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投稿⽇時

2025/06/12

最終更新⽇時

2025/06/12

旧借地法の借地、契約書なしだとどうなる?考えられるトラブルと対処法

  • 底地・借地

いざ相続となったタイミング、あるいは相続について考えたタイミングで、「そういえば古い借地があった」と、借地契約の存在を思い出した方もいるでしょう。借地契約は基本的に数十年単位に及ぶもののため、借地契約の存在は知っていても肝心の契約書がない、見つからないということは十分に考えられます。

そこで本記事では、古い時期に締結された借地契約に多い「旧借地契約」の概要と契約書がない場合の扱い方、対処法について解説します。

旧借地法の借地契約における「契約書なし」のリスクとは

黒い背景に「R」「I」「S」「K」の文字の書かれたブロックを置いている人の手
リスクと黒背景

借地契約は多くの人にとってなじみの薄いものであり、「そもそも借地契約書とはどのようなもので、ない場合に契約はどうなるのか」と疑問に思う方も多いでしょう。

ここでは、借地契約書に記載されている内容と、契約書が存在しない場合に契約が有効とされるかどうかについて解説します。

旧借地法は契約書がなくても有効?法律上の扱いを解説

旧借地法が適用される借地契約において、「契約書がなければ契約が無効になるのではないか」と不安に感じる方もいるかもしれません。

しかし、民法第522条には「契約は当事者間の合意によって成立する」といった趣旨が定められており、書面の作成は契約成立の要件ではありません。

(参考: 『e-Gov 民法』

そのため、契約書が見当たらない場合や、口約束だけで契約がなされていた場合でも契約は有効です。地主と借地人は契約の内容を遵守する義務があり、この義務は相続などで契約関係を承継した場合にも引き継がれます。

借地契約書に記載される主な内容と確認ポイント

借地契約書は、地主から土地を借りて建物を所有するための権利(借地権)に関する契約内容を記載した書面です。契約書は、借地権を相続した場合や、地主から契約条件の変更を求められた場合、また借地権を売却・転貸したい場合など、重要な場面で内容を確認するために用いられます。

この契約書には、契約に関する以下のような項目が記載されており、将来的なトラブルを防ぐためにも、各項目を明確にしておくことが重要です。

  • 契約期間と開始日
  • 借地人・地主の氏名や住所
  • 借地の所在地・地番・面積など土地の情報
  • 地代(賃料)の金額および支払い方法
  • 更新の条件や更新料
  • 契約解除や明け渡しの条件
  • 禁止事項や特約事項

旧借地法の概要と現行法との違い

下段に「←OLD」、上段に「NEW→」になるように積まれた積み木

古い借地契約で注意すべきなのは、現行の借地契約と適用される法律が異なる可能性が高い点です。

次に、古い借地契約に多く適用される「旧借地法」と、現行契約に適用される「借地借家法」との違いについて解説します。

旧借地法が適用される契約の条件とは

旧借地法と借地借家法のいずれが適用されるかは、契約の開始日により決まります。旧借地法が適用されるのは、「1992年(平成4年)7月31日までに締結された借地契約」です。

特に注意したいのは、適用法を判断する基準が、契約更新日ではなく初回契約の締結日である点です。この日までに成立した借地契約は、その後に更新された場合でも自動的に借地借家法へ切り替わることはなく、引き続き旧借地法が適用されます。

関連記事:旧法借地権とは?基礎知識から更新・相続まで詳しく解説

借地借家法との違い

旧借地法と借地借家法の主な違いは、契約期間の扱いや借地人保護の度合いにあります。

旧借地法では、建物の構造に応じて契約期間が異なり、コンクリート造などの「堅固建物」は30年以上、木造などの「非堅固建物」は20年以上と定められていました。さらに、更新後の契約期間も同様の年数が法定期間となります。

また、契約終了の際には地主側に「正当事由」が必要である点は両法共通ですが、旧借地法ではその「正当事由」が認められにくく、実質的に契約が更新され続ける形となるため、借地人にとって非常に有利な内容でした。

一方、借地借家法では建物の構造に関わらず、契約期間は一律30年とされており、更新後は20年、以後の更新では10年と短縮されます。また、更新のない「定期借地権」が導入されたことで、地主側の権利も一定程度強化されました。

このように、現行の借地借家法は、地主と借地人の権利バランスを重視しているのに対し、旧借地法は借地人の保護を優先している点が大きな特徴です。

契約書がない旧借地契約で実際に起きるトラブル事例

対立した様子で少し距離をとって立ち話をする2人の男性の人形

契約書がない旧借地契約で注意しておきたいのは、さまざまなトラブルが発生するリスクがある点です。

ここでは、実際に起こりやすい代表的なトラブル事例について解説します。

地主から急に立ち退きを要求される

契約書が存在しない旧借地契約では、「地主から突然立ち退きを求められる」といったトラブルが起こることがあります。
本来、借地人が地代を支払い、建物を維持している限り、旧借地法では地主に正当事由がなければ明け渡しに応じる必要はありません。しかし契約書がない場合、借地人が自分の権利や契約内容を正確に把握できず、不当な要求を受け入れてしまったり、地主との話し合いが難航したりするケースもあります。

特に、契約当事者が死亡し相続が発生した場面では、それまでの経緯が分からないことで対応が困難となり、トラブルが生じやすくなります。

契約期間が不明で更新・解除時にもめる

旧借地法では、建物の構造によって契約期間が法律で定められており、契約は原則として自動的に更新されます。

しかし契約書が存在しない場合、契約の開始日や期間、さらには旧法・現行法のどちらが適用されるかを証明するのが難しくなります。このような曖昧さから、地主と借地人の主張が対立し、契約の更新や解除をめぐって紛争に発展するおそれがあります。

契約内容をめぐる争いが裁判に持ち込まれた際にも、契約書がないと借地人の主張を裏づける証拠に乏しく、不利な立場に立たされる可能性があります。

売却・相続時に借地権の証明ができない

借地権を売却または相続する際、契約書がないと借地権の存在や具体的な条件を証明できず、手続きが円滑に進まないことがあります。

もちろん、契約書が存在しなくても借地契約は成立しているため、売却や相続そのものは可能です。また、詳細は後述しますが、契約書以外の手段によって借地権の存在を証明することもできます。

ただし契約内容が不明確なままだと、権利移転の際に地主と借地人との間で認識に食い違いが生じ、トラブルに発展する可能性があります。

契約書がない旧借地契約への実践的な対処法

「HOW TO」の文字が書かれたホワイトボードと前に置かれた3脚の椅子のミニチュア

契約書がない旧借地契約では、思わぬトラブルが起こる前に早めに対策を講じることが大切です。ここでは、借地契約の契約書がない場合の具体的な対処法について解説します。

まずは地主に契約書の有無を確認する

手元に契約書がない場合でも、地主や仲介した不動産会社が保管していることがあります。まずは地主に直接問い合わせて、契約書の有無や内容を確認しましょう。地主が契約書を所持していれば、コピーをもらうことで契約内容を正確に把握できます。

借地権を相続したものの売却予定がない場合でも、将来的なトラブルを防ぐために、地主に連絡して契約内容を確認しておくと安心です。

支払い記録や登記情報から契約の証拠を集める

地主側にも契約書が残っておらず契約内容が不明なときは、契約書以外の資料から契約の実態を立証する必要があります。

たとえば、地代の振込記録や領収書、建物の登記事項証明書、住民票や戸籍謄本(居住の開始時期が分かるもの)、過去の通知書や書簡などが該当します。これらの資料は、契約内容を推定する有力な根拠となり、地主との協議に役立つだけでなく、第三者に対して借地権を主張する際にも重要な証拠となります。

集めた資料をもとに地主と話し合い、必要に応じて契約書の再作成や内容の明確化を進めておくとよいでしょう。

関連記事:借地に登記が必要な理由は?登記に必要な手数料についても説明!

書面を作成・再締結する際の注意点と交渉方法

契約書が存在しない旧借地契約でも、契約自体は法的に有効です。ただし、将来的なトラブルを避けるためにも、地主と協議のうえ契約書をあらためて作成し、内容を明確にしておくことが望ましい対応です。
その際には、契約期間、地代、借地面積、更新料、譲渡や建て替え時の承諾料、地代改定の条件など、できる限り詳細な取り決めを盛り込んでおく必要があります。

また再作成に際して、地主から新たな条件が提示された場合には、内容をよく検討し、安易に同意せず、必要に応じて借地権に詳しい専門家に相談することをおすすめします。

契約書なしの旧借地法:よくある質問と留意点

黒く大きな「?」の文字を虫眼鏡で拡大している人の手

最後に記事の内容をふまえつつ、旧借地法に基づく借地契約で契約書がないケースに関連する質問について簡単にまとめました。

契約書がなくても旧借地法の借地を売却できる?

旧借地法が適用される借地でも、建物の登記や地代の支払い記録があれば、契約書がなくても借地権の存在を証明できるため売却は可能です。
ただし、買主にとって契約内容の詳細が不明な状態で借地権を購入することには不安が伴うため、トラブルを防ぐためにも、あらためて契約書を作成しておくのが望ましいでしょう。

売却を検討する際は、まず地主と契約内容を再確認し、可能であれば専門家に相談して契約書を整備しておくと安心です。

借地権の放棄・解除はどうすればいい?

借地権は、地主と借地人の合意があれば、契約期間中であっても解除が可能です。また契約満了時に更新を拒否することで終了させることもできます。

さらに、旧借地契約においては、建物が老朽化などで使用できなくなった場合に借地権が終了することもあります。

ただし、借地権を解除・放棄する場合は、原則として建物を解体し、土地を更地の状態にして返還する必要がある点に注意しましょう。

契約期間が書かれていない場合の法定期間は?

旧借地契約で契約期間の記載がない場合、建物の構造に応じて法定期間が定められます。堅固建物(石造・土造・煉瓦造など)を建てる目的であれば60年、非堅固建物(木造など)の場合は30年です。

また、契約で建物の種類や構造が明示されていないときは、非堅固建物とみなされ、30年の期間が適用されます。

契約期間満了後に借地人が引き続き土地を使用し、地主が遅滞なく異議を述べなければ契約は自動更新されます。このとき建物が現存していれば、地主は正当な事由がない限り更新を拒むことはできません。

地代の値上げ/値上げ拒否はできる?

旧借地法・借地借家法のいずれの制度でも、「地代が不相当になった場合」には地代の増減を請求できると定められています。

たとえば、土地の税金や地価の上昇、経済状況の変化、近隣の地代との比較によって著しく高いまたは安いと判断される場合には、地代の改定が認められることがあります。

とはいえ、地主から値上げを求められても、借地人が合意しなければ応じる義務はありません。合意に至らなければ調停や訴訟となり、裁判所が値上げを正当と認めない限り、従前の地代を支払い続けることができます。

関連記事:借地料の値上げ交渉をされたときに注意すべきポイントとは?失敗したくない人に向けて解説!

まとめ

芝生を模した丸い形の緑の生地の上に乗った白い家の形の積み木

契約書がない旧借地法の借地契約であっても、締結時に地主と借地人の合意があれば契約は有効です。そのため、相続や売却も問題なく行えます。一方で、契約内容があいまいなままでは、契約を継続する際も、売却を進める際も、トラブルに発展するリスクがあります。

こうした事態を避けるには、契約内容をできるだけ確認し、書面にまとめておくことが大切です。また、必要に応じて専門家に相談することも、トラブル防止に役立ちます。

リアルエステートの「おうちの相談室」でも、不動産のプロフェッショナルが借地権の売却をはじめとするお悩み解決のサポートを行っています。借地契約に関して不安や疑問がある場合には一度ご相談ください。