借地権の売却相場はいくら?計算方法や高く売るためのコツも解説

借地権の売却を検討する際、「いくらで売れるのか」が気になるところではないでしょうか。じつは、借地権の売却相場は買主によって異なります。適正価格で売却するためには、借地権の相場を事前に押さえておくことが大切です。

そこでこの記事では、これから借地権の売却を検討している方へ向けて、借地権の売却相場や計算方法、高く売却するためのコツを解説します。借地権売却時にかかる費用もご紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

借地権の売却相場は買主によって異なる

一戸建て

借地権とは、地主から借りた土地に建物を建てられる権利のことです。そのため、借地権の売却先は土地の所有者である地主か、それ以外の第三者かの大きく2とおりに分けられます。借地権を売却するにあたっては、地主と第三者のどちらに買ってもらうかで相場が大きく異なる点を押さえておきましょう。

ここでは、借地権の売却先別の相場を解説します。

地主に売却する場合

借地人側から地主へ借地権を買い取ってほしいと依頼した場合の相場は、更地価格(建物が建っていない土地の時価)の50%ほどです。

地主側には、借地権を買い取らなければならないとする法的な義務はありません。借地人側の事情で借地権を地主へ売却する形となるため、どうしても売却価格を譲歩せざるを得ないのが実情です。

一方で、地主側から借地人に対して借地権を購入したいとの打診があった場合は、更地価格の60~70%ほどが売却相場といわれています。

第三者に売却する場合

不動産買取業者など地主以外の第三者に借地権を売却するときの売却相場の目安は、更地価格の60~70%ほどです。地主からの要望で借地権を売却するときと同じくらいの価格が期待できます。

ただし、借地権を第三者に売却するには地主の承諾が必須です。また、地主へ「譲渡承諾料」と呼ばれる名目の費用を支払わなければなりません。そのため、結果的に手元に残るお金が少なくなってしまうことは押さえておく必要があります。

なお、譲渡承諾料については後述の「借地権の売却時にかかる費用の種類と相場」の章で解説しています。

関連記事 : 借地権売却の成功ポイント!地主の許可や承諾料の対策

借地権の売却相場を自分で計算する方法

借地権の売却相場を計算している夫婦

ここまで解説してきたように、借地権の売却相場は買主によって異なります。ただしあくまでも目安にしかすぎず、交渉次第ではより高く売却できる可能性もあります。買主とスムーズに売却価格の交渉をするためには、借地権の売却相場を把握しておくことが欠かせません。

そこでこのセクションでは、借地権の売却相場を自分で計算する流れを解説します。

1.土地の評価額を計算する

まずは、借地権が設定されていない場合の土地の評価額を計算します。土地の評価額を算出する方法は、以下の2種類です。

  • 路線価方式
  • 倍率方式

路線価とは、道路に面する土地の1㎡あたりの価格のことです。土地の価格を公的に評価する指標のひとつであり、固定資産税や相続税などの納税額を算出する際にも用いられます。

路線価を用いた土地の評価額の計算方法は、以下のとおりです。

土地の評価額=路線価×土地の面積(㎡)

路線価は、国税庁のサイト「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」中の路線価図を見ると確認可能です。たとえば路線価が1㎡10万円、土地の面積が100㎡のときには、次のように土地の評価額を算出できます。

土地の評価額=10万円×100㎡=1,000万円

一方で、エリアによっては路線価が設定されていないことがあります。その際に用いられる計算方法が「倍率方式」です。路線価が定められていない地域では、その土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価額を求めます。具体的な計算式は、以下のとおりです。

土地の評価額=固定資産税評価額×倍率

倍率は同じく「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」中の評価倍率表で確認できます。宅地の場合は、1.1倍に設定されていることが多い傾向です。また、土地の固定資産税評価額は自治体で「固定資産課税台帳」を閲覧すると調べられます。

(参考: 『財産評価基準書路線価図・評価倍率表』)

2.借地権割合を調べる

次に、同じく国税庁の路線価図から土地に設定されている借地権割合を確認します。

借地権割合とは、その土地全体の権利のうち借地権が占める割合です。路線価図上でA~Gまでの7種類のアルファベットで表記されており、「A:90%」「B:80%」「C:70%」「D:60%」「E:50%」「F:40%」「G:30%」となっています。

たとえば、該当する土地の前面道路の路線価が「185D」と記載されている場合は、その土地の1㎡あたりの路線価が18万5,000円、借地権割合が60%であることを示しています。なお、都心部や商業地ほど借地権割合は高く設定されている傾向です。

3.借地権の評価額を計算する

土地の評価額と借地権割合がわかったら、以下の計算式で借地権の評価額を求めます。

借地権の評価額=土地の評価額×借地権割合

たとえば、土地の評価額が2,000万円、借地権割合が70%のときの借地権の評価額は以下のとおりです。

借地権の評価額=2,000万円×70%=1,400万円

この計算式で導き出した評価額はあくまでも目安にしかすぎず、実際の売却価格は買主となる地主や第三者との交渉のうえで決定されます。ただし交渉材料のひとつとして使用することは可能なので、借地権の売却を考えているのなら自分で一度計算してみるとよいでしょう。

また、より正確な借地権の評価額を知りたいのなら、借地権に精通している不動産会社に相談することをおすすめします。

借地権の売却時にかかる費用の種類と相場

家の模型とお札、電卓の上に置かれた「TAX」の木片

借地権を売却しても、売却金額のすべてを受け取れるわけではありません。借地権の売却時にはさまざまな費用がかかるためです。実際にどのくらいの金額を受け取れるのかを把握するためにも、借地権の売却時にかかる費用を押さえておきましょう。

解体費用

借地人の意思で借地権を地主に売却するときには、売主負担で借地上の建物の解体費用を負担しなければならないことがあります。

建物の解体にかかる費用は構造や広さなどによって異なりますが、木造は1坪4~5万円、鉄骨造は1坪6~7万円、鉄筋コンクリート造は1坪6~8万円が目安です。たとえば、あなたが地主から借りた土地に建てている家が木造30坪の場合、借地権の売却に際して120~150万円ほどの費用を負担する必要があるということです。

ただし、交渉次第では地主が建物ごと買い取ってくれたり、解体費用を負担してくれたりすることもあるので、一度相談してみるとよいでしょう。

一方で、買主が不動産買取業者など第三者のときには建物ごと借地権を売却するケースが一般的です。そのため、借地権の売却に際して余計な解体費用を負担したくないのなら、不動産買取業者に売却するのがおすすめです。

譲渡承諾料

前述のように、借地権を地主以外の第三者に売却するときには地主の承諾が必要です。その際、地主に譲渡承諾料を支払わなければなりません。借地権名義変更料とも呼ばれます。

譲渡承諾料の相場は、一般的に借地権の売却価格の10%ほどとされています。たとえば、借地権を2,000万円で売却するときには、譲渡承諾料として200万円を地主は支払う必要があります。

ただし、譲渡承諾料の相場については法律で具体的に定められているわけではありません。そのため、ケースによっては相場以上の譲渡承諾料を要求されることもある点に注意が必要です。

印紙税

買主と借地権の売買契約を交わすときには、不動産売買契約書に収入印紙を貼る形で印紙税を納付します。

印紙税額は、売買契約書に記載された金額に応じて以下のように異なります。なお、2027年3月31日までに作成された不動産売買契約書は軽減税率の対象です。

契約金額本則税率軽減税率
100万円超500万円以下2,000円1,000円
500万円超1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超5,000万円以下2万円1万円
5,000万円超1億円以下6万円3万円

(参考: 『No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで』)

(参考: 『不動産売買契約書の印紙税の軽減措置』)

たとえば、借地権を2,000万円で売却したときに納める必要のある印紙税額は1万円です。

登録免許税

地主から借りた土地上に、住宅ローンを組んで家を建てたときには建物部分に金融機関の抵当権が設定されます。借地権付き建物に抵当権が設定されているときには、売却にあたって抵当権を登記簿から消すための抵当権抹消登記の手続きが必要です。

その抵当権抹消登記の手続きの際に納める必要があるのが登録免許税です。抵当権抹消登記の場合は、不動産1件につき1,000円を納めます。

一方で、相続した借地権付き建物を売却するときには、まず相続登記を行って名義を被相続人から相続人へ変更する必要があります。相続登記にかかる登録免許税は「固定資産税評価額×0.4%」です。たとえば建物の固定資産税評価額が2,000万円のときには、以下の登録免許税を納めます。

相続登記にかかる登録免許税=2,000万円×0.4%=8万円

司法書士報酬

抵当権抹消登記や相続登記は自分で手続きを行うことも可能です。しかし不備があると受理されずに不動産の売却ができなくなってしまうので、登記手続きの専門家である司法書士に依頼して代行してもらうケースが一般的です。

抵当権抹消登記や相続登記などの手続きを司法書士に代行してもらうときには、登録免許税に加えて別途1~10万円ほどの報酬を支払う必要があります。

譲渡所得税

借地権を売却して譲渡所得(利益)が発生した場合は、譲渡所得税を納める必要があります。譲渡所得税は所得税・復興特別所得税・住民税の総称で、以下の計算式で算出します。

譲渡所得税={譲渡所得(譲渡価格-取得費-譲渡費用)-特別控除}×税率

譲渡価格は借地権の売却価格、取得費は借地権や借地上の建物を取得するときにかかった費用など、譲渡費用は借地権の売却時にかかった譲渡承諾料などの費用を指します。

また一定の要件を満たしているときには、譲渡所得から特別控除を差し引くことが可能です。たとえば、マイホームとして使用していた借地上の建物を売却するときには、譲渡所得から3,000万円を控除できる「マイホームを売ったときの特例」を適用できます。つまり、借地権売却時の譲渡所得が3,000万円以下なら譲渡所得税は納める必要がないということです。

相続した借地権付き建物を売却するときでも、一定の要件を満たせば譲渡所得から3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を利用できます。

借地権を売却するときには、自分が特別控除の要件を満たしているかどうかも確認するようにしましょう。

(参考: 『No.3302 マイホームを売ったときの特例』)

(参考: 『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』)

借地権を高く売却するための6つのコツ

黒板に描かれたPOINTの文字と家族のイラスト、黒板の前に置かれた家の模型

借地権を少しでも高く売却したいのなら、あらかじめポイントを押さえておくことが大切です。ここでは、借地権を高く売却するために知っておきたいコツを6つご紹介します。借地権の売却を成功させるためにも、事前にチェックしておきましょう。

地主と良好な関係を築く

借地権を少しでも高く売却するためには、地主と良好な関係を築いておくことが重要です。借地権の売却に際してもっとも大事なのは、地主との交渉だからです。

普段から地主と良好な関係を維持できていれば、「借地権を買い取ってほしい」という交渉もしやすいでしょう。また、第三者に売却する際にもスムーズに承諾をもらえる可能性が高まります。

ただし、地主との関係性が良くても、売却価格や譲渡承諾料を巡ってトラブルが起こる恐れがある点に注意が必要です。そのため、借地権の売却を地主と交渉する際には、借地権に精通している不動産会社を間に挟むことをおすすめします。

契約更新の時期を避ける

契約更新時期を避けることも、借地権を少しでも高く売却するコツのひとつです。

借地契約を更新するときには、地主に更新料を支払う必要があります。更新料の相場は、更地価格の3%ほどです。

借地契約の更新直前に借地を売り出すと、買主が購入後すぐに更新料を地主へ支払う必要が出てきます。そのため、無駄な費用をかけたくないという理由から、更新時期の借地権は需要が下がってしまいかねません。更新料分の値引きを要求されることもあるでしょう。

結果的に売却価格を下げざるを得なくなるため、更新時期直前の売却は避けたほうが無難です。

売却にかかる費用を抑える

前述のように、借地権の売却時には譲渡承諾料や解体費用などさまざまな費用がかかります。借地権を売却したときの手元に残る金額を少しでも増やしたいのなら、これらの費用をできる限り抑えることがポイントです。

たとえば、抵当権抹消登記の手続きを自分で行えば、司法書士に報酬を支払う必要はありません。建物が建っている状態で借地権を売却すれば、解体費用の負担も抑えられます。譲渡所得税を押さえたいのなら、控除を有効活用しましょう。

底地と借地権を同時売却する

地主も土地を手放したいと考えているのなら、底地と借地権を同時に売却する方法があります。

買主が借地権を購入しても、土地部分は自由に活用できないため、一般的な不動産と比較するとどうしても売却価格は低くなりがちです。

しかし底地と借地権を同時に売却すると、買主は一般的な不動産と同様に土地も建物も自由に活用できるようになります。そのため、相場に近い価格で売却できる可能性が高まる点がメリットです。

ただし、底地と借地権の同時売却は、地主側にも売却の意思がなければ成立しません。また、たとえ地主が売却に同意してくれたとしても、売却金額の取り分を巡ってトラブルが起こる可能性もあります。

そのため、底地と借地権の同時売却を行う場合は、不動産会社に間を取り持ってもらうことをおすすめします。

関連記事 : 底地と借地は同時売却可能?!同時売却する際の注意点もご紹介

底地と借地権の一部を等価交換する

等価交換とは、借地権の一部を地主に譲り、その対価として底地の一部を取得する方法です。底地と借地権を等価交換すると権利関係が解消され、地主と借地人のそれぞれが100%の所有権を持っている不動産を手に入れられます。

これにより、借地人は地代を支払ったり、売却時に地主の許可を得たりする必要がなくなります。買主にとっても不動産を自由に使えるメリットがあるため、通常の不動産と同じように相場に近い価格での売却が可能です。

ただし前述の同時売却と同様、等価交換をするには地主と交渉する必要があります。またひとつの土地を地主と借地人が分け合うことになるため、それぞれが所有する土地の面積が小さくなる点もデメリットです。等価交換した結果、土地の面積が狭くなると逆に売れなくなる可能性がある点に注意しましょう。

借地権専門の買取業者に売却する

借地権を少しでも高く売却したいのなら、借地権専門の買取業者に売却するのも選択肢のひとつです。

借地権専門の買取業者に依頼すれば建物ごと買い取ってくれるので、解体費用がかかりません。また、地主との交渉も任せられるので、借地権の売却に際して余計な手間や気苦労をかけずに済む点もメリットです。

ただし、権利関係が複雑な借地権は一般的な不動産会社では取り扱ってもらえないことがほとんどです。そのため、借地権をスムーズに売却したいのなら、借地権の買取実績が豊富な買取業者に相談することをおすすめします。

まとめ

不動産の売却を検討している老夫婦と電卓で数字を打ち込んでいる営業担当者

借地権の売却相場は、売却先が地主なら更地価格の50%ほど、不動産買取業者など第三者なら更地価格の60~70%ほどと買主によって異なります。また、借地権の売却時には譲渡承諾料や解体費用などの諸費用がかかる点も押さえておきましょう。

一方で、借地権を売却するには地主との交渉が必要です。誤った進め方をしてしまうとトラブルにつながりかねないため、借地権を売却したいなら、借地権に精通している専門の不動産会社に相談することをおすすめします。

当サイトを運営しているリアルエステートは、借地権をはじめ権利関係が複雑な不動産の取り扱いに精通している不動産会社です。地主との交渉も代行いたしますので、借地権の売却をお考えの方は、弊社までお気軽にご相談ください。