© REAL ESTATE Co.,Ltd. All RIGHTS RESERVED.

投稿⽇時

2023/11/01

最終更新⽇時

2025/06/12

事業用定期借地権のトラブル事例と解決策を実践的に解説

  • 底地・借地

マイホームを建てるときや事業を開始するとき、土地を購入せずに建物を建てる方法として、「第三者の土地に建物を建てるための権利」=借地権を設定し、その土地を利用することができます。

今回は、借地権のなかでも「事業用定期借地権」に着目し、その定義と起こりうるトラブルについてまとめてみました。
事業目的で土地を借りたい方や、現在所有している土地の活用方法として事業用定期借地権を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

事業用定期借地権について

さて、事業用定期借地権のトラブルについて触れる前に、借地権の種類についておさらいをしましょう。

事業用定期借地権とは

事業用定期借地権とは、簡単に言えば「事業目的の建物を所有するために、一定期間土地を借りる権利」のことです。

店舗や倉庫、工場といった事業のための建物にしか利用できないため、賃貸アパートや分譲マンションなどには利用できません。

また、勘違いしやすい例として、老人ホームやグループホームは特定の利用者が居住目的で利用する施設であるため、事業用借地権の対象とはなりません。反対に、病院は医療提供施設であり、ホテルや旅館は不特定多数の方に向けた宿泊施設であるため、事業用定期借地権の対象となります。

借地権の種類と特徴

借地権は、事業用定期借地権に限らず複数の種類が存在しますので、ここではそれぞれの違いについて簡単に解説していきます。

まず、大きな括りとしては「普通借地権」と「定期借地権」の二つがあります。

普通借地権」とは、一般的には借地人が希望する限り更新が可能な借地権で、「定期借地権」とは、契約期間が満了した時点で借地人が土地を地主へ返還する必要のある借地権です。

普通借地権は、「これでは契約を続けることができない」と判断されるような正当な理由なしには地主が契約の更新を拒否できないので、一度契約すると土地は半永久的に借地人が利用し続けることになります。また、土地の賃貸借契約を解除するに相当する理由があったとしても、地主は借地人に対して立ち退き料を支払わなければなりません。もしくは、借地人が地主に対して土地の上にある建物を時価で買取請求すること(建物買取請求権)が可能です。

一方で、定期借地権は、契約時に定めた期間が終われば、土地は確実に地主に返ってくるので、いずれは自分で利用したいという場合や他の活用方法に切り替えたいというようなライフプランがある場合でも安心して土地を貸し出せるのが最大のメリットだと言えます。

定期借地権の種類と特徴

定期借地権のなかでも、おもに「一般定期借地権」と「事業用定期借地権」、そして「建物譲渡特約付借地権」があり、それぞれ異なる特徴を持ちます。

一般定期借地権」は、定期借地権のなかでもとくに用途の制限はなく、その契約期間を50年以上とするものです。原則として、契約の更新や建物の再築等による期間の延長はできず、契約終了時に建物買取請求権は発生しません。そのため、契約期間満了時には土地上の建物を取り壊して更地にした状態で地主へ返還することが決められています。

一般的に所有権を持つ(土地を購入する)よりも低価格で取得できるのがメリットであり、定期借地権付きのマンションや戸建て、または商業施設やオフィスビルなどにも利用されています。

事業用定期借地権」は、上記で簡単に説明した内容に加えて、契約期間は10年以上30年未満、もしくは30年以上50年未満の2種類となっています。

契約の更新や建物の再築等による期間の延長がなく、契約終了時に建物買取請求権は発生しないという3点は一般定期借地権と同様です。ただし、これらの特約は契約期間が10年以上30年未満の場合には必ず有効となり、30年以上50年未満の場合は任意となります。

また、事業用定期借地権の契約は必ず公正証書によって締結するように定められています。

建物譲渡特約付借地権」とは、前述した2つの借地権とは少し性質が異なり、「借地権を設定して30年以上経過したときに、地主が建物を買い取ることで借地契約が終了し、借地権が終了する」という旨の特約がついた借地権となっています。単体で設定されることは珍しく、普通借地権やその他の定期借地権に付加する形で契約されることがほとんどです。

また、建物譲渡特約付定期借地権は、法律上では書面なしの契約でも良いことになっています。ただし、口頭のみではトラブルになる可能性が高くなるため書面での契約が望ましいです。さらに、他の借地権と組み合わせた契約では、書面や公正証書が必要となるので注意しましょう。

事業用定期借地権の地代相場

事業用定期借地権の地代は、通常では相当地代と呼ばれる地代を払うようになっています。

相当地代とは「地代の定価」のようなイメージで、その相場は年額地代で更地価格の6%程度が一般的な額です。更地価格とは、その土地の時価とされていますが、実務上では相続税路線価を用いて求めることが多いです。

相当地代は、普通借地権の地代相場(年額で固定資産税の3倍程度)と比べると、かなり高くなります。
なぜなら、普通借地権の場合は、最初にまとまった額の権利金が発生するからです。

普通借地権は、契約を交わせば半永久的に土地を借りられるので、地主もそのリスクを負う代償として借地人から権利金をもらうことになっています。権利金は、土地価格の60~80%程度の額とかなり高額なので、その分地代は安いことがほとんどです。

一方で、事業用定期借地権では、契約を結ぶ際に権利金ではなく保証金の授受を行うケースが多いです。保証金は、契約満了時に地主から借地人へ返還される金銭です。

事業用定期借地権は、借地人(事業者)が建物投資を行うため撤退はあまり考えにくく、期間満了後には更地返還となるため、リスクはかなり低い事業であると言えます。そのため、保証金の額は少なくても良く、一般的には地代の6ヶ月程度です。

事業用借地権の中途解約はできる?

事業用定期借地権は、中途解約ができるのでしょうか?できない場合、契約終了後はどのようなパターンがあるのかご紹介します。

再契約

結論から申し上げると、事業用定期借地権の中途解約は、原則としては不可能です。

定期借地権は、そもそも一定期間の契約が終われば土地が戻ってくるということを前提に地主が土地を貸し出す仕組みなので、もし地主側で自由に途中解約ができてしまうとなれば、借地人がかなり不利な契約になってしまうからです。

ただし、例外として契約書内に「借地人からの中途解約ができる」という旨の特約があるようなケースであれば、借地人の申し出による中途解約は可能となります。

また、事業用定期借地権には更新という概念がないため、もし契約期間が満了した後も借地契約を続けたい場合には、新しく再契約する必要があります。

再契約は、双方の合意がなければ締結できないので、地主が拒否すれば、借地関係は終了し土地を更地返還しなければなりません。

また、再契約の内容は、もとの契約期間や特約とは異なる内容でも構いません。ただし、あくまでも新規契約となるため、その契約に必要な手順を踏んで締結しましょう。

期間の延長

事業用定期借地権は10年以上50年未満であれば有効であり、10年以上30年未満もしくは30年以上50年未満の二種類どちらかで契約を結んでいるはずです。その場合、契約した方の期間内であれば期間の延長が可能です。

例えば、契約期間を30年から40年にすることは可能ですが、20年を40年には延長できません。

条件変更の場合は、公正証書による必要性は法律で定められてはいないのですが、トラブルを避けるためにも公正証書によって締結するのがベターでしょう。

事業用定期借地権で起こりうるトラブル3選

事業用定期借地権で起こりうるトラブルとしては、主に以下の3種類が挙げられます。

どこまでが地主の資産か?

事業用定期借地権では、基本的に契約を結ぶ時点の土地は更地であるため、原則としてそこに地主が所有する資産はありません。

しかし、例えばその土地にアスファルト舗装を施しており、その費用を地主が負担していたとすれば、アスファルト舗装部分の所有者は地主となります。そのため、時間が経過してアスファルト舗装に補修が必要となった場合も、その費用を地主が負担しなくてはなりません。

また、地主がアスファルト舗装を行ってしまうと、契約終了時に更地ではなくアスファルト舗装を残したままで返還されるという事態になりかねません。そうなったときにも、実質的にはアスファルト舗装は地主の所有物であるため、それを剥がす工事も、地主が行う必要があるのです。

事業用定期借地権で土地活用するのが初めての場合など、慣れている事業者に任せすぎてしまい、説明も不十分なままで進めてしまうと、地主がいつのまにか工事の費用を負担しなければならない事態になりかねません。

地主側としては、もしこのような工事を要求された場合には、どこまで地主側での修繕が必要なのか、何をもって原状回復とするのかを確認するようにしましょう。

事業者の経営破綻

事業用定期借地権で契約中に、事業者が破綻したり夜逃げをしてしまった場合、建物が残されたままになってしまうというリスクがあります。

そうなってしまうと、借地人の所有物である建物を勝手に取り壊すわけにもいかず、まずは契約を解除する裁判を起こさなければなりません。裁判によって解除が認められると、借地人は建物を壊さなければならなくなります。

ただし、実際には借地人による建物の取り壊しは現実的ではないため、代替執行という形で裁判所が建物を撤去します。その際に発生する費用は地主が立て替えることが多いのですが、立て替えといっても借地人から費用を回収するのは困難であることから、実際には地主が建物の取り壊し費用を負担せざるを得ないのです。

対策としては、契約期間内に地代の滞納が続くようなことがあれば、地主から契約解除を申し出るなど、破綻する前に早めの対策を取ることが良いでしょう。

保証金を借りすぎる

事業用借地権では、保証金を預かるということを上述していますが、その額が多額すぎたがゆえに返還できなくなってしまうというケースもあります。

地主としては、前節で紹介したような万が一に備え、事業者が建物の取り壊しをせずに破綻した場合に、建物の取り壊し費用を保証金でまかなえるよう、相当額を預かっておきたい気持ちはわかります。

しかし、多額の保証金を預かってしまい、契約期間の途中で相続が発生した場合はどうでしょう。親はその保証金を実際に預かっているため現金を所有していますが、子は直接保証金を預かったわけではないため、それを返せるほどの現金を所有しているとは限りませんよね。にもかかわらず、保証金の返還義務は相続人である子に引き継がれた状態なので、契約が終了したタイミングで子が現金を用意できない限り、保証金を返還できないという事態に陥ります。

借地契約は、借家契約とは異なり契約期間が長期にわたるため、期間中に相続が発生する可能性も十分考えられます。

保証金は相場程度におさめ、預かり過ぎないようにするという点と、経済的に信用の高い事業者を選ぶという点はおさえておいた方が良いでしょう。

まとめ

いかがでしたか。

今回は、事業用定期借地権で起こりうるトラブルについて焦点を置き解説しました。

事業用定期借地権は、安定して長期間にわたり他の借地権よりも高い地代を得られ、期間が過ぎると土地が戻ってくるという点ではかなりメリットも大きい土地活用方法です。

ただし、そうは言っても他人に土地を貸す契約なわけですから、安易な考えで契約を結んでしまうと後悔するかもしれないということも考えなくてはなりません。

長期間ほかの土地活用に変更できない分、もし将来的にほかの活用法を考えているのであれば契約期間を短めに設定するであったり、相続のことを考えて保証金を多くもらいすぎないなど、起こりうるトラブルについては事前に対策しておくことをオススメします。

最後まで閲覧ありがとうございました。