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2024/06/19最終更新⽇時
2024/06/19登記簿謄本の見方完全ガイド!種類・取得方法も解説
- 不動産の知識

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家を売りたいが、登記簿謄本の見方がわからない、または提出を求められた証明書がどれか分からないという悩みを抱えている方は少なくありません。
そこで本記事では、登記簿謄本の種類や、項目ごとの見方について解説します。
登記とは? – 不動産登記の基本を理解しよう
そもそも登記とは、土地や建物の権利関係を明確にするために設けられた制度です。具体的には、次のような登記があります。
- 商業登記
- 法人登記
- 船舶登記
- 動産譲渡登記
- 債権譲渡登記
- 財団の登記
- 法人登記
不動産登記もこれらの登記のうちの1つで、所有している土地や建物が誰のものであるかをはっきりさせるために行われるのです。
登記を行うと、法務局が管理する帳簿に次のような内容が記載されます。
- 誰が所有している建物や土地なのか
- 所在地はどこなのか
- 所有者の住所はどこなのか
- どの金融機関からどのくらいお金を借りているか
- 地積
- 床面積
- 地目
- 建物の構造
- 取得年月日
つまり登記を行うと、取得あるいは所有している建物や土地に関する情報が網羅的にわかるのです。
登記で登録された情報は一般公開されるため、手数料を払えば誰でも閲覧できます。また登記内容が登録された登記簿謄本や登記事項証明書の交付を受けることも可能です。
登記簿謄本とは? – 不動産登記簿謄本の役割と重要性
登記簿謄本は、法務局が管理・保管している登記簿の写しです。免許証の例で言えば、免許証が登記簿、免許証のコピーが登記簿謄本に相当します。
登記を行った際は、その登録内容が全て登記簿謄本に記載されます。
登記事項証明書との違い – 謄本と証明書の違いを解説
従来はコンピューターの技術が進歩していなかったため、登記簿をコピーする際は紙に印刷することしかできませんでした。そのため登記した内容は一度法務局の登記簿に登録され、その後紙の登記簿謄本にコピーされたのです。
現在ではコンピューター技術の進展により、登記内容はパソコン上で登録・保存されています。このパソコン上での登録内容が登記事項証明書にあたります。つまり、登記簿謄本は紙のコピー、登記事項証明書はデジタルデータです。
登記事項証明があれば、パソコン上で登記簿謄本と同じ内容を閲覧できます。最近ではよほど古い登記簿を取得する場合を除いて登記事項証明書を取得することが多くなってきています。
登記簿謄本の種類 – 必要な証明書を選ぶ
登記簿謄本には、以下の4種類の証明書があります。
- 全部事項証明書
- 現在事項証明書
- 一部事項証明書
- 閉鎖事項証明書
全部事項証明書 – 登記簿情報を網羅した証明書
全部事項証明書は、抹消された情報や現在有効な情報、変更された内容など、対象となる土地や建物に関するほぼ全ての情報が記載された証明書です。ただし閉鎖された登記事項に関しては記載されませんので注意しましょう。
全部事項証明書は、官公庁や銀行などの審査のために用いられることが多いです。なぜなら全部事項証明書には、登記の基本的な情報が網羅的に記載されており、一目で登記の情報が把握しやすいからです。ただし権利関係が複雑なマンションや土地の場合は、登記情報が限定的になる一部事項証明書を用いる場合もあります。なお全部事項証明書には閉鎖された情報の記載がないため、過去の履歴を知りたい場合は、閉鎖事項証明書とあわせて求められる場合があります。
次のようなケースにおいても全部事項証明書が必要になります。
- 住宅ローン控除のための確定申告
- 不動産取得税の軽減のための申請
- 抵当権設定登記を行った際の、登記証明
- 不動産を担保に融資を受ける際の、借り入れ状況の確認
- 火災保険や地震保険に加入する際
- 会社から住宅手当を受ける際
現在事項証明書 – 現在有効な情報を簡潔に確認
現在事項証明書は、登記情報の中で現在有効な権利のみが記載された証明書です。
現在事項証明書には抹消された抵当権や前の所有者などの記載がなく、現在の情報しか記載されていないため、全部事項証明書と比較して見やすいことが特徴です。
そのため「過去に差し押さえを受けたけどその情報は見られたくないな」という経緯を知られたくない場合に活用できます。
また税務署や法務局などの公的機関や銀行や証券会社などの金融機関に提出する際は、現在事項証明書のみでこと足りるケースが多いです。
ただし状況によっては全部事項証明書の提出を求められる場合もありますので詳細に関しては証明書を要求している担当者に確認してみてください。
一部事項証明書 – 必要な情報だけを取り出す証明書
一部事項証明書は、その名の通り、登記情報の一部のみが記載された証明書です。
たとえばマンションの敷地や分譲マンションのように、多数の所有者や共有者がいることから権利関係が複雑な場合は、一部事項証明書を取得するケースがあります。なぜなら権利関係が複雑な土地や建物の、全部事項を取得した場合、書類のページ数が膨大な量になることがあるからです。
具体的には100ページ以上になることもあります。100ページ以上の証明書となると確認したい項目を探すのが大変になります。そういった場合に利用するのが一部事項証明書なのです。
一部事項証明書は別名「何区何番事項証明書」とも言います。
なお一部事項証明書の下部には「これは登記記録に記録されている事項の甲区○○番、乙区○○番、乙区○○番の事項を証明した書面である」という記載があります。
閉鎖事項証明書 – 過去の情報を確認するための証明書
閉鎖事項証明書は、全部事項証明書に記載されない過去の情報が記載された証明書です。たとえば土地同士が合筆した場合、古い土地の情報がなくなりますが、その履歴や、建物を取り壊したり、建物が倒壊してしまったりした際の情報が記載されます。
このように閉鎖事項証明書では、過去に土地や建物で起こった出来事が記載されているのです。
閉鎖事項証明書に記載されている内容は、全部事項証明書や一部事項証明書と同じですが、原因及びその日付下部に令和〇年取り壊し・同日閉鎖という記載があります。
また閉鎖事項証明書の下部には「これは閉鎖された登記記録に記録されている事項の全部を証明した書面である」という文言が記載されています。
なお閉鎖後に登記記録が追加されたり、変更されたりすることはありません。なぜなら閉鎖している不動産はもう存在していないか、別物件の登記記録に移されてしまっているからです。
また建物や土地の権利関係が複雑な場合には、一部分だけの情報が記載された「閉鎖事項一部証明書」の発行も可能です。
登記簿謄本の見方 – 項目ごとの確認方法
登記簿謄本は、通常次の構成で記載されています。
- 表題部
- 権利部甲区
- 権利部乙区
- 共同担保目録
ただし全ての登記簿謄本が4つの構成になっているわけではありません。なぜなら必要な情報は登記する土地や建物によって違うからです。
ここでは登記簿謄本の見方を解説します。
表題部(土地)の見方 – 土地の基本情報をチェック
表題部(土地)には、登記された土地の基本情報が記載されています。
項目 | 記載内容 |
地図番号 | 登記した土地や建物に対して付与される地図番号。 |
筆界特定 | 隣の家との境界線がはっきりと定まっている場合に記載される情報 |
所在 | 土地や建物の住所のことで、番地までの住所が明記される |
地番 | 登記を行う際に、土地や建物に対して付与される番号のこと |
地目 | 23種類ある地目のうち、該当する地目が明記。家や建物の場合は宅地と記載されることが多い |
地積 | 測量記録をベースとした土地の面積のこと。登記簿上の面積と実際の面積に相違がある場合は、変更されることがある |
原因及びその日付 | 登記が行われた日付が明記される |
所有者 | 土地や建物の所有者ならびに所有者の住所が明記される |
表題部を見ることで、どこの土地なのか、いつ登記申請したのか、誰が所有しているのか、隣地との境界線は定められているのか、地目はなんなのか、という基本的な情報がわかります。
したがって土地の基本的な情報を把握したい場合には表題部のみの確認で問題ないでしょう。
表題部(建物)の見方 – 建物の詳細情報を確認
表題部は建物と土地で項目が少し変わります。
建物における表題部の見方は次の通りです。
項目 | 記載内容 |
所在図番号 | 登記した土地や建物に対して付与される地図番号 |
所在 | 土地や建物の住所のことで、番地までの住所が明記される |
家屋番号 | 登記を行う際に、土地や建物に対して付与される番号のことです。 |
種類 | 居住用としての利用なのか事務所としての利用なのか利用する目的や種類が明記される |
構造 | 建物の構造が明記される(木造・鉄骨造・鉄筋国リート造など) |
床面積 | 建物の総床面積が明記される |
原因及びその日付 | 登記が行われた日付が明記 |
所有者 | 土地や建物の所有者ならびに所有者の住所が明記される |
建物の場合は、建物の所在・構造・種類・床面積など建物としての基本的な情報がわかります。なおメインの建物のほか、離れや倉庫など付随の建物がある場合は、そちらの情報も記載されます。
権利部甲区の見方 – 所有権に関する情報の確認方法
表題部では建物や土地などの基本的な情報が記載されていました。一方、権利部甲区には、土地や建物の所有権に関する情報が記載されています。
たとえばこの土地や建物の所有者が誰なのか、いつ移転登記をしたのかなど上から順番に時系列順に記載されるのが権利部甲区の特徴です。なお差し押さえの履歴も権利部甲区に記載されます。
具体的な記載内容は次の通りです。
項目 | 記載内容 |
順位番号 | 登記された順番で番号が付与されます。付与された番号がここに明記 |
登記の目的 | 所有権を移転するため、所有権の一部を移転するためなどの登記をした目的が明記される |
受付年月日・受付番号 | 登記申請した年月日や登記申請した場所での受付番号が明記される |
権利者やその他の事項 | 登記された理由と、詳細および所有者の情報が明記される |
権利部乙区の見方 – 担保権に関する情報の理解
権利部乙区は、土地や建物に設定された担保権に関する情報が記載されている部分です。甲区は所有権に関する記載、乙区は担保権に関する記載と覚えておきましょう。
なお担保権の内容が変更になった場合や、担保権が抹消された場合にも乙区に記載されます。
権利部乙区の記載内容は次の通りです。
項目 | 記載内容 |
順位番号 | 登記された順番で番号が付与されます。付与された番号が明記 |
登記の目的 | 抵当権設定や抵当権抹消など、登記をした目的・理由が明記 |
受付年月日・受付番号 | 登記申請した年月日や登記申請した場所での受付番号が明記 |
権利者やその他の事項 | 登記された理由と、詳細および所有者の情報が明記 |
権利部乙区の一番注目すべきポイントは「権利者やその他の事項」です。なぜなら登記された原因が細かく記載されるからです。
たとえば抵当権を設定した場合次のような文言が記載されます。
原因:令和元年10月1日金銭消費賃借同日設定
債権額:金5,000万円
利息:年3.0%
損害金:年15%
債権者:東京都練馬区1番1号
山田太郎
抵当権者:東京都練馬区1番2号
株式会社○○銀行
このように権利者その他の事項を見れば、どのような権利がどのような内容で設定されているのか、対象者が誰なのかわかるため、詳細を確認したい場合は権利者その他の事項を確認しましょう。
なお、登記簿上の数字や文字に下線が引かれている箇所は、すでにその登記が抹消されているか内容が変更されています。
共同担保目録の見方 – 共有担保に関する記録をチェック
共同担保目録は、1つの抵当権に複数の担保権が設定された場合、その情報をリスト形式で示すものです。たとえば住宅ローンを組む際に所有している土地と建物の2つを担保に設定したとします。この場合1つの抵当権に対して2つの担保を設定していることになるため、共同担保目録にそれぞれ担保設定した情報を明記しなければならないのです。
具体的な共同担保目録の見方は次の通りです。
項目 | 記載内容 |
記号及び番号 | 共同担保目録が設定されたときに割り振られる番号 |
調製 | 登記簿がコンピューター様式で登録された日付が明記される。なお最初からコンピュータ様式で登録されている場合はここの項目は空欄になる |
番号 | 担保となる土地や建物の順番が明記される。たとえば最初にA建物、次にB土地が担保に設定された場合は、Aが1番、Bが2番となる。 |
担保の目的である権利の表示 | 抵当権が設定されている土地や建物の所在地が明記される |
順位番号 | 登記された順番で番号が付与され、付与された番号がここに明記される |
登記簿謄本を取得する方法 – 手続きとポイント
登記簿謄本の取得方法は、次の通りです。
- 法務局で取得する
- 郵送で送ってもらう
- オンライン上で申請する
- 登記情報提供サービスで閲覧する
法務局で取得する – 直接取得する方法
法務局に直接足を運び、受付で申請することで、登記簿謄本を取得できます。現在は登記簿謄本よりは登記事項証明書を発行してもらうことの方が多いです。法務局の受付で取得する場合の費用は600円/1通です。この費用は厳密には収入印紙のことですので、コンビニや郵便局などで購入した600円分の収入印紙でも対応できます。もちろん法務局でも収入印紙は購入できますので事前に持っていく必要はありません。
なお法務局で管理されている建物や土地は決まっているため、建物や土地によっては法務局で登記簿謄本を発行できない可能性があります。
郵送で取得する – 郵送申請で手軽に入手
登記簿謄本は郵送で送ってもらうことも可能です。ただし期間は数日から1週間程度かかりますので、早急に必要な場合は、期間に余裕を持って申請しましょう。
郵送で送ってもらう流れは次の通りです。
- ホームページから申請書類を印刷する
- 必要事項を記入する
- 申請書類に600円分の収入印紙を添付する
- ポストや郵便局で発送する
- 登記簿謄本が郵送されるのを待つ
郵送で送ってもらう方法であれば、法務局に行かずとも、お近くのポストに投函するだけで取得できるため、時間や手間はかからないでしょう。
オンラインで取得する – インターネットを活用して取得
登記簿謄本はオンライン上でも申請・取得可能です。オンラインで申請する場合の流れは次の通りです。
- 法務局のホームページに登録する
- 申請書を作成し、送信する
- 窓口受けとりか郵送受けとりかを選択する
- 手数料の支払い方法を選択する
- 手数料を電子納付する
- 登記簿謄本を受けとる
オンライン上で申請する場合は、まず法務局のホームページにアクセスして申請書を送ります。その際受けとり方法を法務局の窓口受けとりか、郵送受けとりかを選択します。窓口受けとりを選択した場合の費用は480円です。一方郵送受けとりを選択した場合の費用は500円になります。次に手数料を電子納付します。電子納付の方法はペイジー・インターネットバンキング・モバイルバンキング・ATM支払いの4つです。電子納付が完了したらあとは登記簿謄本が届くのを待つだけです。窓口受けとりを選択した場合は最短即日、郵送受けとりの場合は数日から1週間程度かかります。
登記情報提供サービスで閲覧する
登記情報提供サービスとは登記所に登録されている土地や建物の情報を閲覧できるサービスです。
登記情報を請求し、PDFをダウンロードしたタイミングで課金されます。つまり有料のサービスということです。
請求する際にかかる費用は次の通りです。
内容 | 費用 |
全部事項 | 331円 |
所有者事項 | 141円 |
地図 | 361円 |
図面 | 361円 |
登記情報提供サービスでは不動産登記情報のほか、商業・法人登記情報や動産譲渡登記事項概要ファイル情報なども確認できます。
登記簿謄本に関するよくある質問 – 疑問を解消しよう
登記簿謄本に関してよくある質問は次の通りです。
- 申請する際の書類は原本でなければなりませんか?
- 申請書類はどのくらいの期間保存しておかなければなりませんか?
申請する際の書類は原本でなければなりませんか?
登記申請する際には、権利証や印鑑証明書、住所証明書などさまざまな書類を提出しなければなりません。しかしこれらの書類は原則返還されません。つまり大事な書類であっても返ってこないということです。提出する書類の中には返還が必要な書類もあるでしょう。そのため原本と同じ内容の印刷物であれば基本的には問題ないとされています。
申請書類はどのくらいの期間保存しておかなければなりませんか?
登記申請した際の書類は不動産登記法に基づいて、保存期間が定められています。
申請書類の保存期間は状況や内容によって異なるため一概には断言できませんが、ここでは代表的な保存期間を紹介します。
- 永久保存
- 50年間保存
- 30年間保存
申請書類には、測量図や平面図、閉鎖した土地の記録などがあり、複雑な部分もあるため詳細は不動産会社に確認しましょう。
登記申請する際に法務局やその他公共機関に送った書類は原則返還されません。
まとめ – 登記簿謄本の取得と確認方法をマスターしよう!
登記簿謄本は登記をしたり、土地や建物を売却したりする際に必要になる書類です。現在はコンピューターの進歩により、ネット上で情報の登録や確認ができるようになったため、登記事項証明書という名前の書類に変わっていることがほとんどです。ただし古い土地や建物に関してはまだ登記簿謄本として残っている可能性がありますので、注意しましょう。登記簿謄本には全部事項・現在事項・一部事項・閉鎖事項の4種類の証明書があります。それぞれ記載内容は変わりますが、項目に違いはありません。
全ての証明書に書かれている項目は表題部含む4つです。
一通りの見方は本記事で解説しましたが、不明点や疑問点がある場合は不動産会社に相談することをおすすめします。なぜなら不動産会社は、経験や知識が豊富で登記簿謄本の見方も把握しているからです。
ぜひ困ったことがあれば一度不動産会社に相談してみてください。