リバース60と相続問題 相続人がいない場合の影響

今回の記事では、リ・バース60における「相続問題」について解説します。

「リ・バース60は相続人がいないと利用できないの？」
「リ・バース60を利用したいけど、死亡後に相続人に迷惑をかけたくない」
「死亡後に相続人に負担をかけない方法はないのか知りたい」

リ・バース60についてのこんなお悩みや考えがある方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

リバース60の仕組みと基本情報

リバース60とは何か？住宅金融支援機構の新しいローン

リ・バース60は、住宅金融支援機構が提供する住宅ローンの一つです。このローンでは、現在の住居を担保にすることで、住宅関連に使用できる資金を金融機関から借り入れることができます。

利用条件

• 対象者：満60歳以上〜上限なし
  借入限度額：以下の3つの中で最も低い額
  所要費用分のみ（リフォーム代、ローンの借り換え金など）
  8,000万円
  担保評価額の5〜6割
• 資金の使い道：住宅関連
  住宅リフォーム
  住宅の建築
  住宅の購入
  住宅ローンの借り換え
  老人ホームなどの高齢者向け住宅の入居一時金
  住宅の取得資金を借り入れる
  年収に対する年間返済額割合
• 年収400万円未満：30％以下
• 年収400万円以上：35％以下
• 借入の終了時：リ・バース60の契約者死亡時
• 借入金利：各金融機関によって異なる
• 借入手数料：各金融機関によって異なる
• 返済方法：元本一括返済

返済方法

返済は「元本一括返済方式」となっており、契約者が存命中は利息分だけを支払い、契約者の死亡後に元本分を一括返済しなければなりません。
また、一括返済する際には「担保にした不動産を売却することで得られる売却代金で一括返済する」か、「相続人が一括返済する」かを選べます。

後者の相続人が一括返済する方法であれば、不動産は相続人が引き継げます。
しかし、前者の「不動産を売却する」方法ですと不動産の所有権はなくなりますので、相続人は不動産を引き継げません。

また、担保にした不動産を売却してもその売却代金でローンの残債を完済できなければ借金が残ることになります。
その借金を返済することになるのは、相続人です。

借金の返済義務の有無

「自分の死後に相続人に迷惑をかけたくない」と考える方もいらっしゃるのではないでしょうか？
そういった方には、契約時に「ノンリコース型」で契約することをお勧めします。

リ・バース60では、契約者の死亡後に担保物件を売却しても借金が残った際、その借金を返済する義務が相続人にあるかないかのパターンを選べます。

• リコース型: 相続人に借金の返済義務がある／金利が低い
• ノンリコース型: 相続人に借金の返済義務がない／金利が高い

ノンリコース型であれば、借金が残ってしまっても相続人に負担がかかりません。
しかし、リコース型とノンリコース型には金利の違いもありますので、相続人に負担がないからといって安易に決めない方が良いでしょう。
将来的なライフプランやキャッシュフローを見越して、どちらのタイプが合っているのか検討してみてください。

契約者が死亡した後、相続人がいないとどうなる？

契約者が死亡した後の流れを3つのパターンに分けて解説します。
これにより、各パターンにおける相続や返済の流れを理解しやすくします。

契約者が1人で、その契約者が死亡したときの配偶者の扱い

契約者の死亡時に担保物件に配偶者（連帯債務者ではない）が居住しており、その後も担保にした自宅に住み続けることを希望する場合、担保物件の売却を最長3年間まで保留することができます。

売却保留期間中（契約者の死亡日から最長3年間）は返済も留保されます。これにより、配偶者は住み替え先を探すための時間と余裕を得ることができます。

しかし、留保してもらっている間は契約者の死亡日から「延滞損害金」が発生してしまいます。
「延滞損害金」とは、債務者が支払いを遅れた場合に遅延分の損害を賠償するためのお金です。

留保期間が長ければ長いほど、延滞損害金は膨らんでしまいますので注意しましょう。

契約者が2人（連帯債務）で、契約者のどちらか一方が死亡したとき

この場合は、契約している金融機関に連絡して、今後の返済について相談してください。

契約者が全員死亡したとき

まずは、契約者が死亡したことを相続人が金融機関に連絡し、その後の返済について相談しましょう。
その後の流れは、相続人の有無によって異なります。

相続人がいるとき

相続人は、「相続確認書類（戸籍謄本・相続関係図・連絡先など）」を金融機関に提出します。相続人が確定した後、相続人は相続登記（所有権移転）を行います。この際の登記費用は相続人が負担します。

相続人は以下のどちらかの返済方法を選んで金融機関に連絡します。

自己資金などから返済

相続人が自己資金などによってローンを返済します。

この場合、担保にした不動産は売却せずに相続人が引き継ぐことができます。

自己資金から返済資金を捻出できない場合、「新たに相続人がリ・バース60でローンを組み、その借入金で返済する」という方法もあります。
しかし、審査結果によってはローンを組めない可能性もあるため、注意が必要です。

担保物件の売却代金から返済

担保物件を相続人が任意売却することで得る「売却代金」、または住宅金融支援機構が競売を申し立てることで得る「配当金」で返済します。

相続人がいないとき

住宅金融支援機構は、まず金融機関から債権を取得し、返済を請求する権利を金融機関から住宅金融支援機構に移行させます。

その後、住宅金融支援機構は裁判所に「相続財産清算人の選任」と「担保物件の競売」を申請し、競売の配当金をローンの残債に充当します。
ただし、契約時にノンリコース型を選択していれば、相続人の有無にかかわらずローンの残債の返済は不要です。

ノンリコース型は「相続放棄」とどう違うのか？

前述したように、リ・バース60の契約時にノンリコース型を選択すれば、契約者の死亡後に借金が残っても相続人に返済の義務はありません。

そうなると「相続放棄にならないのか？」と疑問に思った方はいらっしゃいませんか？
答えは「ノー」、相続放棄にはなりません。

相続放棄とは？

相続放棄とは、「相続人が被相続人の借金返済義務を引き継ぐことを拒否する」という意思表示です。相続人が「ローンを返済できない」と判断した際に相続放棄を選ぶことで、すべての相続財産と引き継いだローンの返済義務を放棄できます。
相続権を放棄できるだけでなく、引き継いだローンの返済義務も放棄できることがメリットです。

【関連記事】【これに注意】土地の相続放棄ができない理由とは？

ノンリコース型はなぜ相続放棄ではないのか？

相続放棄は「相続財産と返済義務」の両方を放棄できますが、ノンリコース型は「返済義務」のみを放棄します。

なぜなら、ノンリコース型では、借入金と担保物件の売却代金に差額が生じた場合、その差額分の返済が不要となる仕組みだからです。

つまり、すでに借り入れた分については返済義務が残ります。このように、ノンリコース型は相続放棄とは異なる対象を放棄するため、相続放棄とは別物です。

【Q＆A】リ・バース60に関してよくある質問

相続人がいなくてもリ・バース60を利用できますか？

リ・バース60の利用に相続人の有無が関係するかは、金融機関によって異なります。詳細は各金融機関にお問い合わせください。

リ・バース60では誰が相続人になれますか？

リ・バース60で相続人になれるのは「推定相続人」です。
推定相続人とは、「現時点で存命している人が死亡した場合、即座に遺産の相続人になると推定される人」のことです。

推定相続人になれる範囲は「被相続人の配偶者」と「被相続人の血族」、つまり、リ・バース60では契約者の配偶者とその血族（子供や孫、親や兄弟など）を指します。
推定相続人はほぼ法定相続人と同義として扱われ、推定相続人になっている方がそのまま法定相続人になることがほとんどです。

「推定相続人」か「法定相続人」かを決定する際には、被相続人が現時点で死亡しているか存命中であるかが重要です。

契約者が死亡すると、相続人は引き継いだローンの残債をどうやって返済することになりますか？

• 相続人が自己資金などから一括返済する
• 担保物件を任意売却して一括返済する
• 住宅金融支援機構に担保物件の競売を申し立ててもらい、返済する

また、2〜3つ目の方法で売却して得た売却代金や配当金を使っても借金が残る場合、「ノンリコース型」であれば相続人にその差額分の返済義務はありません。

担保物件を売却してローンの残債よりも高く売れた場合、残った売却代金（余剰金）はどうなりますか？

余剰金は相続人が受け取ることができます。

リ・バース60では団体信用生命保険に加入できますか？

リ・バース60を利用する場合は、団体信用生命保険に加入できません。
団体信用生命保険（団信）とは、ローン返済中に債務者が死亡した場合、保険金によってローン返済が免除される制度です。

住宅ローンを組む際、ほとんどの方がこの団信に加入します。
しかし、リ・バース60は「契約者（＝債務者）が死亡してはじめてローンの返済が始まる」という仕組みを持っています。
つまり、団信とリ・バース60は仕組みが正反対であるため、リ・バース60の契約者は団信に加入できません。

金融機関でのカウンセリングは、相続人も対象になりますか？

カウンセリングは、債務者（連帯債務者を含む）とその配偶者（連帯債務者でない場合も含む）に対して行います。
相続人・同居人に対してのカウンセリングの有無は金融機関によって異なりますので、詳細は各金融機関にお問い合わせください。

まとめ

いかがでしたでしょうか？
リ・バース60における「相続問題」についての理解が深まったのではないでしょうか。

少し難しい内容でしたので、最後に今回の内容の要点を振り返ってみましょう。

リ・バース60の契約者が死亡した場合の流れは3つに分かれます。

1. 契約者が1人で、その契約者が死亡したときに配偶者が残っているとき
2. 契約者が2人（連帯債務）で、契約者のどちらか一方が死亡したとき
3. 契約者が全員死亡したとき

リ・バース60は契約者の死亡後にローンの返済が始まるため、「なるべく相続人に迷惑や負担をかけたくない」と考える方が多いでしょう。

そんな方は、ノンリコース型がオススメです。
ノンリコース型を選択すれば、借り入れたローン以外の差額分は相続人が返済する必要がありません。

また、相続放棄とノンリコース型が別物であることを理解しておきましょう。
リ・バース60は、一般的な住宅ローンと異なる点が多くあります。

他のローンでは可能なことがリ・バース60ではできない場合も多々あります。リ・バース60の利用を検討する際は、まず各金融機関の窓口で相談してください。

実際に利用する際には、必ず事前に配偶者や相続人・同居人に相談しましょう。