【リースバックの税効果】リースバックは税的に得?節税の仕方とは?

不動産をリースバックするといくらかかるか知っていますか。売買のために仲介手数料や登記変更費用、賃貸借のために敷金、礼金や火災保険料などがかかります。しかし、リースバックでかかる費用はこれだけではありません。実は、これらの費用に加えていくつかの税金がかかっているのです。支払うべき税金のことを意識しておかないと、思っていたよりも受け取れる金額が少なくて困ることになってしまうかもしれません。
今回はリースバックの税法について説明していきます。

リースバックとは

「リースバック」とは、「セール・アンド・リースバック」の略称です。個人が何か不動産を所有している場合、それを売却することでまとまった資金を手にします。そして売却した後は、賃貸借契約を結んで賃貸として元の不動産を利用していきます。このように、リースバックとは、これまで通りに資産を利用しながら資金を調達することができる仕組みなのです。
リースバックでは、さまざまな資産を対象にすることができます。例えば、

  • オフィス、事務所
  • 事務所を兼ねる住宅
  • 営業所、店舗
  • 倉庫、工場
  • 土地
  • 車、飛行機
  • 産業用機械

というように、さまざまな資産を対象にできます。その中でも不動産を対象としているものは特に「不動産リースバック」と呼ばれます。近年では経営不振に陥った企業が自社ビルをリースバックする例や、高齢者が老後の資金を補うために持ち家をリースバックをする例がよく見られます。

リースバックの流れ

リースバックの流れとしては、まずどの業者に依頼するかを選びます。リースバックを扱っている業者はたくさんあり、サービス内容は業者によって異なるため、各社のホームページを調べて比較をします。
業者を絞り込むことができたらいくつかのリースバック業者に条件の相談をしに行きます。自分の希望にあった条件を提示してくれる業者を選ぶようにすると、希望通りの取引ができるようになるでしょう。
次に、物件の査定を依頼します。簡易査定と、現地調査が行われ、それに基づいて買取価格と家賃が提示されます。条件に納得したら契約を締結します。契約には2種類あり、一つ目は売買契約で、もう一つは賃貸借契約です。この二つの契約によって、持ち家を売却しながら、今後はその家を賃貸して使い続けることができるようになります。
契約期間が切れるときには契約を結び直すか、新しい住居に引っ越すか、今の家を買い戻すかという三つの選択肢があります。そのどれかを選び、手続きをします。契約内容によっては、契約の結び直しや家の買い戻しができないことがあります。
これがリースバックの大まかな流れです。

リースバックの税法

それでは、リースバックに関する税法について説明していきます。リースバックをすると、どのような税金が課されるのでしょうか。

消費税

まずは、所得税についてです。消費税は一番身近で、税金というと一番に思い浮かびます。リースバックでは、消費税はかかる場合とかからない場合があるのです。国税庁によると消費税の課税対象は

「消費税の課税対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等および外国貨物の引取り(輸入取引)です。」

となっています。つまり、事業者がリースバックをする場合に限り消費税がかかることがあります。例えば、個人が行うリースバックでは消費税はかかりませんが、法人が自社ビルをリースバックするときなどには消費税がかかるのです。

登録免許税

次に、リースバックでは登録免許税がかかります。登録免許税とは、登記情報を変更するときにかかる税金です。不動産を売買すると、住所や家の名義が変わります。そのため登記の情報を変更する必要があるのです。さらに、家を購入するときに住宅ローンを組んで抵当権がついたのであればそれも登記に載るし、住宅ローンを完済して抵当権が外れた場合は登記上でも抵当権を抹消します。その手続きをするために登録免許税が必要になるのです。これらの手続きは法務局で行います。 登録免許税は不動産一件に対して1,000円かかります。注意点としては、土地と建物を売買する場合は2,000円がかかることになります。支払いは銀行などの金融機関で行い、領収書を法務局へ提出する形になります。

印紙税

さまざまな契約書を作成するときには印紙税という税金が課されます。リースバックでも印紙税が課されます。印紙税の金額は家の売却価格によって異なり、売却価格が高ければ印紙税も高くなります。リースバックの場合は一般的に5,000円〜30,000円くらいかかることが多いです。例えば、売却価格が1000万円〜5000万円であった場合は、印紙税は1万円かかることになっています。

固定資産税

固定資産税とは、土地や家屋などの資産を所有している人に課される税金です。東京都主税局によれば、固定資産税の課税対象となるものには、土地や家屋の他にも飛行機、建設機械、大型特殊自動車、パソコン、医療機器などさまざまな償却資産があります。
対象の不動産が所在する市町村の地方自治体に納めることになっています。固定資産税がいくらになるかは各自治体が決定するのですが、だいたい資産価値の7割くらいになることが多いです。物件の場合だと、戸建ての固定資産税は平均で10万〜15万円で、マンションだと8万円〜12万円くらいになります。しかし資産価値は変動し得るので、そのときの資産価値によって固定資産税の額は変わることがあります。
その支払い方は、家の買い手と売り手でかかった固定資産税を日割りにして、決済日を基準に支払うことが多いです。つまり家の売り手は売却年の1月1日からリースバックの決済をした日までの固定資産税を、そして、決済日以降の分の固定資産税は買い手である不動産会社が負担します。例えば、4月1日に決済をした場合は、1月1日から4月1日までの分を売り手が、4月1日以降の分は買い手が支払うことになるのです。
リースバックと固定資産税の関係についてはこちらも参考にしてみてください。
⇒ 【リースバックは得?】「固定資産税の支払いが必要なくなる」は本当か?

譲渡所得税

リースバックでは、住民税と所得税が課されます。住民税と所得税を総称して「譲渡所得税」というのです。
譲渡所得税とは、不動産を売却したことで得た利益に対して課される税金です。
家をリースバックすることで得た金額から、家を購入してから維持する間にかかった金額と、リースバックにかかった諸費用と、特別控除額を引いた金額に対して譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税の税率は一律ではありません。物件をどれくらいの期間所有しているのかで変わります。5年以上所有している物件の場合は所得税が15%、住民税が5%かかります。5年以下の場合は所得税が30%、住民税が9%かかります。

税金を節税する方法はあるのか?

このようにリースバックをするとさまざまな税金がかかるということがわかりました。しかし、あまりにも税金がかかってしまうとせっかくの売却益が実質のところ減ってしまいます。何か節税する方法はないのでしょうか。

「3000万控除」の税効果

リースバックでは、「3000万控除」という節税方法があります。持ち家を売却するときに、売却価格が3000万円以下であると譲渡所得税がかからなくなるのです。リースバックでは、売却価格が3000万円を超えることは少ないため、ほとんどの場合で譲渡所得税はかからないといえるのです。
しかし、この節税方法を利用するためには条件があり、売買する相手が親子関係にあると「3000万控除」は適応できません。売り手と買い手が親子関係や夫婦の関係でないことが条件になっているのです。また、「3000万控除」は自分で確定申告の手続きをしないと適応されないので、注意が必要です。

譲渡損益を繰越控除する

リースバックでは、売却することで譲渡損失を得ることがあります。その場合、その損失分を所得から控除できるのです。
例えば、年収が250万円の人が1,000万円の不動産を500万円で売却したとします。その場合、1,000万円―500万円で500万円分の損失が出ます。そのとき損失は2年分の収入に等しいので、2年分の収入がなかったことにしてもらえるのです。それによってさまざまな税金を非課税にすることができます。しかし、この繰越は譲渡後3年間までとなっており、繰越控除のためにも確定申告の手続きが必要になります。

リースバックでは結局いくらかかるのか

つまり、リースバックをするとどのような費用がかかるのでしょうか。

【相談にかかる費用】

無料

【売買契約にかかる費用】

印紙税、登記変更費用、抵当権抹消費用、仲介手数料、事務手数料、譲渡益課税

【賃貸借契約にかかる費用】

敷金、礼金、家賃保証料、火災保険料、事務手数料

【買い戻しにかかる費用】

印紙税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税

手数料や保険料については、業者によってはかからない費用もあります。細かい費用がいくらかかるのか気になった場合は各業者に問い合わせてみましょう。中には契約の段階では言われてなかった手数料を後から請求されて、高額で驚いたと言うトラブルもあります。そうならないためにも、早めの段階で全ての費用を入れた見積もりを出してもらうと良いでしょう。

まとめ

今回はリースバックの税法について説明してきました。 リースバックをすると登録免許税や印紙税などの税金がかかります。3000万控除があるため譲渡所得税はほとんどの場合かかりません。
支払うべき税金について知らなかったために、リースバックをした後に「思っていたよりも受け取れる金額が少ない」と後悔することがないように注意しましょう。


【参照】国税庁「No.6105 課税の対象」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6105.htm