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2025/11/21セールアンドリースバックの仕訳例|会計処理で注意したいこと
- 不動産の知識
- その他

資金調達やバランスシートの改善策として注目される「セールアンドリースバック」ですが、会計処理には特有の仕訳や注意点が存在します。取引の内容によっては、ファイナンス・リースやオペレーティング・リース、金融取引として区分され、仕訳方法や税務上の取り扱いも異なります。
また、売却損益の繰延処理や転リースが発生した場合の処理、今後適用される新会計基準への備えも重要です。この記事では、セールアンドリースバックの仕組みや取引区分、仕訳例、会計処理で注意したい点について解説します。適切な会計処理のために、ぜひ参考にしてみてください。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける
Contents
セールアンドリースバックの仕組み

セールアンドリースバックとは、保有する不動産や設備といった資産を一旦売却し、その後リース契約を結ぶことで引き続き使用し続ける手法です。例えば、自社ビルを所有する企業が不動産会社にビルを売却し、同時にリース(賃貸)として借り直す契約を結べば、売却によって資金を得ながら従来通りの事業活動を継続できます。
セールアンドリースバックは資産を流動化して資金調達したい企業にとって有効な手段であり、経営の柔軟性を高める手法として注目されています。
関連記事:リースバックの基礎知識:いつから始まったのか?
関連記事:事業者向け土地リースバックの活用メリットと注意点
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セールアンドリースバックのメリット

セールアンドリースバックを活用して得た資金は、新たな設備投資や借入金の返済、運転資金の確保など、多様な目的で活用できます。また、財務指標の改善やリスク分散といった効果も期待できるため、多くの企業が経営の選択肢として導入を検討しています。以下で、セールアンドリースバックのメリットを詳しく見てみましょう。
まとまった資金を調達できる
セールアンドリースバックの大きな魅力は、保有資産を売却し、短期間でまとまった資金を確保できる点です。金融機関からの借り入れとは異なり、返済義務のない資金を得られるため、資金繰りの改善に役立ちます。
また、売却後もリース契約を結ぶことで引き続き同じ資産を使用でき、業務に支障が出る心配もありません。資金調達と事業継続を両立できることから、運転資金や設備投資、新規事業の資金など、幅広い用途に柔軟に対応できます。
リース料を損金算入できる
セールアンドリースバックによって資産を売却し、リース契約を結ぶと、毎月のリース料は経費(損金)として処理できます。これは、税務上の大きなメリットです。「損金として計上できる=課税所得を減らせる」ため、法人税の負担を軽減する効果が期待できます。
特に黒字企業にとっては、節税の一環として有効な手段です。リース料の支払いは定額で予算も立てやすく、キャッシュフローの安定にもつながります。
資産のオフバランス化により自己資本比率が改善する
セールアンドリースバックを活用すると、売却した資産が貸借対照表(バランスシート)から除外され、オフバランス化が実現します。そのため、自己資本比率の改善につながる点がメリットです。
固定資産が減ることで総資産が減り、相対的に自己資本比率が上がります。自己資本比率は企業の財務健全性を示す重要な指標で、金融機関や投資家の評価にも影響します。
ROA・ROEの向上により信用力アップが期待できる
セールアンドリースバックによって保有資産を売却して総資産を圧縮すると、ROA(総資産利益率)やROE(自己資本利益率)といった経営指標の改善が期待できます。ROAは資産を使ってどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示し、ROEは株主資本に対してどれだけ利益を上げているかを示す指標です。
これらの数値が改善することで、金融機関や投資家、取引先からの信用が向上しやすくなります。財務分析において高い指標は企業の競争力強化にも直結するため、経営戦略の一環として有効です。
価格下落や災害リスクを回避できる
不動産は企業にとって重要な資産である一方、所有することでさまざまなリスクも伴います。例えば、不動産市況の変動により価値が下落するリスクや地震・台風といった自然災害による損害リスクです。
セールアンドリースバックを活用すれば、こうしたリスクを第三者に移転でき、企業は資産を使い続けながら保有リスクから解放されます。固定資産を手放すことで、資産の流動性を高めつつ企業としての身軽さを保ち、経営に集中できる環境が整うでしょう。
関連記事:【法人向け】本社ビルのリースバックで資金調達する方法
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セールアンドリースバックのデメリット

セールアンドリースバックには資金調達や財務改善といった多くのメリットがある一方、注意したいデメリットも存在します。特に、長期的なコストの増加やリース契約による利用制限は、事業運営に影響を及ぼす恐れがあります。
導入する際は短期的な資金繰りのメリットだけでなく、契約期間全体を見据えたコスト比較や使用条件の確認が重要です。ここでは、セールアンドリースバックにおける注意点について解説します。
長期的に見ると資金負担が増える可能性がある
セールアンドリースバックは、資産を売却して得た資金で一時的なキャッシュフローの改善が図れますが、リース契約に基づき月々のリース料を継続して支払う必要があります。
短期的には利便性の高いスキームである一方、長期間にわたりリース料を支払うことで、結果的に売却時の金額を大きく上回るコストを負担するケースもあります。特に長期リース契約の場合、金利やリース料率の影響で総支払額が増えやすいため、導入前にしっかりとシミュレーションすることが大切です。
契約内容によっては自由に使えない
セールアンドリースバックを利用すると、資産の所有権が第三者に移るため、従来のように自由に活用できなくなる恐れがあります。リース契約には、使用目的や改修の可否、転貸・転用の制限が細かく定められており、増改築や用途変更を予定していた場合に支障を来すことがあります。
中途解約には高額なペナルティが発生することもあり、状況が変わって物件を手放したくなっても柔軟に対応できない点は大きなリスクです。リース期間中に事業再編や移転を検討する可能性がある場合、契約条項を慎重に精査する必要があります。
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セールアンドリースバックにおける取引区分

セールアンドリースバックは、会計上どの取引区分に該当するかによって処理方法や財務諸表への影響が大きく異なります。取引区分は契約内容や実態に応じて判定されるため、税務や会計処理において重要な判断ポイントです。それぞれの違いと特徴について、以下で解説します。
ファイナンス・リース取引
以下の2つの条件を満たした場合、ファイナンス・リース取引に該当します。
- 解約不能:リース期間中の解約が原則としてできない
- フルペイアウト:「リース物件の取得価額+諸経費」を借り手がリース料として支払う
ファイナンス・リース取引には、さらに2つの類型があります。1つ目は「所有権移転ファイナンス・リース取引」で、リース期間終了後に所有権が借り手に移転するタイプです。2つ目は「所有権移転外ファイナンス・リース取引」で、最終的に所有権が移転しないタイプです。いずれも、リース資産やリース債務を貸借対照表に計上する必要があります。
オペレーティング・リース取引
オペレーティング・リース取引は、ファイナンス・リースのような「解約不能」「フルペイアウト」の条件がない契約が該当します。比較的柔軟な契約条件で、借り手に解約の自由や短期契約の選択肢があるなど、実態としては「レンタル」に近い取引です。リース料の総額もファイナンス・リースに比べて安い傾向があります。
金融取引
セールアンドリースバックが「資産を担保にした融資」と見なされる場合もあります。形式上は不動産を売却し、リース契約を結んでいるように見えても、実際には金融取引と判断されるケースです。
金融取引と認定された場合、会計上は売却益を計上せず、資産は引き続きバランスシート上に残ります。受け取った資金はローンと同様に「借入金」、毎月のリース料は「支払利息」として処理されます。なお、以下のケースでは、金融取引として認められません。
【新品の場合】
借り手である企業がリース会社に代わって資産を購入する合理的な理由があり、その購入資金を「立替金」や「仮払金」などの仮勘定として経理処理した上で、購入額と同額でリース会社に譲渡する場合
【中古の場合】
借り手が保有する資産について、管理事務の省力化などを目的としてセールアンドリースバックを利用する場合
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ファイナンス・リース取引に該当する場合の仕訳方法

セールアンドリースバック取引が「ファイナンス・リース取引」に該当する場合、売却時の仕訳では、売却損益を適切に「長期前払費用」または「長期前受収益」として処理することが求められます。以下の条件のもと、売却時点とリース開始時点の仕訳方法を解説します。
【前提条件】
- 企業が保有していた建物(取得価格4,000万円)をリース会社に売却
- 減価償却累計額は2,400万円(間接控除法により償却済)
- 売却により、当座預金に1,300万円を入金
- リース料は月額20万円、契約期間は5年間(60か月)
- 総リース料の割引現在価値は1,250万円
仕訳例:物件の売却時点
| 借方 | 貸方 | ||
| 当座預金 | 13,000,000円 | 建物 | 40,000,000円 |
| 減価償却累計額 | 24,000,000円 | ||
| 固定資産売却損 | 3,000,000円 | ||
| 長期前払費用 | 3,000,000円 | 固定資産売却損 | 3,000,000円 |
この取引では、帳簿価格1,600万円(取得4,000万−償却2,400万)に対して1,300万円で売却しているため、300万円の売却損となり、「長期前払費用」として処理します。一方、売却益が出た場合は「長期前受収益」で処理します。
仕訳例:物件のリース開始時点
| 借方 | 貸方 | ||
| リース資産 | 12,500,000円 | リース債務 | 12,500,000円 |
| リース債務 | 200,000円 | 当座預金 | 200,000円 |
契約開始時には、リース資産・リース債務を割引現在価値(1,250万円)で計上します。また、初月のリース料(20万円)は前払いであるため、リース債務の一部返済として処理されます。
この時点では支払利息は含まれないため、元本部分のみの記帳です。以後の月次処理では支払利息も記帳する必要があります。
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オペレーティング・リースに該当する場合の仕訳方法

オペレーティング・リース取引に該当するセールアンドリースバックは、実質的に資産の売却とリースの賃貸借契約として扱われます。以下の条件のもと、売却時点とリース開始時点の仕訳方法を解説します。
【前提条件】
- 企業が保有していた建物(取得価格4,000万円)をリース会社に売却
- 減価償却累計額は2,400万円(間接控除法により償却済)
- 売却により、当座預金に1,300万円を入金
- リース料は月額18万円、契約期間は5年間(60か月)
仕訳例:物件の売却時点
| 借方 | 貸方 | ||
| 当座預金 | 13,000,000円 | 建物 | 40,000,000円 |
| 減価償却累計額 | 24,000,000円 | ||
| 固定資産売却損 | 3,000,000円 | ||
建物を帳簿価格(4,000万円−2,400万円 = 1,600万円)で売却し、売却額が1,300万円であるため、300万円の売却損を計上します。なお、オペレーティング・リース取引では、ファイナンス・リースのような「長期前払費用」や「リース資産」の計上は不要です。
仕訳例:物件のリース開始時点
| 借方 | 貸方 | ||
| リース料 | 180,000円 | 当座預金 | 180,000円 |
リース料は支払都度「リース料」として費用計上します。毎月の支払いに応じて費用処理を継続しきましょう。なお、オペレーティング・リースでは資産・負債の計上は不要です。
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セールアンドリースバックの会計処理で注意したいこと

セールアンドリースバックでは、会計処理に際していくつか注意したいポイントがあります。誤った処理をすると、決算上の数値や税務対応に影響が及ぶ可能性があります。特に転リースや繰延処理の要否、今後適用される新会計基準には注意が必要です。ここでは、実務上押さえておきたい注意点について解説します。
「転リース」の予定
転リースとは、自社がリース会社から借りている物件を第三者(子会社など)に再リースすることです。転リースをすると、自社はリース料を支払うと同時に、第三者からリース料を受け取る立場になります。
会計上では、リース料の支払額と受取額を相殺し、差額を「手数料収入」として計上する必要があります。転リースを活用すると従来の処理から変更が生じるため、会計帳簿にも正しく反映させなければなりません。転リースを予定している場合、事前に会計処理の影響を確認しましょう。
繰延処理の必要性
セールアンドリースバックでは、売却益(あるいは損失)に対して「繰延処理」が必要になる場合があります。ただし、以下の条件全てに該当する場合、繰延処理をせずに済むケースがあります。
- セールアンドリースバックがファイナンス・リース取引に該当すること
- 自社が借りた物件を、ほぼ同一条件で第三者に転リースしていること
- 当該取引において、売買損益が実現されたと合理的に認められること
上記のいずれかに該当しない場合、「長期前払費用」や「長期前受収益」といった繰延処理をし、リース期間にわたって適切に費用化または収益化する必要があります。
2027年4月1日以降は新たな会計基準が適用される
2027年4月1日以降に開始する事業年度から、リース取引に関する会計基準が大きく改正されます。大きな変更点は、従来の「ファイナンス・リース取引」と「オペレーティング・リース取引」の区分が原則として廃止され、全てのリース取引がオンバランス処理の対象となる点です。
具体的には、企業が借りているリース資産を貸借対照表上に「リース資産」として計上し、同時に「リース債務」も負債として認識します。つまり、従来のオフバランス処理によって見えにくかった負債が財務諸表に明示されることになります。
なお、新会計基準は2025年4月1日以降に開始する事業年度から「早期適用」も認められています。新会計基準について理解を深め、準備を整えてスムーズに移行しましょう。
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セールアンドリースバックは「リアルエステート」へ
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まとめ

セールアンドリースバックは、資金調達や経営改善に有効な手段です。しかし、セールアンドリースバックの会計処理には一定の専門性が求められるため、利用にあたっては十分な理解と慎重な判断が必要です。
こうした専門的な判断のサポートを受けたい方は、リアルエステートの「おうちのリースバック」と「おうちの相談室」をご利用ください。複雑な不動産問題にも不動産のプロが的確にアドバイスし、必要に応じて弁護士や税理士と連携して解決策をご提案します。
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-資格-
宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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-経歴-
株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
リースバック、買取再販、借地底地、共有持分、立退き案件を手がける