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投稿⽇時

2023/11/08

最終更新⽇時

2025/06/30

借地相続は底地人の許可なしで可能?借地相続について詳しく解説します

  • 底地・借地

借地権を設定している土地に実家があるというような人は、その借地が将来的に相続される可能性が出てきます。

借地の相続だけでなく、相続後の建物の建て替え・売却などについて、地主側の承諾はどこまで必要なのでしょうか。

この記事では、借地権の概要をおおまかにご説明した後、借地の相続について解説していきます。

現在、借地上に建物を所有している方や、借地の相続について知りたいという方は、ぜひ最後までご覧ください。

借地権と相続について

まずは、借地権の概要と相続について解説していきます。

借地権とは

借地権とは、建物の所有を目的として他人の土地を借りる権利のことです。

例えば、自宅を建てる場合などに土地を購入しなくても、第三者の土地を借りてその上に家を建てるという方法があります。その際に設定する権利を借地権と呼びます。

ちなみに、そのとき借りた土地を借地と呼び、借主のことは借地人と呼びます。また、土地の所有者である地主のことは底地人とも呼びます。

借地権にはいくつか種類があります。平成4年8月1日に「借地借家法」が施行される以前には、「借地法」をもとに設定された旧借地法がありました。しかし、その権利内容があまりにも借地人側の力が強いものであったため、現在は「借地借家法」にもとづいた借地権へと改善されています。

また、借地権のなかでも契約更新のない「定期借地権」がありますが、契約期間の終了とともに土地の返還をすることが前提となっていることから、相続には向いていません。そのため、基本的に相続する借地権は契約更新のできる「普通借地権」であることが多いです。

借地の相続

「相続」とは、被相続人(亡くなった人)のすべての権利や義務=財産を、特定の人が引き継ぐことを言います。簡単に言えば、亡くなった人の財産を配偶者や子どもなどの関係者がもらうということです。

もちろん借地権も権利の一つであるため、ほかの財産と同じように相続が可能です。

借地の相続に関しては、底地人の承諾は必要ありません。また、土地の賃貸借契約書に関しても、名義変更する必要はありません。

土地を管理している底地人に対して、「私が借地を相続しましたよ」と通知しておくだけで良く、その際に譲渡承諾料は不要です。

被相続人と同居していなかった場合でも、借地権は相続できます。

ですから、「元の借地権者が亡くなったので、土地を返還してほしい」と底地人に言われたとしても応じる必要はありません。

借地権が登記されている場合

基本的には、上述したように底地人への通知のみで借地の相続が完了します。ただし、借地権が登記されている場合には、借地権の名義変更が必要になります。

借地権付きの不動産を相続する際、底地人への相続報告も必須ですが、それとは別に「不動産全部事項証明書」を取得するなどして、対象の不動産についての内容確認をしましょう。

そのうえで、相続人が複数いるようなケースであれば、誰が対象の不動産の借地権を相続するのかを話し合い、「遺産分割協議書」を作成しましょう。

※遺言書にて借地権の相続人の指名があれば、遺産分割協議書を作成する必要はありません。

遺産分割協議書もしくは遺言書以外の必要書類がすべて揃ったら、法務局にて名義変更の申請をします。

借地の相続税について

相続人は、相続の発生を知った日から10ヶ月以内に、相続税申告をしましょう。借地権の相続についても、相続税の対象となります。

普通借地権の相続税評価額は、その土地の路線価の3~9割程度と定められていますが、周辺の土地の評価額が高い場合などはその割合も高くなる傾向にあります。評価額が高額となれば、納税資金対策も必要になります。

底地人の許可が不要なケース

さて、相続に関しては底地人の許可は不要であることがわかりましたが、その他のケースでも同じように許可が必要ないことがあるので、順番にご紹介します。

借地上の建物の賃貸

借地人は、借地権付きの建物を賃貸として第三者に貸し、収益を得ることができます。このようなケースでは法的には底地人の承諾は要りません。

しかし、借地人は底地人から借りている土地上の建物を利用して収益を得るわけですから、事前に報告しておいた方が心証が良いですよね。底地人との関係が良好であるほど、結果的にトラブル防止にもつながるので、法的には承諾が不要ではありますが、礼儀として事前に底地人に報告をしておくようにしましょう。

相続によって複数人で借地を共有する場合

相続人が複数いて、借地を何人かで共有する場合であっても、単独での相続と同様に底地人の承諾は不要です。

例えば、父親が単独で借地権を持っていたものの、亡くなった後で3人の子どもに相続するとします。

そうなった場合、借地権を3人で共有することになりますが、人数が増えても相続行為の一つとしてみなされるので、原則として底地人の承諾は不要です。

ただし、借地権を複数人で分割し共有した結果、底地人が不利益になるようなことがある場合には、底地人の承諾を求める事例も存在します。

そのため、相続による分割が発生する場合には、のちにトラブルにならないよう事前に確かめておいた方が良いでしょう。

借地権の共有者間での譲渡

例えば、AとBの二人が借地権を共有していたとします。

Aがこの借地権の持分を手放し、第三者ではなくBにすべてあげるとすれば、Bは単独で借地権者となります。つまり、共有者間のみで譲渡するというようなケースです。

原則として、このような場合には底地人の承諾が必要とされています。

しかし、実際には底地人が知らない第三者が借地権者となるわけではないので、双方の信頼関係はすでに構築されており、変わらないと見なされます。Bが借地権を単独で持つようになっても、今までと変わらない土地の利用方法を続けていくのであれば、底地人が特段不利益を被ることはないと考えられますよね。

そのため、このようなケースでの譲渡については、底地人の承諾なしに行って後に底地人が契約解除を請求しても、それが認められないことも多いです。

以上のような理由から、実質的には底地人の承諾不要で手続きは可能です。

離婚による財産分与のケース

離婚による財産分与に関しても、実質的には底地人の承諾なしで可能な場合があります。

例えば、夫が借地権者となっていて離婚したとします。

離婚協議によって、夫が妻に借地権とその上にある建物を譲渡することになった場合、原則としては底地人からの承諾が求められます。

しかし、仮に底地人の承諾なしで手続きをしたとしても、底地人側でその行為を解除できないという事例が出ているのです。

なぜかと言えば、夫名義の財産であったとはいえ、それは夫婦での共有財産であったと認識できるからです。とくに、建物の管理を妻が精力的に行っていたり、結婚後に借地権を得たりするようなケースでは、解除が認められないケースが多いです。

ただし、反対に夫が結婚する前に借地権を所有していたとなれば、解除が認められる可能性も高くなるので注意が必要です。

底地人の許可が必要なケース

つづいて、底地人の許可が必要なケースについてご紹介します。

法定相続人以外の人への遺贈

被相続人が、遺言によって法定相続人以外に借地権を譲る場合は、底地人の承諾および譲渡承諾料が必要です。

もし底地人の承諾が得られなかったら、家庭裁判所に「借地権譲渡の承諾に代わる許可」を求める申立てが可能です。

相続した借地権の売却

相続した借地権は売却できますが、借地権の売却には底地人の承諾が必要です。

もし底地人の承諾を得ずに売却してしまうと契約違反になり、底地人に契約を解除されてしまうかもしれません。また、底地人の承諾を得て売却する場合でも、通常は底地人に承諾料の支払いをしなければなりません。

借地権の転貸

借地権の転貸とは、借地権付き建物が存在している底地人の土地を、第三者に又貸しすることを指します。借地権の転貸についても、底地人の承諾が必要です。転貸を承諾なしで行ってしまうと、底地人によって契約解除されるかもしれません。

借地人が所有する借地権付き建物を、第三者へ賃貸するのと似ていて混同しやすいので注意しましょう。

借地上の建物を建て替え・増改築する場合

借地上の建物を建て替えるときや、増改築するときにも、底地人の承諾が必要です。

借地契約を交わした当時から建っていた家やビルなどが劣化して建て替えたいという時や、違う目的のために新しい建物が欲しくなった時などに、既存の建物を壊して建て替えることがありますよね。

このような場合、底地人の承諾なしで勝手に建築・建設をしてはいけません。

また、既存の建物の小規模な修繕に関しては問題ありませんが、増築や大規模なリフォームをする場合にも承諾が必要です。

ただし、どのような工事までであれば承諾が不要なのかは、契約の条項によっても変わってくるので、まずは契約内容を確認してみると良いでしょう。

借地上の建物を担保にローンを組む場合

借地上の建物を担保にしてローンを組む場合には、建物に抵当権を設定して契約を結ぶことになります。

法的には、建物に抵当権を設定すること自体は底地人の承諾は不要とされています。しかし、融資をする銀行等の金融機関は、底地人の承諾を得ているかを確認し、もし承諾が取れていなければローンを組めないということが多いです。

そのため、明確に承諾されていることがわかるように書類という形で証明する必要があります。

借地条件を変更する

例えば、非堅固建物である木造建物を堅固建物である鉄筋コンクリート造に建て替える場合などは、底地人の許可が必要です。

土地の賃貸借契約書に取り決めとして「木造の建物の建築のみ許可する」等の記載がある場合は、とくに注意してくださいね。

借地権の相続|よくあるトラブル

借地を相続する際には、さまざまな理由から建物の名義変更をしなくてはならない場合があります。

そして、そういった手間がかかる時に限って、底地人と借地人の間でトラブルになることが多いのも事実です。

ここでは、よくあるトラブルと回避策をご紹介します。

借地名義人と建物の名義人が違う

例えば、父親夫婦と息子家族の二世帯が同居することになり、新築の資金を息子から調達しようとしたが、底地人から「借地名義人と建物の名義人が違うなら、建物の新築は認めない。」と新築を承諾してもらえないといったトラブルが起こることがあります。

そうならないためにも、底地人の承諾を得ないで子ども名義の建物を建てることは絶対にしないように注意してください。

もし強行してしまうと、土地賃貸借契約書の「無断転貸禁止条項」に記載の債務不履行を盾に、底地人から契約解除を申し立てされる可能性が高くなります。

このケースでは、まず息子名義で新たな土地賃貸借契約を結んだうえで、建物に関しては親子の共有名義で新築する旨の承諾を得るのが無難だと言えるでしょう。

借地権を兄弟で共有する

借地権や借地上の建物を、兄弟で共有することは可能ですが、借地権の共有には注意が必要です。

特定の相続人が決められない時に、選択肢として共有するということが挙げられます。しかし、共有にしてしまうとのちに借地権や借地上の建物を売却したり、建て替えたりしたい場合に共有者全員の同意が必要になります。また、次の相続で共有者が増えてしまう恐れもあり、トラブルの元になりかねません。そのため、借地権付き建物は単独で相続することをオススメします。

二世帯住宅の新築

例えば、底地人から「借地人の息子が新築するのであれば、名義変更料と承諾料を両方支払ってほしい。払わなければ新築は承諾しません。」と言われることがあります。その場合は、まず親の借地権を子どもに転貸する許可を求めましょう。

転貸が許可されて息子が転借人となったら、つぎに借地上に建物を新築する許可を求めるといったように、面倒ですが二回に分けて交渉するのが有効です。

地代支払い能力自体にとくに問題が無いと判断されたら、借地権の転貸許可はおりるはずです。

まとめ

いかがでしたか?今回は、借地の相続などについて解説してきました。

借地を相続するだけであれば底地人の承諾は不要ですが、相続後に建物の建て替えをする場合などには承諾が必要です。

借地に関してはあくまでも底地人という本来の土地の所有者が存在するため、両者の関係性が大切です。

トラブルなく借地関係を続けられるように、借地権者はどこまで自由に土地を利用できるのかについて、しっかりと確認しておくようにしましょう。