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2025/11/21譲渡所得がゼロでも申告は必要?譲渡所得税を申告しないと起きるリスク
- 不動産の知識
- その他

給与所得と異なり、自分で確定申告の必要がある所得の一つが不動産や株式などの資産の売却で生じる「譲渡所得」です。
不動産の売却で利益が発生していれば当然申告の必要があると判断できるものの、迷うのが「譲渡所得がゼロ」になるケースではないでしょうか。
本記事では不動産の売却に伴う譲渡所得の申告をすべき判断基準と税額の計算方法、申告を怠った場合のリスク、迷いがちなポイントについてわかりやすく解説します。
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宅建士、不動産コンサルティングマスター、FP2級、定借プランナーR、認定空き家再生診断士
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株式会社MDIにて土地活用の提案営業に従事
東洋プロパティ㈱にて不動産鑑定事務に従事
株式会社リアルエステートにて不動産買取再販事業に従事
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Contents
譲渡所得税を申告しないとどうなる?

確定申告は所得や税額を正しく申告するための重要な手続きです。申告納税方式を採用している日本では、給与所得のように会社側が代わって納税手続きを行っているものを除き、個人が得た収入は自ら申告・納税する必要があります。
まずは、申告を怠った場合にどのような事態が起こるリスクがあるのかを知っておきましょう。
税務署からの調査が入る可能性がある
譲渡所得税を申告しない場合、税務署から調査が入るリスクがあります。
一見すると「申告しなければ売買の事実は把握されない」と思いがちですが、株式であれば証券会社、不動産であれば登記の移動記録を通じて、国税庁は資産の移動を把握できます。そのため、売買の事実をもとに「譲渡益が発生している」と判断される場合、税務署は「お尋ね」と呼ばれるアンケート形式の書類を送付したり、実地での税務調査を行ったりすることがあります。
こうした調査の結果、申告漏れや過少申告が発覚すれば、後述するような金銭的ペナルティが発生するだけでなく、事実が明るみに出ることで社会的信用の低下につながる可能性もあります。
金銭的ペナルティが課される
譲渡所得税が発生しているにもかかわらず申告をしなかった場合、故意かどうかに関係なく金銭的なペナルティが課される可能性があります。
- 無申告加算税
期限内に申告をしなかった場合に課される税金です。原則として、税務署からの調査通知を受ける前であれば5%、通知を受けた後であれば10%、調査後であれば15%が本来の税額に上乗せされます。加算税の割合は、本来の税額や過去の履歴によっては最大30%まで引き上げられることもあります。さらに、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課された履歴がある場合や、帳簿の不備・提示拒否がある場合には、さらに加算される可能性があります。
- 延滞税
税金の納付が遅れた場合に課されるもので、遅延期間に応じて年率7.3%または14.6%が課されるのが原則です。
- 重加算税
仮装や隠ぺいといった悪質な行為が認定された場合に課される税金で、納付すべき税額に対して最大40%が加算されます。
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譲渡所得税を申告する基準

譲渡所得の申告において、申告の要・不要は「最終的に税金を支払う必要があるかどうか」とは直接関係がありません。申告が必要かどうかを判断するポイントは、「正しく税金を申告・納付する」という目的が果たされるかどうかです。
譲渡益の発生
確定申告が必要となる例として最も分かりやすいのは、不動産などの資産を売却して譲渡益が出た場合です。譲渡所得が20万円を超えると、原則として所得税や住民税の課税対象となるため、申告を行わなければなりません。
注意すべきは、「譲渡益」の定義です。譲渡所得とは、売却価格から取得費や譲渡費用、必要経費などを差し引いた金額です。具体的な計算方法は、のちほど詳しく説明します。
特例や控除の適用
確定申告の目的は「正しい税金を申告・支払うこと」です。しかし、特例や控除を適用することで譲渡益がゼロまたはマイナスとなり、所得税が発生しない場合であっても、申告が必要です。
なぜなら、これらの特例や控除は、条件を満たせば自動的に適用されるものではなく、自分で必要書類を提出し、税務署に認められて初めて適用される仕組みだからです。
譲渡所得税に適用できる主な特例については、のちほど改めてまとめます。
損益通算や繰越控除の利用
特例以外にも、所得税の負担を軽減するための仕組みとして「損益通算」と「繰越控除」があります。損益通算は、同じ年に発生した利益と損失を相殺できる制度です。繰越控除は、ある年に発生した損失を、翌年以降の利益と相殺できる制度です。
これらの制度を利用する際にも、特例と同様に、確定申告による手続きが必要になります。
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譲渡所得税額の計算方法

譲渡所得の申告が必要なケースを理解していても、正しい申告や納税に関する知識が不足していると、本来より多くの税金を納めてしまい、損をする可能性があります。
そこで次に、基本的な譲渡所得税の計算式と税率、譲渡益を算出するために必要な費用の計算方法について見ていきましょう。
譲渡所得税の計算式と税率
譲渡所得税の基本的な計算式は、以下の通りです。
課税譲渡所得金額=譲渡金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
譲渡所得税の課税対象となるのは、譲渡金額(売却金額)そのものではありません。譲渡対象の資産の取得や譲渡にかかった費用、さらに一定の要件を満たした場合に適用される「特別控除額」を差し引いた金額が対象となります。
具体的にどのような項目が取得費や譲渡費用に該当するかは次項で詳しく見ていきますが、所得税と住民税を合わせた最終的な税額は、課税譲渡所得金額に税率をかけて算出します。
不動産の場合、譲渡所得税の基本税率は、所有期間の長短によって次のように大きく異なります。
| 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 |
| 5年以下(短期譲渡) | 30.63% | 9% |
| 5年超(長期譲渡) | 15.315% | 5% |
譲渡対象となる不動産の所有期間が5年前後である場合、税率の区分に注意が必要です。所有期間の判定は売却日ではなく、「売却した年の1月1日時点」で5年を超えているかどうかにより行われるため、この点を確認しておくことが重要です。
関連記事:自宅売却時の譲渡所得税計算法|取得費や税額をわかりやすく解説
取得費・譲渡費用に含まれる主な項目
譲渡所得税の計算において、特に重要となるのが「取得費」と「譲渡費用」です。
取得費とは、不動産を取得する際にかかった費用を指し、主に以下のようなものが含まれます。
- 購入代金や建築代金
- 購入時の仲介手数料
- 登録免許税や登記費用、司法書士報酬
- 不動産取得税
- 売買契約書の印紙税(購入時)
- 測量費、整地・造成費
- 建物の取壊し費用(取得時から土地利用目的の場合)
- 相続や贈与で取得した場合の登記費用
一方、譲渡費用は不動産を売却する際に直接かかった費用を指し、主に以下の項目が挙げられます。
- 売却時の仲介手数料
- 売買契約書の印紙税(売却時)
- 売却のための測量費や解体費用
- 売却のための立退料
- 売却手続きのための司法書士報酬や登記費用
- 売却のための広告費や名義書換料
また、取得費については、購入から長い時間が経っている場合などで資料が残っておらず、実際にかかった費用が確認できないこともあるでしょう。そのような場合には、「概算取得費」として譲渡価額の5%を取得費とすることが認められています。
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譲渡所得税の計算に適用できる特例
不動産の譲渡所得税を計算する際には、譲渡金額から控除できる特例がいくつも設けられています。
申告時には、以下の一覧を参考にしながら、自身が適用できる特例があるかどうかを確認し、正しく申告を行うことで、譲渡所得税の軽減につながります。
| 特例名 | 内容と主な適用要件 |
| 3,000万円特別控除 | マイホームやその敷地を売却した場合、譲渡益から最大3,000万円控除 |
| 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例 | 相続した空き家や敷地を一定の条件(旧耐震基準、一人暮らしなど)で一定期間内に売却した場合、譲渡益から最大3,000万円控除 |
| 取得費加算の特例 | 相続などで取得した不動産を一定期間内に売却した場合、相続税の一部を取得費に加算 |
| 軽減税率の特例 | 10年超所有のマイホーム売却時、譲渡益6,000万円まで約14%、超過分は約20%の軽減税率を適用 |
| 譲渡損失の損益通算・繰越控除(マイホーム) | マイホーム「売却」で損失が出た場合、他の所得と通算または翌年以降に繰越控除可能 |
| 譲渡損失の損益通算・繰越控除(買換え) | マイホーム「買換え」で損失が出た場合、一定要件で損益通算や繰越控除可能 |
| 低未利用土地等の100万円特別控除 | 都市計画区域内の低未利用土地を500万円以下で売却した場合、譲渡益から100万円控除 |
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譲渡所得税の申告に関するよくある誤解

税制は複雑なため、誤った認識による申告漏れや申告間違いにつながるケースも少なくありません。
ここでは、譲渡所得税の申告に関して紛らわしい点について見ていきましょう。
年間20万円以下の譲渡所得は「誰でも申告不要」ではない
給与所得者の場合、譲渡所得が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています。ただし、この原則が適用されるのは「年末調整を受けている人」に限られます。自営業者や個人事業主だけでなく、年末調整を受けていない給与所得者については、20万円以下であっても申告義務が生じる点に注意が必要です。
また、「譲渡所得が年間20万円以下は申告不要」というのは、あくまで所得税に関する話です。住民税については、譲渡所得の金額にかかわらず申告が必要となります。
譲渡所得税の「50万円特別控除」は不動産には適用されない
不動産の譲渡所得税を計算する際、「50万円特別控除」が使えるのではないかと考える人もいるかもしれません。
しかし、「50万円特別控除」は、株式やゴルフ会員権など、総合課税となる譲渡所得が対象です。分離課税である不動産の譲渡所得には適用されません。同じ「譲渡所得」であっても、資産の種類によって扱いが異なる点に注意しておく必要があります。
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譲渡所得税申告のために必要な書類
不動産(土地・建物)売却による譲渡所得税の申告では、一般的な確定申告書類に加えて、売却や取得に関する証明書類が必要です。
まず、基本となる下記の確定申告書類を税務署または国税庁のホームページから入手しましょう。
- 確定申告書第一表・第二表
- 確定申告書第三表(分離課税用)
- 譲渡所得の内訳書
また、マイナンバーカードや運転免許証などの本人確認書類と、給与所得者の場合はそれに加えて源泉徴収票も必要です。
次に、不動産売却に関する以下の書類を用意しましょう。
- 取得時・売却時の売買契約書
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 取得費や譲渡費用の領収書(仲介手数料・登記費用・測量費など)
さらに、各種特例や損益通算・繰り越し控除を利用する場合には、利用する制度に応じて追加で下記のような書類のいずれかが求められます。
- 住民票
- 戸籍の附票の写し
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 相続税の申告書のコピー
- 住宅ローン残高証明書
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書
- 居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書
申告をスムーズに進めるためにも、国税庁の「申告書添付書類チェックシート」などを参考に、事前に必要書類を確認しておきましょう。
(参考: 『国税庁 申告書添付書類チェックシート』)
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まとめ

譲渡所得の中でも、不動産の売却による譲渡所得税額の計算には多くの減税制度が設けられており、これらを適用するには、たとえ譲渡所得がゼロであっても確定申告による手続きが必要です。正しく申告を行い、適切な税金を支払うためには、申告のルールや申告を行わなかった場合のリスクについても理解しておくことが重要です。
また、譲渡所得税は土地や建物などの所有権の売却だけでなく、借地権の売却にも課税されます。借地権の売却は、所有権の売却と比べて計算や手続きが複雑になる傾向があります。
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