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2025/06/12最終更新⽇時
2025/06/12借地人が底地を買い取る場合の価格とは?「限定価格」の仕組みと計算方法を徹底解説
- 底地・借地

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底地を買い取りたいと考えている借地人にとって、価格の仕組みは非常に分かりづらいものです。なぜなら、底地の価格は単純な地価や相場では決まらず、「限定価格」という特殊な評価が用いられるからです。
本記事では、借地人が底地を買うときに押さえておくべき価格の基本構造から、評価方法、実務上の交渉ポイントまでをわかりやすく解説します。将来の資産形成にも関わる重要な取引だからこそ、正確な知識を持って臨みましょう。
借地人が底地を買い取るときに知っておくべき「価格の基本構造」

借地人が底地を買い取ろうとする場合、その価格は周辺の地価や相場だけでは判断できません。なぜなら、底地はすでに借地権が設定されていて、一般的な更地や宅地とは異なる性質を持っているからです。
このような土地をその借地人が買い取る場合には、通常の不動産売買とは異なる「限定価格」が適用されます。こういった理解がないまま交渉を進めてしまうと、地主との間に価格感覚のズレが生じて話がまとまらないことがあります。
借地人が底地を買い取るときには、価格の決まり方そのものが通常の不動産取引とは異なるという前提を、まず押さえておく必要があります。
限定価格とは何か?借地人だけに成立する価格の仕組み
限定価格とは、市場が特定の買主に限定されることによって成立する特殊な価格評価のことです。不動産鑑定評価基準では、併合や用途の限定などにより、通常の市場価格とは異なる経済合理性が生じる場合に用いられると定義されています。
借地人が底地を買い取る場合は、その土地をすでに借りて利用しているという前提があるため、第三者が購入するケースと比べて、土地の活用可能性が大きく広がります。借地権と底地が一体化することで、建て替えや売却、自由な土地利用が可能になり、借地人にとっては経済的なメリットが明確になります。
したがって、借地人が底地を買い取る場面では、たとえ通常の市場価格より高い金額であっても、それを支払う合理性が生まれます。これが限定価格という評価手法が適用される理由です。
また、地主側にとっても、第三者に売却するより借地人に売却したほうが高値で取引がまとまりやすくなります。買主が借地人であることによって成立するこの価格が、限定価格なのです。
底地価格の算定ロジックと限定価格の計算方法

前のセクションで説明した限定価格は、価格の評価方法にも大きく関係しています。 底地の価格は一般に更地価格をもとにした割り戻しで概算されますが、借地人が買い取る場合には、この限定価格が実務上の基準として採用されることが多くなります。
ここでは、まず税務・実務上用いられる底地価格の基本的な算定式を押さえたうえで、限定価格がどのように具体的に計算されるのか、そのロジックと評価プロセスを詳しく解説します。
底地価格の基本式:更地価格×(1−借地権割合)
底地の価格を計算する際にまず用いられるのが、「更地価格×(1−借地権割合)」という基本式です。この計算方法は、借地権と底地を合わせた価値が更地の価値になるという考え方に基づいています。
たとえば、ある土地の更地価格が3,000万円で、借地権割合が60%の場合、底地価格は3,000万円×(1−0.6)=1,200万円となります。借地権割合は地域によって異なり、国税庁が公表している路線価図に記載されているため、あらかじめ確認しておくことが重要です。
ただし、この方法はあくまで税務上の評価に近い簡易計算であり、実際の売買価格とは異なる場合もあります。実勢価格で交渉する場合には、より柔軟な判断が求められます。
限定価格の算定:差額と貢献度配分
限定価格を求める際には、まず底地価格と借地権価格をそれぞれ評価したうえで、それらを合算した金額と、更地価格との差額を算出します。次に、その差額をどちらの側にどの程度上乗せするかを「貢献度」に応じて配分します。
この貢献度には、底地側・借地権側それぞれがもたらす価値への影響度が関係しています。一般には、建物の築年数や土地の面積割合、活用の自由度などをもとに、不動産鑑定士が算定します。
たとえば、更地価格が3,000万円、底地評価額が1,200万円、借地権評価額が1,500万円とすると、差額は300万円です。この300万円を、借地人と地主の貢献度に応じて配分し、底地の限定価格を最終的に決定します。
このように、限定価格は単なる掛け算ではなく、複数の要素を前提に成立するため、個別の事情に即した専門的な判断が必要です。
関連記事:底地の買取相場を一発理解!計算方法と査定のポイント
底地・借地権・更地の価格関係と評価方法

底地と借地権、そして更地は、いずれも土地の権利や利用のあり方によって価値が異なります。このセクションでは、それぞれの価格がどのように評価されるのか、税務上と実勢価格でどう違いが出るのか、また不動産鑑定ではどのような評価手法が使われるのかを整理します。
税務評価と実勢価格の違い
税務上の評価では、借地権価格と底地価格の合計が更地価格と等しいという前提が用いられます。たとえば、借地権割合が60%のエリアでは、更地価格の60%が借地権、残り40%が底地の価格と見なされます。これは国税庁が定めた路線価図に基づく考え方です。
しかし実際の不動産取引では、この前提どおりに価格が構成されるとは限りません。地代の設定が相場より高すぎたり、借地権の契約内容が旧法か新法かによっても、実際の取引価格に差が生じます。
つまり、税務評価と実勢価格の間にはズレがあることを前提に、価格交渉や資産評価を進める必要があります。
鑑定評価に用いられる手法
不動産鑑定においては、底地や借地権の価格を評価する際に「収益還元法」と「比準価格法」が併用されるのが一般的です。
収益還元法では、底地が生み出す将来の地代収入を現在価値に換算して評価します。地代が安ければ底地の収益性も低くなり、価格も下がる傾向があります。一方、比準価格法では、類似の底地取引事例をもとに価格水準を推定します。
これらの手法はそれぞれメリットと限界があるため、実務では両者をバランスよく組み合わせて評価を行うことが求められます。契約内容や立地、土地の形状などによっても影響を受けるため、個別の状況に応じた鑑定が不可欠です。
関連記事:収益還元法の計算式を徹底解説!直接還元法・DCF法
借地権の種類によって底地価格はどう変わるか?

借地権にはいくつかの種類があり、その違いは底地の評価額に大きく影響します。ここでは、実務で特に取引の多い「旧法借地権」と「定期借地権」の2つを取り上げ、それぞれの価格形成に与える影響を解説します。
旧法借地権の影響
旧法借地権とは、平成4年の借地借家法施行前に締結された借地契約のことを指します。この契約では、借地人が非常に強い権利を持ち、地主側が契約更新を拒絶するのが極めて難しい構造になっています。
このような契約下では、地主が底地を自由に活用することがほぼできないため、底地の流動性が大きく損なわれます。結果として、底地を第三者に売却しようとしても需要が低くなり、価格が抑えられる傾向にあります。
一方で、借地人が買い取る場合には、借地権と底地の一体化によって所有権が完成するため、経済的メリットは大きくなります。そのため、限定価格としての上乗せが発生することもありますが、旧法契約であること自体が底地価格を圧縮させる主因となるのは変わりません。
定期借地権の影響
定期借地権は、契約期間満了後に必ず返還される契約形態であり、原則として契約更新や建て替えの請求ができない仕組みになっています。平成4年以降に新しく設定される借地契約では、この定期借地権が一般的です。
地主にとっては、契約終了後に更地として土地を取り戻せる見込みがあるため、底地の自由度が高くなります。流動性も高まり、収益性も見込めるため、旧法と比べて底地の市場評価は高くなります。
また、第三者に売却する場合にも買い手がつきやすく、価格も安定しやすいのが特徴です。ただし、契約期間が短ければ短いほど、底地の価格が上昇しやすくなるため、契約の残存期間も重要な評価要因となります。
関連記事:定期借地権は更新できない?再契約の方法と注意点を解説
借地人が底地を買う手続きと実務上の注意点

底地を買い取るには、金額だけでなく、手続きや契約の進め方にも注意が必要です。 ここでは、実際に底地を取得するまでの手順と、トラブルを避けるために押さえておくべき契約上のポイントを整理します。
購入までの流れ
借地人が底地を買いたいと考えた場合、最初のステップは地主への意向確認です。地主が売却に応じる意思があるかを確認し、了承が得られれば査定や交渉に進みます。
価格査定は、限定価格の考え方を踏まえた上で、不動産業者や鑑定士に依頼します。必要であれば、借地権の契約内容や図面、地代の支払い状況などを資料として用意しておくとスムーズです。
その後、価格について合意ができれば、売買契約を締結し、登記手続きへと進みます。金融機関の融資を活用する場合は、契約締結前に事前審査を済ませておくのが一般的です。
登記が完了すれば、底地は借地人の完全所有となり、地代の支払いは不要になります。
契約上の注意点
底地の売買契約では、売買対象の範囲を正確に把握することが重要です。借地契約で定められた面積と、登記上の実測面積が異なる場合があるため、測量や境界確認を事前に行うと安心です。
また、固定資産税や地代の清算、登記費用や仲介手数料の負担割合なども、事前にしっかり確認しておくべき項目です。これらを曖昧なままにしておくと、契約後に思わぬトラブルに発展することがあります。
加えて、底地の一部に第三者の権利が設定されていないか、抵当権などの登記が残っていないかも重要な確認ポイントです。 契約前には登記簿の確認と、可能であれば専門家によるリーガルチェックを受けることが推奨されます。
資金調達の方法とローン活用の現実

底地を買い取る場合、現金での一括支払いが難しいケースも多く、資金調達方法の検討が重要になります。 ここでは、借地人が利用できるローンの種類や、融資を受ける際の注意点を紹介します。
住宅ローンの適用条件
住宅ローンは、通常「本人または家族が居住する住宅のための土地・建物の取得」に対して適用されます。借地人が底地を買い取る場合、その建物に自らが居住していることが条件となるケースが一般的です。
ただし、金融機関によっては借地権の内容や土地の権利関係によって融資対象外となることもあります。契約の種類が旧法か定期借地か、底地に抵当権などがついていないか、土地と建物の所有者が一致しているかといった点が審査に影響します。
融資を申し込む際は、事前に建物登記簿や借地契約書、地代支払い実績などを準備し、金融機関へ相談することが重要です。都市銀行よりも地方銀行や信用金庫のほうが柔軟に対応してくれるケースもあります。
その他のローン選択肢
住宅ローンが利用できない場合には、他のローン商品を検討する必要があります。 たとえば、不動産担保ローンや、底地を活用して収益を上げる前提でのアパートローンなどが選択肢に挙げられます。
不動産担保ローンは、取得する底地自体やすでに保有する不動産を担保にして融資を受けるもので、審査は比較的早く進む傾向があります。金利は住宅ローンよりやや高めですが、使途の自由度が高いのが特徴です。
また、資金調達には一部リースバックや親族間融資なども視野に入れることができます。資金面で不安がある場合は、不動産会社やファイナンシャルプランナーに早めに相談することが、交渉や契約を円滑に進めるためのポイントになります。
借地人が底地を買うことの経済的メリット
借地人が底地を買い取ることには、単に地代を払わなくて済むというだけでなく、長期的に見た経済的メリットが複数あります。最も大きな効果は、土地の利用に関する制限から解放されることです。
借地契約がある状態では、建物の建て替えや用途変更には地主の承諾が必要となり、承諾料や更新料などの支払いも発生します。これが底地を買い取ることで不要になり、自由な土地活用が可能になります。
また、将来的に不動産として売却する場合も、土地と建物の所有権が一致していれば購入希望者がつきやすくなります。借地権付き建物は買い手が限られるため、売却価格が低く抑えられる傾向がありますが、底地を取得することでその制約を解消できます。
さらに、相続や贈与の場面でも権利関係が整理されるため、評価額が明確になり、分割協議がスムーズになるという利点もあります。長期的に見て、土地を完全に所有することは、資産価値の安定性と将来の選択肢を広げる有効な手段と言えます。
交渉がうまくいかない場合の対処法

借地人が底地を買い取ろうとしても、必ずしも地主が応じてくれるとは限りません。交渉が難航する場合には、事前の準備や交渉方法を見直す必要があります。
ここでは、地主が売却を拒否する代表的なケースと、交渉をまとめるために有効な実務的なアプローチを紹介します。
地主が売却を拒否するケース
地主が底地の売却を拒否する背景には、感情的・経済的な理由があります。たとえば「先祖代々の土地を手放したくない」「底地からの地代収入を継続したい」「将来的に地価が上がると考えている」などがよくある理由です。
また、底地に関して不動産的な活用方針を持っていない場合でも、「所有権を手放すと不安」といった漠然とした抵抗感を示すこともあります。
このようなケースでは、金額を提示するだけでなく、売却後の手続きや将来の資産運用までを含めた提案を行うと、地主の心理的な障壁が下がる可能性があります。
交渉をまとめるための実務テクニック
交渉を前進させるためには、まず客観的な価格根拠を示すことが重要です。更地価格や借地権割合、過去の類似事例などを資料として用意し、数字に基づく話し合いを行うことで、感情的な対立を避けることができます。
また、柔軟な条件提示も有効です。たとえば「一括ではなく分割での支払い」「引き渡し時期の調整」「測量や登記費用はこちらで負担する」など、地主にとっての不安や負担を軽減する提案を併せて行うと、交渉がまとまりやすくなります。
それでも交渉が進まない場合には、底地に詳しい不動産会社や専門の弁護士に間に入ってもらうことが効果的です。第三者が加わることで、感情的な対立が和らぎ、合理的な条件提示ができる環境が整います。
底地買取を成功させるために専門家に相談すべき?
底地の売買には、借地権との権利調整、限定価格の評価、地主との交渉、契約書作成、登記手続きなど、さまざまな対応が求められます。借地人がこれらを単独で行うのは非常に負担が大きく、法的なリスクを伴うおそれもあります。
専門家が関与することで、価格交渉における第三者的な調整役を担ってもらえるほか、契約内容に不備がないかをリーガルチェックによって確認できるため、安心して取引を進めることができます。
さらに資金調達においても、融資条件に精通したアドバイザーの支援により、希望に沿った金融機関とスムーズに交渉を行うことが可能になります。
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まとめ

借地人が底地を買い取る場合には、「限定価格」という特有の価格評価が用いられ、一般的な相場とは異なる計算が必要です。価格は借地権の種類や契約内容、評価手法によっても左右されるため、慎重な検討が求められます。
また、手続きや資金調達にも注意点が多く、専門家の支援を受けることで取引の安全性とスムーズさが高まります。
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