アパート建設費用の相場と安く建てるコツ

アパート建築にかかる主要費用

アパートの建築費用は大きく3種類に分けられます。はじめに、それぞれが何のための施工費用なのかを説明します。

本体工事費:建物そのものの費用

本体工事費は、アパートの建物そのものを建設するために発生する費用であり、建築費用全体の中で最も大きな割合を占めています。大まかな相場は、建築費用全体のおよそ70%から80%程度です。
アパートの基礎部分や壁、外装に加え、トイレ、浴室、キッチンなどの基本的な賃貸住宅に必要な設備も含まれます。建築会社の工事費や人件費も本体工事費に含まれることがあり、企業によって内訳が異なる場合があります。
格安工事を行う業者の中には、必要な設備の一部をオプション扱いとする場合があります。この場合、オプションにかかる費用は別途請求されるため、当初の見積もりよりも費用が増える可能性があります。
明細をしっかり確認し、本体工事費に含まれるものと含まれないものを把握することが重要です。

別途工事費

別途工事費とは、本体以外の工事に対する対価として請求される費用です。地盤改良、古い家屋の外壁、駐車場の整備、解体費用などが含まれます。アパートの解体費用は、回数や坪単価によって変動します。
地盤改良を行う場合、およそ100万円から150万円のコストが発生する可能性があります。地盤改良の必要性やその際にかかるコストを知るためには、地盤調査を行う必要があります。
その結果によっては建設費用が大きく変動することがあるため、余裕を持った資金準備をしておくことが望ましいです。
土地を取得してアパートやマンションを建築する際は、地盤の強い土地を選ぶことや、解体費用を売主に負担してもらうことを検討しましょう。
別途工事費を大幅に節約できる場合もあります。単純な価格の比較だけではなく、先を見据えた用地選びを心がけましょう。

別途工事費:その他の工事にかかる費用

付帯工事費とは、ライフラインを整備するために必要な費用で、電気、ガス、給排水工事などが含まれます。
電気の引き込み工事はおよそ1万円、ガスの引き込み工事はおよそ10万円から20万円、水道の引き込み工事はおよそ30万円から50万円がそれぞれ発生します。
アパートを郊外の土地に建てる場合、引き込み距離が長くなり、付帯工事費が高額になるケースもあるため注意が必要です。
また、ガスの配管工事費用は、都市ガスとプロパンガスの選択が非常に重要です。プロパンガスを選択するメリットは、ガス会社が工事費用を負担してくれたり、エアコンや給湯器を無料で設置してくれる点です。
一方のデメリットは、都市ガスと比較して毎月の利用料金が高額になることです。地域事情も考慮したうえで、工事業者に相談して選択するのがよいでしょう。

アパート建築費用における坪単価の相場

アパートの建築費用(本体工事費)は、延べ床面積×坪単価で概算することができます。延べ床面積に関しては、最大値が個々の土地に定められている容積率によって決定されます。容積率は、延べ床面積を敷地面積で割ることで計算が可能で、どの程度の規模のアパートを建てることができるかの指標になります。
容積率は、用途地域と呼ばれる土地の使用意図についてエリアごとに定められたもので決定されます。なので、まずは用途地域を調べて容積率を把握して、延べ床面積の概算を出すとよいです。
坪単価に関しては、建物の構造と建築予定地があるエリアによって変動します。それぞれについて、以下で説明します。

構造別の坪単価:種類別の建築費用相場

アパート建築費用は、建物の構造によってある程度の坪単価相場があり、基本的には木造や軽量鉄骨造、重量鉄骨造、鉄筋コンクリート造の4種類に分けられます。
それぞれの1坪あたりの建築費用の相場は、木造が70万円から90万円、軽量鉄骨造が80万円から100万円、重量鉄骨造が90万円から110万円、鉄筋コンクリート造が100万円から120万円になります。
2階建てのアパートであれば、木造あるいは軽量鉄骨造で建てることができます。木造は、コストを最安価に抑えることができます。
しかし入居者のイメージがあまりよくないことや、上位ハウスメーカーが軽量鉄骨を得意としていることなどから、近年の2階建てアパートに関しては軽量鉄骨造が主流になりつつあります。
3階建て以上のアパートに関しては、重量鉄骨造や鉄筋コンクリート造が主な選択肢となります。ただ、台風が多い沖縄などのエリアでは2階建てでも鉄筋コンクリート造で建てられることが多いです。
工事費の内訳に関しては、躯体・仕上げ・設備の3点に分けることができます。それぞれの割合は、躯体が40%、仕上げが40%、設備が20%です。
そのため例えば仕様の高い仕上材や設備を用いた場合は、木造を選択したとしても軽量鉄骨造より建築費用が高騰する可能性があるので注意が必要です。

地域別の坪単価:地域による価格差の理解

アパートの坪単価は、地域によっても差が生じます。ここでは、主要エリアの居住専用住宅の坪単価について説明します。
なお以下の数値は全ての構造の建物を合わせたもので、戸建て住居も含まれていることからアパートの建築費用と比較すると若干低くなっています。
主要エリアで最も坪単価が高かったのは東京都で、およそ82.2万円です。その次に多かったのは、神奈川県でおよそ67.3万円、その次が愛知県で65.7万円です。
以下は高い順に、大阪府がおよそ65.6万円、北海道が63.1万円、福岡県が62.3万円となっています。
大都市でアパート需要があるエリアに関しては、その他と比較しても坪単価相場は高いです。これは、搬入の難しさによる工賃の追加や、工事の際の防音シートなど周囲に配慮するものなどの使用による影響が大きな要因です。

*参考建築着工統計調査(2021年)

アパート建設に伴う諸費用の詳細

建築工事には、建築工事費以外にも諸費用として一括りにされる支出もあります。諸費用は、一般的にはアパートローンなどの融資が適用できないケースもあるため、ある程度の自己資金が必要になることを理解しておくとよいです。ここでは、主に発生する諸費用を5点説明します。
1点目は、現況測量費です。これは、敷地の測量を行う際の費用で、測量は原則必須なので基本的に必ず発生します。測量費用に関しては、土地面積や地域によって変動するため、一概にいくらかかるとは言えないです。
2点目は、設計費です。これに関しては、工事費に含まれる場合と別契約になる場合があります。
別契約になるケースには、工務店などのため自社内では設計を担当することができず、建築士事務所とタイアップするケースや、設計監理を依頼したい建築士がいるケースなどがあります。
この場合、設計監理費用は3から10%と、かなりの幅があります。ただ、大家さんがデザインにかなりのこだわりを持っていて、地域でも実績がある建築士に依頼する際は、10%を超えることもあります。
3点目は、司法書士手数料です。アパートが完成すると、建物の所有権保存登記と表題登記を申請します。
登記の内容によって依頼する専門家が異なりますが、司法書士は提携している土地家屋調査士がいて、すべての登記手続きを完了させてくれるので、基本は一式を依頼します。その際の登記費用は、アパートの規模によって異なります。
4点目は、融資事務手数料です。これは、アパートローンなどを借入する際に金融機関に支払う手数料です。一般的な目安は数万円程度ですが、金融機関によっては10万円を超える場合もあります。
5点目は、各種税金です。印紙税や不動産取得税などの税金がかかってきます。
請負契約書を書面で行う場合に発生する印紙税に関しては、契約金額が5千万円超から1億円以下の場合は、契約書1通に対して6万円になります。
またアパート建築の資金をアパートローンなどで融資してもらった際は、金銭消費貸借契約を金融機関と締結するのですが、この契約書にも先ほどと同じ金額の印紙税がかかってきます。
不動産取得税は、「総建築費×3%から4%」で算出することができ、建物の評価額に応じて変動します。また、1戸あたりの床面積が40平方メートル以上であれば軽減制度が適用され、1戸あたりの評価額から最大1,200万円までが控除されます。

アパート建築費用を安く抑える方法

アパートの建築費用を極力抑えるための方法を2点説明します。
1点目は、必要以上に部屋を増やさないことです。部屋を増やすことで入居可能人数を増やし、より多くの家賃収入を取得しようと考える人もいらっしゃいますが、あまり得策とは言えません。
なぜなら、部屋を増やすほど追加した部屋分の設備代や敷居に使用する材料に費用がかかってしまい、全体の建築費用が上がってしまうからです。必要最低限の部屋数にしておけば、費用を抑えつつアパートを建築することが可能です。
2点目は、複数社のプランを出してもらい費用を比較することです。アパートの建築費用を極力抑えるためには、ハウスメーカーに見積もりを出してもらう時に複数の見積もりを出してもらって価格を比べることが重要です。
相談したのが1社だけだと、足元を見られて高く請求されてしまう可能性があります。なので、複数社に相談をしておき、低価格のハウスメーカーのプランを見せつつ値下げ交渉ができるとよいです。

アパートを建てる際の費用に関するまとめ

アパートを建てる際の建築費用は大きく分けて、本体工事費・別途工事費・付帯工事費の3種類があり、本体工事費は「延べ床面積×坪単価」で概算することができます。
坪単価は、構造や地域によって大きく変動します。構造別では、木造が最も安く、鉄筋コンクリート造が最も高いです。
また、建築工事費以外にも設計費や司法書士手数料などの諸費用も発生するので注意してください。
部屋数を最小限にしたり、複数社のプランを取り寄せて費用を見比べると建築費用を極力抑えることができるのでぜひお試しください。アパートの建築を検討される際は、当記事を参考にしてみてください。