稼働していない工場や劣化してしまった工場、有効活用できていない倉庫などを所有していませんか。そこで「リースバック」という仕組みを使うと、所有している資産を利用して資金を手にすることができるのです。所有している工場や倉庫を利用して資金を調達できたら、今の事業を発展させることができるでしょう。工場や倉庫の使い道は本来の目的以外にもあるのです。今回は、工場や倉庫をリースバックすることについて説明していきます。
目次
稼働していない工場や劣化してきた工場を所有しているとき、その工場を売ってしまいたくなるかもしれません。売却してしまって、それで得た資金を他のところに投資をした方がメリットを得られるでしょう。
工場を売却するためには、工場を解体して土地を売却するという方法か、工場をそのままにして土地ごと売るという2つの方法があります。
工場を解体してから売却すると、買い手が見つかりやすくなるというメリットがあります。工場が残っているとその工場を使うしか選択肢がなくなってしまいます。そのため工場を使うニーズがあるような企業しか買い手になることができません。しかし、工場を売却前に解体してしまえば、その土地に住宅でも何でも自分が建てたいものを建てて利用することができます。そうすれば買い手の幅が広がり、買い手が見つかりやすくなります。
それ以外の理由でも、例えば工場があまりにも劣化している場合などは、解体せざるを得ないことがあります。
売却のために工場を解体するとなると、そのためにコストがかかってしまいます。解体にかかる費用は1坪当たり25,000円〜40,000円で、なかなか負担が大きいです。
また、工場を売却する際には土地を浄化してから明け渡す必要があります。工場を利用していると、化学物質などが原因で土壌が汚染されてしまう可能性があります。土壌調査を行い、浄化作業をする必要があります。売却の際にはそのための費用もかかります。
このように、更地にするにはコストがかかるため、工場を解体せずにそのまま売却することも可能です。しかし、その場合は利用者が限られてしまうというデメリットがあります。買い手がつきにくくなって、売却に時間がかかってしまうかもしれません。
そのようなときに、リースバックという選択肢があります。
リースバックとは、所有している資産を売却して資金を得た後、その資産を賃貸するという方法です。資金を調達しつつ、これまでの資産を使い続けることができるのです。このようにリースバックは売却のメリットと賃貸のメリットを併せ持った仕組みです。
もしリースバックをしようと思ったら、まずは買取業者へ相談に行きます。工場の査定をしてもらい、査定結果に納得したら買取業者と売買契約を結びます。売却し資金を得た後は、賃貸借契約を結びます。それによって、今後は賃貸料を支払うことになりますが、これまでと同じ工場を運営し続けることができます。
リースバックを利用しようと思ったときには、リースバック専門会社などに相談をすれば良いです。しかし、リースバック業者の中には戸建て専門、マンション専門といった業者もあり、工場を扱ってもらえない場合もあります。その業者が工場を取り扱ってくれるのかを事前に確認してから相談に行くようにしましょう。
工場をリースバックすると、
といったメリットがあります。一つずつ説明していきます。
工場をリースバックすると資金が手に入ります。その使い道には制限がないため、事業投資やローンの返済など、さまざまな目的で使用することができます。
金融機関から借り入れようとすると、金利の心配があります。しかし、リースバックは借金ではないため、金利がつくことはありません。受け取った資金は売却による収入という扱いになります。さらに、借入をする場合には審査が必要ですが、リースバックをする際には厳しい審査をされることはありません。唯一の条件は、工場を売却したときに買い手がつきそうであることです。もしあまりにも辺鄙な魔署にあったり、老朽化が著しかったりということがあれば、リースバックをすることはできません。このように、審査にかかるスピードが短いため、他の資金調達方法よりも早く現金を手にすることができるというメリットもあります。一時的に、早く資金が必要になったときには特に便利だといえます。
まず、リースバックをするとこれまでかかっていたコストを削減することができます。資産を所有していると、固定資産税、都市計画税、管理維持費、管理人の人件費などといったコストがかかってしまいます。しかし、リースバックをするとこれらのコストを負担する必要がなくなります。それは、固定資産税や都市計画税、維持費、管理費は工場の所有者に支払う必要があるからです。リースバックをすると工場の利用を続けることができるけれど、工場の所有権は買い手に移行することになります。そのため、これらの費用を負担するのは工場の買い手ということになるのです。
さらに、土地を売却しようとした際に必要になる解体費用や、土地の浄化費用はかかりません。なぜなら、工場はこれからも同じ人が利用することになるからです。
工場をリースバックすることによって経営状況を改善することができます。不動産を所有していると価格が変動するというリスクがあり、工場の資産価値が下落してしまうことがあり得ます。しかし工場の所有権を手放してしまえば、価値が変動したところで影響を受けることはありません。さらに、賃貸化することで貸借対照表をシンプルにすることができ、企業価値が上がる可能性があります。
現在の工場を利用し続けることができます。これは売却をしてしまうとできない、リースバック特有のメリットです。今まで使っている工場を利用し続けることができるということには、
といったメリットがあります。
普通の売却という手段をとってしまうと、その向上を再び利用することはできなくなってしまいます。しかし、リースバックであれば、所有権を取り戻すことができるのです。一度売却した不動産の買戻しができるというのがリースバックの大きな特徴の一つです。
つまり、工場のリースバックは、事業を拡大したいときや、資金は必要だけれど移動するのは困難なとき、同じ工場を使い続けたいときにメリットを得ることができるのです。
実際に工場をリースバックした事例を紹介します。
自営業をしている方が、経営に行き詰まってしまって運用資金が必要になりました。そこで金融機関でローンを組もうとしたところ、財務状況が悪いために断られてしまいました。しかし、当面の資金さえ捻出して投資をすることができれば、採算の見込みがあるのです。そこで所有している工場をリースバックしてまとまった資金を手にしました。その資金で新たな事業に投資をし、事業を安定させることができたのです。さらにリースバックではこれまでの工場を使い続けることができるので、ラインをストップさせる必要もありません。資金に余裕ができた頃には売却した工場を買い戻すこともできました。
このように、「一旦資金を手にすることができれば状況が好転するのに」という状況でリースバックをすると、最もメリットを得られるということがわかります。
これまで、工場を売却する場合について見てきました。次は倉庫の場合について考えていきます。倉庫を有効に活用できていないため、売却をしようか悩んだとします。倉庫は所有しているのと、賃貸をしているのではどちらが得なのでしょうか。
倉庫を自社で所有していると、
といったメリットがあります。一方で
といったデメリットがあります。だからといって賃貸にすると、
といったメリットがあり、デメリットには
といったものがあります。売却が良いか賃貸が良いかはこれらのメリット、デメリットを比較して検討してみましょう。
そこで、売却ではなくリースバックという手段をとってみると、どのような点が変わるでしょうか。
まず、倉庫をリースバックする流れは工場のリースバックと変わりません。大まかにいうと、①リースバック業者に相談に行く、②査定をしてもらう、③契約をするという流れで進んでいきます。
倉庫をリースバックすると、
というメリットがあり、一方で
といったデメリットがあります。
所有している場合、売却してしまった場合とリースバックをそれぞれ比較してみましょう。倉庫を所有しているときよりもリースバックをした後の方が、移転がしやすいこと、維持費がかからないことといったメリットがあります。
また、売却してしまうよりもリースバックの方が、倉庫を使い続けることができるという点でメリットがあります。しかし賃料に関しては同じデメリットを背負うことになります。
工場や倉庫といった資産であってもリースバックができるということがわかりました。リースバックをすればまとまった資金を調達することができます。
工場や倉庫のリースバックは、事業を拡大したいときや、資金は必要だけれど移動するのは困難なとき、同じ工場を使い続けたいときに利用するとメリットを得ることができます。
有効に活用できていない工場や倉庫を所有している場合は、リースバックをしてみると良いかもしれません。