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投稿⽇時

2025/06/12

最終更新⽇時

2025/06/12

借地権の相続放棄は3か月以内に判断を!手続き・リスク・放棄しない選択肢も紹介

  • 底地・借地

借地権を相続することになった場合、地代の支払いや建物の維持管理、地主とのやり取りなどに不安を感じる方は少なくありません。特に活用予定のない借地権付き建物を引き継ぐ場合には、相続放棄を検討するケースもあるでしょう。

しかし、相続放棄には期限や手続きのルールがあり、借地権だけを放棄することはできません。また、放棄後にも建物の保存義務が残るなど、見落とされやすいリスクも存在します。

この記事では、借地権の基礎知識から相続放棄の方法、メリットとデメリット、放棄以外の選択肢までをわかりやすく解説します。正しい判断をするための参考としてお役立てください。

借地権とは|相続放棄と関わる基本知識

紙幣の上に置かれた家の模型と観葉植物

借地権を相続した場合、地代の支払いや建物の維持管理など、さまざまな責任を引き継ぐことになります。まずは、借地権とはどのような権利なのか、相続時にどのような取り扱いになるのかについて確認しておきましょう。

借地権の仕組みと相続時の扱い

借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有するための権利です。借地人が亡くなった場合には、この借地権が相続の対象となり、相続人がそのまま引き継ぐことになります。借地権の相続は、原則として地主の承諾が不要であり、借地契約は継続されます。

ただし、借地権を相続すると、土地の使用に伴う地代の支払いや建物の維持・管理責任も一緒に引き継ぐことになります。契約更新の際には、承諾料や更新料を求められる場合もあり、相続後も長期的な経済的負担が続く可能性があります。

関連記事:借地権とは一体なんのこと?名義変更時の注意点とは?

借地権の相続税評価と財産性

借地権には一定の財産的価値があり、相続税の課税対象となります。国税庁が定める評価方法では、借地権の価値は更地価格の30パーセントから80パーセント程度とされており、立地や契約内容によって評価額は変動します。

借地権を相続することで発生する相続税は、他の遺産と合わせて課税されます。そのため、相続放棄を考える際には、借地権の評価額がどの程度になるのかを専門家に確認し、他の遺産とのバランスを見ながら判断することが大切です。

借地権の相続放棄は可能|制度の基本理解

ペケ印が付けられた家の模型

借地権にかかる地代や管理費などの負担から解放されたいと考える方の中には、相続放棄を検討するケースもあります。ただし、相続放棄には法律上の手続きや制限があるため、正しい知識を持って判断することが重要です。

相続放棄の法的な意味と手続き概要

相続放棄とは、被相続人の財産や負債の一切を引き継がないという意思表示を、家庭裁判所に申述する手続きです。相続の開始を知った日から3か月以内に申述する必要があり、この期限を過ぎると原則として放棄は認められません。

手続きとしては、相続放棄申述書の提出後、裁判所から送付される照会書に記載して返送します。相続放棄が正式に受理されると、相続人ではなかったものと見なされ、債務や不動産の管理義務も基本的には免れることになります。地主や金融機関などに対しては、相続放棄の受理証明書を提出することで、対応を円滑に進められます。

借地権だけを放棄することはできない理由

借地権の負担を避けたいと考えた場合でも、その部分だけを放棄することは法律上できません。相続放棄は、遺産全体に対して行う制度であり、特定の財産だけを切り離して放棄することは民法上認められていません。

たとえば、借地権が重荷となっているとしても、同時にある預貯金や現金、不動産などのプラスの財産も全て放棄の対象になります。相続放棄を検討する際には、借地権の負担感だけに注目するのではなく、遺産全体の価値や構成を冷静に確認したうえで判断することが重要です。

相続放棄の具体的な流れと注意点

遺言書と相続手続きを示すTo Doリスト

相続放棄は法律で定められた期限内に、正しい手順で申述する必要があります。また、放棄後も建物の管理責任が一定条件で残るため、慎重に対応しなければなりません。ここでは、相続放棄の基本的な手続きと注意点について整理します。

相続放棄の必要書類と裁判所への提出

相続放棄の申述を行うには、申述書に加えて一定の添付書類を家庭裁判所へ提出する必要があります。この手続きは一見シンプルに見えますが、書類の収集や提出方法には実務上の注意点が多くあります。

提出先と申述書の基本

申述書は、被相続人が死亡した時点の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。記載内容には以下のようなものがあります。

  • 被相続人の氏名、生年月日、死亡日
  • 申述人との続柄
  • 相続放棄の意思表示

必要書類一覧と取得方法

添付書類は申述人の身分関係と被相続人の事実情報を証明するために必要です。一般的には以下の書類を準備します。

  • 被相続人の戸籍謄本(出生から死亡まで通しで必要)
  • 被相続人の住民票除票または戸籍附票
  • 申述人の戸籍謄本

これらはすべて市区町村役場で取得できます。複数の本籍地がある場合には、それぞれの自治体で個別に請求が必要です。

申述の準備とタイミングの工夫

申述書と添付書類は同時に提出することが原則ですが、どうしても書類がそろわない場合には、まず申述書のみを先に提出する対応も可能です。その場合は、後日家庭裁判所からの指示に従って追加提出を行います。

実務上の注意点

本籍地が複数にまたがる場合は、除籍や改製原戸籍も必要になることがあります。

申述人が複数いる場合には、他の相続人との相互関係にも配慮しながら、個別に準備を進めることが望まれます。

家庭裁判所から照会書が送られることもあり、申述の経緯や相続財産の把握状況について問われる場合があります。

相続放棄後も残る建物の保存義務

相続放棄をしても、被相続人の建物に引き続き居住していたり、その物件の鍵や書類などを管理している場合には、「占有している状態」とみなされることがあります。

このような場合には、相続財産に属する建物について、第三者に損害を与えないよう保全する責任が発生します。これは、令和5年4月の民法改正により明確に位置づけられました。

保存義務が発生する条件

相続放棄をした後でも、以下のような状態にある場合は、建物を「占有している」と判断される可能性があります。

  • 建物に引き続き居住している
  • 鍵を所持し出入りが可能な状態にある
  • 郵便物を取りに来ている
  • 建物内の財産を管理・保管している

これらの行為があると、形式的には占有状態とみなされ、第三者に損害を与えないよう現状を維持する「保存義務」が発生します。

保存義務の責任とは

保存義務とは、建物を放置して近隣や第三者に被害を与えないよう、現状を維持する最低限の対応を行う責任です。これは所有権に基づく積極的な維持義務とは異なり、あくまで損害防止の観点から課されるものです。

たとえば以下のようなケースでは、放棄者が損害賠償を求められる可能性があります。

  • 老朽化した屋根が落下し、通行人にけがをさせた
  • 雨漏りや漏電を放置して火災や水害を招いた
  • 倒壊寸前の空き家が近隣に影響を与えた

保存義務は法的に限定的ではありますが、実際に損害が発生した場合にはその範囲を超えて責任を問われることもあるため、安易な放置は危険です。

保存義務から解放される方法

こうした保存義務から法的に解放されたい場合は、家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てることが最も確実な方法です。管理人が選任されれば、建物の管理責任はその人物に移行し、放棄者の法的関与は原則として終了します。

  • 相続財産管理人の選任には以下のような手続きが必要です。
  • 家庭裁判所に申立書と添付書類を提出
  • 裁判所による選任決定後、公告手続きなどを経て正式に管理人が任命される
  • 選任には予納金や手続き費用が発生する

申立てのハードルはありますが、建物の老朽化や放棄後のトラブルを防ぐ観点から、確実な解決手段として有効です。

実務で気をつけたい対応のポイント

保存義務に該当するかどうかの判断はケースバイケースです。誤って責任を背負わないよう、放棄後は以下のような対策を講じておくことが重要です。

  • 鍵や書類など、建物に関係する物を返却・放棄する
  • 管理を行っていないことを明示し、実質的な占有を避ける
  • 状況に応じて、専門家(司法書士・弁護士)に対応を依頼する

関連記事:土地相続放棄の手順と注意点!損しない方法を解説

相続放棄のメリット・デメリットを比較する

会議をするミニチュアの人形たちと木製ブロック

相続放棄は、借地権のような負担の大きい財産から解放されるという利点がありますが、同時に他の財産もすべて放棄することになるため、慎重な判断が求められます。ここでは、主なメリットとデメリットを整理します。

メリット:経済的・精神的な負担軽減

相続放棄をすることで、毎月の地代や建物の修繕費、固定資産税といった費用の支払い義務から解放されます。これにより、将来的な経済的負担を大幅に減らすことができます。

また、地主とのやり取りや、建物に関するトラブルの心配もなくなるため、精神的な負担の軽減にもつながります。特に、使用予定のない空き家を抱えている場合には、費用と時間の浪費を防ぐという観点でも有効です。

デメリット:他の財産放棄・家族への波及リスク

繰り返しになりますが、相続放棄を選択すると、借地権だけでなく、預貯金や不動産など他のプラスの財産もすべて受け取ることができなくなります。経済的に価値のある財産がある場合には、放棄することで損失が大きくなるおそれがあります。

また、自分が相続放棄をした場合、次順位の相続人に相続権が移るため、親族間でのトラブルや責任の押しつけ合いが生じることもあります。相続放棄による影響は自分だけにとどまらないため、家族との事前の話し合いが重要です。

関連記事:なぜ土地相続放棄ができない?その理由と解決策

相続放棄以外の選択肢と地主との対応策

家の形の模型と電球のアイデアメモ

借地権の相続放棄は有力な選択肢の一つですが、他にも現実的な対処法があります。相続放棄によって他の財産も失うことに懸念がある場合は、代替手段を検討することが大切です。ここでは、地主との交渉や借地権の売却など、放棄以外の対応策について説明します。

借地権の売却・返還などの代替手段

借地権付き建物は、第三者に売却することが可能です。売却を行う際は、地主の承諾を得る必要がありますが、条件が整えば資産として現金化できる可能性があります。立地や建物の状態によっては、思った以上の価格で売却できることもあります。

また、借地権を地主に返還するという選択肢もあります。建物を解体して更地に戻すことで、地主との合意が得られるケースがあります。返還時には解体費用が発生しますが、地代の支払い義務が早期に終了する点でメリットがあります。

地主の法的対応とトラブル回避策

相続放棄が行われた場合、地主は土地を回収するために法的な手続きを進めることがあります。たとえば、建物の収去や土地の明け渡しを求める訴訟を起こすケースです。これには費用と時間がかかるため、地主側も早期解決を望むことがあります。

地主とのトラブルを避けるためには、相続放棄の受理証明書を内容証明郵便で通知し、建物の今後の取り扱いについて事前に話し合いの場を設けることが有効です。建物の解体や名義整理について協議することで、双方にとって納得のいく形で処理が進められる可能性があります。

まとめ

不動産の相談をする男女と机上の住宅模型

借地権の相続放棄は、将来的な費用負担や精神的な負荷から解放される有効な手段です。しかし、放棄には法律で定められた期限があり、借地権だけを単独で放棄することはできません。また、放棄後も建物の管理責任が残る場合があるため、手続きには十分な注意が必要です。

相続放棄以外にも、借地権の売却や返還といった選択肢があります。経済的メリットや他の財産とのバランスを踏まえたうえで、最適な対応策を検討することが大切です。迷ったときは、司法書士や弁護士、不動産の専門家に相談することで、適切な判断につながります。

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