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2023/11/01最終更新⽇時
2025/07/02借地契約で問題ありの場合は早めに売却すべき?!
- 底地・借地


借地契約によって物件を借りている場合によく起こるトラブルをご紹介します。何かしら問題を抱えている方は、借地権や物件の売却がオススメですがその理由についてもこの記事でご紹介します。また、借地契約を複数行う際の注意点もご紹介します!
借地契約とは?
建物所有を目的とする土地の賃貸借契約、もしくは建物所有を目的とする地上権の設定契約を指します。借地契約については、平成4年8月1日より前に締結された契約か否かを確認する必要があります。この日程前後では、借地契約の存続期間・更新に関して適用される法律が異なるからです。
借地契約により、借主は土地を使用する権利を得る一方で、一定の期間や条件のもとで土地を返還する義務が生じます。そのため以下のような細かなルールが定められています。
- 期間: 借地契約には期間が定められており、期間満了時には土地を返還する必要があります。
- 賃料: 借主は貸主に対して、土地の使用に対する対価として賃料を支払う義務があります。
- 更新: 契約期間が終了する前に、双方の合意のもとで契約を更新することができます。
- 契約の終了: 契約期間の終了、契約違反、双方の合意などの理由で契約を終了することができます。
前述した平成4年8月1日以降に締結された借地契約の期間については、「借地借家法」という法律が適用されます。この法律では、建物の構造が堅固か非堅固かに関わらず、借地契約の期間を原則30年と定めています。ただし、当事者の合意により30年よりもさらに長い期間を定めた場合には、両者が合意した期間となります。また更新後の期間ですが、最初の更新後は20年で、2回目以降の更新後は10年になるのが原則です。しかしこの更新後の期間も、当事者の合意によりさらに長い期間を定めた場合には、合意した期間が適用となります。
借地契約を複数行う場合
借地契約を行う場合に生じる問題点について、地主の方の立場からご紹介したいと思います。例えば地主Aさんが、ある土地を複数人に貸す場合、一番懸念すべき点は地代の回収になります。地主AさんがBとCに土地を貸している場合、地代をBに請求した際に、”地代はCが払うことになっている。” また、Cに請求した場合に、”Bが地代は支払うことになっている“というような問題が生じる可能性があります。これはBCが地主Aさんに対して「不可分債務」を有しているからです。不可分債務とは、民法432条にて「…債権者は、…債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての…債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。」と定められているもので、Bに対して全額請求することも可能、Cに対して全額請求することも可能という意味です。もちろん、二重(2倍)の賃料受領は不当利得となり、返還する必要性が生じますが、上記のような地代支払者問題が生じる場合があるので、借地契約を複数行う場合には地主側・借地人側、どちらにおいても注意が必要です。
よくある借地問題
借地人と地主は対になるものですが、二者間ではさまざまな問題が生じる可能性が高いと言われています。借地人は土地を借りる人で、地主は土地を貸す人ですので、借地契約は両者がいないと締結できない契約なのですが、やはり立場と考え方の相違によって度々トラブルが生じます。
以下に、よくあるトラブルを記載いたしますので、借地問題を抱えている方は早めに売却する方向で考えてみると良いでしょう。
よくある借地問題
① 借地権の相続に関するトラブル
借地権とは、「土地を借りる権利」です。たとえば一戸建てを立てるために「借地権」と明記されている土地を購入した場合、「あくまでも土地を貸すだけであるものの、建物を立てることも許可する」という権利を入手できることを指します。借地権が設定された土地の権利は「地主」が持っているため、土地の購入者は地主へ「地代」を支払うことにより、建物を建てられます。
この「借地権」を巡って起こり得るトラブルを以下に記載します。
名義変更料の請求
亡くなった借地人の借地権を相続する場合もあるでしょう。その際に地主により名義変更料(名義書換料)を請求されることがあります。しかし、相続による借地権の取得は実は譲渡にはあたりません。そのため、相続にあたって地主の承諾は不要です。もちろん承諾料や名義変更料を支払う必要もないので、地主により名義変更料を請求された場合は拒否して大丈夫です。
前提として、借地権を相続する際に、借地人の変更を地主に伝える義務は定められていません。地主との土地賃貸借契約を、相続人の名義で再締結する必要もないため、借地上にある建物を相続人名義で登記することで、第三者にも借地権を主張できます。
ただし、地主との良好な関係を築くという観点から、借地人の変更が生じた際には伝えた方が良いかもしれません。地主の方からすると大事な財産を貸しているわけですから、信頼できる借地人に土地を使用して欲しいと思うのが当然でしょう。
② 借地権の更新に関するトラブル
借地権の存続期間は、前述のとおり最初の契約締結後から30年以上です。旧法借地権においては非堅固建物で20年以上となっているものの、それでも非常に長い契約と言えます。
そのため、存続期間満了前に地主や借地人に相続が生じたり、当事者間でも更新について最初にどのような取り決めをしていたのかという記録が残っていなかったりして、トラブルになることが多々あります。その中でも多いトラブルが、「更新料の支払い」と「更新拒絶の問題」です。
契約書に記載のない更新料の請求
借地権の更新料は法律で定められていないため、地主から更新料を請求されても支払義務は生じません。また支払わないことで、地主から更新拒絶されることもないので心配は無用です。ただし、契約書に記載が無くとも更新料について合意している場合と、過去更新時に更新料を支払った実績がある場合においては、更新料の支払義務が生じるので注意しましょう。
・更新の拒否
契約期間満了を理由として、地主から借地の返還を求められることが稀にあります。しかし契約期間を満了しても、借地上に建物が存在している限り借地契約は更新されるため、借地を返還する必要はありません。このことは、借地借家法第5条でも定められています。
【借地借家法第5条】
「借地権の存続期間が満了する場合において、借地権者が契約の更新を請求したときは、建物がある場合に限り、前条の規定によるもののほか、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、借地権設定者が遅滞なく異議を述べたときは、この限りでない。」
③ 借地権の売買に関するトラブル
地権を第三者に譲渡する場合には、地主の許可が必要です。地主の承諾を得ずに借地権を譲渡してしまうと、借地契約を解除される可能性もあります。そのため買主と話がまとまっていても、絶対に独断で取引を進めてはいけません。このような時には、代諾許可と言って裁判所に地主の承諾に代わる許可を求めることになります。このことも借地借家法第19条で規定されています。
④ 地代変更に関するトラブル
地主の事情の変化や固定資産税の高騰が理由で、地主から「地代を上げたい」と言われることがあります。この際契約で「地代を増減しない」という特約がない場合には、適正な地代とするための値上げの際は応じる必要があります。地代を増減できる条件も、借地借家法第11条で確りと定められています。
以上のように、借地人と地主は本来は良い関係を築くべき両者であるものの、何かとトラブル発生が多い関係性であるのも事実です。
もちろん借地問題で深刻に悩まれている方は、早急に解決に向けた行動を開始することをオススメします。あまりにも地主と問題がある方は、借地権を売却してしまうと良いでしょう。
借地権の売却に関しては地主の許可が必要ですが、前述したように「借地非訟」といって、地主が借地権の売却を認めてくれない際に裁判所から売却の許可がもらえる手続きもあります。こちらは最後の手段として、捉えておくようにしましょう。
借地権の売却について
借地権を売却する方法として、地主に建物を売却するのが最も有効的な手段です。地主が建物を買い取った場合、借地権は消滅します。
また地主ではなく、第三者への売却ももちろん可能です。この場合、買主が個人か不動産会社か関係なく、地主の承諾が必要になります。地主の承諾を得る際、「譲渡承諾料」を納めることが慣習的とされていますが、法律的に定められているものではないことを覚えておきましょう。ただ慣習として、借地権を第三者に譲渡する場合は、借地権価格の10%程度を地主に対して支払うというものがあります。
さらに、等価交換を行うことで第三者に売却するという手段もあります。等価交換とは、価格や価値が同等と考えられるものを互いに交換することを指します。具体的には、建物と地主の持っている底地権を同等分交換し、それぞれが所有権を保持している状態にしてから、借地人と地主で同時売却するというものになります。底地権とは、借地権が設定されている土地の所有権のことを指します。
等価交換することで、地主と借地人の双方が土地と建物の一部の権利を失うことになりますが、借地権が消滅するため買手がつきやすくなるというメリットがあります。ただし等価交換を行う際は、測量や登記の手間、そして費用が必要になってくる点に注意しましょう。
このように借地権の売却手法はいくつか存在しています。借地契約で何かしらの問題を抱えている方は、借地権と建物売却という手段があることも覚えておくと良いでしょう。
まとめ
借地権を利用して土地を借りた場合、土地と建物を購入する際に必要な不動産取得税や固定資産税などの税金を支払う必要が無いというメリットがあります。土地に対する固定資産税の納税義務は地主に発生し、不動産取得税は地主にも発生しません。もちろん借地人も土地を借りるだけですので、土地の不動産取得税は生じません。
このように借地権を取得するメリットはいくつかあるものの、地主とトラブルが生じた際には、借地権を手放す(売却する)という方法が最適であることをこの記事でご紹介しました。売却方法も複数存在しているため、借地契約において問題が生じている方は借地権売却を考えてみてはいかがでしょうか。 また直面している問題を、実は法律が守ってくれるケースも多いので借地人と地主トラブルに関してよく調べてみましょう。以上、最後までお読みいただきありがとうございました。