長期にわたる契約の更新を重ねてきた場合、双方の主張は平行線になりやすい傾向があります。
- 賃料の増減や承諾料など金銭のやりとり
相場との乖離や支払い能力の問題が表面化すると、当事者間だけでは解決が難しくなり、調停や訴訟に持ち込まれるケースが少なくありません。
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借地借家法で困ったら専門家へ相談を
前述のとおり、借地借家法の問題は契約内容や事情によって判断が分かれることが多く、当事者同士の話し合いだけで解決できないケースもあります。そんなときに頼れるのが専門家や相談機関です。
弁護士に相談するのは、法的な対応や裁判所への手続きが視野に入るときです。更新拒否や明渡し、賃料増減など争点が複雑な場合、弁護士が代理人となって交渉や訴訟に臨むことで適切な解決が期待できます。
不動産会社に相談できることもあります。借地や底地の売却、権利調整、相続が絡むケースでは、市場動向を踏まえた具体的な提案をしてもらえることがあります。法律問題の解決まではできませんが、実務に即したサポートを受けられる点が強みです。
また、行政の窓口や各地の無料相談会を活用する方法もあります。市区町村や法テラスでは、専門家につなげてもらえたり、費用の負担を軽くする制度を紹介してもらえたりします。最初の相談先として利用すれば、早い段階で問題の所在を把握しやすくなります。
トラブルが大きくなる前に、どの専門家や機関に相談すべきかを把握しておくことが、安心につながります。
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まとめ

借地借家法は、土地や建物の賃貸契約で借主を守りつつ、貸主との調和を図る法律です。1992年の改正で旧法から新法に変わり、借主保護中心から双方のバランス重視へと移行しました。契約には普通と定期があり、更新の有無で大きく異なります。契約更新や賃料の増減、譲渡や転貸の承諾などはトラブルになりやすいため、自分の契約形態を理解しておくことが将来の備えになります。
不安や疑問を感じたときは、一人で抱え込まずに弁護士や不動産会社、行政の相談窓口を活用することが有効です。リアルエステートが運営する「おうちの相談室」でも、借地や借家に関する悩みや相続・売却に伴う不安について専門家が相談を受け付けています。早めに相談先を活用することで、不要な対立を避け、安心して契約を続けることができます。
借地借家法の基本を理解し、自分の立場を正しく把握しておくことが、将来のトラブルを防ぐ最も大切な備えとなります。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける