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最終更新⽇時

2025/06/12

相続放棄した借地権付き建物の解体費用は誰が負担?処分方法も解説

  • 底地・借地
記事執筆・監修
エキスパート職 山口智暉
  • -資格-

    宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士

  • -経歴-

    株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
    東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
    株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
    リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける

借地権付き建物を相続放棄しても、解体費用を負担する必要があるのではないかと不安な方もいるのではないでしょうか。

原則、借地権付き建物を相続放棄したら解体費用を支払う必要はありません。ただし、プラスの財産も受け継げないため、相続放棄を選択するかどうかは慎重に検討することをおすすめします。

この記事では、相続放棄した借地権付き建物の解体費用の負担者、相続放棄する流れとメリット・デメリットについて解説します。借地権付き建物を相続放棄したほうがよいか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。

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相続放棄したら借地権付き建物の解体費用を支払う必要はなくなる

相続放棄と書かれた紙と札束、電卓、家の模型、契約書、印鑑

地主から借りた土地に建物を建てて暮らしている借地人は、原状回復義務を負います(民法第621条)。原状回復義務とは、賃貸借契約の終了後、借りたときの状態に戻して地主に土地を返還しなければならないというルールです。そのため、借地を地主に返還するときは、借地に建てた建物を解体して更地にする必要があります。

相続放棄を選択すると、最初から相続人ではなかったと見なされます。借地上の建物に関する権利も失うため、建物を解体して地主に返す必要はありません。借地上の建物の解体費用を負担したくないなら、相続放棄を選択するのもひとつの手です。

ただし、室内にある家財道具を処分するといった行為をすると、「単純承認」と見なされて相続放棄ができなくなるため注意が必要です(民法第921条第1号)。

参考:『民法第621条|e-Gov法令検索』

参考:『民法第921条第1号|e-Gov法令検索』

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【ケース別】相続放棄した借地権付き建物の解体費用は誰が負担する?

通帳を眺めながら頭を抱える女性

相続放棄を選択すると、借地権付き建物の解体費用を負担せずに済みます。その場合、誰が解体費用を負担するか気になる方もいるのではないでしょうか。ここでは、相続放棄した借地権付き建物の解体費用を負担する方についてケース別に解説します。

他に相続人がいる場合

借地権付き建物を相続放棄した際、他に相続人がいる場合、その方が借地権付き建物を含む被相続人の財産を相続します。借地権を地主に返還するときは、その相続人が借地権付き建物の解体費用を負担します。

借地権付き建物の解体には100万円以上の費用がかかるケースも珍しくありません。解体費用の負担を巡って他の相続人との間でトラブルが起こる可能性が考えられるため、相続放棄を選択する前に、まずは相続に関する話し合いの機会を設けることが大切です。

他に相続人がいない、もしくは相続人全員が相続放棄した場合

自分の他に相続人がいない、もしくは相続人全員が相続放棄を選択した場合、相続財産清算人が相続財産の中から解体費用を支払います。

相続財産清算人とは、被相続人の遺産を管理・清算する役割を担う人物です。借地権付き建物をはじめとする遺産を売却して解体費用や借金の清算を行い、残った財産を国へ納めます。

相続財産清算人を選任するには家庭裁判所に申し立てが必要で、決まるまでに1年以上かかることも珍しくありません。そのため、相続人全員が相続放棄を選択した状況で借地権付き建物の解体費用を負担したくないなら、速やかに家庭裁判所で手続きすることが大切です。

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借地権付き建物の解体費用の相場

借地権付き建物の解体費用の相場は、建物の構造によって異なります。

構造 1坪当たりの解体費用相場
木造 3万円~4万円
鉄骨造 5万円~7万円
鉄筋コンクリート造 6万円~8万円

例えば、木造2階建て、延べ床面積40坪の借地権付き建物を解体するときは、40坪×3万円~4万円=120万円~160万円の解体費用がかかります。

ただし、あくまでも相場に過ぎず、家の中に残った家財道具の量、木や塀といった付属物の状況、立地条件によって実際にかかる解体費用は異なります。費用をできる限り抑えたいなら、荷物を自分で片づけたり、複数の解体業者の見積もりを比較したりする対策が有効です。

関連記事:家屋解体費用の相場は?お得に抑えるコツを紹介

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借地権付き建物を相続放棄する流れ

グラフとプロセスを示した木の模型

借地権付き建物を相続したくない場合、相続放棄は有効な手段のひとつです。スムーズに相続放棄の手続きを進めるためにも、事前に全体の流れを押さえておきましょう。ここでは、借地権付き建物を相続放棄する手順と方法について解説します。

必要書類を準備して家庭裁判所で申請する

相続放棄するには、相続があったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。借地権付き建物を相続したくない方は、できる限り早く手続きを済ませましょう。相続放棄の申請に必要な書類は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 相続放棄する人の戸籍謄本
  • 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本

被相続人との間柄によっては、家庭裁判所から追加書類の提出を求められることがあります。自分で書類を集める時間が取れない方や確実に申請手続きを進めたい方は、登記手続きの専門家である司法書士のサポートを受けることをおすすめします。

家庭裁判所から送付される照会書を返送する

相続放棄を申請してから2週間ほど経つと、家庭裁判所から照会書(相続放棄回答書)が送られてきます。照会書には「相続の開始を知った日はいつか」「なぜ相続放棄するのか」といった質問事項が記載されているため、正直に回答した上で返送しましょう。家庭裁判所は照会書の内容をもとに、申請を受理するかどうかを判断します。

家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書が届く

家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」が届いたら、相続放棄の手続きは終了です。審査が終わるまでに2か月以上かかることもあるため、早めに申請しましょう。

なお、被相続人の財産に借金が含まれていた場合、「相続放棄申述受理証明書」の交付を申請することをおすすめします。証明書があれば相続放棄した事実を第三者に証明できるため、借金を受け継いでいないことをアピールできます。

相続放棄申述受理証明書の交付申請書は通知書に同封されているため、必要事項を記入し、150円分の収入印紙を貼付して家庭裁判所に返送しましょう。

関連記事:土地相続放棄の手順と注意点!損しない方法を解説

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借地権付き建物を相続放棄するメリット

空に向かって腕を高く上げる女性の後ろ姿

借地権付き建物を相続放棄するか迷ったときは、メリットとデメリットを比較した上で検討することが大切です。ここでは、借地権付き建物を相続放棄する3つのメリットを紹介します。メリットが自分にとってプラスかどうかを考えてみましょう。

地代などの費用を支払う必要がなくなる

借地権付き建物を相続放棄するメリットのひとつは、地代や更新料といった費用を地主に支払う必要がなくなる点です。

借地権付き建物を相続すると、土地価格の2%~3%ほどの地代を毎年支払わなければなりません。また、契約更新の際は土地価格の3%ほどの更新料、家を建て替えるときは土地価格の3%~5%ほどの建て替え承諾料の支払いが必要です。

借地権付き建物を相続しなければ、これらの費用負担から解放されます。他にも、建物に課される固定資産税や相続財産に対して課される相続税の納付義務がなくなる点もメリットです。

借地権付き建物の管理から解放される

借地権付き建物を維持・管理する必要がなくなる点も相続放棄のメリットです。借地権付き建物を相続すると、自分が済まなくても所有者として適切に維持・管理する義務が課されます。管理を怠ると、家の老朽化が進んで倒壊リスクが高まったり、不法侵入のような犯罪に巻き込まれたりしかねません。

相続放棄すれば、借地権付き建物を所有せずに済むため、これらのリスクを未然に回避できます。

相続トラブルを回避できる

相続放棄をすると、初めから相続人ではなかったと扱われるため、地主や他の相続人との間で起こり得るトラブルに関わらずに済みます。

不動産のような分割しにくい財産が遺産に含まれている場合、誰が相続するかで揉めるケースは少なくありません。特定の相続人に多くの遺産を与えるなど、遺言書の内容が不公平と感じるときも相続人間のトラブルにつながります。相続後に地主から立ち退きを要求されることも考えられるでしょう。

借地権付き建物を相続する権利を放棄することで、相続に関わるトラブルを避けられます。

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借地権付き建物を相続放棄するデメリット

男女の前で頭を抱えるシニア男性

借地権付き建物の相続放棄には多くのメリットがある一方、デメリットが潜んでいるのも事実です。借地権付き建物を相続したくないと安易に相続放棄すると、後悔しかねません。どのようなデメリットがあるか踏まえた上で、相続放棄を選択するか検討しましょう。

プラスの財産を相続できない

相続放棄すると、全ての財産を受け継ぐ権利を失います。借地権付き建物を相続したくないからと相続放棄を選択すると、預貯金や株式のようなプラスの財産も受け継げなくなります。

自分が相続したくない財産のみを放棄することはできません。そのため、まずは相続財産を全て洗い出した上で、相続放棄するかどうかを検討することをおすすめします。

借地権付き建物の保存義務が残ることがある

相続放棄をすれば、借地権付き建物の維持・管理義務から解放されます。ただし、借地権付き建物を次の相続人、あるいは相続財産清算人に引き渡すまで保存義務が課される点には注意が必要です。

保存義務とは、自分の財産と同じように注意深く管理しなければならないと民法第940条第1項で定められたルールです。適切な管理を怠り、借地権付き建物の壁や塀の倒壊によって近隣の方や通行人に被害を与えた場合、損害賠償を請求される恐れがあるため注意しましょう。

参考:『民法第940条第1項|e-Gov法令検索』

次の相続人に迷惑をかける可能性がある

相続放棄した借地権付き建物は、次順位の相続人が相続します。しかし、何も知らずに借地権付き建物を相続した方が地主から地代の値上げや立ち退きを要求される可能性は否めません。借地権を地主に返すにしても多額の解体費用を負担しなければならず、経済的にも大きなリスクを被ります。

トラブルを未然に防ぎたいなら、他の相続人に事前に相続放棄に関する相談をしておくことが大切です。

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相続放棄以外で借地権付き建物の解体費用を負担しなくて済む方法

ノートパソコンが乗ったテーブルを挟んで打ち合わせをするシニア夫婦

相続放棄はメリットだけでなくデメリットもあります。借地権付き建物を相続放棄するリスクのほうが大きい場合、他の選択肢を検討するのもひとつの手です。ここでは、相続放棄以外に可能な選択肢について解説します。

地主に借地権付き建物を買い取ってもらう

地主に土地を活用する意思があるなら、建物ごと借地権を買い取ってもらうとよいでしょう。地主が買主となる場合、譲渡承諾料を支払う必要はありません。また、第三者に売却するより高値が期待できる点もメリットです。

ただし、地主との交渉が不可欠で、必ずしも買い取ってもらえるとは限りません。建物の解体や売買価格を巡って折り合いがつかないケースもあり、慎重に交渉を進める必要があります。個人間取引はトラブルが起こりやすい傾向があるため、不動産会社を間に挟んだ上で交渉することをおすすめします。

底地と借地権付き建物を同時売却する

地主も土地を手放したいと考えているなら、底地と借地権付き建物をセットで売却する方法もあります。

底地に建物を建てられるのは借地人だけで、借地権を購入しても活用が制限されます。借地権付き建物の建て替えには地主の承諾が必要で、所有者の意思で自由に活用できません。

底地と借地権付き建物を一緒に売却することで、買主は一般的な不動産と同様に自由に活用できます。そのため、相場に近い価格で買主が見つかる可能性がある点がメリットです。

ただし、地主に土地を売却する意思がなければ成立しないため、慎重に交渉を行う必要があります。

不動産会社に売却する

借地権付き建物には「地代を支払う必要がある」「建て替えや増改築時に地主の承諾が必要」といった制限があるため、個人の買主相手には簡単に売却できません。

そこでおすすめなのが、不動産会社に直接借地権付き建物を売却する方法です。借地権の扱いに精通している不動産会社なら建物ごと借地権を買い取ってくれるため、スピーディーに現金化できます。地主との交渉も不動産会社に任せられ、負担も大きく軽減します。

地主との付き合いがなく交渉に不安を感じる方は、借地権の取り扱い実績が豊富な不動産会社に相談するとよいでしょう。

関連記事:借地権の買取をスムーズに!相場・手続き・地主の承諾対策を解説

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まとめ

笑顔で空を見上げるシニア女性

相続放棄すれば相続人ではないと見なされるため、借地権付き建物の解体費用を負担せずに済みます。他にも、地代などの費用を支払わずに済む、建物の維持・管理から解放されるといった点もメリットです。

ただし、預貯金や株式のようなプラスの財産も相続できないため、相続放棄は慎重に検討しましょう。「借地権付き建物は相続したくないけれど、預貯金は相続したい」という場合、相続した上で借地権付き建物を売却するのがおすすめです。

リアルエステートが運営する「おうちの相談室」では、借地権付き建物をはじめ、権利関係が複雑な不動産のお悩みを解決します。地主との交渉も可能なため、借地権付き建物の相続に関して悩んでいる方は、お気軽にお問い合わせください。

記事執筆・監修
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