【家をリースバックするときの仕組み】~さまざまな立場からリースバックを理解しよう~

昨今、リースバックという金融取引の利用が増加しています。 リースバックとは、持っている資産を活用することで短期間のうちにまとまった資金を調達することができる制度です。 では、実際に、リースバックとはどのような仕組みをしているのでしょうか。 今回は、家をリースバックの仕組みをさまざまなアクターの視点から検討していきましょう。

【家をリースバックするまでの流れ】

あなたは家をリースバックすることを決断したと仮定します。 まずは、その場合の流れについて詳しく見ていきましょう。

①リースバック業者を決める

家をリースバックすることを決めたときには、どのリースバック業者に依頼するかをまず検討します。

もちろん、できるだけ得に取引ができる業者を選びたいですよね。

家をいくらで買い取ってくれるのかという点や、リースバック後の家賃がいくらになるのかという点は、リースバック業者によって大きく異なります。
各社のホームページを閲覧したり、比較サイトを見たり、実際に問い合わせてみたりして、慎重に選ぶ必要があるでしょう。

②問い合わせる

リースバック業者を決めたら、その業者に条件の相談をします。
リースバックについての疑問点を質問してみましょう。

③査定をしてもらう

次に、物件の査定してもらいます。査定は無料で行ってくれる業者が多いです。
簡易査定の後、現地調査が行われ、査定が終わるとリースバック業者から買取価格と家賃が提示されます。

④契約を締結する

条件に納得した場合、持ち家を売却するための契約をリースバック業者と結びます。

さらに、今後も同じ家を利用し続けるために、貸借契約も結びます。

この段階で家の所有権の移行が発生します。
また、家を売却した代金を受け取ることができます。

⑤契約の満了の際

契約期間満了が近づいたときには、契約を更新するか、新しい住居に転居するか、一度売却した家を買い戻すかという3つの選択肢の中から一つを選びます。

契約の内容によっては家の買い戻しや再契約ができなくなってしまう場合があるので、売買契約や貸借契約を結ぶ際にはよく確認しておく必要があります。

【家をリースバックするまでの流れ】~どのようなアクターが存在するのか~

続いて、リースバックの仕組みをさまざまなアクターの視点から見ていきましょう。
実は、リースバックには2つのパターンがあります。

【リースバック業者が売り手から資産を直接買い取る場合】

1つ目のパターンは、不動産会社が売り手から資産を直接買い取るパターンです。
このケースでは、登場人物は資産の売り手とリースバック業者のみになります。

このとき、売買契約を締結すると、売り手はリースバック業者に家を売却することになり、家の所有権がリースバック業者に移行します。
そしてリースバック業者は買い取り代金を支払います。

さらに、両者は賃貸契約を結びます。すると、家の借り手には家賃を支払う義務と、これまで所有していた家に住み続ける権利が付与されます。

もし家の売り手がローンを完済していない場合は、リースバックをすることでローンを負担する必要がなくなる仕組みとなります。
リースバック業者が債権者である銀行に対して借入金弁済を伝え、銀行は売り手に対して抵当権を抹消します。

【リースバック業者が家の売り手と投資家を仲介する場合】

リースバックの2つ目のパターンは、リースバック業者が家の売り手と投資家を仲介する場合です。

家の所有者が売却した物件を買い取るのはリースバック業者だけだとは限りません。
投資家が買い手となる場合もあります。
その際、リースバック業者は家の所有者と投資家を仲介する役割を果たします。

この場合の登場人物は、売り手と、買い手と、リースバック業者の三者となります。

つまり売買契約を締結するのは売り手と投資家となります。契約後は所有権の移行と、投資家から売り手への支払いが行われます。

さらに、両者は賃貸契約を結ぶため、家の借り手は投資家に対して家賃を支払うようになります。

【各アクターからの視点】~リースバックが選ばれる理由とは~

次に、家の売り手、リースバック業者、金融機関の視点から、リースバックのメリットを考えてみましょう。

【家の売り手のメリット】~売り手にとってリースバックの仕組み~

リースバックは、家の売り手にとってはどのような仕組みとなっているのでしょうか。
売り手の視点を考えてみましょう。

家の売り手がリースバックを行うことを決めるのは次のような場合です。

  • 早急にお金が必要なとき
  • 引っ越しをするのは家族の事情、または金銭面、体力面で難しいとき
  • ローンを早いうちに完済したいとき
  • 将来的に、今の家を手放したくはないとき

売り手にとっては、リースバックとはこのような希望を叶えることができる仕組みだということがわかります。

【不動産業者のメリット】~不動産業者にとってリースバックの仕組み~

リースバックとは、家の所有者にとっては得のある制度のように思えますが、リースバック業者にとってもメリットのある仕組みなのでしょうか。

リースバック業者の視点から仕組みを見てみましょう。

もちろんリースバック業者にとってもリースバックはメリットがあります。もしメリットがまったくないのであれば、リースバックの仕組みが発達するはずはありません。

それでは、リースバック業者にとってはどのようなメリットがあるのか、説明していきます。

不動産業者がリースバックを扱う目的①~安定的な収入~

不動産業者がリースバックを扱う目的のうちの1つは、安定した利益を得るためです。

リースバックをすると、不動産業者は家の所有権を得ますが、これまでその家を所有していた人がそのままその家に住み続けることになります。

それによって不動産業者は家賃収入を得ることができます。
つまり、利用者が住んでいる間は安定的に家賃として不動産業者に収入が入ります。

その点、もし家のリースバックではなく、売却取引が行われた場合は、その家が一旦空き家になることになります。
不動産業者は新たにその家を借りてくれる人を探さなくてはなりません。そうでないと賃料収入が得られず、せっかく得た不動産を活用できていないことになるからです。

新しい借家人を見つけるのは不動産業者にとって手間です。しかも、必ずすぐに見つけることができるとは限りません。もし見つからなかった場合、家賃収入による利益が得られなくなってしまいます。

そのため、リースバック業者は手間なく家の居住人を見つけることができ、家賃収入も安定的に確保できるリースバックを支持しているのです。

同じ家に住み続けることができるというのはリースバックの利用者にとってのメリットでしたが、不動産業者にとってのメリットでもあるのです。

不動産業者がリースバックを扱う目的②~家を第三者に売って利益を得る~

不動産業者にとってのリースバックの目的の2つ目は、売り手が家を退去した後にその家を第三者に売却することで利益を得るためです。

リースバックの際は、不動産業者は家を売り手から相場より安く買い取ることができます。
その買取価格は、家を売却するときの価格の半分程度で済む場合もあるのです。

家を安く買い取ることができる理由は、所有権を手放した物件なのに住むことができるし、買戻しもできるという特典を売り手に与えているからです。


家をリースバックするのではなく売却した場合は、これまでその家を所有していた人がそのまま住み続けることができます。

しかし、永久に住み続けることができるわけではありません。
賃貸借の期間は契約で決められており、2~3年であることが多いです。

これは、契約が無期限であると不動産業者が家賃収入しか得ることができないためです。家の貸借人が退去してくれれば、不動産業者はその家を第三者に売ったり、建物を建て替えたり、新たな借家人に貸したりすることで、さらなる利益を生むことができます。
しかし、もし家が買い戻されてしまった場合はどうなるのでしょうか。

家の売り手が必ずしも退去を選択するとは限りません。一度売却した家を買い戻すという可能性も十分にあり得ます。一度売却した家を買い戻せることは、リースバックの大きなメリットの1つでもあります。

買い戻しが行われた場合、リースバックされた家を売ることができず、収入を確保できなくなってしまいます。
リースバックされた家を売ることで収入としているのであれば、もし買い戻しがされてしまった場合は損になってしまうのでしょうか。

結論を言うと、買い戻しの場合も損にはなりません。

買い戻しの場合の費用は、家の売却価格よりも高いことが多いです。
そのため、買い戻しをされたのであれば、買い戻しの金額と売却価格の差額の分だけ利益を得ることができるのです。
また、買い戻し価格は高く設定されていることからも、買い戻しが簡単なわけではないことがわかります。

このように、リースバックは、売り手がどのような選択肢を取ったとしても、不動産業者にとって利益となり得るのです。

不動産業者がリースバックを扱う目的③~集客につながるため~

不動産業者がリースバックを行う理由には、リースバックによる収益性の安定性に加えて、リースバックによって集客ができるためというものがあります。

リースバックという仕組みは次第に認知されるようになってきており、利用者も増加傾向にあります。
それに従って、リースバックに関する不動産業者への問合せが増えてきています。

家を売却して資金を調達することを考えている人が、リースバックをきっかけに自ら不動産業者へアクセスしているのです。そうすれば、不動産業者は様々な提案をすることができ、リースバックでなくとも契約の締結につながる可能性があります。

このような形でリースバックは不動産業者の業績向上につながっています。
つまり、リースバックは不動産業者の集客ツールの一つとなっているのです。

【不動産業者のデメリット】~不動産業者にとってリースバックの仕組み~

メリットがある分、不動産業者にはリースバックによるデメリットも存在しています。

①買い取った家を自由に売買できるわけではない

不動産業者が買い取った家の所有権は不動産業者に移ります。しかし、買い取った家を自由に売買することはできません。

なぜなら、まだその家は貸借契約によってもとの所有者が住むことになるからです。
居住者が退去すれば自由な売買ができますが、それがいつになるかはわかりません。

不動産業者にはこのような、買い取った家の投資計画が立たないというデメリットがあります。

さらに、貸し出す相手が限定されてしまうというデメリットもあります。
契約中は、もともとその家を所有していた人にしか家を貸し出すことはできません。

しかし、その代わりに不動産業者はリースバック利用者に対して家の買取価格を低くし、家賃は高めに設定することができているのです。

②固定資産税などを負担しなくてはならなくなる

家の所有権を得るということは、負担も増えるということです。 これまで家の所有者が負担していた税金や、家の維持、管理にかかる費用などを代わりに負担しなければならなくなります。

これでは不動産業者にとっては損をしているのではないのでしょうか。

実は、これは損ではありません。なぜなら、家を所有することでかかってしまう税金や家の維持費、管理費などを見込んで、家の売買価格が設定されているからです。

さらに、家の修繕費も家の売り手に負担させるような仕組みであることが多いです。リースバックでは、家の何かが故障してしまった場合はその修理にかかる費用は個人の自己負担とする契約を締結することが一般的です。

不動産業者は家にかかる金額面の負担を家の売り手からちゃんと回収しているのです。

【金融機関のメリット】~不動産業者にとってリースバックの仕組み~

金融機関は、債権者(借り入れをしている金融機関など)への任意売却の申し入れ、交渉なども、当社委託の専門業者が代行いたします。


利用者がリースバックをすることで、残った債務の支払いをしてもらえるというメリットがあります。

購入者から支払われた売却代金で、債権者(金融機関など)への返済をおこないます。
また、不動産業者がリースバックをきっかけに集客をしているのと同様に、金融機関でもリースバックが集客につながることがあります。
リースバックに興味を持って訪れた人に不動産担保ローンなど、別の金融商品を提案することで利益を得ることができます。

金融機関にとってはリースバックにはこのようなメリットがあるのです。

まとめ

このように、家のリースバックとは、家の所有権を手放すことによって早期に資金を調達する仕組みですが、アクターによって異なるさまざまなメリットが存在します。

売り手にとっては、急にお金が必要なときに引っ越しをせず資金を調達できること、

不動産業者にとっては安定した収入を得ることができ、集客にもなること、

金融機関にとっては、残債が支払われ、集客にもなること

というメリットがあります。

リースバックはこのような各アクターのメリットによって成り立っている仕組みなのです。