借地の相続税について詳しく解説!

借地の一部を駐車場として第三者に貸し出すことは認められているのでしょうか。地主の許可を得る必要性がある場合と、許可不要の場合がありますので、その点について詳しく解説します。この記事を読むことで、借地の駐車場転貸について学ぶことができます。
Contents
借地権の種類について
借地とは、借りている土地を指す言葉です。借地上には、土地を借りる権利である借地権が適用されており、その権利を保持する人を借地人といいます。
実はこの借地権も、相続税の課税対象になってきます。
借地権は5種類に分類可能で、普通借地権・一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権・一時使用目的借地権があります。
それぞれについて以下で説明します。
普通借地権:土地を一定期間借りる権利であり、とくに期間の定めがない場合が多い。書面が無くても契約を交わすことが可能。
住宅建設や商業施設など、一般的な用途に使用される。
一般定期借地権:借地期間が明確に定められている(50年以上)。期間が終了すると、土地は元の所有者に返還される。 一定期間のプロジェクトやイベントに使用される。
事業用定期借地権:事業用途で土地を借りる場合に使用される。期間も長く、多くの場合、事業計画に合わせて設定される。 工場や倉庫、商業施設など、長期間にわたる事業用途。
建物譲渡特約付借地権:土地を借りるとともに、その土地に建設された建物を譲渡する特約が付いている。アパートやマンションの建設など、建物を中心とした事業に使用される。
一時使用目的借地権:短期間、または一時的な用途で土地を借りる権利。イベントや短期プロジェクト、臨時の駐車場など。
以上のように、それぞれの借地権で契約内容や条件、権利と義務が異なってきます。
借地権の相続税について
相続税においては、前述した5つの借地権のうち、一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権を「定期借地権等」として扱います。これらは同じ計算方法を用いることで、借地権の評価額が算出されます。
普通借地権・定期借地権等・そして一時使用目的借地権の3つにおいては、相続税の算出方法が大きく異なってきます。
算出方法を間違えないように、それぞれの計算方法を覚えておくようにしましょう。
相続税の算出方法
① 普通借地権
算出方法は、普通借地権=自用地評価額×借地権割合です。普通借地権は長期間にわたることが多いため、その価値は相続税で高く評価される可能性があります。
土地の自用地評価額を算出して、その評価額に借地権割合を乗じることで求めます。普通借地権の相続税の算出方法では、特段難しい計算は無く、自用地評価額に借地権割合を乗じるだけで算出可能です。また路線価図または評価倍率表に記載されている借地権割合は、評価対象地の存在する地域ごとに設定されています。土地を貸している地主の場合、借地権相当額が控除されることになっているので、不動産貸付業を行っている方も借地権の計算が必要です。
具体的に数字にして考えてみましょう。
仮に路線価が「400D」で土地面積が150㎡の借地であった場合、普通借地権の相続税評価額は以下のようになります。
相続税評価額:(400×1,000×150㎡)×借地権割合60%=3,600万円
となります。借地権割合が高くなるほど借地の評価額も上がるので、都市部の借地は相続税も高額になるケースが多発します。
② 定期借地権等
定期借地権の相続評価額=自用地評価額×(A/B)×(C/D)
A:定期借地権等の設定時における借地権者に帰属する経済的利益の総額
(地代の相場と実際に支払っている地代の差額)
B:定期借地権等の設定時におけるその宅地の通常の取引価額
C:課税時期におけるその定期借地権等の残存期間年数に応じた基準年利率による複利年金現価率
D:定期借地権等の設定期間年数に応じた基準年利率による複利年金現価率
残存期間年数:定期借地権の期間にて契約が残っている年数
基準年利率・複利年金原価率:国税庁HPで確認可能
定期借地権等は相続評価額の算出が複雑なので、以下に気をつけるようにしましょう。
契約期間の確認
・定期借地権の契約期間が短い場合、その評価額は相対的に低くなります。 契約書を確認して、残りの契約期間を明確にしましょう。
土地の価値の確認
・土地自体の価値も相続税の評価に影響します。土地の公示価格や近隣の土地価格を調査して、土地の現在価値を把握するようにしましょう。
契約内容の詳細
・更新条件、解約条件、その他の特約があれば、それも評価に影響を与える可能性があります。契約書の詳細を確認し、とくに注意が必要な条項がないか確認しましょう。
③ 一時使用目的借地権
一般定期借地権の評価額=自用地評価額 ×(1-底地割合(*))×A
*一般定期借地権が設定された時点の底地割合
A=課税時期における、一般定期借地権の残存期間年数に応じた基準年利率による複利年金現価率 ÷ 一般定期借地権の設定期間年数に応ずる、基準年利率による複利年金現価率
定期借地権等の設定時期と課税時期とでは、借地権者に帰属する経済的利益に変化がない場合等、課税上弊害がない場合に限っては、宅地の課税時期における自用地評価額に、以下の算式により計算した数値を乗じることで、定期借地権等の評価額算出も可能です。
【経済的利益に変化がない場合の定期借地権等の計算方法】
定期借地権等 = 自用地評価額×A×B
A=定期借地権等の設定時の借地権者に帰属する経済的利益の総額 ÷ 定期借地権等の設定時の宅地の通常取引価額
B=課税時期の定期借地権等の残存年数に応ずる基準年利率による複利年金現価率 ÷ 定期借地権等における設定期間年数に応じた、基準年利率による複利年金現価率
【相続税の節税方法】
借地権を相続した場合に、相続税を節税できる方法をご紹介します。借地権であっても小規模宅地等の特例が適用可能となっています。この「小規模宅地等の特例」とは、亡くなられた方の自宅に使われていた土地を対象として、一定の要件を満たす場合に「相続税を計算する際の土地評価額を最大80%が減額される」という特例です。
「小規模宅地等の特例」の要件に該当する相続人が住居用として借りていた土地を引き継ぐ場合、限度面積330㎡までという制限はありますが、評価額を80%減額することが可能です。
【計算例】
以下の条件で借地を所有している場合の相続税を実際に計算してみたいと思います。
借りている土地の面積:100㎡
借地権の評価額:1,780万円
相続人:「小規模宅地等の特例」の適用対象者
小規模宅地等の特例を適用により減額される額は、借地権の評価額に減額割合80%を掛けて算出可能です。
そのため、小規模宅地等の特例を適用した借地権の評価額
1,780万円×80%=1,424万円
1,780万円-1,424万円=356万円
以上のように、小規模宅地等の特例を適用後の借地権の評価額は336万円です。
評価額をかなり抑えることができているのではないでしょうか。
借地権を相続する時の注意点
相続する際の注意点を以下に記載します。
① 借地権名義変更手続きは不要
借地権を相続した場合、名義変更の手続きは不要です。地主の承諾も不要ですので、地主に
相談することもありません。一方で、借地を使用する限りは今後の地代支払いなどもあるので、相続した旨の連絡を地主に事前にしておくことをオススメします。地主の中には借地権周りに詳しい方もいますが、もちろんそうではない方もいます。あまり借地権についての知識が備わっていなし地主から名義変更料や土地の返還を請求されるケースもあるようですが、もちろん支払う必要は無いので安心してください。名義変更の手続きが必要なケースとして、借地権が登記されている際には注意が必要です。
② 借地にある建物は名義変更が必要
建物と借地権者の名義が異なる場合、借地権を主張することはできません。借地にある建物は必ず名義変更をしましょう。
③ 遺贈であれば地主の承諾が必要
遺言書による財産承継を「遺贈」といいます。法定相続人以外の人に借地権を遺贈する場合は、地主の承諾や承諾料の支払いが必要なので要注意です。承諾料が発生するという点にも注意が必要です。
④ 子供名義の家を建てるときは地主の承諾が必要
地主の承諾を得ずに借地権者以外の建物を建てた場合、最悪の場合には無断転貸と見なされることがあります。もちろんその場合、借地契約は解除されます。例え、ご自身の子供名義の家であっても無断では建てられません。必ず事前に地主の承諾を得てから建築を行うか、借地権を譲渡するようにしておきましょう。とくに二世帯住宅で起きやすい契約違反となっているので、十分に注意しましょう。
⑤ 借地権の譲渡や売却には地主の承諾が必要
借地権は勝手に譲渡や売却を行うことはできません。必ず地主の承諾が必要になり、承諾してもらう際には地主への承諾料の支払いも必要となります。承諾料の相場は、借地権価格の10%程度で、建替えや増改築の場合にも地主の承諾が必要となります。
以上5点が借地権を相続する際の注意点です。気付かない間に契約違反になっているようなことを避けるためにも、必ず確認しておくようにしましょう。
まとめ
今回は、借地における相続についてご紹介しました。相続税は、借地権の種類によっても額が変わってくるので、注意が必要です。相続の際には、契約書を再確認して借地権の種類などを確認するようにしましょう。
もし、借地権を相続財産として認識していない場合はどうなるでしょうか。相続税対策が不十分となり、家族が重い税負担に苦しむ可能性もあると思います。相続した後世が苦しむことを避けるためにも、借地の相続税評価額や、有効な相続税対策について早めに学習しておくようにしましょう。
一方で、借地の相続税は専門分野となるので額の算出方法などもわかりづらいのが実情です。詳しく理解できない場合には、早めに相続の専門家や専門の不動産業者に相談するようにしましょう。とくに注意しておくべき点が、相続開始後にできる対策は限られてしまうという点です。なるべく早めの相談をオススメします。
また、借地権が複数の相続人に分割される場合には、その管理や責任分担について明確にしておくことが重要となってきます。地主にも関わってくることなので、すべての点に対して慎重に判断を行いましょう。
以上、借地における相続税についてご紹介しました。最後までお読みいただき、ありがとうございました。