日本人は貯金好き?投資とのバランスを海外と比較

今や都市伝説化している「日本人お金持ち」説
その理由とされるのが、国内貯蓄高の大きさです。

日本人が貯金好きだと言われることが多いですが、これは本当でしょうか。
諸外国と日本では、資産についての考え方がどのように異なっているのでしょう。

現在の数値データを元に、日本と海外の投資と資産形成について見ていきます。

日本の貯金文化とその実態:貯金好きな日本人の現状

日本の個人金融資産構成と現金・預金の割合

2016年9月に日銀が発表した「資金循環の日米欧比較」(https://www.boj.or.jp/statistics/sj/sjhiq.pdf)の中に「家計の金融資産構成」があります。
日銀のデータによれば、以下の通りです。

現金・預金比率
日本 52%
欧州 35%
米国 13%

株・投資信託
米国 47%
欧州 25%
日本 16%

日本と米国では、現金・預金と投資が見事に逆転していることがわかります。

ちなみに保険保有比率、債券保有比率は

欧・米 保険保有比率32% 債券保有比率5%
日本 保険保有比率26% 債券保有比率2%

となっています。

投資性のある商品はあまり手を出していないというのが、一般的な日本家庭のイメージです。

日本国内の“運用されずにプールされっぱなし”、いわゆる「タンス貯金」の額は880兆円と言われています。
銀行や郵便局に入っている預金の他、把握されていない個人保有のお金も合わせると、いったいどれだけが眠っているのか想像がつきません。

「日本人は貯めるのは上手だが、増やすのは下手」とささやかれているのも、間違いはなさそうです。

日本と欧米の個人投資率の比較:資産運用の違い

日本のGDPは米国の1/3ありますが、国別株式保有金額では日本はアメリカの1/13

株式比率の低さが良くわかります。
2009年時点の個人投資家の金融資産内訳は、

定期預金がもっとも多く32%、現金23%、保険15%、年金12%、株式7%、投資信託4%、債券3%となっています。

2010年の東京証券取引所で行なわれた売買取引の主体者を見ると、外国人が65%近くを占めています。
個人投資に関する話題が増えているとはいえ、まだまだ日本人投資家は少数派です。

日本のGDPが20位まで転落したというニュースが耳新しい今日、少子高齢化が進む中での経済成長は困難を極めます。
限りない低金利社会では、貯金は目減りするばかりでしょう。「貯め上手な日本人」も過去の話です。
眠れる資金を投資に向けられれば、社会経済の活力が充填されるかもしれません。

金銭に対する意識の違いとその影響

お金は人生の“ツール”

日本の普通預金金利は、現在0.02%。
入れて置いても利益を生まない場所に、なぜいつまでも置きたがるのでしょうか。
日本人の金銭に対する考え方には、以下のようなメンタリティが根付いていると言われています。

お金は真面目に稼いで手に入れるもの」「清貧こそが美徳」「お金儲けはいやしい」「お金はコツコツと貯めるもので使うものではない」など。

さらに、「お金は汚いものだ」という誤解が根強い傾向もあります。

こうした金銭に対する特殊な意識は、外国人からは理解し難いものがあります。
お金はキレイも汚いもなく、生活に不可欠な、ただのツールです。不足すれば困るけれど、貯めて眺めているものではなく、いかに有意義に「使いこなすか」に焦点が当てられます。
ただ貯めるだけに働き、シニア世代になっても貯金にこだわり続ける日本人のマネースタイルは、何とも不可解と受け止められています。

日本の場合、バブル崩壊後の凍りつくような20年を経験し、結局投資ではなく預金がもっとも安泰であったと思い込まされた経緯があります。
時代が変化しても、その強烈な痛みが傷となって「真面目に働いて貯金をするのが正しい生き方」と刷り込まれていることは間違いないでしょう。

また高齢層の比重が大きくなるにつれて、預貯金額が押し上げられているのも事実です。
2015年11月時点では、「銀行の預金残高が年間10兆円増のペースで過去最高を更新」という記事が見られました。

金融経済教育の国別違いとその影響

「お金」に関する国の姿勢の違いがもっとも現れているのが、教育の現場です。
日本はこれまで金融知識について、教育の推進を積極的に行なってきてはいません。
しかし、海外では早い時点から、社会と金融の関係、さらに金融商品などの詳細までを含め、子どもたちに教えるシステムづくりをしてきました。

それでは、主な国々の金融経済教育に関する取り組みを見てみましょう。

英国

シチズンシップは、金融を含めた経済教育としてKey stage 3(11-14 歳)と Key stage 4(14-16 歳)に施される必須教科となっています。
その趣旨としては、“生徒が自分のお金をうまく管理するとともに健全な金融上の決定をするように準備すべき”“将来に必要となるお金を計画できるようにすること”。
貨幣の役割と社会経済、自分の生活とのつながりを具体的に知るとともに、投資やリスク管理について学びます。

米国

全米共通の教育課程は存在せず、各州・学校・団体での取り組みとなっています。
2003年に発布された「金融リテラシー及び金融教育改善法」に基づき、若年層を対象とした金融教育に関する組織が設立されています。
教材などの提供を行なっています。

オーストラリア

資本主義の自由市場経済が世界に広がる中、「金融経済教育」の重要性が高まっており、オーストラリアではナショナルカリキュラム「経済とビジネス」を実施しています。
「パーソナル・ファイナンスでは、「消費・貯蓄・投資」が重点的に扱われています。

世界経済を知る上で投資・金融といった基本的な知識は欠かせません。
各国とも次世代をけん引する若年層に対し、金融経済教育を手厚く行ない、将来的な国力強化を図っています。
諸外国ではライフプランの中での資産形成はごく当たり前の課題であり、若いときからさまざまな投資の方法について学び始めます。

海外の資産形成と投資スタイルの違い

アメリカ人の株好きは本当か?

冒頭で見たように、日本人は預金による低リスク・低リターンを好み、米国では株式などのリスク資産の割合が高くなっています。
資本主義の元締め的役割を果たしてきた米国では、高校生になると教科書で資産運用を学びます。

ドルコスト平均法やラテマネーの法則といった投資テクニックを学校の授業で習うことで、早くから資産形成に興味を持ち、投資がごく当たり前に生活の一部となります。
“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は、11歳で投資を始めたそうです。

アメリカではダブルインカムの考え方が一般的です。
自分が働いて得るお金と、お金が生み出すお金によって、より豊かで余裕のある生活を手に入れようとします。
アメリカ人にとっての夢である、アーリーリタイアを実現するために、不労所得の種を常に撒き続けています。

米国で投資というと株ばかりが取り上げられますが、実は当該国の株式の50%は富裕層上位1%によって占められています。さらに上位5%によって全株式のうちの80%が保有されているのが現実です。
アメリカ人全員が株式投資を行っているわけではありませんが、投資に対する意識は明確です。
しかし、投資についての考えは明確で、何もしていないというわけではありません。

債券の保有も考えられますが、もっとも多いのが不動産への投資です。
手頃な価格で購入できる田舎の農場や、もっと手の届きやすい日本でいう区分マンションのような投資の仕方もあります。いずれにしても株と違ってリスクが低い上、年を取ってからも自分たちが暮らしたり、売却したりできる投資対象としての不動産は魅力的です。
株の持つ不確実性を嫌う層でも、不動産投資については積極的な姿勢が見られます。

投資や資産形成に対する考えの違いは、民族的な歴史や教育によって差があります。
しかし、資本主義の一翼を担う日本の中で、個人の資産形成は自己責任です。これまでの思想はどうあれ、現状を見極めて必要な手段を講じて行かなければなりません。
株や投信、不動産投資など資金力に応じた手段は豊富にあります。
学ぶことを面倒くさがり、何もせずにいては何も変わりません。
日本人の貯金神話から、世界に目を向けるべき時が訪れています。