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投稿⽇時

2023/10/05

最終更新⽇時

2025/06/12

事業用借地権とは?契約の流れと注意点を実例を交えて解説

  • 底地・借地

事業用借地権とは?その特徴を解説

事業用借地権は、定期借地権の一種で、事業用定期借地権とも呼ばれます。
契約期間は10年以上50年未満であり、長期的に土地や建物の事業利用に適用されることが一般的です。
原則として、当初に定められた期間が終了すれば更新はありませんが、双方の合意があれば再契約も可能です。
土地を貸主にとっては、決まった期間賃貸収入が得られ、借主にとっては、その期間土地を利用できる点が魅力です。
さらに、貸主と借主の間で事業用借地権を契約する際は、公正証書による契約が条件となります。
事業用に土地を使用する場合のみ適用され、住宅などの建設は認められません。
事業用借地権の特徴について、詳しく解説していきます。

契約期間の詳細:10年以上50年未満の条件

契約期間が満了した場合、借主は土地を退去し、貸主に返却することが求められます。
契約期間は10年以上50年未満で決定されますが、10年以上30年未満と30年以上50年未満で異なる対応が必要です。
契約期間満了時に土地を継続して使用する場合、10年以上30年未満では再契約が必要ですが、30年以上50年未満では契約更新で対応可能です。
さらに、10年以上30年未満と30年以上50年未満では、契約満了時の建物買取請求権の有無が異なります。
10年以上30年未満であれば建物買取請求権はない一方で、30年以上50年未満であれば建物買取請求権が発生するので貸主は注意しておきましょう。

借主が事業に必要な建物を建てる

契約する土地は、一部を除き多くの場合、更地であり、借主が事業に必要な建物を建設します。
事業に必要な建物の建設費は借主の負担であるため、貸主には特に負担がありません。
借主にとって、事業の内容に応じて必要な建物や設備が異なるため、更地を契約し、必要なものを建設することが効率的です。
基本的に、建設した建物は将来的に解体が必要になるため、契約期間満了が近づいたら解体方法も考慮に入れましょう。
貸主は建物に関する費用を支払う必要がなく、基本的には土地を貸しているだけです。
ただし、後述の建物買取請求権には注意が必要で、予想外の費用が発生する可能性があります。

契約期間満了時の建物買取請求権

建物買取請求権とは、契約満了時に借主が自ら建設した建物を貸主に買い取るよう請求できる権利です。
ただし、建物買取請求権は権利であり、請求された場合、貸主は拒否することができません。
貸主が建物買取請求権を回避するためには、契約時に特約を設けて、その行使に関して明記しておくことが重要です。
建物買取請求権を行使した場合は貸主が買い取り資金を準備する必要があり、買取金額によっては融資などが必要になるかもしれません。
建物を買い取ることは悪いことだけではなく、建物をそのまま活用して次の借主を探せるなどのよいこともあります。
また、10年以上30年未満であっても建物に利用価値があると判断したなら、建物を買い取っても問題ありません。

契約満了時には原則として更地にする

契約満了時には原則として更地で返却するため、貸主からしても他の土地活用を視野に入れて行動できます。
加えて更にするのは借主の責任であり、一般的には建物の解体費用などは借主が支払わなければなりません。
当初の契約期間が10年以上30年未満であれば、建物買取請求権がないので更地にして返却されるため安心するとよいでしょう。
ただし、先述したように30年以上50年未満の契約期間なら、建物買取請求権が行使される可能性もあります。
将来的には他の方法での土地活用を視野に入れている場合は、10年以上30年未満で契約するケースが多いです。
一方で立地条件などの関係から他の土地活用を考えていない場合は、30年以上50年未満の長期契約を結びます。

事業用借地権の契約は公正証書でおこなう

事業用借地権の契約は必ず公正証書でおこなう必要があり、公正証書以外での契約では認められません。
他の借地権契約であれば一般的な契約書類でも問題なくても、事業用借地権では公正証書になるので注意しておきましょう。
公正証書での契約になることから自分で解決しようとせずに、司法書士や行政書士などの専門家に書類作成を依頼することがオススメです。
自分で公正証書を作成して公正証書役場に提出する方法もありますが、内容に不備などがあれば再作成・再提出が求められます。
確実に契約するためにも手間や費用を惜しまずに、専門家に依頼して作成してもらった公正証書を使用しましょう。

事業用借地権の注意点とリスク

他の借地権とは違った特徴を持っていますが、注意点についても把握することが大切です。
貸主は前から活用していなかった土地を活用できて、借主からしても長期にわたって安定した事業をできる魅力があります。
しかし、これらはあくまでもお互いが問題なく活動できている場合であり、どちらかに問題が発生するかもしれません。
基本的に問題は発生しないことが望ましいです。しかし、決して問題が発生しないとはいいきれません。
問題には貸主が原因のケースもあれば、借主が原因のケースもあります。
注意点についても把握して、実際に契約する前には理解しておくことが大切です。

途中解約は原則できない

借主が健全に事業に取り組めるよう設定されているため、原則として貸主の事情で途中解約はできません。
契約期間中に他の土地活用をしたいと思っても、契約期間が残っているなら満了まで待つ必要があります。
途中解約ができるケースは借主が契約違反している場合であり、事業用以外の用途で土地を活用している場合などです。
借主が最初の契約内容をしっかりと守って事業をおこなうことが望ましく、契約違反を期待するのはよくありません。
貸主が将来的に他の方法で土地活用する予定が考えられるなら、短めの契約期間で設定しましょう。

事業が破綻するリスクもある

契約期間中でも借主の事業が破綻して支払いができなくなれば、建物を解体して更地にする費用は貸主負担になります。
事業が破綻した場合でも建物の所有権は借主にあるため、取り壊しをするには借主から承諾を得なければなりません。
また、事業が破綻してしまえば不動産収入も途絶えてしまうことから、不動産収入を他で活用しているなら対策が必要になります。
借主も事業を破綻させようとして業務に取り組んでいるわけではありませんが、さまざまな事情で事業が破綻してしまう可能性はあるでしょう。
借主がおこなっている事業は破綻してしまうと将来的な収益がなくなるだけでなく、貸主が費用負担しなければならない場面も出てきます。

相続が起きた場合は保証金について確認する

契約期間が長期にわたることから、土地の所有者が契約期間中に亡くなってしまうケースも珍しくありません。
土地の所有者が亡くなった場合は土地の相続が発生します。相続の際には契約内容についてしっかりと確認しておきましょう。
保証金とは契約時に借主から預かって、契約期間満了時に問題なければ返還するお金です。
保証金に関しては借主側に大きな過失がない場合は返還が義務付けられているため、相続の際には土地の所有権だけでなく保証金も把握することが大切です。
また、契約書の名義も亡くなった人の名義なので、専門家に相談して契約書の名義変更もしなければなりません。
保証金が返還できずに裁判に発展する可能性もあることから、保証金については使わずに準備しておく必要があります。

土地貸出時の確定申告

事業用借地権で契約して土地を貸している場合、不動産収入として利益は発生していることが普通です。
利益があるなら確定申告は必要になるため、定められた期間に忘れずに書類を準備して税務署に提出しましょう。
はじめて土地を貸して利益が発生したケースでは確定申告を忘れることもありますが、自分では確定申告が難しいと思うなら税理士へ依頼することがオススメです。
事業用として土地を貸しているなら利益も大きくなりやすく、翌年には利益に対しての税金も発生します。
そのため、利益はすべて使用してしまうのでなく、税金支払いなども考えてある程度は手元に残しておきましょう。
税金の計算には専門的な知識と経験が求められるため、税理士に依頼するなら税金についてもアドバイスをもらえます。
税金の支払いは不動産所得を参考に納税額が決められることから、税金対策なども意識的に取り組むことで納税額を抑えることにつながるでしょう。

借地料について決める

どれくらいの金額で土地を貸すかの借地料については、貸主と借主で話し合って適切な借地料について決めることが大切です。
借地料を決定する場合には周辺地域の相場価格を参考にして、どれくらいの金額にするか考えます。
設定された借地料が高すぎれば借主の負担が大きくなってしまう一方で、借地料が安すぎれば貸主の利益になりません。
お互いがメリットのあるラインを探して決定する必要があり、10年以上の期間にわたって契約が続くことも頭に入れておきましょう。
あまりにも高すぎる金額で設定すれば、借主の経営負担になって事業が破綻してしまうリスクを高める要因です。
先述したように事業が破綻すれば貸主の負担も発生するため、適切な借地料設定が必要になります。

まとめ:事業用借地権を活用する際の注意点

事業用借地権は事業用途で土地を使用する場合の借地権ですが、さまざまな特徴や注意点があるので一つひとつの把握が大切です。
把握できていない状態で契約をしてしまうと、思わないトラブルや問題が起きます。
貸主と借主どちらが原因でトラブルや問題が発生するかわかりませんが、お互いが意識して行動しなければなりません。
契約は最低でも10年と長期間にわたるため、自分のメリットだけを考えるのではなく相手の立場も尊重しましょう。
事前に事業用借地権の特徴や注意点について把握して、借地料などにも納得してからの契約が問題やトラブルを起こさないためにも重要です。
わからない点は司法書士や行政書士などの専門家に相談してみましょう。