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2023/10/05最終更新⽇時
2023/10/05相続登記が義務化!土地の相続手順と相続税の計算方法
- 不動産の知識

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相続登記の基本と義務化の背景
親が亡くなったり、土地を譲渡されたりする場合には、土地を相続するために「相続登記」と呼ばれる手続きを行う必要があります。しかし、「相続登記」とは具体的に何かをご存じない方も多いかもしれません。
まずは、土地の相続方法や手順を知る前に、相続登記について確認しておきましょう。
相続登記とは?
建物や土地などの不動産の所有者は、登記名簿に登記登録することで所有者として認められます。登記上の所有者が亡くなったり譲渡されたりする際には、所有者の変更を行うために「相続登記」という登記名義変更手続きが必要です。
相続登記をしていなければ、土地を相続しても所有者として認められません。それだけでなく、土地の所有者が亡くなっているのに、相続登記を行わないと、親縁関係の遠い親戚が相続人として名乗り出てきてトラブルに発展する可能性があります。また、相続登記を放置しておくことで、相続する際に放置していた期間の法定相続分の相続税評価額を上乗せすることになりかねません。
土地の所有者が亡くなった場合は、遺言書や遺産分割協議に従って新たな相続人が登録登記を行いましょう。
2024年4月から相続登記が義務化
相続登記を放置しておくと、さまざまな不利益が生じることが分かりました。しかし、今までは遺言書や遺産分割協議によって相続人を決めて、相続登記を行うかは個人の自由に任せていたので、相続登記を怠っても問題なかったのです。
しかし、2022年4月21日に「民法等の一部を改正する法律」(民法等一部改正法)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法)が改正され、2024年4月1日から相続登記が義務化されました。
2024年4月1日までは土地の相続登記は義務付けられていませんが、以降は相続登記を行うことが義務となります。正当な理由がなく相続登記を怠った場合は、10万円以下の過料が課せられるので注意しましょう。
相続登記は、土地を取得した日から3年以内に行わなければいけない登記申請期限が設けられており、不動産の登記名義人の氏名や不動産の名称、住所に変更があった場合は2年以内に変更の登記申請を行わなければいけません。2022年時点ではまだ義務化されていない相続登記ですが、いずれは申請を怠れば罰則が生じることになるので、早めに登記申請を行っておきましょう。
土地の相続手順と必要書類
実際に土地を相続する場合には、いくつか手順を踏まなければいけません。 土地の相続手順は、相続する前所有者の遺言の有無によって異なります。遺言がある場合と、ない場合で土地の相続手順を確認しておきましょう。
遺言がある場合の相続手順
遺言書がある場合は、その記載内容に従って土地の相続分配を行います。まずは、遺言書に記載された相続財産以外に遺産がないかどうか、相続財産調査を行うことが重要です。
相続財産調査は、土地や建物など不動産以外にも、車や船、現金や証券などの動産も相続財産の対象となります。どのような相続財産があるのか確認してから、遺言書の内容に従い相続登記を行います。また、基本的には遺言書の内容に従い、故人の希望を叶えるものですが、遺族全員で話し合って違う分配方法を取ることも可能です。
遺言書がある場合は、比較的スムーズに相続登記ができますが、遺言書の内容に納得がいかない場合は遺産分割協議を行って、再度相続・分配方法を検討しましょう。
遺言がない場合の相続手順
遺言書がない場合、土地を相続するには遺族間で遺産分割協議を行う必要があります。
相続財産調査を行った後、法定相続人全員で誰がどの程度の財産を相続するかについて話し合いましょう。全員が一度に集まらなくても、メールや電話などで遺産分割協議を行うことも可能です。相続人の1人が遺産分割協議書を作成して、相続人全員の同意を得られると対面で集まって話し合わなくても、遺産分割協議が行われたものとして扱われます。
なお、相続登記の必要書類として、以下の書類を用意しておきましょう。
必要な書類一覧
相続人全員の書類
- 戸籍謄本
- 住民票
- 印鑑証明書
前相続人(故人)の書類
- 前相続人の戸籍謄本(出生から死亡までが記載されているもの)
- 前相続人の住民票の除票、または死亡の記載がある戸籍附票
相続する不動産の書類
- 固定資産評価証明書
- 相続登記申請書
また、遺産分割協議で相続人が決まらない場合は、家庭裁判所での裁判で判決を委ねることになります。裁判をしたくない方は、できるだけ遺産分割協議で相続人・相続方法を決めて、穏便に相続登記を行いましょう。
土地の相続方法と選び方
現金の相続は、相続人で平等に分配するか、相続割合に応じて分配するだけで済みますが、土地は分配が難しい不動産です。土地を平等に分配しようとしても、実際には平等に割り切れない場合があります。土地を平等に分配、遺産分割協議で決められた割合で分配する方法は主に4種類あります。
土地の相続を円滑に行うために、それぞれの分配方法を確認しておきましょう。
現物分割
現物分配は最もシンプルな財産分配方法です。残された財産を現物ごとに分配する方法で、相続の手間を省くことができます。
例えば、土地の所有権は長男に、預金は次男、証券と車は三男が相続するという現物ごとに分割する相続方法です。分配方法はシンプルですが、土地と預金では価値が違う可能性が高く、分配割合に不平等が生じてしまうこともあります。相続人全員が納得していれば問題ありませんが、分配割合を考慮しなければトラブルに発展しやすい相続方法とも言えるでしょう。
換価分割
土地や建物、車など現金ではない財産があれば分割しにくい相続方法です。しかし、土地や建物を一度売却して現金化した後に、財産を分配する「換価分割」を行えば、現金分割より平等に分配できます。
財産を最も平等に分配できる相続方法ですが、不動産売却時や譲渡所得税の加算など、現金化して分割するまでに費用がかかってしまうので注意しましょう。また、財産である建物や土地に既に住んでいる相続人がいると、トラブルに発展する可能性があります。
代償分割
相続人の1人が土地や建物など、分割しにくい財産を相続して、残りの相続人に相続分と同額の現金を分配する相続方法を「代償分割」と言います。
土地や建物など分割しにくい財産でも、相続人全員が納得できる形で分配できるので、代償分割を行えれば相続に関するトラブルは減るでしょう。しかし、土地や建物を相続する1人に資金力がなければ、現金を分配することができません。数千万円に及ぶ不動産相続分を分配しなければいけない代償分割では、不動産を相続する1人の負担が大きすぎます。よほど資金力がある相続人がいなければ、実現できない相続方法でしょう。
共有分割
土地や建物などの不動産を含めて、財産を相続人で共有する方法を「共有分割」と言います。共有分割では、土地を相続人で共有して相続するため、土地を活用しにくい悪循環が生まれる可能性があります。せっかく相続した土地を活用することもできず、固定資産税や相続税を支払っていく状況が続くだけです。
後々に息子や孫など、相続人が増えた未来に土地の相続権を狙って新たなトラブルに発展する可能性もあるでしょう。共有分割は、相続問題を先送りにするだけの相続方法なので、できるだけ他の分割方法を選びましょう。
土地の相続税の計算
土地を相続した相続人は、相続税を支払わなければいけません。親の遺言で決められていても相続税の納税は義務付けられています。土地を相続することで相続人に不利益が出ないように、相続税の金額を計算してから相続登記を行うか相続放棄をするか検討しましょう。
まずは相続税の計算方法を確認してください。
相続税の計算式
財産相続の際に発生する相続税の計算式は以下の通りです。
相続税額=(総財産額−基礎控除額)×相続税率
基礎控除額とは、相続税額を軽減するために総財産額から差し引く控除額であり、計算式は「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」です。相続人が多いほど控除額が増え、相続税が軽減される仕組みです。
基礎控除額の人数別の計算式は以下の通りです。
- 法定相続人1人の場合
3,000万円+600万円×1人=相続税額3,600万円 - 法定相続人2人の場合
3,000万円+600万円×2人=相続税額4,200万円 - 法定相続人3人の場合
3,000万円+600万円×3人=相続税額4,800万円 - 法定相続人4人の場合
3,000万円+600万円×4人=相続税額5,400万円 - 法定相続人5人の場合
3,000万円+600万円×5人=相続税額6,000万円
また、相続税率は相続財産額によって変動します。相続財産額別の相続税率・控除額は以下の通りです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% - | |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税の計算例
例えば、総財産額が7,000万円で相続人が2人いる場合の相続税を計算します。
・相続税額=(総財産額−基礎控除額)×相続税率
上記の式に条件を当てはめてみましょう。
・相続税額={総財産額7,000万円−(3,000万円+600万円×2人=相続税額4,200万円)
}×相続税率15%−50万円
この計算式で相続税を算出すると、相続税は「370万円」となります。
遺産分割協議を行う際には、計算例を参考に相続税額を算出してみてください。
土地の相続に関するまとめとアドバイス
土地の相続は2024年の4月1日から義務化されます。法改正によって義務化される前から、土地の相続登記を放置しておくと、トラブルに発展する可能性があるので早めの相続登記を行いましょう。
相続登記を行う前に、遺言書の確認や遺産分割協議を実施し、相続人全員が納得する形で相続割合や方法を決定しておくことが重要です。相続方法によっては、相続人の中で不平等が生じたり、分配に手間が生じたりする可能性があります。相続人全員が納得した上で、早めに相続登記を行うことが、トラブルなく財産分与を行う秘訣です。
また、土地や建物など不動産を相続しても固定資産税や相続税など、税金の納税義務が発生します。相続することで損をしないように、遺産分割協議前に相続税や相続してからかかる費用を計算しておきましょう。相続することで損をする場合は、相続を放棄する手続きを行ってください。
遺産分割協議によって相続人全員が納得のいく方法で、土地を含めた相続財産を分配しましょう。