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2023/11/08最終更新⽇時
2025/06/12借地借家法23条を初心者向けにわかりやすく解説!重要ポイントと実例つき法律ガイド
- 底地・借地

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借地借家法とは、どのような法律でしょうか。この記事を読むことで、借地借家法第23条について知ることができ、気を付けるべきポイントについても理解することができます。
借地借家法第23条とは?
借地借家法の第23条は、事業用定期借地権等についてです。事業で用いられる場合の建物の場合に、適用される法律です。以下が原文となっています。
事業用定期借地権等
第二十三条 専ら事業の用に供する建物(居住の用に供するものを除く。次項において同じ。)の所有を目的とし、かつ、存続期間を三十年以上五十年未満として借地権を設定する場合においては、第九条及び第十六条の規定にかかわらず、契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がなく、並びに第十三条の規定による買取りの請求をしないこととする旨を定めることができる。
2 専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、かつ、存続期間を十年以上三十年未満として借地権を設定する場合には、第三条から第八条まで、第十三条及び第十八条の規定は、適用しない。
3 前二項に規定する借地権の設定を目的とする契約は、公正証書によってしなければならない。
以上のように、事業用定期借地権等に関する規則が、この第23条で定められています。
定期借地権について
第23条で定められている「事業用定期借地権等」について解説します。
事業用定期借地権は、定期借地権の一類型に分類されます。
まず、定期借地権についてですが、土地を貸す人を地主、借りる人を借地人と言います。
普通の借地権(普通借地権)では、借地権の存続期間が満了したとしても、地主は相当な自由が無い限り、簡単には土地の明渡しをしてもらうことができません。借地人も土地を借りて、そのうえに家を建てて住んでいるわけですから、簡単に土地を返還できないのです。
このような背景から、地主は借地権者に対して、定められた期間内に遅滞なく借地契約の更新拒絶をする必要があり(借地借家法5条)、加えて前述したように、更新拒絶には正当事由が必要となっています(借地借家法6条)。
裁判所は簡単には正当事由を認めてくれないので、厳しい戦いになります。地主に正当な理由があるとして、借地人の立ち退きを認めてくれた場合でも、地主に立ち退き料の支払いが命じられる可能性が高いです。
このような制度は、借地権者を保護するという目的は果たせているものの、一度土地を貸すと借地権(土地を借りる権利)が簡単に消滅しないことが明確なため、土地所有者が土地を貸そうとしない傾向になっても不思議ではなく、もしそうなった場合、土地の有効活用が阻害されることに直結します。
そのため借地借家法では、一定期間が経過すると更新は認められず、土地が確定的に返還される制度を創設しました。これが「定期借地権」です。
定期借地権では、借地権の存続期間が満了すると借地権が消滅して、借地上に建物がある場合は更地にして返還する義務が発生します。広義の定期借地権としては、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権の3種類が存在します。
事業用定期借地権等について
定期借地権の一種にあたる、事業用定期借地権等について解説します。
事業用定期借地権等における普通借地権(更新がある借地権)との違いは、以下3つの項目が認められていない点にあります。
- 借地契約の更新(借地借家法5条)
- 建物の築造による存続期間の延長(借地借家法7条)
- 地主に対する建物買取請求権(借地借家法13条)
こちらの3つの権利は、地主ではなく借地人を守るために定められているため、地主からすると大きな負担となるものでした。しかし、事業用定期借地権等ではこれらが認められていないため、地主にとっては有利な条件になることがわかります。
それぞれに関して、以下で詳しく確認したいと思います。
① 借地契約の更新(借地借家法5条)
普通借地権では、借地権の存続期間が満了した場合でも、借地権者によって借地契約の更新請求が可能です(借地借家法5条)。正当事由がない場合、地主は更新を拒絶できません(借地借家法6条)。これに対して事業用定期借地権は、借地契約の更新はなされません。つまり、借地契約は更新しないまま終了します。
② 建物の築造による存続期間の延長(借地借家法7条)
普通借地権では、借地権の存続期間満了前に建物を再築した際、借地権者の承諾(2ヶ月以内に異議を述べない場合も承諾があったものと同等)があったならば存続期間の延長が可能です(借地借家法7条)。これに対して事業用定期借地権では、存続期間の延長は認められていません。
③ 地主に対する建物買取請求権(借地借家法13条)
普通借地権では、借地権の存続期間が満了した後に借地契約を更新しない場合、借地権者は、地主に借地上の建物を時価で買い取ってもらうように請求が可能です(建物買取請求権、借地借家法13条)。これに対して事業用定期借地権では、建物買取請求権が存在しません。
以上のように、事業用定期借地権等は、地主にとっては有難いとも言えるような条件となっていることが読み取れるかと思います。
一般定期借地権との違いについて
定期借地権等に関しては、広い意味で以下3つに分類可能であることを前述しました。
- 一般定期借地権(借地借家法22条)
- 事業用定期借地権(借地借家法23条)
- 建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)
③ 建物譲渡特約付借地権(借地借家法24条)は、特殊な借地権ですので
①の一般定期借地権(借地借家法22条)との違いについて説明したいと思います。
定期借地権等と一般定期借地権との違いは以下3点となっています。
- 借地上の建物の用途制限があるかどうか
- 借地権の存続期間
- 公正証書による契約が必要かどうか
一般定期借地権は、
- 用途制限がない
- 借地権の存続期間は50年以上
- 契約は書面であればよく、公正証書でなくても可能
というような特徴がある一方で、
定期借地権等は、
- 専ら事業の用に供する建物の所有が目的
- 借地権の存続期間を10年以上50年未満
- 公正証書で契約しなければならない
という特徴があります。
一般定期借地権は、50年以上の長期に及ぶことが大きな特徴として定められているため、戸建て住宅やマンションの敷地として使用する際に設定されることが多いです。つまり、存続期間が50年未満で定期借地権を設定できるのは、今回取り上げている「事業用定期借地権」だけになるということを覚えておきましょう。
まとめ
今回は、借地借家法第23条に記載されている「事業用定期借地権等」について解説しました。
改めてポイントを整理すると、事業用定期借地権等が認められるケースは以下のような場合に限られます。
事業用途
土地を事業用途で使用する場合に限られます。住宅用途では適用されません。 明確な期間
契約には明確な期間が設定され、その期間が満了すると、基本的には土地は元の所有者に戻ります。
合意による設定
事業用定期借地権等は、土地所有者と借地者の明確な合意に基づいて設定されます。
気を付けるべきポイント
契約内容の確認
契約期間、賃料、更新条件、解約条件など、契約の詳細をしっかりと確認する必要があります。
更新の不可
一般的に、事業用定期借地権は更新ができません。契約が終了すると、土地は元の所有者に戻るため、新しい土地を探す必要があります。
事業計画の整合性
借地権の期間と事業計画が整合しているか確認が必要です。例えば、10年間の借地権であれば、その期間内に事業が成熟し、投資が回収できるかを検討する必要があります。
賃料の変動
一般的には賃料は固定されますが、契約によっては一定の期間後に賃料の見直しがある場合もあります。その点は事前に確認しておくことが重要です。
解約条件
事業用定期借地権は、一般的に途中解約が難しいです。しかし、災害や事業の失敗など、予期せぬ事態に備えて解約条件を確認しておくことは重要です。
建築物の取り扱い
借地権が終了した際に、土地に建てられた建物の取り扱いがどうなるのかを確認する必要があります。多くの場合、建物は土地所有者に帰属することが多いです。 法的アドバイス
事業用定期借地権は複雑な契約形態であり、専門的な知識が必要です。したがって、契約前には法律家や専門家のアドバイスを求めることが推奨されます。
以上、借地借家法第23条にて定められている事業用定期借地権等について解説いたしました。定期借地権の一種であり、事業用の物件に適用される借地借家法でした。日常ではあまり馴染みのない権利かと思いますが、例えば、以下のようなケースで利用される権利でもあります。
商業施設
ショッピングモールやスーパーマーケットなどの商業施設を一定期間運営するために、土地を借りるケースがあります。運営期間が明確であり、その後の土地利用が不確定な場合によく用いられます。
工場建設
一定の製品を生産するための工場を建設する際、生産計画に合わせて土地を借りるケースがあります。とくに、プロジェクトが一定期間で終了する場合や、将来的な移転が見込まれる場合に適用されます。
イベントや展示会
一時的なイベントや展示会を開催するために、短期間だけ土地を借りるケースもあります。このような場合、事業用定期借地権等が適用されることが多いです。 再開発プロジェクト
都市の再開発が行われる際に、一定期間、既存のビルや施設を運営するために土地を借りるケースがあります。再開発完了後には土地が元の所有者に戻るため、事業用定期借地権等が適用されることが多いです。
農業事業
一定の作物を栽培するために、一定期間土地を借りるケースもあります。とくに、季節に依存する作物や、短期間で収穫が可能な作物の場合に適用されます。
公共事業
一定期間、公共施設(例
仮設の学校や病院)を設置するために土地を借りる場合もあります。とくに、災害後の復興作業などでよく用いられます。
以上のように、案外身近なところで適用されている法律でもあります。この記事が、借地借家法第23条について理解を深めたい方にとって参考になりましたら幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。