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2024/06/10最終更新⽇時
2024/06/10固定資産税とは?土地と建物別で賢く計算・節税する方法
- 不動産の知識

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不動産所有者が毎年納税する義務がある固定資産税。土地や建物を所有する方々の中には、以下のような疑問を持つ方も多いでしょう。
- 「固定資産税はどのように計算するの?」
- 「土地と建物は分けて考える必要があるの?」
- 「固定資産税を節約する方法はあるの?」
この記事では、これらの疑問を解決します。不動産所有者だけでなく、これから所有予定の方もぜひ最後までお読みください。
土地と建物は別々に固定資産税が課税される理由
固定資産税は、土地と建物にそれぞれ別々に課税されます。これは土地・建物それぞれの固定資産税評価額が異なるからです。固定資産税は、この固定資産税評価額によって決まるため、土地・建物それぞれ別に固定資産税を算出する必要があります。では、土地と建物の固定資産税評価額はそれぞれどのように計算すればいいのでしょうか。
土地の固定資産税評価額の計算方法
土地の固定資産税評価額を決める方法には、「標準宅地比準方式」と「路線価方式」の2種類があります。
〈1〉 標準宅地比準方式
標準宅地比準方式は、周辺地域の基準地価をもとに固定資産税評価額を算出する方法です。主に、地方や田舎などの土地の評価額を決定する際に使われます。周辺地域の宅地から単価を割り出し、土地の形状や条件によって評価額を調整するという方法です。
〈2〉 路線価方式
路線価方式は、その土地に接道する道路の価格をもとに、固定資産税評価額を算出する方式です。国内の道路には、「固定資産税路線価」という土地の価格が定められています。これを基準として、その道路に接している土地の評価額を決めるという方法です。
建物の固定資産税評価額の計算方法
建物の固定資産税評価額は、再建築価格方式で決められます。再建築方式では、次のような方法で固定資産税評価額を求めます。
〈1〉その物件と同じ条件を持ちあせた不動産を再建築した場合の建築費を計算する
↓
〈2〉建築費に、建築後の経年劣化によって生じる経年減点補正率を掛け合わせる
なお、経年減点補正率は50%前後になることが一般的です。そのため、建物の固定資産税評価額は、建築に要した総工費のおよそ5~6割になります。ただし、この計算方法によって算出された固定資産税評価額が、前年度の金額を上回った場合は例外です。この場合は、前年度の固定資産税評価額を引き続き採用します。
固定資産税評価額がわからない場合の確認方法
不動産を所有していても、「自分が所有している土地や建物の固定資産税評価額を知らない」という方は多いのではないでしょうか。このような場合は、次の3つの方法で固定資産税評価額を確認できます。
〈1〉 課税明細書
納税時期になると、各市町村の自治体から課税対象者へ納税通知書が送付されます。そこに添付されている書類が「課税明細書」です。これを確認すれば、所有する不動産の固定資産税評価額を確認できます。ただし、各市町村によって微妙に表記方法が異なることに注意してください。自治体によっては、「固定資産税評価額」ではなく「評価額」「価格」といった表記になっている場合もあります。
〈2〉 固定資産税台帳
固定資産税台帳には、土地や建物の所在地、所有者、固定資産税評価額などが詳しく記載されています。各市町村長が作成した書類で、市役所の担当課に相談すれば閲覧できます。この際には、本人確認書類(マイナンバーカードや保険証など)および閲覧用申請書が必要です。さらに、手数料として300円が必要になることも留意しておきましょう。
〈3〉 固定資産評価証明書
固定資産評価証明書は、土地や建物の固定資産税評価額が記載された書類です。評価額だけでなく、所有者や所在地、地目や地積、建物の構造など、その不動産のあらゆる情報を確認できます。この固定資産評価証明書は、各市町村の役所で取り寄せることが可能です。
固定資産税の計算方法とは?土地と建物別の計算方法を解説
固定資産税はどのように計算するのでしょうか。ここでは、固定資産税の計算方法を土地と建物に分けて紹介します。
土地の固定資産税の計算式と注意点
土地の固定資産税は、「土地の固定資産税評価額 × 標準税率(1.4%)」で算出します。なお、固定資産税評価額は3年に1度見直されるため、その間は評価額が固定されます。
さらに、土地の固定資産税は、土地の種類や敷地面積によって減税措置を利用できます。具体的には、「住宅用地」の場合は固定資産税が減額されるのです。
〈住宅用地に対する減税措置〉
居住用の建物を建てるための「住宅用地」であれば、固定資産税を減額できます。減額される割合は敷地面積によって異なり、それぞれ次の通りです。
- 200平米未満の住宅用地の場合
固定資産税は1/6、都市計画税は1/3に減額 - 200平米以上の住宅用地の場合
固定資産税は1/3、都市計画税は2/3に減額
建物の固定資産税の計算式と節税のポイント
建物の固定資産税は、「建物の固定資産税評価額×標準税率(1.4%)」で計算します。新築物件の場合、一定期間に限り固定資産税の減額措置を受けられます。詳しくは次の章で解説します。
固定資産税の優遇措置と減税制度
固定資産税には、土地や建物の種類によって優遇措置が適用されます。詳しくは次の通りです。
土地に適用される優遇措置と減税制度
先述したように、その土地が住宅用地であれば固定資産税が減額できます。ただし、土地の敷地面積が200平米未満かそれ以上かによって、減額される割合が変わることに注意しましょう。
建物に適用される優遇措置と減税制度
建物の場合、新築物件であれば3年間、認定長期優良住宅であれば5年間、それぞれ固定資産税額が50%の割合で減額されます。さらに、新築物件と認定長期優良住宅の両方を満たす建物の場合、減額期間がさらに延長されることにも留意しましょう。新築物件・認定長期優良住宅それぞれの減額期間は次の通りです。
物件の種類 | 固定資産税が減額される期間 |
新築の戸建て | 建築されてから3年間 |
認定長期優良住宅 | 建築されてから5年間 |
耐火構造の戸建てやマンション | 建築されてから5年間 |
認定長期優良住宅で、かつ耐火構造の戸建てやマンション | 建築されてから7年間 |
なお、認定長期優良住宅の場合は、各市町村の自治体への届け出が必要です。固定資産税の減税措置の利用を検討している場合は、まず不動産の所在地にある自治体へ問い合わせましょう。
固定資産税をシミュレーションしてみよう
納税前に、支払うべき固定資産税額を事前に把握することは重要です。計算方法や減税措置を学んだ後は、実際に土地と建物の固定資産税をシミュレーションしてみましょう。ここでは、次のような条件のマイホームを例にします。
〈マイホームA〉
- 土地の固定資産税評価額……4,000万円
- 建物の固定資産税評価額……3,000万円
- 土地の敷地面積……150平米
- 土地の地目(種類)……住宅用地
- 不動産の状態……所有地に築15年の建物が建っている
先述したように、固定資産税は土地と建物は別に計算します。まずは土地の固定資産税を計算してみましょう。
① 土地の固定資産税
この土地は住宅用地であり、敷地面積は180平米です。よって、住宅用地の減税措置が適用されます。さらに200平米未満なので、固定資産税は1/6に減額されます。計算式は次の通りです。
4,000万円×1.4%×1/6=9万3,000円
よって、マイホームAの土地に課税される固定資産税は9万3,000円です。
② 建物の固定資産税
続いて、建物の固定資産税を計算します。マイホームAは築15年が経過しているため、残念ながら新築物件に対する優遇措置は適用されません。計算式は次の通りです。
3,000万円×1.4%=42万円
よって、マイホームAの建物に課税される固定資産税は42万円です。
③ マイホームAに課税される固定資産税の総額
9万3,000円(土地の固定資産税額)+42万円(建物の固定資産税額)=51万3,000円
よって、マイホームAに課税される固定資産税額は51万3,000円です。
では、マイホームAが新築物件の場合、固定資産税はいくらになるのでしょうか。新築物件に対する優遇措置を考慮して、この場合もシミュレーションしてみましょう。
〈マイホームA〉(新築物件の場合)
- 土地の固定資産税評価額……4,000万円
- 建物の固定資産税評価額……3,000万円
- 土地の敷地面積……150平米
- 土地の地目(種類)……住宅用地
- 不動産の状態……昨年末に所有地にマイホームを建てたばかり
- 前例と同じように、まずは土地の固定資産税を計算します。
① 土地の固定資産税
敷地面積や地目(住宅用地)は変わらないため、土地の固定資産税は中古物件のケースと同じです。
4,000万円×1.4%×1/6=9万3,000円
よって、マイホームAの土地に課税される固定資産税は9万3,000円です。
② 建物の固定資産税
続いて、建物の固定資産税を計算します。マイホームAは昨年末に建ったばかりの新築物件のため、新築物件に対する優遇措置が適用されます。計算式は次の通りです。
3,000万円×1.4%×50%(優遇措置)=21万円
よって、マイホームAの建物に課税される固定資産税は21万円です。
③ マイホームAに課税される固定資産税の総額
9万3,000円(土地の固定資産税額)+21万円(建物の固定資産税額)=30万3,000円
よって、マイホームAに課税される固定資産税額は30万3,000円です。
土地のみの固定資産税は高くなる?
土地のみを所有している場合、その土地上に建物が建っている場合に比べて固定資産税が高くなります。なぜなら、先述した「住宅用地に対する優遇措置」が適用されないからです。
住宅用地とそれ以外の土地の固定資産税額の違い
住宅用地とそうでない土地では、固定資産税額はどの程度の差額になるのでしょうか。ここでは、敷地面積150平米、固定資産税評価額2,000万円の土地を例にして、それぞれの固定資産税額を見てみましょう。
敷地面積150平米の住宅用地
土地の固定資産税=2,000万円×1.4%=28万円
さらに、この場合は住宅用地の減税措置が適用されるため、
28万円×1/6=およそ4万7,000円
よって、敷地面積150平米の住宅用地に課税される固定資産税額は、およそ4万7,000円です。
敷地面積150平米の農地
土地の固定資産税=2,000万円×1.4%=28万円
農地は住宅用地の減税措置が適用されないため、固定資産税額は28万円です。
このように、建物が建っている土地とそうでない土地とでは、固定資産税額に20万円以上の差があります。では、こうした住宅用地以外の土地の固定資産税を抑えるには、どのような対策をすればいいのでしょうか。
土地の固定資産税を抑える方法
土地の固定資産税額を抑えたい場合、次のような方法があります。
① 土地に建物を建てて減税措置を受ける
所有地が更地の場合、その土地上に建物を建てることで、住宅用地の減税措置を適用できます。つまり、その土地を「住宅用地」として使うのです。先述したように、住宅用地であれば200平米未満であれば1/6、200平米以上であれば1/3に固定資産税を減額できます。
さらに、土地が住宅用地になれば、建物が新築物件の場合に「新築物件の減税措置」も活用できます。
新築物件の減税措置
これは第3章で解説した通りです。土地上の建物が新築物件であれば、条件に応じて固定資産税が50%に減額されます。ここでもう一度おさらいしておきましょう。それぞれの減税期間は次の通りです。
- 新築の戸建て……建築されてから3年間
- 認定長期優良住宅……建築されてから5年間
- 耐火構造の戸建てやマンション……建築されてから5年間
- 認定長期優良住宅で、かつ耐火構造の戸建てやマンション……建築されてから7年間
② 土地を分筆して固定資産税を軽減
分筆とは、登記簿に記載された土地を複数に分割し、別の土地として扱うことです。土地の単位は「筆」であり、登記簿に記載された1つの土地を1筆と言います。
また、第一章で解説したように、土地の固定資産税評価額を決める方法には「標準宅地比準方式」と「路線価方式」の2種類があります。たとえば、評価額の高い道路と低い道路、いずれにも面した土地など、評価額の算出が複雑な場合、分筆することで全体の固定資産税評価額を安く抑えられるケースがあります。分筆にも多少の費用はかかりますが、土地の固定資産税を大幅に抑えられると考えれば検討の余地はあるでしょう。
今回は土地と建物の固定資産税について解説しました。固定資産税は、土地と建物は別で計算します。いずれも条件によっては減税措置が適用されるため、固定資産税を大幅にカットすることが可能です。不動産を所有している方、またはこれから所有される方にとって、固定資産税は避けては通れないものです。固定資産税にまつわる知識を身につけ、より賢く固定資産税にまつわる知識を身につけ、より賢く不動産を運用するための方法を学ぶことが重要です。適切な税務知識を持つことで、税負担を軽減し、資産を有効に活用することができます。今後、土地や建物を所有する際には、固定資産税の計算方法や減税措置についても十分に理解しておくことをおすすめします。また、税制改正や新たな減税措置などにも注目し、常に最新情報をチェックしておくことが大切です。