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2026/02/26事業用定期借地権のトラブル7パターン|契約前に防ぐ方法と起きたときの対処法
- 底地・借地
土地を自分で所有せずとも、地代を支払うことで地主が所有する土地に建物を建てて利用できる権利が「借地権」です。
借地権にはいくつか種類がありますが、そのなかでも「一定の期間、事業目的で建物を利用するため」に設定する借地権が、「事業用定期借地権」です。
事業用定期借地権は事業を始める際の初期投資を抑えられるのが大きなメリットですが、居住用の建物とは一部規定が異なります。そのため、通常の借地権に関するトラブルに加え、事業用定期借地権ならではのトラブルも発生する点に注意が必要です。
そこで本記事では、事業用定期借地権の概要から起こりやすいトラブルのケースまで解説します。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
事業用定期借地権について

事業用定期借地権とは、簡単にいえば「事業目的の建物を所有するために、一定期間土地を借りる権利」のことです。
借地権自体が一つの土地に地主と借地人の権利が共存する複雑な権利です。さらに、「契約相手が事業者である」「原則契約期間の変更がない」という点もあり、事業用定期借地権はより複雑な仕組みです。そのため、契約当事者の借地権制度への理解不足に起因するトラブルも少なくありません。
まずは、事業用定期借地権のトラブルについて触れる前に、借地権の種類について確認しておきましょう。
「普通借地権」「定期借地権」それぞれの特徴
借地権にはいくつか種類があるのは前述した通りですが、まずは大きなくくりとして「普通借地権」と「定期借地権」の違いについて見ていきましょう。
簡単にいうと、両者の違いは「更新の有無」です。
「普通借地権」とは、一般的には借地人が希望する限り更新が可能な借地権で、「定期借地権」とは更新がないタイプの借地権です。定期借地権では、契約期間が満了した時点で借地人が土地を地主へ返還する必要があります。
普通借地権は、「これでは契約を続けることができない」と判断されるような正当な理由なしには地主が契約の更新を拒否できないので、一度契約すると地主の手元に土地が戻ってくるまでには長い年月がかかります。また、更新を拒否するに相当する理由があったとしても、地主は借地人に対して立ち退き料を支払うケースが一般的です。
一方で、定期借地権は更新がないため、契約時に定めた期間が終われば、土地は確実に地主に返ってきます。そのため、いずれは自分で利用したいという場合や他の活用方法に切り替えたいというようなライフプランがある場合でも安心して土地を貸し出せるのが最大のメリットです。
定期借地権の種類と特徴
定期借地権は、以下の3種類に分かれます。
・一般定期借地権
用途の制限はなく契約期間は50年以上、契約終了時に「建物買取請求権」は発生しません。建物買取請求権とは、借地契約の終了時に借地人が建てた建物を地主に対して時価での買い取りを請求できる権利です。契約は公正証書等の「書面」で行う必要があり、口頭では効力が発生しません。
・事業用定期借地権
前述の通り事業用建物を建てる目的でのみ利用できる定期借地権で、契約期間によって以下の2種類に分かれます。
- 10年以上30年未満:法律上、当然に更新や建物買取請求権は発生しません。
- 30年以上50年未満:特約を結ぶことで、更新や建物買取請求権を排除できます(特約がないと普通借地権扱いとなるため注意が必要です)。 なお、期間に関わらず、契約は必ず「公正証書」によって締結しなければなりません。
・建物譲渡特約付借地権
「借地権を設定して30年以上経過したときに、地主が建物を買い取ることで借地権が消滅する」という旨の特約がついた借地権です。法律上では書面なしの契約でもよいことになっていますが、トラブルを避けるためにも書面での契約が望ましいでしょう。
なお、買い取った建物に借家人が入居している場合、地主は借家人との賃貸借契約を引き継ぐことになるため、すぐに明け渡しを求められない点に注意が必要です。
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事業用定期借地権のメリットと活用用途
前述の通り、事業用定期借地権は事業を目的として一定期間土地を賃貸借する形の借地権です。
地主にとっての主なメリットは、次の5つです。
- 契約期間中、安定した地代収入が得られる
- 契約期間が終了すれば、確実に土地が更地で戻るため活用しやすい
- 土地を貸すだけで自ら事業を行うわけではないため資金が不要
- 事業の発展によって土地の価値が上昇する可能性がある
- 居住用よりも商業利用に適した土地を活かしやすい
一方、事業者である借地人にとっての主なメリットは、次の3つです。
- 土地を購入するよりも取得コストを抑えられる
- 同じ予算でも購入より好条件の土地を確保できる
- 事業計画に合わせて契約期間を設定できる
このように、事業用定期借地権は地主・借地人の双方に利点があり、主に店舗、倉庫、工場、事務所、ホテルなどで幅広く活用されています。
また、事業用定期借地権にはほかの定期借地権とは明確に異なる点があります。通常の借地権では借地人を保護するさまざまな規定が借地借家法において定められていますが、事業用定期借地権では、その規定の適用が一部免除されるケースがあります。例えば、契約年数によっては建物買取請求権が適用されなかったり、通常の借地権の存続期間よりも短い10年以上30年未満に設定したりすることも可能です。
このように事業用定期借地権では借地借家法に基づく規定の一部を免除することで、地主・借地人ともに事業目的での利用を促進しやすくなっています。
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事業用定期借地権の地代相場
事業用定期借地権の地代は、「相当地代」と呼ばれる地代を払うのが一般的です。
一般的な借地権の場合、毎月の地代に加えて、契約時に権利金を支払うケースが多く見られます。しかし、事業用定期借地権の場合は契約を結ぶ際に権利金ではなく保証金の授受を行うケースが多いです。
権利金と異なり、保証金は建物賃貸借の「敷金」に近い性質で、基本的に契約が終了すると借地人に返還されます。そのため、権利金を支払う場合の地代より高い「相当地代」を支払う形となっています。
相当地代の相場は年額地代で「更地価格の6%程度」が一般的な額です。更地価格とは、その土地の時価とされていますが、実務上では相続税路線価を用いて求めることが一般的です。相続税評価額は国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べられます。
(参考: 『国税庁 路線価図・評価倍率表』)
都市部の多くでは、土地が面する道路(路線)ごとの価格=「路線価」が定められています。千円単位で表示されているので、例えば「350C」なら1平方メートルあたり35万円、借地権割合はC=70%です。
地積が100平方メートルなら、土地の相続税評価額(更地価格の目安)が概算で3,500万円になります。相当地代の目安は「更地価格の6%程度」なので、 3,500万円 × 6% = 年額210万円となります。
ただし、実際には土地の形状や道路との接し方によって補正率がかかるので、あくまで大まかな目安として捉えておきましょう。
ちなみに、保証金の額は一般的には地代の6か月程度とされています。
関連記事:事業用定期借地権の適正地代とは?地代の種類や決め方について解説!
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事業用借地権の更新と解約

普通借地権では更新が可能ですが、事業用定期借地権では更新がないのは前述の通りです。では、契約を続けたい場合や事業の縮小・移転などで中途解約したい場合にはどのようになるのでしょうか。
次に、事業用定期借地権の更新と解約について確認しましょう。
中途解約は原則できない
結論から申し上げると、事業用定期借地権の中途解約は、原則としては不可能です。
定期借地権は、そもそも一定期間の契約が終われば土地が戻ってくるということを前提に地主が土地を貸し出す仕組みなので、もし地主側で自由に途中解約ができてしまうとなれば、借地人がかなり不利な契約になってしまうからです。
ただし、例外として契約書内に「借地人からの中途解約ができる」という旨の特約があるようなケースであれば、借地人の申し出による中途解約は可能となります。
関連記事:事業用定期借地権の契約に公正証書はなぜ必要?手続きの流れや注意点も解説
再契約なら可能
事業用定期借地権には更新という概念がないため、もし契約期間が満了した後も借地契約を続けたい場合には、新しく再契約する必要があります。
再契約は、双方の合意がなければ締結できないので、地主が拒否すれば、借地関係は終了し土地を更地返還しなければなりません。
また、再契約の内容は、もとの契約期間や特約とは異なる内容でも構いません。ただし、あくまでも新規契約となるため、その契約に必要な手順を踏んで締結しましょう。
期間内であれば延長も可能
事業用定期借地権は10年以上50年未満であれば有効であり、10年以上30年未満もしくは30年以上50年未満のどちらかで契約を結んでいるはずです。その場合、契約したほうの期間内であれば期間の延長が可能です。
例えば、契約期間を30年から40年にすることは可能ですが、20年を40年には延長できません(適用される法律の条項や特約の要件が変わってしまうためです)。
なお、期間延長の合意書については、法律上「公正証書でなくても有効か」について議論がありますが、事業用定期借地権は公正証書での契約が成立要件であるため、変更契約も公正証書で行うのが実務上の原則です。万が一の無効リスクを避けるためにも、必ず公正証書によって締結しましょう。
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事業用定期借地権で起こりうるトラブル7選

事業用定期借地権のトラブルは、通常の借地権で多い金銭関係のほかに、原状回復についてのトラブルも多く見られます。また、同じ金銭関係のトラブルでも、事業用建物という性質上、金額が大きくなりやすくトラブルによる損害も大きくなりがちです。
最後に、事業用定期借地権において起こりがちな7つのトラブルケースについて、起こったときの対処法と契約前に防ぐ方法を交えつつ解説します。
【原状回復トラブル】初期工事の帰属をめぐる認識違い
事業用定期借地権では、基本的に契約を結ぶ時点の土地は更地であるため、原則としてそこに地主が所有する資産はありません。
しかし、例えばその土地にアスファルト舗装を施しており、その費用を地主が負担していたとすれば、アスファルト舗装部分の所有者は地主となります。そのため、時間が経過してアスファルト舗装に補修が必要となった場合も、その費用を地主が負担しなくてはなりません。
また、地主がアスファルト舗装を行ってしまうと、契約終了時に更地ではなくアスファルト舗装を残したままで返還されるという事態になりかねません。そうなったときにも、実質的にはアスファルト舗装は地主の所有物であるため、それを剥がす工事も、地主が行う必要があるのです。
事業用定期借地権で土地活用するのが初めての場合など、慣れている事業者に任せすぎてしまい、説明も不十分なままで進めてしまうと、地主がいつのまにか工事の費用を負担しなければならない事態になりかねません。
当事者間で現状の認識や負担範囲について再度協議し、合意内容を文書で残しましょう。また、契約時に初期工事(アスファルト舗装など)の費用負担者と所有権の帰属、さらに原状回復の範囲・負担について具体的に定め、契約書に明記すると安心です。
【原状回復トラブル】事業者の経営破綻
事業用定期借地権で契約中に、事業者が破綻したり夜逃げをしてしまった場合、建物が残されたままになってしまうというリスクがあります。
そうなってしまうと、借地人の所有物である建物を勝手に取り壊すわけにもいかず、まずは契約を解除する裁判を起こさなければなりません。裁判によって解除が認められると、借地人は建物を壊さなければならなくなります。
ただし、実際には借地人による建物の取り壊しは現実的ではないため、代替執行という形で裁判所が建物を撤去します。その際に発生する費用は地主が立て替えることが多いのですが、立て替えといっても借地人から費用を回収するのは困難であることから、実際には地主が建物の取り壊し費用を負担せざるを得ないのです。
対策としては、裁判による契約解除と代替執行で建物撤去を進め、費用負担が発生した場合はできる限り借地人の財産から回収を試みます。また、契約期間内に地代の滞納が続くようなことがあれば、地主から契約解除を申し出るなど、破綻する前に早めの対策を取るとよいでしょう。
【金銭トラブル】保証金が返還不能
事業用借地権では、保証金を預かるということを上述していますが、その額が多額すぎたがゆえに返還できなくなってしまうというケースもあります。
地主としては、前節で紹介したような万が一に備え、事業者が建物の取り壊しをせずに破綻した場合に、建物の取り壊し費用を保証金でまかなえるよう、相当額を預かっておきたい気持ちはわかります。
しかし、多額の保証金を預かってしまい、契約期間の途中で相続が発生した場合はどうでしょう。親はその保証金を実際に預かっているため現金を所有しています。子は直接保証金を預かったわけではないため、それを返せるほどの現金を所有しているとは限りません。それにもかかわらず、保証金の返還義務は相続人である子に引き継がれた状態です。そのため、契約が終了したタイミングで子が現金を用意できない限り、保証金を返還できないという事態に陥ります。
借地契約は、借家契約とは異なり契約期間が長期にわたるため、期間中に相続が発生する可能性も十分考えられます。
対処法としては、借地人と返還時期や方法について誠実に協議し、必要であれば分割返済や代替措置の提案などの解決策を見いだす必要があるでしょう。また、返還不能を避けるためにも過剰な保証金を徴収せず、必要最小限の額に抑えることが重要です。
【金銭トラブル】地代の滞納
民法第541条では、「債務者が契約上の義務を履行しない場合、債権者は『相当の期間』を定めて履行を催告し、その期間内に履行されなければ契約を解除できる」と定められています。地代は借地人の債務にあたるため、滞納が続く場合は債務不履行として契約を解除することが可能です。
(参考: 『e-GOV法令検索 民法541条』)
ただし、「相当の期間」を設けて催告する必要があるため、一度や二度の遅延では解除できません。一定の期限を定めて支払いを求め、それでも数か月にわたり履行がない場合に初めて解除が認められます。
事業用定期借地権の場合、借地人は事業者であるため、地代の滞納は経営の悪化や破綻の兆しである可能性もあります。滞納が発生した段階で早めに対応することが重要です。
また、契約前に借地人の信用調査を行い、滞納リスクを低減するようにしましょう。
【金銭トラブル】地代の値上げ拒否
地主は、借地人の合意を得ずに一方的に地代を値上げすることはできません。そのため、借地人が値上げに同意しない場合には、最終的に裁判によって解決を図ることになります。
借地借家法第11条では、地主に地代の増額を請求する権利が認められています。ただし、借地人の保護を目的としており、地代の増額が認められるためには次のような正当な理由が必要です。
- 土地に対する租税公課の増額
- 物価など経済事情の変動
- 周辺類似条件の土地と比較して地代が安すぎる
裁判が確定するまでの間、借地人は自ら相当と考える額の地代を支払えば足りるとされています。この期間中、地主は値上げ後の地代を受け取ることはできません。しかし、最終的に裁判で地代の増額が認められた場合には、地主は借地人に対して年1割の利息を付した上で、増額分の地代をさかのぼって請求することが可能です。
また、契約締結時に、将来の地代改定に関する特約(例:〇年ごとの見直し、物価変動に応じた改定など)を設けることを検討するとよいでしょう。
関連記事:事業用定期借地権の適正地代とは?地代の種類や決め方について解説!
【金銭トラブル】地代の値下げ要求
10年以上に及ぶ長期契約の間には、事業の収益が低下するなどの理由で、借地人から地代の値下げを求められることがあります。
滞納に発展するよりは、一定の範囲で値下げに応じたほうが結果的に得策となる場合もあります。しかし、話し合いで折り合いがつかないときは、最終的に裁判で地代の妥当性を争うことになります。
注意が必要なのは、地代の増額と異なり、契約書で「地代を減額しない」と特約を定めても、これは借地人に不利な規定となるため無効とされる点です。もし、値下げ要求が借地人の経営状況の悪化によるものの場合には、一時的な減額などの柔軟な対応も検討しましょう。
【その他のトラブル】無断増改築・転貸
民法第612条では、借地人が地主の承諾を得ずに借地を転貸した場合、地主は契約を解除できると定められています。従って、契約解除とともに、借地人に対して建物の解体と更地での返還を求めることが可能です。
さらに、転貸によって地主に損害が生じた場合には、損害賠償を請求することもできます。これは、転貸による直接的な損害だけでなく、本来得られたはずの「転貸承諾料」相当額を損害として請求できる場合も含まれます。
一方、無断での増改築については、その内容や規模によって契約解除が正当と認められるかどうかが異なります。
いずれにしろ、契約締結時に契約書で無断転貸・増改築時の解除条項や承諾料の規定を明記することが重要です。また、定期的に借地の状況を確認し、早期に状況を把握できるようにするべきでしょう。
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まとめ

事業目的の建物を更新なしで賃貸借する「事業用定期借地権」は、低コストで事業の初期投資を抑えたい借地人と、契約終了後に土地活用をスムーズに進めたい地主の双方にメリットがある制度です。
一方で、通常の借地権とは異なる点が多く、また契約相手が企業となるケースも多いため、制度への正しい理解とトラブルへの的確な対応が求められます。
トラブルを避けるためには契約前に事業用定期借地権制度について理解しておき、契約書をよく確認した上で、必要に応じて特約でトラブルが起きそうなポイントについてあらかじめ明記しておくことが重要です。また、トラブルが起きてしまった後は、問題がこじれて長期化する前に早期の対処が必要です。
しかし、相手が事業者である事業用定期借地権では、個人の地主がトラブルの対処や契約書のチェックを行うのは難しい部分があります。そこで、必要に応じて専門家の助言を受けながら進めることが重要です。
当社の「おうちの相談室」では、借地権全般に精通した専門家が、アドバイスとサポートを提供しています。定期借地契約の締結や契約終了後の土地活用にお悩みの地主さまは、ぜひ一度ご相談ください。
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