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2023/10/27最終更新⽇時
2023/10/27底地・借地/賃貸借契約に契約書はいらないのか?公正証書とは?
- 底地・借地

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今回は底地・借地の売買における契約書について解説します。
こんなことに疑問をお持ちの方はいらっしゃいませんか?
「底地や借地を売買するには契約書が必須となるのではないか?」
「個人間の売買なら契約書はいらないのではないか?」
結論から言いますと、底地・借地の売買は賃貸借契約書がなくとも可能です。
なぜなら、契約書がなくとも借地契約は有効であるからです。
今回の記事では、このような疑問について詳しくお答えしていきます。
借地契約書とは?
借地契約書とは
借地契約書とは、土地賃貸借契約の際に使用する書面です。
また、土地賃貸借契約とは、
・借り主が一定の賃料を地主に支払うこと
・契約終了時には土地を元の状態に戻して返還すること
などを条件として、土地を使用収益する権利を認めることです。
実は、賃貸借契約は口約束でも成立します。
つまり、契約書の発行が義務付けられていないのです(例外あり)。
しかし、後々契約内容をめぐってトラブルが起きることもあるため、契約内容を明文化して契約書という「証拠」を残すことは賃貸借契約において重要な作業と言えます。
契約書の内容
契約書には主に以下のような内容が記載されます。
- 借り主と貸し主の氏名、住所
- 住所・面積・区分など、土地の基本情報
- 土地賃貸借契約の目的
- 土地賃貸借契約の期間
- 賃料と支払い方法
- 敷金の金額と返還方法
- 原状回復義務
- 契約違反による解除条項
- 禁止事項
禁止事項とは、貸し主が借主に対して禁止したい行為のことです。
底地人の許可なく借地人が土地の形状を変えたり、第3者に土地を売却したりなどが挙げられます。
なぜ契約書が必要ないのか?
前述した通り、賃貸借契約書がなくとも借地契約は有効です。
賃貸借契約書を交わさなくても、双方の合意の上であれば借地契約として成立するからです。
実際に、民法第522条にも以下のように明記されています。
- 「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示に対し、相手が承諾をしたときに成立する。」
→契約書ありきで契約成立するのではなく、意思表示に対して相手が承諾を示した時に成立する
- 「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除いて、書面の作成やその他の方式を具備することを要しない。」
→契約が成立するには、基本的に契約書などの書面を揃えることが法で要求されない
このことから、賃貸借契約がなくとも底地人と借地人同士の口約束で借地契約が有効だと言えます。
ただし、やはり契約書がないまま賃貸借契約を進めることはトラブルにつながってしまう可能性が高いでしょう。
また、借地権の種類によって書面の有無が変わります。
- 普通借地権・・・必ずしも契約書が必要ではない
- 建物譲渡特約付借地権・・・必ずしも契約書が必要ではない
- 事業用定期借地権・・・公正証書を作成
- 一般借地権・・・公正証書などの書面で特約
一般借地権は、公正証書に限る必要はありませんが、何らかの書面を用いて締結しなければなりません。
しかし、証拠能力が高い書面はやはり公正証書です。
公正証書の詳細については、後述していますのでそちらをご覧ください。
契約書の本来の役割とは?
そもそも契約書とは、本来契約内容をハッキリと明文化させるためにあります。
言うなれば、当事者間(底地人と借地人)でトラブルが発生した際に「証拠」としての役割を果たします。
契約書がなければ、当事者間で「言った・言っていない」「聞いた・聞いていない」などの事態になる可能性が十分に考えられます。
- 借地人が地代を滞納した時
- 底地人から譲渡承諾を得る際
- 底地人が地代の値上げを要求した時
- 契約更新の延長に関する話があった時
契約書があったとしても、上記のような場面においてトラブルが発生しやすいのです。
ですので、契約書がない状態でのこういったことが起きてしまうと、事態の解決に困難を極めるでしょう。
こういったことから、書面のない賃貸借契約はやはりオススメしません。
それでも、やはり契約書がない状態で売買を進めたいのであれば、専門の買取業者へ相談してみてください。
専門の買取業者であれば、土地の売買においてサポートしてくれるので、安心して売買活動を行えます。
契約書なしの賃貸借地契約はやはり危ない
再三申し上げますが、口約束での契約はやはりトラブルが起こりやすくなってしまいます。
不動産の契約に関することでなくとも、「友達や家族と口約束で揉める」なんてことは誰しもありますよね。
日常生活における口約束の問題ならまだしも、不動産における口約束のトラブルは解決が厄介です。
よくあるのが、先祖代々受け継いできた土地の賃貸借契約において、借地人と新たに相続した底地人の間で認識がズレているという事態です。
この場合、相続人(新しい底地人)は当初の契約者本人ではありません。
ですので、相続人は契約を締結した当時のことについては明確な答えを出せません。
こうしたトラブルで底地人と借地人の信頼関係に傷がつき、後々地代の値上げや契約更新の際に話がうまく進まなくなってしまいます。
また、賃貸借契約は30年や50年など長期にわたった契約がほとんどです。
ですので、仮にその間底地人と借地人が同一人物であったとしても、口約束の契約では歳月を経て認識がズレているということも十分あり得ます。
このようなことを避けるため、やはり賃貸借契約では契約書の作成をした方が後々便利なのです。
賃貸借契約書がない借地を売却する時に何が必要か?
契約書がない借地を売却するには
- 領収書
- 対抗要件
の2つが必要です。
領収書
借地人が底地人に対し、地代を支払ったことを証明するためのものです。
対抗要件
当事者間で効力のある法律関係が、第3者に対して効力を発揮するための要件のことです。
対抗要件となるものには、1番に「登記簿謄本(とうきぼとうほん)」があります。
登記簿謄本の所有者に
- 建物の所有者:借地人(自分)
- 土地の所有者:底地人
と記載されていれば、借地権として借地人(自分)の権利を主張できます。
しかし、ここで1点注意が必要です。
借地権が相続されている場合は、「建物の所有者」が現時点の借地人(自分)ではなく、前回の借地人(親など)の名義となっている可能性があります。
借地を相続した場合は、必ず名義を変更しておきましょう。
借地契約書に印紙は必要?
印紙とは
国に対する税金・手数料を払うために、印紙税法上の課税文書に貼る証票のことです。
借地契約書は、印紙税法上「記載金額のない第1号の2文書」にあたります。
課税対象に含まれますので、印紙税額分の印紙を貼らなければなりません。
印紙税額は、課税対象となる文書に記載されている契約金額によって変わります。
借地契約書における「契約金額」とは、地上権or土地の賃貸借の設定or譲渡の対価にあたる金額のことです。
手数料・権利金などがそれに当てはまり、賃料・保証金などは対象外です。
また、借地契約書を底地人・借地人のそれぞれが1通ずつ保管する場合、すべての借地契約書に印紙を貼らなければなりません。
一般的に底地人・借地人は、自分が保管する借地契約書にかかる印紙代を各自で負担します。
印紙税法上では、以下のように定められています。
「今日どうして課税文書を作成した人達が連帯して印紙税を納付」
しかし、双方の同意があれば平等に負担せずとも良いのです。
後々トラブルへ繋がらないよう、事前に誰がどう印紙代を負担するか決めておいた方が良いでしょう。
【Q&A】よくある質問
- 借地契約書はどのように入手できますか?
借地契約書は、インターネットでダウンロードしたり市販のものを購入したりして入手可能です。
しかし、そういったものは底地人もしくは借地人のどちらかが有利となるような形式で用意されていることがあります。
市販のものやネット上のものをそのまま使用するよりは、不動産の専門家や弁護士へ相談してより自身にあった借地契約書を作成してもらうと良いでしょう。
ネット上でダウンロードするには、以下のサイトよりADR手続合意条項を搭載した模範契約書のひな形をダウンロード可能です。
ぜひ契約書の参考にしてみてください。
※一般社団法人日本民事紛争等和解仲介機構 THE JACMO
- 借地契約を公正証書で締結するメリットは何ですか?
公正証書とは
公正証書とは、「公証人」という法律の専門家が証書として作成した文書のことです。
全国各地に公正役場があり、そこにいる公証人に作成を依頼できます。
全国の公証役場はこちらからご確認ください。
また、公正証書を作成するには「構成人手数料令」という法令に定められた手数料を払わなければなりません。
公正証書を作成して締結するメリット
- トラブルを防止できる
法律の専門家である公証人が契約内容を明文化することで、「トラブルを防止できる」というメリットがあります。
前述したとおり、事業用定期借地権以外の借地契約では公正証書や契約書の作成が必須ではありません。
ですので、書面を作成するにしても公正証書ではなく自分で契約書を作成して契約締結が可能です。
しかし、素人による契約書の作成よりも専門家の視点を交えた公正証書の方がより抜けのない書面を作成できます。
- 契約書にはない強制力を発揮できる
地代の未払いなどが生じた際に支払いを請求できる「強制執行人承諾条項(または強制執行認諾約款)」を公正証書に記載できます。
強制執行人承諾条項(または強制執行認諾約款)とは、公正証書の中の文言で「債務不履行の場合に、強制執行を受けても異議はない」ということを認めたことを示す条項です。
この文言がなければ、トラブルが発生した際に通常の契約書と同様に裁判を起こして勝訴しなければ強制執行ができません。
しかし、公正証書は裁判の判決と同じ強制力を持ちます。
借地契約のすべてに強制執行人承諾条項を執行できるというわけではありません。
あくまでも、金銭関係に限定されていますので、不動産の明渡しなどには無効です。
まとめ
今回は、底地・借地の売買における契約書について解説しました。
借地契約において、事業用定期借地権を除く借地権には契約書などの書面の作成が義務付けられていません。
ですので、口頭での契約が法律上有効となります。
しかし、口頭のみでの契約はやはり後々トラブルの原因となってしまいます。
ですので、どんな借地契約であれ書面を交わすことを強くオススメします。
契約書は市販のものを購入したり、ネット上からフォーマットをダウンロードすることで専門家でなくとも作成可能です。
ですが、書面を作成するのであれば、契約書よりも法の専門家・公証人によって作成される「公正証書」が良いでしょう。
契約書でも法律上問題ありません(事業用定期借地権のみ公正証書の作成が必須)が、公正証書には契約書にない「強制執行人承諾条項(または強制執行認諾約款)」という強制力があるからです。